天災でも減る。ただし「供給元」で止まっているときは別
ここが今回いちばん見落とされている部分です。ガイドラインの注意事項には、台風や震災などの天災で貸す側にも借りる側にも責任がない場合でも賃料の減額が認められる、と書かれています。そのうえで但し書きが続きます。電気・ガス・水道の停止が貸室設備の不具合を原因とするものではなく、供給元の帰責事由にもとづく場合はこの限りでない、というものです。
だから同じ「断水が5日続いた」でも、建物の受水槽やポンプが壊れて水が上がらないのか、水道事業者の取水口や導水管が壊れて町全体に水が来ていないのかで、目安の当てはめ方が変わります。前者は建物の不具合、後者は供給元の事情です。
水道が止まったのは町の設備の故障でした。じゃあ諦めるしかないですか。
諦める前に、それは業界の目安の話であって法律の話ではないことを押さえてください。民法611条は原因が誰にあるかを条件にしていません。私は、この但し書きと条文のあいだにはずれがあると見ています。
ガイドラインと条文のずれについて
私はこの但し書きを、実務をまわすための線引きだと考えています。供給元の停止まで一律に減額の対象にすると、貸す側が自分では止められない事情で減収を負うことになるからです。それは分かります。
ただ、民法611条の文言は「賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるとき」としか書いていません。貸す側の責任も、供給元の責任も、条文の要件には出てきません。ガイドラインは冒頭で自分から「法的拘束力はなく目安を示しているもの」と断っています。つまり但し書きは、法律がそう決めているという意味ではありません。
実際の取り扱いは契約の内容と個別の事情によりますし、争いになれば最後は裁判所の判断です。ここで言えるのは「ガイドラインの但し書きに当たるから終わり」ではない、というところまでです。
借りている側が今できること
まず記録を残すことです。断水や停電が始まった日時と復旧した日時、給水車を使った日、風呂に入れなかった日。あとから思い出して書くと、免責日数を引いた残りが何日かで食い違います。
次に、止まった原因を管理会社に聞くことです。建物の設備なのか、水道局や電力会社の側なのか。これが分からないと、上の但し書きのどちら側にいるのかが決まりません。
そして契約書を見ます。賃料の減額について契約に定めがあれば、業界の目安より契約の定めが先に効きます。全壊などで住めなくなった場合は、そもそも賃貸借契約が当然に終了するので、減額ではなく契約そのものの話になります。
生活・仕事にどう効くか
- 毎月の家賃:家賃10万円の部屋で断水が5日続いた場合、目安どおりに計算すると100,000円×30%×(5日−免責2日)÷30日で3,000円。停電なら割合が40%なので4,000円になる。
- 止まった原因で扱いが変わる:ガイドラインは天災による停止でも減額を認めているが、建物の設備の不具合ではなく供給元の事情で止まっている場合は「この限りでない」としている。受水槽の故障か、水道事業者の導水管の破損かで結論が変わる。
- 貸す側の実務:ガイドラインには法的拘束力がなく、割合も免責日数も状況に応じて調整できると明記されている。入居者から申し出があったときに、何を根拠に何日ぶんとするかを説明できるかが問われる。
結局どうすればよいか
- 断水・停電が始まった日と復旧した日を、日付と時刻で記録しておく
- 止まった原因が建物の設備なのか、水道局・電力会社の側なのかを管理会社に確認する
- 契約書に賃料減額の取り決めがあるかを見る(ガイドラインより契約の定めが先に効く)
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
ほかに使える無料ツール
公式出典
- 民法 第611条(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)e-Gov法令検索(2026年9月5日発表)
- 法務省「民法(債権関係)の改正」(施行日は令和2年4月1日)(2026年9月5日発表)
- 公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」(2024年10月4日発表)
更新履歴
- 2026年9月5日 初版を公開
※本記事は2026年9月5日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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