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機械式駐車場は停電したら手動で出せる? メーカーの取扱説明書が禁じている行動

「停電したら、駐車場のブレーカーを入れ直せばいい」。メーカーの取扱説明書は、これを名指しで止めています。株式会社IHI(アイ・エイチ・アイ)扶桑エンジニアリングの公式取扱説明書にあるのは、「停電時はパーキングの中に入らないでください。パーキング内制御盤のブレーカーをONにしないでください」の2文です。

では手動で出せるのか。当サイトが確認できた範囲では、利用者向けの手動出庫手順を書いたメーカー公式資料は1件も見つかりませんでした。代わりに書かれているのは「停電後にパーキングが動かない場合はメンテナンス会社に連絡してください」の1行です。そして台風の日は、その連絡がつきにくいことも、業界団体が先に書いています。

車が出せなくて困るのは、通勤の朝ではなく、避難する日です。機械式の立体駐車場は全国で約26万基が稼働しています(国土交通省)。台風が近づいてから「そろそろ車を上げておこう」と思ったとき、動かせる時間はもう終わっていることがあります。この記事は、その時間がいつ終わるのかを一次資料から整理します。

この記事でわかること

  •  メーカー公式取説の指示は「中に入らない」「ブレーカーをONにしない」「動かないならメンテナンス会社へ連絡」。利用者が手で出す手順は書かれていない
  •  立体駐車場工業会は「大雨が予報された場合の事前避難」と「強風時は運転操作をしない」を別々に書いている。台風が来てから取りに行くのは、この2つの間に落ちる
  •  一度でも浸水した装置は保守員の点検を受けるまで使えない。しかも台風時は保守員の到着に時間がかかると工業会が先に断っている
目次

停電したら、メーカーは「中に入るな・ブレーカーを入れるな」と書いている

機械式駐車装置のメーカーは、取扱説明書を自社サイトで公開しています。株式会社IHI扶桑エンジニアリングの「二・多段式パーキング 機械式駐車装置(認証基準対応)取扱説明書」から、停電に関する記述を引きます。

停電時はパーキングの中に入らないでください。パーキング内制御盤のブレーカーをONにしないでください。

停電後はタッチパネルの表示にしたがって慎重に操作してください。停電後にパーキングが動かない場合はメンテナンス会社に連絡してください。

この取説には「災害時の対処」という章があります。そこに利用者が手動で車を取り出す手順は載っていません。載っているのは、動かないときに誰へ連絡するかです。

取説は理由を書いていません。ただ、国土交通省が公表している「機械式立体駐車場の重大事故情報」(令和8年6月30日現在)には「装置の非常停止」という分類があり、そこに載っている事故は1件だけです。原文を引きます。

テナント管理者が電源を落としたため、カーリフト内に閉じ込められた運転者が自力で脱出しようとしたところ、開口部の隙間から転落し被害にあった。

平成23年3月11日の午後6時30分頃、京都市で起きた事故です。装置は自動車用エレベーターで、設置は昭和44年4月。電気が止まった装置の中から自力で出ようとした人が、重傷を負っています。国がこの分類で公表しているのは、今のところこの1件です。

同じ一覧には、令和8年1月9日の午前3時に東京都で起きた死亡事故も載っています(昇降・横行式、テナント用、平成27年3月設置)。機械式駐車場の事故は、昔の装置だけの話ではありません。

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この一覧でいう重大事故は、注記で「一般利用者等の死亡・重傷(全治30日以上)に至った事故等」と定義されています。物損や車の破損、軽いけがは入っていません。同じ注記に「推定情報や間接情報を含むものであり、事故の原因や法的責任を特定するものではない」とも書かれています。

読者

停電中は装置が止まっているんだから、中に入っても動かないですよね。

おかあさん

止まっているのは、電気が来ていない間だけです。復旧は予告なく来ます。取説が「入るな」と「ブレーカーをONにするな」を並べて書いているのは、その2つが同じ場面を指しているからだと読めます。

住まいのリスクに対する備え

土地の履歴やリスクを知ったら、次は「起きたときにどうするか」です。最低限そろえておくと動けるものを挙げます。

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停電時は懐中電灯より、部屋全体を照らせるランタンの方が使えます。電池でも充電でも点くものだと、どちらが尽きても止まりません。

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鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。

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「インターロック解除キー」は、業界団体の注意喚起には出てこない

停電と機械式駐車場で検索すると、「インターロック解除キーの保管場所と操作手順を、管理組合や住民で共有しておく」という案内が出てきます。出どころは保守会社のブログです。

一方、公益社団法人 立体駐車場工業会が出している台風時の注意喚起(「台風などの大雨、強風時に必ず守っていただきたいこと」)を最初から最後まで読みましたが、この文書に解除キーの記述はありません。書かれているのは、次の章で挙げる2つの行動と、浸水したあとの扱いだけです。

これは「解除キーというものが存在しない」という意味ではありません。装置の型式ごとに違う可能性があります。確認できたのは、業界団体は、台風のときにとるべき行動として解除キーを案内していない、という一点です。自分の駐車場に何があるのかは、管理会社か保守会社に聞くのが早い。

読者

検索の一番上に出てくる答えなら、正しいんじゃないんですか。

おかあさん

正しいかどうかではなく、どこが言っているかで扱いが変わります。管理組合の総会で「業界団体がそう言っている」と説明したら、根拠を出せません。装置の型式と保守会社の名前を先に押さえてください。

車を出せるのは停電してからではなく、予報が出た段階

立体駐車場工業会の注意喚起で、赤い枠に入っているのが次の2行です。「必ず守っていただきたいこと」という見出しが付いています。

強風時は、機械式駐車装置の運転操作をしないでください。入庫車両の落下や駐車装置の破損などの重大事故が発生する恐れがあります。

大雨(異常降雨)が予報された場合は、浸水被害が予想される入庫車両を事前に安全な場所へ避難させてください。

この2行は、別々の場面を指しています。車を動かすのは「大雨が予報された段階」。風が強くなったら、動かすこと自体をやめる。台風が来てから車を取りに行くのは、この2行の間に落ちる行動です。

検索で上位に出る保守会社や駐車場サービスの解説も、「ゲリラ豪雨や台風の予報が出た段階で移動を」までは書いています。ただ、その横に「強風時は運転操作をしないでください」を並べて置いているものは、当サイトが見た範囲ではありませんでした。移動を勧める話と、移動をやめる話は、同じ紙に書かれてはじめて期限になります。

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日本に上陸する台風がいちばん多いのは9月です(気象庁の平年値で9月1.0個、年間3.0個)。予報から強風までの猶予は、進路と速度で変わります。工業会の文面は時間数を示していないので、「何時間前まで」を数字で決めているのは、それぞれの管理組合ということになります。
地下駐車場へ下りていくスロープ。入口の上に「B1」の表示があり、奥は暗い
水はここから下りていきます。排水設備があっても、設計を超える雨は受けきれないと業界団体が明記しています(写真: Pexels)

地下ピットの排水は、設計を超える雨には勝てない

同じ注意喚起の黄色い枠には、地下ピットの浸水について書かれています。

排水設備を設置してあるところでも、異常降雨などで排水能力を上回る雨が地下に流れ込み、入庫車両や駐車装置が被災する恐れがあります。

また、駐車装置の設置場所は浸水被害が予想される地域なのか、事前にハザードマップなどで確認しておくことも重要です。

「うちの駐車場には排水ポンプがあるから平気」という理解を、業界団体自身が先に否定しています。排水設備は設計上の雨量までしか受けられません。そして地下ピットは、敷地でいちばん低い場所です。

マンションの地下が浸かると、車だけでは終わりません。2026年8月の千葉豪雨では、地下の受変電設備と給水ポンプが水没して、部屋が濡れていない階まで停電と断水が続きました。その仕組みは部屋は無事でも住めない?千葉豪雨で浮き彫りになったマンション「地下設備」の浸水リスクに書いています。

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一度浸水した装置は、点検を受けるまで使えない

浸水したあとの扱いについても、同じ枠に書かれています。ここが、車を出しそびれた人にいちばん効きます。

一度でも浸水した駐車装置はそのまま使用せずに、必ず保守員による点検を受けてください。

なお、台風などの状況により、保守点検事業者への連絡が取り難くなることや、交通渋滞などで保守員の到着に時間を要する場合もありますのでご理解ください。

つまり、雨が上がってから「動かしてみて確かめる」ことができません。点検が済むまで、その駐車場に入っている車は全部そのままです。機械式駐車装置は、下段の車を出すのに上段のパレットを動かす形が多く、1台の都合で全員が止まります

そして工業会は、保守員がすぐには来られないことを、あらかじめ断っています。台風の日に「連絡すれば来てもらえる」を前提に段取りを組むと、外れます。

停電時に出せないことは、業界も課題として書いている

「停電したら出せない」は、住民の体感だけの話ではありません。新電元工業株式会社が2024年9月3日に出したプレスリリースに、こう書かれています。

都市部で広く利用されている機械式立体駐車場が、停電時に車両の出庫が困難になるという課題に対処するために行われました。

電機メーカーが、電気自動車から駐車場へ電力を供給して出庫できるようにする実証を行った、という発表です。その実証で供給しているのは「三相電力」だと書かれています。家庭用のポータブル電源を持ち込めば動く、という規模の話ではないということです。

ここからは私の見方です。機械式駐車場の停電の話が「どうやって出すか」から始まる限り、答えは出ないと思っています。メーカーの取説にも業界団体の注意喚起にも、利用者が出す手順は書かれていません。書かれているのは、出す時間が終わる前に出しておくことと、終わったあとは触らないことの2つだけです。問いを「いつまでに出すか」に変えると、はじめて自分で決められるものになります。

台風の前に、管理組合と決めておく5つ

これは住民の心がけの話ではありません。国土交通省の「機械式駐車場の安全対策に関するガイドライン」は、管理者の取組として「事故等に備えて対処方法を定めておくこと」を挙げています。同じ手引きは、ここでいう管理者を「一義的には機械式駐車装置の所有者を指し、一般的には管理組合が該当します」と説明しています。つまり、先に決めておくのは管理組合の仕事だと国が書いています。

ここまでの一次資料から、決めておけることを挙げます。どれも台風が来てからでは間に合いません。

  • いつ出すか。「大雨(異常降雨)が予報された場合」を、自分たちの言葉に置き換えます。台風の進路予報が出た時点か、警報が出た時点か。工業会は時間数を示していないので、ここは管理組合が決める部分です
  • どこへ出すか。ハザードマップで色の付いていない平面駐車場を、あらかじめ2か所は見つけておきます。台風の直前は近隣のコインパーキングも埋まります
  • 誰が号令をかけるか。理事長か、防災担当か。全員が各自の判断で動くと、強風になってから出庫操作をする人が残ります
  • 保守会社の連絡先を掲示しておく。管理会社経由でしかつながらない場合、休日と夜間の経路も確認しておきます
  • 出せなかったときの段取り。一度浸水したら点検まで動かせません。点検までの間、住民の車をどこに置くかを先に話しておきます

機械式駐車場そのものを平面化する話は、修繕積立金と決議の話になります。積立金の値上げに管理組合で当たっている場合は、「決まってしまうと拒否はできないのでしょうか」——修繕積立金の値上げ、答えは規約の1行で変わりますもあわせてどうぞ。

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千葉市13棟・約700戸で起きたこと

よくある質問

機械式駐車場は停電すると手動で出せますか

当サイトが確認できた範囲では、利用者向けの手動出庫手順を公開しているメーカー公式資料はありませんでした。確認できた1社(IHI扶桑エンジニアリング)の公式取扱説明書は、停電時に「パーキングの中に入らない」「制御盤のブレーカーをONにしない」ことを求め、動かない場合はメンテナンス会社に連絡するよう案内しています。型式によって出せる・出せないを公式資料で言い切ることは、今回はできませんでした。自分の装置については、管理会社か保守会社に確認してください。

台風が接近しています。今から車を出しに行っていいですか

立体駐車場工業会は「強風時は、機械式駐車装置の運転操作をしないでください」と書いています。車を出すのは「大雨(異常降雨)が予報された場合」に事前に行う行動として案内されていて、風が強くなってからの操作は止められています。すでに風が強い状況なら、操作をしないという判断になります。

浸水した機械式駐車場は、水が引いたら使えますか

使えません。立体駐車場工業会は「一度でも浸水した駐車装置はそのまま使用せずに、必ず保守員による点検を受けてください」と求めています。あわせて、台風のときは保守点検事業者への連絡が取りにくく、保守員の到着にも時間がかかる場合があることを、同じ文書で断っています。

出典

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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