🗨️「過失ゼロの被害者なのに、修理代より少ない金額しか出ないことがあるんですか」
あります。相手に請求できる金額は、原則としてその車の「時価額」が上限になるからです。修理代が時価額を超えると、超えた分は出ません。これは保険会社の都合ではなく、1974年(昭和49年)の最高裁判決から続く考え方です。駐車中に突っ込まれた、という過失10対0の事故でも同じです。
[暮らし] この記事の要点
2026年9月15日 発表
- 駐車中・信号待ちで追突された人
- 10年以上乗っている車で事故にあった人
- 車両保険に入るかどうか迷っている人
「直す代金」ではなく「その車の値段」が基準
ここでつまずく人が多いのですが、相手に請求できるのは「壊されたことで減った財産の額」であって、「元どおりにするのにかかる代金」ではありません。
時価70万円の車を直すのに80万円かかるなら、失われた財産は70万円です。80万円かけて直すのは持ち主の自由ですが、差額の10万円までは相手に負担させられない——というのが法律の考え方です。
| 修理費 | 時価額 | 相手に請求できる額 | 呼び方 |
|---|---|---|---|
| 50万円 | 70万円 | 50万円(修理費) | 分損 |
| 80万円 | 70万円 | 70万円+買替諸費用 | 経済的全損 |
| 直せない | 70万円 | 70万円-売却代金(+諸費用) | 物理的全損 |
※金額は説明のための例です
渋滞と通行止めで動けなくなったときに要るもの
迂回路を調べるにも、その場で待つにも、要るのはトイレと電源の2つです。車に積みっぱなしにできる小さいものだけ挙げます。
渋滞と通行止めで動けなくなったとき、いちばん先に困るのがトイレです。高速道路上ではパーキングまで降りられないので、車に積んでおくものの中では優先度が高い1つです。
渋滞中はナビと地図と渋滞情報でスマホを使い続けるので、電池は思ったより早く減ります。迂回路を調べる段になって充電が無いと、動けるのに動けません。
災害時に多いつまずきが「ケーブルが見つからない・端子が合わない」です。本体にケーブルが付いている型だとそこで止まりません。20000mAhでスマホ数回分。
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時価額はどうやって決まるのか
ここが争いになる本丸です。最高裁は1974年(昭和49年)4月15日の判決で、算定の方法をこう示しました。
これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得しうるに要する価額によつて定めるべき(最高裁第二小法廷 昭和49年4月15日判決)
そして同じ判決は、新車価格から年数に応じて減価償却する方法は、当事者双方に異議がないなどの特段の事情がないかぎり許されないとしています。
つまり「10年落ちだから新車価格の1割」といった機械的な計算は、本来の基準ではありません。基準はいま中古車市場で同じ条件の車を買い直すといくらかです。ここを押さえておくと、提示額に疑問があるときに何を出してもらえばいいかが決まります。中古車情報サイトで、同じ車種・年式・型・走行距離の車がいくらで売られているかを並べて示す、という形です。
時価額のほかに請求できるもの
全損になったとき、上限は時価額だけではありません。買い替えに実際にかかる費用は別に請求できます。
- 買替諸費用(登録費用・車庫証明の費用・納車費用・自動車取得にかかる税など)
- レッカー代、事故車の引き取り・処分の費用
- 事故車が売れたときは、その売却代金は差し引かれる
同じ判決は、車の本質的な構造部分に重大な損傷が生じ、買い替えることが社会通念上相当と認められる場合には、事故当時の価格と売却代金の差額を損害として請求できるとしています。
防げるとしたら、事故の前しかない
この差額は、起きてしまってからではほぼ埋められません。埋める手立ては事故の前にしかなく、それが車両保険です。
ただし車両保険も、払われるのは契約した車両保険金額の範囲で、その金額もやはり時価をもとに決まります。古い車ほど設定できる額が下がるので、「入っていれば全部戻る」わけではありません。年式が上がってきた車は、車両保険の保険料と、設定できる保険金額を毎年の更新時に見比べるのが現実的なところです。
この記事は判例と法律の一般的な考え方をまとめたものです。個別の事故でいくら請求できるかは事情によって変わるため、金額で折り合わないときは弁護士や各地の交通事故相談窓口にご相談ください
生活・仕事にどう効くか
- お金:修理代が時価額を上回ると「経済的全損」として扱われ、賠償は時価額(+買替諸費用)が上限になる。
- 住まい:敷地内の駐車場での事故でも扱いは変わらない。門柱やカーポートが壊れた分は、車とは別に建物の損害として請求する。
結局どうすればよいか
- 相手の保険会社が出してきた時価額の根拠(どの中古車市場の、どの条件の価格か)を書面でもらう
- 同じ車種・年式・型・走行距離の中古車が、いまいくらで売られているかを自分でも調べる
- レッカー代・登録費用・車庫証明など「買替諸費用」は時価額とは別に請求できる
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公式出典
- 最高裁判所第二小法廷 昭和49年4月15日判決(民集28巻3号385頁)(1974年4月15日発表)
- e-Gov法令検索 民法(明治29年法律第89号)第709条(2026年9月15日発表)
更新履歴
- 2026年9月15日 初版を公開。
※本記事は2026年9月15日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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