🗨️「タワマンに宅配の車を停める場所がないって話、法律で解決したんじゃないの?」
解決していません。2026年4月に施行されたのは「市区町村が条例で義務づけてよい」という改正で、義務そのものは各市区町村の条例が決めます。しかも対象は新築で、いま建っているマンションの駐車場は1台も増えません。
[不動産] この記事の要点
2026年9月10日 発表
- タワーマンション・大規模マンションに住んでいる人
- これから新築マンションを買う人
- 管理組合の理事をしている人
- マンションへ荷物を届ける配送事業者
2026年4月に変わったのは「義務」ではなく「義務にできる」
国土交通省は駐車場法施行令を改正し、共同住宅を「特定用途」に追加しました。公布は2025年3月7日、施行は2026年4月1日です。これで、共同住宅にも荷さばき駐車施設の附置義務をかけられる用途地域が広がりました。
ここで止まると読み違えます。附置義務そのものを決めているのは、国ではなく市区町村の条例です。国が同時に直したのは「標準駐車場条例」というひな形で、資料には「具体的な要件等は地方公共団体の条例により設定」と書かれています。市区町村が自分の条例を直していなければ、2026年4月を過ぎても新築マンションに荷さばき区画は付きません。
じゃあ、うちの市はもう直したのかな。
そこは市区町村ごとに違います。都市計画課か建築指導課のページで「駐車場附置義務条例」を探すのが早いです。
国が示した標準は「100戸あたり1台」
ひな形として示された基準はこうです。50戸以上の共同住宅に、100戸あたり1台(端数は切り上げ)。ただし延床面積2,000㎡以上(商業地域の場合)かつ敷地1,000㎡以上、という条件が前に付きます。
| 戸数 | 必要な荷さばき駐車施設 |
|---|---|
| 50〜100戸 | 1台 |
| 101〜200戸 | 2台 |
| 801〜1,200戸 | 7台 |
801戸から1,200戸で7台しかないのは、計算を単純に伸ばしていないからです。400戸以上で0.5倍、800戸以上で0.25倍に逓減する仕組みが入っています。大規模な建物ほど1戸あたりの台数は減る、という設計です。国交省の資料は、大規模物件は個別性が高いので「個別協議による整備が望ましい」としています。
区画の大きさは2トン車の規格(7.7×3×3.2メートル)が標準です。複数台を整備する場合、4割以下なら普通車の区画(2.5×6メートル)でもよいことになっています。配送事業者へのヒアリングで、5社中2社が軽貨物車で配送していたためです。機械式の駐車装置は使えません。
いま建っているマンションは、1台も増えない
ここが、この改正でいちばん誤解されやすい点です。既存の共同住宅に、荷さばき駐車施設を作る義務はありません。
国交省の資料が既存建物について書いているのは、「乗用車用に余剰がある場合に振替による荷さばき駐車施設確保等の取り組みを推進」まで。余っていれば振り替えてもよい、という推奨であって、義務ではありません。
私は、ここが記事の芯だと考えています。ニュースの見出しは「タワマンに荷さばき駐車場の設置を義務化」と読める形で流れますが、いま宅配の車が路上に停まっているマンションは、ほぼ全部が既存の建物です。困っている場所と、制度が効く場所がずれています。効き始めるのは、これから建つ建物が街に増えたあとです。
もう一つ、技術的助言に書かれていて役に立つのが区画の使い方です。荷さばき区画を居住者の車の駐車に使うのは目的に含まれない、としたうえで、こうあります。
荷さばきに支障のないと管理者が認めた場合に、引っ越しや住民の送迎などの際に一時的に使うことは差し支えない。
国土交通省 都市局「標準駐車場条例の改正の概要(R7.3)」
また、かご付自転車や二輪車で配送している場合もあるため、荷さばき目的であれば柔軟に使えることが望ましい、とも書かれています。管理組合で細則を作るときの根拠になります。
宅配便は13億個から50億個になった
そもそも、なぜ今なのか。国交省の資料が背景に挙げているのが宅配便の取扱個数です。平成6年に約13億個だったものが、令和5年には約50億個になりました。約3.8倍です。
そこへ、共同住宅の高層化とセキュリティの強化が重なりました。オートロックを2回、3回と通る建物では、1件あたりの滞在時間が伸びます。資料は「戸数に比例して配達時間が長くなる傾向」があると書いています。停める場所がないので路上に置く、路上に置くから長時間の駐車になる、という順番です。
実態調査で分かったもう一つの数字が、集約配送で効率よく運用している物件では約240〜300戸につき1台で回っていた、というものです。100戸あたり1台という標準は、そこまで効率化されていない前提で置かれた台数だと読めます。
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買う前に聞けること、住んでいる人が数えられること
新築を検討しているなら、荷さばき駐車施設が何台あるかは販売会社に聞けます。附置義務でついた台数は、乗用車の附置義務台数の内数に含めてよいことになっているので、「駐車場○台」の中に混ざっている可能性があります。総台数ではなく、荷さばき用が何台かを聞いてください。
いま住んでいるマンションの理事なら、増やす前に数えるほうが早いです。乗用車用や来客用の区画に空きがあるなら、そこを荷さばき用に振り替える道が国から示されています。区画を作り直す必要はなく、案内表示で用途を示して管理する、という運用です。
なお、条例で義務づける下限を「20〜50戸」に置いている自治体は改正前からありました。分譲マンションの平均を1戸70㎡で計算すると、約1,400〜3,500㎡にあたります。自分の市区町村がどちらなのかは、条例の本文を見ないと分かりません。
生活・仕事にどう効くか
- 新築を買うとき:50戸以上・延床2,000㎡以上の新築なら、100戸あたり1台の荷さばき区画が付く可能性がある。ただし市区町村が条例を直していなければ付かない。
- いま住んでいるマンション:既存の建物は対象外。国が示したのは「乗用車用に余りがあるなら振り替える」という取り組みの推進までで、台数を増やす義務はない。
- 引っ越しのとき:荷さばき区画は居住者の車を停める場所ではないが、管理者が支障なしと認めれば引っ越しや送迎に一時的に使ってよい、と国の技術的助言に書かれている。
結局どうすればよいか
- 新築を検討中なら、荷さばき駐車施設が何台あるかを重要事項説明の前に販売会社へ聞く
- 自分の市区町村が駐車場附置義務条例を直したかを、市の都市計画課のページで確認する
- 既存マンションの理事なら、来客用・乗用車用の区画に余りがないかを先に数える
- 管理規約に「荷さばき目的なら一時利用できる」旨の細則があるかを確認する
公式出典
- 国土交通省 都市局「標準駐車場条例の改正の概要(R7.3)」(2025-03発表)
更新履歴
- 2026年9月10日 初版を公開
※本記事は2026年9月10日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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