国が道路冠水注意箇所として名前を出しているのは、奈良県内に50か所。そのうち奈良市が9か所で、県内最多です。
この9か所の住所を標高で引いて、少し驚きました。いちばん低いところで56.3メートル、いちばん高いところで120.4メートル。9か所とも標高56メートル以上です。
同じ手順で調べた岡山市の最低は0.4メートル、高松市1.4メートル、青森市1.6メートルでした。奈良市は、低い土地がひとつも入っていません。それでも9か所あります。
この記事でわかること
- ✓ 国の道路冠水注意箇所は奈良県50か所、うち奈良市は9か所で県内最多
- ✓ 9か所の参考標高は56.3メートルから120.4メートル。ぜんぶ高い
- ✓ 県内50か所のうち18か所に「冠水実績あり」の記載。奈良市の9か所には1件も無い
箇所数は国土交通省 近畿地方整備局「道路冠水注意箇所リスト【奈良県】」を1行ずつ数えたものです。標高は住所を国土地理院の標高データで引いた参考値で、冠水地点そのものの標高ではありません。
奈良県50か所のうち、奈良市が9か所

| 市町村 | 箇所数 |
|---|---|
| 奈良市 | 9 |
| 橿原市 | 7 |
| 斑鳩町 | 6 |
| 大和郡山市・大和高田市 | 各4 |
| 王寺町・吉野町 | 各3 |
| 宇陀市・安堵町・葛城市・香芝市・田原本町 | 各2 |
| 桜井市・天理市・五條市・明日香村 | 各1 |
16市町村で50か所。種別は市道18・町道13・県道11・国道7・村道1で、町道が13もあるのは奈良県の特徴です。斑鳩町・安堵町・王寺町・田原本町といった小さな町が並びます。
この一覧は市町村名の欄に住所が混ざっている行が6つあります(「大和高田市北本町~日之出西本町」「橿原市醍醐町」など)。そのまま数えると22種類に見えますが、同じ自治体をまとめると16市町村です。
冠水した道で車が動けなくなったときに要るもの
JAFのテストでは、セダンが走れなくなる水深と、ドアが開かなくなる水深がほぼ同じでした。つまり止まった時点で、窓を割る以外に外へ出る方法がなくなります。車に置いておくものから挙げます。
水に浸かった車は、外からの水圧でドアが開かなくなります。割れるのは側面のガラスで、フロントガラスは合わせガラスなので割れません。グローブボックスの奥ではなく、座ったまま手が届く場所に置いてください。
119番も家族への連絡も、スマホが生きていることが前提です。水に落とすと沈んで探しようがなくなるので、浮く型かどうかがそのまま連絡手段の有無になります。入れたまま操作できます。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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「冠水実績あり」が、奈良市には1件も無い

この一覧には、1か所ずつ説明表のPDFが付いています。近畿の様式には「備考」の欄があって、設備と冠水実績が書かれます。50件ぶんを開いて読みました。
備考が埋まっているのは46件。そのうち18件に「冠水実績あり」と書かれていました。斑鳩町6・大和高田市3・吉野町3・宇陀市2・田原本町1・天理市1・五條市1・明日香村1です。
奈良市の9か所には、1件もありません。
奈良市の9か所に書かれているのは設備だけでした。県道2か所と国道1か所(奈良土木事務所が管理)は「排水ポンプ・警報/情報板・水位センサー」のフルセット。市道6か所(奈良市土木管理課)は「排水ポンプ」だけが4か所で、2か所は空欄です。
「冠水実績あり」が書かれていないことと、冠水したことが無いことは違います。この欄は書かれていることしか分からない欄です。

県内には「毎年、冠水している」と書かれた道がある
備考を読んでいて、手が止まった行があります。吉野町の3か所です。
・台風や大雨によるダム放流量の増大により、毎年、冠水している。
町道中荘37号線(大字菜摘)、町道国栖1号線(大字南大野)、町道吉野35号線(大字左曽)の3か所に、同じ文が入っています。「毎年」と国の資料に書かれている箇所を見たのは、この県が初めてでした。
ほかにも具体的な書き方が並びます。五條市の上野公園西側は「以前から冠水実績あり(H.2・H.6・H.21・H.23)」と年が4つ。斑鳩町の阿波2丁目は、冠水実績に続けてこう書かれています。
パトロールにより冠水の恐れがあると判断した場合は、警察と協議のうえ、町で通行止めを行っている。
読者
奈良市の書き方があっさりしているのは、なぜですか
書いた人が違うからだと思います。この備考は道路の管理者が埋める欄で、奈良市の9か所は奈良土木事務所と奈良市土木管理課の担当。吉野町や斑鳩町は町の担当者が書いています。同じ様式でも、どこまで書くかは管理者ごとに違う。数の比較には使えますが、「書いてない=無い」とは読めません
標高56.3メートルから120.4メートル

| 場所 | 参考標高 |
|---|---|
| 八条一丁目・八条四丁目 | 56.3m |
| 二条大路南一丁目・法華寺町 | 61.2m |
| 佐保台一丁目・佐保台西町 | 64.0m |
| 北永井町 | 69.7m |
| 西大寺国見町一丁目 | 70.7m |
| 菅原町 | 78.9m |
| 登大路町(登大路地下歩道) | 93.9m |
| 学園南一丁目・学園南三丁目 | 110.1m |
| 宝来町・宝来三丁目 | 120.4m |
奈良盆地はもともと海抜60メートル前後の土地です。海に面していないので、高潮も津波もありません。
それでも9か所あるということは、冠水するかどうかを決めているのは「海からの高さ」ではなく「まわりとの高さの差」だということです。線路や道路の下をくぐるために掘り下げた場所は、標高120メートルだろうと水がたまります。
標高は住所検索で得た代表点の値です。同じ町名のなかでも場所によって上下します。地下道そのものの標高ではありません。一覧の地先名が「佐保台一丁目・佐保台西町」のように2つの町名を並べているのは、その区間という意味です。ここでは前のほうの町名で引いています。

この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
奈良市の内水の地図は、2種類ある
奈良市のページには、内水(雨水があふれる浸水)の地図が2つ並んでいます。しかも法律上の扱いが違います。
1つめは「内水ハザードマップ(西部一部地域)」。市の説明にこうあります。
水防法第15条第3項の規定に基づき作成した内水ハザードマップにおける浸水想定区域の情報を使用しています
2つめは「内水ハザードマップ(既往最大降雨に基づく)」。こちらはこう書かれています。
この内水ハザードマップにおける内水浸水想定区域は平成12年(2000年)5月13日に発生した最大降雨(時間雨量79mm)をもとにシミュレーションした浸水深を示しています
水防法に基づくものではありません。合流式下水道処理区域が対象です
同じ市の同じページに、法律に基づく地図と、そうでない地図が並んでいます。ここは不動産の話につながるところで、和歌山市のように水防法第15条第3項の地図があると、家を買うときに宅地建物取引業者が重要事項説明で触れることになります。大分市は「対象項目ではありません」と明記しています。
奈良市は今のところ、法律に基づくほうが西部の一部地域だけ。市は「今後は、雨水台帳整備区域を基に対象範囲を広げていく予定です」と書いています。
なお西部一部地域については、浸水の深さを3Dで見られる「奈良市ハザードマップビューア」も公開されています。
この住所は浸水しやすい場所ですか
奈良市の場合、内水の地図が2種類あり、片方は西部の一部だけ。洪水は別の地図です。自分の住所について1枚ずつ確かめるのは、けっこうな手間です。
住所を入れるだけで、洪水・内水・土砂・地震の指定をまとめて確認できるページを用意しています。
もし車で水に入ってしまったら

冠水しやすい場所に共通しているのは「まわりより低い」ことです。標高が高くても関係ありません。たまった水は上から見ると平らなので、入るまで深さが分かりません。
JAF(ジェイエーエフ)のテストでは、セダンが走れなくなる水深と、ドアが開かなくなる水深がほとんど同じでした。止まった時点で、窓を割る以外に外へ出る方法がなくなります。割れるのは横の窓です。フロントガラスは合わせガラスなので、脱出用ハンマーでも割れません。
水深がひざ下でも、流れがあれば大人でも歩けなくなります。50センチより深いときは、無理に移動せず、高いところで助けを待つほうが安全です。
ほかの市はどうなっているか
同じ手順で、ほかの市も1つずつ調べています。リストの書き方が県によって違うので、出てくる答えも変わります。
- 松山市 冠水 どこが危ないの? 4か所だけ、そのうち3つはJRか空港の下です
- 京都市 冠水 どこが危ないの? 44か所のうち34か所は、線路の下をくぐる道です
- 和歌山市 冠水 どこが危ないの? 5か所ぜんぶに排水ポンプ、うち4か所に冠水実績があります
- 大分市 冠水 どこが危ないの? 国のリストは8か所、市のリストは16か所でちょうど倍です
この記事のまとめ
奈良市で道路が冠水しやすい場所として国が名前を出しているのは9か所。県内最多です。9か所とも標高56メートル以上で、いちばん高い宝来町は120.4メートルでした。海に面していない盆地でも、くぐる道は水がたまります。
県内50か所のうち18か所に「冠水実績あり」と書かれていますが、奈良市の9か所には1件もありません。書かれているのは設備だけです。「実績が書いてない=浸かったことがない」ではないので、まずは市の内水ハザードマップで自分の住所の色を見てください。
公式出典
- 国土交通省 近畿地方整備局「道路冠水注意箇所リスト【奈良県】」(道路防災情報Webマップ)
- 同 個別箇所説明表 奈良県-02-001〜050
- 奈良市「内水ハザードマップ(奈良市ハザードマップビューアを公開しました!)」
- 和歌山市「内水ハザードマップ」・大分市「内水浸水想定区域図」(法律上の扱いの比較として)
- 国土地理院 住所検索API・標高API
- JAF ユーザーテスト「水深何cmまでドアは開くのか」「何を使えば窓が割れるのか」
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