「川から遠いから、うちは低い区分のはず」。この読み方は当てになりません。区分を決めている損害保険料率算出機構が、検索ページにこう書いています。「洪水ハザードマップ等の一般のリスク情報とは必ずしも一致しません」。
火災保険の水災の保険料は、市区町村ごとに5段階に分かれています。1等地がいちばん安く、5等地がいちばん高い。自分の市が何等地かは、住所を入れなくても、都道府県と市区町村を選ぶだけで30秒で出ます。無料で、登録も要りません。
この記事は、その引き方と、出てきた数字の読み方を書きます。あわせて、機構が2026年2月に新しく公表した市区町村別のデータを使って、東京23区で「区分の高さ」と「実際に水災補償を付けている人の割合」を並べました。連動していませんでした。
この記事でわかること
- ✓ 等地は損害保険料率算出機構の「水災等地検索」で無料で引ける。住所は要らず、市区町村まででよい
- ✓ 1等地と5等地の保険料の差は約1.2倍(機構の資料。保険料全体で・激変緩和込み・参考純率での数字)
- ✓ 東京23区で水災補償を付けている割合は、5等地の江戸川区73.1%に対し、4等地の中央区は39.3%
うちの市が何等地かを調べる手順
公式の検索ツールが2つあります。どちらも無料で、会員登録も要りません。
- 損害保険料率算出機構「水災等地検索」。都道府県を選ぶと市区町村のリストが出るので、選んで「検索」を押します。結果は「補償危険:水災/等地:◯」の1行で出ます。住所も郵便番号も入れません
- AIG(エー・アイ・ジー)損害保険「マイホームリスクマップ」。住所か郵便番号と保険始期年月を入れると、地図の上で等地が出ます。番地まで入れたいとき、市区町村の境目に住んでいるときはこちらが早い
機構のツールには、結果と一緒に必ずこの注記が付いています。
検索結果は、当機構で算出した参考純率上の住宅物件における水災等地になります。各保険会社の取り扱いは異なる場合がございますので、火災保険をご契約する際は各保険会社へご確認ください。
参考純率は、機構が計算して各保険会社に提供する「保険料の原価」にあたる部分です。各社はこれをそのまま使うとは限りません。だから、ここで出た等地は「自分の契約の等地」ではなく「その市区町村の基準値」だと思ってください。自分の契約に何が適用されているかは、保険証券か見積書、契約者向けのマイページに書かれています。
読者
見積もりに「3等地」と書いてありました。これは高いほうですか、安いほうですか。
まん中です。1等地が最も低く、5等地が最も高い5区分なので、3等地は真ん中の区分。ただし「まん中だから平均的な危険度」という意味ではありません。次の節で書きます。

ハザードマップと一致しないのは、間違いではなく仕様
等地を引いて「うちのハザードマップは真っ白なのに、なんで高いの」と思った人へ。それは想定内です。機構は検索ページの説明文で、先に断っています。
なお、水災等地の設定にあたっては、外水氾濫だけでなく、内水氾濫や土砂災害等の水災リスクも含めて評価しているため、洪水ハザードマップ等の一般のリスク情報とは必ずしも一致しません。
洪水ハザードマップが描いているのは、主に外水氾濫——川の水があふれて堤防の外へ出る形の水害です。一方、等地はそこに内水氾濫(雨が排水しきれずに地面から出てくる)と土砂災害を足して決めています。だから、川から遠い高台でも、排水が弱い場所や斜面の下にある市区町村は、区分が上がります。
機構が2023年6月に出した資料には、注意事項として3行が並んでいます。ここがいちばん大事な部分です。
・等地が低い市区町村は、「他の市区町村に比べて相対的に水災リスクが低い」という意味合いであり、どの等地でも水害は発生しています。
・等地は、外水氾濫だけではなく、内水氾濫や土砂災害なども含めて、水災リスク全体で見ているので、洪水ハザードマップなどの一般のリスク情報とは必ずしも一致しません。
・等地は、災害の起こりやすさだけでなく想定される被害の程度なども見ているので、災害の起きやすさだけを示すものではありません。
「1等地だから安全」ではなく「他の市区町村と比べれば相対的に低い」。そして等地は「起こりやすさ」だけでなく「起きたときの被害の大きさ」も込みの数字です。同じ確率でも、被害額が大きく出る市区町村は区分が上がります。
ハザードマップの色をどう受け止めるかは「ハザードマップ、気にしすぎでしょうか」——色のない場所から、被害報告の55.7%が届きましたに書きました。等地とハザードマップは、そもそも見ているものが違います。
5区分は何をもとに決まっているのか
機構の資料によると、区分の材料はこう分かれています。
- 外水氾濫 … 洪水浸水想定区域図(自治体の洪水ハザードマップのもとになっている図)
- 内水氾濫・土砂災害 … 水害統計と地形データ
同じ資料は、水災の被害額のうち外水氾濫が約6割、内水氾濫や土砂災害などが残りの約4割だとしています(国土交通省の水害統計2011〜2020年の合計から作成)。つまり、ハザードマップだけを見ていると被害額の4割ぶんを見ていないことになります。
単位が市区町村なのは、使うデータの単位と、保険契約での使いやすさによる、と資料に書かれています。町丁目まで細かくしていないのは、技術的な限界ではなく運用上の選択です。だから同じ市の中に、川沿いの低地も高台の住宅地も同じ等地で入っています。
等地は市区町村の値であって、あなたの部屋の値ではありません。同じ市の中でも、1階と5階、低地と高台では浸かるかどうかがまったく違います。等地が低くても、1階・地下・戸建てなら水災の必要度は下がりません。逆に等地が高くても、上の階なら専有部分が浸かる可能性は低くなります。
等地で保険料はどれだけ変わるのか 答えは約1.2倍
「5等地は1等地の1.5倍」と書いている記事がありますが、機構の資料に書かれている数字は約1.2倍です。資料の3か所(9ページ・12ページ・13ページ)に同じ数字が出ています。
ただし、この1.2倍には注記が3つ付いています。数字だけ持ち出すと意味が変わるので、そのまま挙げます。
- 水災の保険料だけでなく、火災・風災・雪災・水災等をあわせた保険料全体での数字
- 保険料が大幅に上昇しないよう、激変緩和の措置をしたうえでの数字
- 参考純率での数字であり、実際の契約の保険料とは異なる
細分化しなかった場合と比べると、1等地は平均で約6%低い水準、5等地は平均で約9%高い水準になった、とも書かれています。1等地と5等地の間で、上下あわせて15%ぶんの差が付いた計算です。
「5等地だから2倍払わされる」ほどの話ではありません。等地は、水災を付けるか外すかを決めるほどの金額差にはなっていない、というのが資料から読める姿です。
東京23区で並べたら、区分と備えが連動していなかった
機構は2026年2月26日に、市区町村別の水災補償付帯率を新しく公表しました。その市区町村で有効な火災保険(住宅物件)の契約のうち、水災を補償している契約が何%あるかという数字です。全国は61.8%(2024年度末)、東京都は57.1%でした。
この付帯率と、機構の検索ツールで1件ずつ引いた等地を、東京23区で並べたのが次の表です。
| 区 | 水災等地 | 水災補償の付帯率 |
|---|---|---|
| 江戸川区 | 5等地 | 73.1% |
| 葛飾区 | 5等地 | 70.8% |
| 足立区 | 5等地 | 68.7% |
| 荒川区 | 5等地 | 59.6% |
| 墨田区 | 5等地 | 56.5% |
| 台東区 | 5等地 | 48.0% |
| 江東区 | 5等地 | 47.5% |
| 北区 | 4等地 | 58.7% |
| 中央区 | 4等地 | 39.3% |
| 千代田区 | 2等地 | 41.7% |
| 港区 | 2等地 | 44.3% |
読みどころは2つあります。
ひとつは、同じ5等地の中で25.6ポイントも開いていることです。江戸川区は73.1%が水災を付けているのに、江東区は47.5%。区分はどちらもいちばん上です。
もうひとつは、中央区の39.3%。4等地——5段階で上から2番目にリスクが高い区分なのに、水災を付けている契約は10件のうち4件に届きません。この39.3%は、機構が公表した全国1,912市区町村の中でも3番目に低い数字です。
都心の区で低く出るのは、分譲マンションの上の階に住んでいる人が多いことの反映だと考えられます。ただし、このデータは建物の種類も階数も分けていません。だから「上の階だから合理的に外している」と言い切ることはできません。言えるのは、区分の高さと、実際に備えている人の割合が、まったく別々に動いているということです。
読者
みんなが付けているかどうかで、自分も決めていいですか。
同じ5等地で25ポイント開いている以上、周りに合わせても答えは出ません。全国の付帯率は2013年度の76.9%から61.8%まで下がり続けていて、全都道府県が右肩下がりです。多数派は「外す」方向に動いています。
1等地でも水害は起きる 千葉市美浜区の例
機構の3行の注意事項のうち、いちばん上の「どの等地でも水害は発生しています」を、実例で見ます。
千葉市美浜区は1等地です(機構の検索ツールで確認)。5段階でいちばんリスクが低い区分です。付帯率は41.1%でした。
その美浜区で、2026年8月の千葉豪雨のときに何が起きたか。千葉市は8月25日時点で、中央区と美浜区の13棟・計約700戸で停電や断水が続いていると発表しました。マンションの地下に置かれた受変電設備と給水ポンプが水没したためです。部屋がまったく濡れていない階まで、電気と水が止まりました。この経緯は部屋は無事でも住めない?千葉豪雨で浮き彫りになったマンション「地下設備」の浸水リスクに書いています。
この地下設備は建物の共用部分なので、直す費用は管理組合が入っている保険と修繕積立金の話になります。個人が入る火災保険の水災補償が見るのは、自分の専有部分と家財です。「美浜区で地下が浸かったから、上の階の人にも水災補償が要る」という話ではありません。ここで言えるのは、1等地でも大きな水害は起きるということです。
他の政令市の中心部も引いてみました。大阪市中央区は1等地で付帯率42.1%、神戸市中央区は2等地で43.5%、福岡市中央区は3等地で42.3%。等地は1から3までばらけているのに、付帯率は4割台にそろっています。区分を見て決めた結果には見えません。
結局、自分は何をすればいいのか
順番はこうです。保険を買い替える話ではなく、いま入っているものを確かめる話から始めます。
- 保険証券の補償欄を見る。「水災」に丸が付いているか、金額が入っているか。ここが空欄なら、床上浸水と土砂崩れでは1円も出ません
- 機構のツールで自分の市区町村の等地を引く。30秒で終わります。5等地なら、その市区町村は相対的にリスクが高いと評価されています
- 自分の部屋の高さを確かめる。等地は市区町村の値です。1階か、地下に駐車場や設備があるか、前の道路より敷地が低くないか。ここは自分で見るしかありません
- それでも迷ったら、保険会社に等地を聞く。機構の等地と各社の取り扱いは違うことがあると、機構自身が書いています
水災補償は「床上浸水すれば必ず出る」ものでもありません。床上45cm以上、または損害割合30%以上といった支払基準があります。ここを知らずに外すか付けるかを決めると、判断の材料が足りません。基準は床上浸水でも火災保険が出ない?水災補償の45cm・30%基準にまとめました。
ここからは私の見方です。等地の話が「保険料が上がるか下がるか」で語られている限り、この区分はほとんど役に立たないと思っています。差は約1.2倍で、しかも保険料全体での数字です。一方、機構は同じ資料で「どの等地でも水害は発生しています」と書き、ハザードマップと一致しないことも先に断っています。等地は値段の話ではなく、自分の市区町村が全国の中でどのあたりに置かれているかを知るための1行として使うのがいちばん実があると考えています。
よくある質問
水災等地区分はどこで調べられますか
損害保険料率算出機構の「水災等地検索」で、都道府県と市区町村を選ぶだけで出ます。住所も郵便番号も要りません。住所単位で見たいときは、AIG損害保険が公開している「マイホームリスクマップ」(旧「水災等地確認マップ」)に住所か郵便番号を入れると地図上で表示されます。どちらも無料です。ただし、実際の契約に適用される等地は保険会社ごとに違うことがあるため、証券かマイページ、または保険会社への確認が必要です。
3等地とは、どれくらいのリスクですか
1等地(最も低い)から5等地(最も高い)までの5区分の真ん中です。ただし機構は「等地が低い市区町村は、他の市区町村に比べて相対的に水災リスクが低いという意味合いであり、どの等地でも水害は発生しています」と注意書きを付けています。絶対的な危険度ではなく、全国の市区町村の中での相対的な位置だと考えてください。
ハザードマップが白いのに等地が高いのはなぜですか
等地は外水氾濫(川があふれる水害)だけでなく、内水氾濫や土砂災害も含めて評価しているためです。機構は検索ページで「洪水ハザードマップ等の一般のリスク情報とは必ずしも一致しません」と明記しています。洪水ハザードマップに色が付いていなくても、排水が追いつかない場所や斜面の下にある市区町村は区分が上がることがあります。
1等地と5等地で保険料はどれくらい違いますか
機構の資料では約1.2倍です。これは水災だけでなく火災・風災・雪災・水災等を合わせた保険料全体での数字で、保険料が大幅に上昇しないよう激変緩和の措置をしたうえでの参考純率上の値です。細分化しなかった場合と比べると、1等地は平均で約6%低い水準、5等地は平均で約9%高い水準とされています。
出典
- 損害保険料率算出機構「水災等地検索」(5区分の説明、ハザードマップと一致しない旨、各社の取り扱いが異なる旨の注記。等地は2026年9月3日に1件ずつ検索して確認)
- 損害保険料率算出機構「住宅向け火災保険参考純率の水災料率を細分化します」別紙(PDF・2023年6月。約1.2倍と注記3点、1等地約6%低い・5等地約9%高い、外水氾濫が約6割、区分の材料と市区町村単位の理由、注意事項3行。2026年9月3日確認)
- 損害保険料率算出機構「火災保険 市区町村別水災補償付帯率」(2024年度。全国61.8%、東京都57.1%、各区の数値。2026年2月26日公表・2026年9月3日取得。会員保険会社が報告した住宅物件の火災保険が対象で、各種共済・少額短期保険は含みません)
- 損害保険料率算出機構「水災補償付帯率の推移」(2013年度76.9%→2024年度61.8%)
- AIG損害保険「マイホームリスクマップ」リニューアル実施(2025年8月20日実施。旧称「水災等地確認マップ」。住所・郵便番号から等地を確認できるツール。2026年9月3日確認)
- 読売新聞 千葉版(2026年8月26日。8月25日時点で千葉市中央区・美浜区の13棟・約700戸で停電・断水)


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