土砂は、谷を乗り越えて流れました
沢から離れていれば安全、とも言い切れません。東京都建設局は同じページで、大金沢について「既設砂防施設が効果を発揮し大量の土砂や流木を捕捉したものの、流木を含んだ土石流が流域界を乗り越えて流下し、人家や集落に甚大な被害をもたらしました」と書いています。
流域界というのは、雨水がどちらの谷へ流れるかを分ける境目です。水は普通そこを越えません。越えたのは、流木で行き先がふさがれたからです。都はこのあと、短期対策として斜面対策工と導流堤を、中長期対策として砂防堰堤の新設と流路工の改修を進めています。
被災した集落は、当時の危険箇所の地図に載っていませんでした
東京大学の総合防災情報研究センターが出した田中淳氏の論考には、当時の状況が2つ記されています。ひとつは「東京都が作成していた『東京都土砂災害危険箇所マップ』では大金沢や八重沢に挟まれた神達地区には土石流危険箇所は示されていなかった」。もうひとつは「平成20年に大島町に土砂災害警戒情報が導入されて以降、大島町に対して7回発表されたが、いずれも空振りに終わっていた」というものです。
地図に載っていない場所が崩れ、7回続けて外れていた情報の8回目が当たった。これは大島だけの話ではありません。危険な場所を示した地図は、そこに描かれていない場所の安全を約束するものではない、ということです。
いまは島の550か所が土砂災害警戒区域です
東京都建設局の令和8年6月24日現在の資料では、大島町の土砂災害警戒区域は550か所、そのうち建物に被害が及ぶおそれのある特別警戒区域は509か所。大島町は全域で区域指定が完了しています。東京都全体では警戒区域15,745か所なので、人口およそ7千人の島ひとつに都全体の3.5%が集まっている計算です。
自分の家がどこに当たるかは、大島町が令和5年3月に更新した土砂災害ハザードマップで確かめられます。泉津・岡田・北の山・元町・野増・間伏・クダッチ・波浮港・差木地の地区ごとに図が分かれています。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
島でいちばん高い土地は、その扇状地の上にあります
危ない斜面の下は土地が安い、と思われがちです。大島町の地価公示を並べると逆でした。
| 所在 | 1平方メートルあたり | 坪あたり |
|---|---|---|
| 大島町元町1丁目9番4 | 39,900円 | 131,901円 |
| 大島町元町4丁目4番9 | 12,800円 | 42,314円 |
| 大島町差木地字下原1013番43 | 5,800円 | 19,174円 |
島でいちばん高い元町1丁目は、いちばん安い差木地のおよそ6.9倍です。当サイトで集計している実際の取引価格でも、2024年10〜12月から2025年4〜6月までの5件のうち、成約は元町に集まっていました(中央値は坪23,471円)。
港があり、役場があり、店がある場所に人は集まります。その平らな土地が、火山の斜面から流れ出た土砂が積もってできた扇状地であることは、地図の上では見えません。私は、この島の話がそのまま本土の話でもあると考えています。同じ火山地域である阿蘇山でも、2012年7月の九州北部豪雨で同じ型の表層崩壊が起きた、と筑波大学は書いています。
生活・仕事にどう効くか
- 崩れ方:2013年の崩壊は深さ0.5〜2メートル、その多くが1メートルより浅かった(筑波大学)。深く抉れるのではなく、薄い層が広い面積で同時に滑る形になる。
- 谷から離れていても:東京都建設局は、大金沢で既設の砂防施設が土砂と流木を捕捉したものの、流木を含んだ土石流が流域界を乗り越えて流下したと書いている。沢の外だから安全とは限らない。
- 地図の限界:被害の大きかった神達地区は、当時の東京都土砂災害危険箇所マップに土石流危険箇所として示されていなかったと東京大学の総合防災情報研究センターの論考に記されている。いまは大島町全域で区域指定が済み、警戒区域は550か所。
結局どうすればよいか
- いま島にいるなら、大島町が出している避難情報と避難場所を確認する。土砂災害は雨がやんだあとにも起きる
- 自分の家が土砂災害警戒区域に入っているかを、大島町の土砂災害ハザードマップ(令和5年3月)で確かめる
- 本土でも、火山灰やスコリアが積もった斜面の下は同じ崩れ方をすることがある。まず住所で災害リスクを調べてみる
公式出典
- 気象庁 アメダス(大島・大島北ノ山の観測値)(2026年9月6日発表)
- 気象庁 過去の気象データ検索「大島 2013年10月の日ごとの値」(2013年10月16日発表)
- 気象庁「平成25年10月14日から16日にかけての大雨と暴風」災害時気象資料(2013年10月18日発表)
- 東京都建設局「伊豆大島における土砂災害対策」(2026年9月6日発表)
- 筑波大学 山岳科学学位プログラム「火山地域に特徴的な土砂災害:2013年伊豆大島の事例」(2026年9月6日発表)
- 東京大学 総合防災情報研究センター 田中淳「伊豆大島土砂災害が突き付けた課題」(2023年3月1日発表)
- 東京都建設局「土砂災害(特別)警戒区域の区市町村別指定状況」(令和8年6月24日現在)(2026年6月24日発表)
- 大島町「土砂災害ハザードマップ」(令和5年3月)(2023年3月28日発表)
- 東京都 災害情報「平成25年台風26号による被害状況(第58報)」(2013年11月19日発表)
更新履歴
- 2026年9月6日 初版を公開
※本記事は2026年9月6日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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