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上野と下野、なぜ「こうずけ」「しもつけ」と読む?

「なぜ旧国名の『上野』は『うえの』ではなく『こうずけ』と読むのですか」。Yahoo!知恵袋に2012年から残っている、実際の質問です。

答えを先に言うと、いま見ている「上野」「下野」の二文字は、もとの名前から1文字削られたあとの形だからです。削られたのは「毛」の字。表記は短くなったのに、読みだけは削られる前のまま残りました。だから字面と音が合いません。

この記事では、読み方の理由、上野=群馬・下野=栃木を取り違えない覚え方、そして「上」と「下」の地価がいまは逆転しているという話まで、順番に見ていきます。

先に結論|上野=群馬・下野=栃木

旧国名(読み方) 今の県 いまも現役の名前
上野(こうずけ) 群馬県のほぼ全域 上毛新聞・「上州」
下野(しもつけ) 栃木県のほぼ全域 下野市・下野新聞・「野州」

※「上・下」は都に近い順につけた呼び名です。東京の上野(うえの)は武蔵国の地名で、上野国とは無関係です。

目次

なぜ「上野」と書いて「こうずけ」と読むのか

群馬と栃木のあたりは、もともと「毛野(けの)」と呼ばれるひとつのまとまりでした。これが都に近い南西側の「上毛野」と、遠い北東側の「下毛野」に分かれます。つまり最初は「上毛野」「下毛野」という三文字の名前でした

のちに国の名前を漢字二字でそろえることになり、真ん中の「毛」の字が表記から外されます。上毛野は「上野」、下毛野は「下野」。ところが読みのほうは「かみつけ」「しもつけ」と、毛野の「け」を含んだまま変わりませんでした。

字から「毛」を消したのに、読みから「け」は消えなかった。これが「上野=こうずけ」「下野=しもつけ」という、字面と音のずれの正体です。消された字の読みだけが、県の名前に変わった明治のあとも、音の中に残り続けています。

音が変わったのは「上」だけ

下野は「しもつけ」と、分かれたときの音がほぼそのまま残りました。難読の度合いが強いのは上野のほうです。「かみつけ」が言いやすい形に崩れて(音便)、「こうずけ」になりました。

検索の候補には「こうづけ」と打つ人も出てきますが、コトバンクなど現行の辞書・事典の見出しは「こうずけ」です。書き取りや検索で迷ったら「こうずけ」を選べば通じます。

なぜ「越前・越後」のような「前・後」ではないのか

もうひとつ、よく出る疑問があります。ペアの国名は越前・越後、備前・備後のように「前・後」で分けるのが多数派なのに、なぜここだけ「上・下」なのか。栃木県立図書館には、実際にこんな質問が寄せられています。

「栃木県の旧国名『下野』について、上下で区別されているのはなぜか。上野・下野、上総・下総以外は、越前・越後のように全て前後で区別されているが。」
栃木県立図書館に寄せられた質問(レファレンス協同データベースに公開)

図書館の回答は、上下で分けたのは東の国(上野・下野、上総・下総)、前後で分けたのは西の国という傾向の整理まで。そのうえで、『毛野国の研究』『下野国誌』といった郷土資料をあたっても、「東の国だけ上下で分けた理由」を明確に示す文献は確認できなかった、というのが結論でした。

プロの司書が調べてもここまでなので、ネット上で見かける「東国は格が違ったから」といった説明は、裏の取れない話だと思っておいたほうが安全です。分かっているのは「上は都に近い側、下は遠い側」という順番のルールだけ。上下は格付けではなく、道のりの順番です。

旧国名と地名をもっと調べるなら

旧国名は今の県境と一致しないので、文章だけだと境目が頭に入りません。地図で一度見ておくと、次に別の国名が出てきたときに迷いません。

旧国名でみる日本地図帳

旧国名でみる日本地図帳

摂津・河内・和泉のように、旧国名は今の県境と一致しません。全国を旧国名のまま重ねた地図帳なので、「どこからどこまでか」を一度に確かめられます。

図説 日本古地図コレクション(ふくろうの本)

図説 日本古地図コレクション(ふくろうの本)

昔の地図そのものを見ると、地名が付いた順番や、海だった場所が分かります。地名の由来を調べるときの答え合わせに使えます。

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上野=群馬・下野=栃木を取り違えない覚え方

いちばん確実な手がかりは、「下野」が栃木県でいまも現役の固有名詞であることです。

栃木県には下野市(しもつけし)という市があります。2006年1月に南河内町・石橋町・国分寺町が合併してできた、旧国名がそのまま住所になっている市です。県紙も下野新聞(しもつけしんぶん・1878年創刊)。「下野」の二文字を見たら栃木、と覚えれば半分は解決します。

残り半分の群馬側は、「上野」の形より「毛」の側で残っています。県紙は上毛新聞で、上州名物・上州名月といった「上州」も群馬の別名です。両県をつなぐJR両毛線の「両毛」は、上毛野・下毛野の「両方の毛野」という意味です。

地図で覚えるなら、都に近い南西側が「上」。京都から東へ向かって、先に着くほうが上野=群馬です。

時代劇の「吉良上野介(きらこうずけのすけ)」も群馬側の官名です。上野国はトップの「守」に必ず親王が就く決まりの国(親王任国)で、親王は現地に赴かないため、実務の最高位は次官の「介」でした。「上野守」ではなく「上野介」が通り名なのはこのためで、上野介と聞いたら群馬、で覚えられます。

東京の上野(うえの)は武蔵国の地名

東京の上野は武蔵国豊島郡の地名で、上野国とは場所も由来も無関係です。読みが違えば別物、と切り分けてください。関東8国ぜんぶの対応と、上総・下総のペアが地図と逆に見える理由は、関東の旧国名8つは今のどの県?武蔵・相模・上総・下総の対応表と読み方がわかる一覧にまとめています。

「上」の前橋と「下」の宇都宮、いまの坪単価はどちらが上か

名前の上下は都からの距離で決まった順番でした。では、いまの土地の値段はどうか。当サイトで国土交通省の公開データを集計している数字から、県庁所在地同士で比べます。

都市(旧国名) 住宅地の平均坪単価(地価公示2026) 実際の取引価格の中央値
前橋市(上野・群馬県) 約18万円/坪(72地点) 約13.9万円/坪(268件)
宇都宮市(下野・栃木県) 約24.2万円/坪(115地点) 約18.8万円/坪(434件)

「下」だった宇都宮のほうが、公示地価でも実際の取引でも3割以上高い。この10年の動きでも、前橋は約18.1万円/坪から約18万円/坪とほぼ横ばい、宇都宮は約22.3万円/坪から約24.2万円/坪へ8.9%上がっていて、差はむしろ開いています。群馬側で最も高い高崎市(住宅地平均・約20.8万円/坪)を持ってきても、宇都宮には届きません。

もちろん市の中は一様ではありません。同じ前橋でも町によって坪単価が4.4倍ちがいますし、高崎は町の差が9.2倍あります。平均の比較はあくまで入口です。

私は、旧国名の「上・下」を今の序列のように読む必要はない、と考えています。あれは都からの道のりの順番であって、土地の格付けではありません。名前が「下」の宇都宮の地価が「上」の前橋を上回っているいまの北関東は、その分かりやすい実例です。

よくある質問

「こうずけ」と「こうづけ」はどちらが正しいですか?

コトバンクなど現行の辞書・事典の見出しは「こうずけ」です。もとの読み「かみつけ」が変化した音なので、現代の表記では「こうずけ」と書くのが標準です。

下野国は今のどの県ですか?読み方は?

栃木県のほぼ全域で、読みは「しもつけ」です。2006年にできた下野市(しもつけし)や、県紙の下野新聞(しもつけしんぶん)に、同じ読みがそのまま残っています。

上野と下野は、どちらが都に近かったのですか?

上野(群馬県)です。ペアになった国名は都に近いほうを「上」とする決まりで、上下は土地の格ではなく道のりの順番です。もとはひとつの「毛野(けの)」で、南西の上毛野が群馬、北東の下毛野が栃木になりました。

まとめ

  1. 上野(こうずけ)=群馬県、下野(しもつけ)=栃木県。もとはひとつの「毛野(けの)」が都に近い順で上下に分かれた
  1. 国名の二字化で「毛」の字が表記から消え、読みの「け」だけが残った。音が崩れたのは上野だけで、「かみつけ」が「こうずけ」になった
  1. 「上・下」は都に近い順であって格付けではない。実際、いまの坪単価は「下」の宇都宮(約24.2万円/坪)が「上」の前橋(約18万円/坪)より3割以上高い

覚え方は「下野市と下野新聞があるから、下野は栃木」。これだけ持ち帰ってもらえれば、もう取り違えません。

👉 関東の旧国名8つは今のどの県?武蔵・相模・上総・下総の対応表と読み方がわかる一覧

出典:コトバンク「上野国」、Wikipedia「上野国」「下野国」「下野市」「下野新聞」(毛野の分割・国名の二字化・読みの変化・下野市の成立・下野新聞の創刊年)/レファレンス協同データベース 管理番号1000115193(栃木県立図書館の回答)/Yahoo!知恵袋(2012年5月投稿の質問)/地価は国土交通省「地価公示2026」および「不動産情報ライブラリ」の取引データ(2024年4Q〜2025年4Q)を当サイトで集計した数値です。

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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