千葉市の液状化マップは令和8年7月版に新しくなり、危険度が「高い」面積の割合は、美浜区63.5%、中央区13.4%、花見川区6.4%です。美浜区の地図だけを見て終えると、中央区と花見川区の埋立地を見落とします。
液状化で全壊する建物の想定が最も多いのも、美浜区ではなく中央区です。
公式資料の確認日:2026年10月13日。千葉市の「千葉市地震ハザードマップ(令和8年7月)」と地震被害想定調査の概要版・報告書、千葉県の資料を確認しました。本文の地図は国土地理院が配信する千葉県の液状化の図(前回の想定)で、市のマップではありません。個別宅地の調査結果でもありません。
市のマップは令和8年7月版
千葉市地震ハザードマップは、中央・花見川・稲毛・若葉・緑・美浜の6区それぞれに、揺れやすさ、液状化危険度、急傾斜地崩壊危険度のPDFがあります。建物被害予測は総合のほか液状化・急傾斜地の崩落・揺れ・火災の別にあり、液状化による建物の被害は「建物被害予測(液状化)」で見られます。避難場所の情報は載せていないため、避難先は市のWEB版ハザードマップで確認します。
想定は、震源を千葉市役所付近に置いた「千葉市直下地震」(モーメントマグニチュード7.3)の1本です。対象は低地と埋立地にある、地下20メートルまでの砂の層です。台地は沖積層がないため、計算の対象外になっています。
判定の基準は液状化指数で、4段階です。0なら「極めて低い」、0を超えて5以下で「低い」、5を超え15以下で「やや高い」、15を超えると「高い」になります。
市の図はここに載せません。地図には、ゼンリンの著作権表示と、国土地理院長の測量法に基づく承認の表示があります。
揺れた瞬間に、部屋の中で起きることを減らすもの
地震のけがの3〜5割は、屋内の家具類の転倒・落下・移動によるものです(東京消防庁)。壁にネジを打てない部屋でもできる手から並べます。
東京消防庁の実験では、L型金具で壁に直接ネジ止めするのが最も効果が高いとされています。賃貸で壁に穴を開けられない部屋での代わりがこれです。家具の両端の側板部を、できるだけ奥で突っ張ります。天井側にも強度が要ります。
突っ張り棒だけだと効きが落ちます。同じ資料が、ポール式にはストッパー式や粘着マット式の併用をすすめています。マット単独でも効果は小さいので、上の棒と2つで1組と考えてください。
お湯でも水でも作れて、袋のままおにぎりの形になります。断水すると鍋も食器も洗えません。洗い物の出ない形を先に入れておくと、水の減り方が変わります。
飲料水は1人1日3L。4人家族の1週間分で84L=2Lボトル42本なので、6本入りだと7ケースぶんです。5年保存タイプなら入れ替えの手間が減ります。
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美浜区だけではない
市の概要版では、液状化危険度が「高い」面積は、美浜区で総面積21.80平方キロのうち13.84平方キロ(63.5%)、中央区で45.70平方キロのうち6.10平方キロ(13.4%)です。全市では277.08平方キロのうち22.99平方キロ(8.3%)。稲毛区・若葉区・緑区は、1%未満です。

市は文章でも、「中央区、花見川区及び美浜区の埋立地で液状化危険度の高い領域が広がっています」と書いています。前回(平成29年3月)の概要では、美浜区は「5割近い範囲」でしたが、今回は「5割以上」です。前回と今回は総面積や地盤データが違い、市も差の理由を書いていないため、増減としては読めません。
液状化による建物被害の想定は、区ごとに次のとおりです。
| 区 | 「高い」の面積割合 | 全壊(棟) | 半壊(棟) |
|---|---|---|---|
| 中央区 | 13.4% | 90 | 1,610 |
| 花見川区 | 6.4% | 60 | 1,090 |
| 稲毛区 | 0.9% | 20 | 210 |
| 若葉区 | 0.3% | 3 | 60 |
| 緑区 | 0.5% | 5 | 100 |
| 美浜区 | 63.5% | 30 | 1,100 |
| 全市 | 8.3% | 200 | 4,170 |
出典は千葉市「地震被害想定調査」概要版(令和8年7月)で、棟数は10以上のものを一の位で四捨五入した数字です。市は、木造の建物が多い中央区で全壊棟数が最も多くなると説明しています。美浜区の全壊の想定は中央区の約3分の1ですが、建物の数が約9,900棟と少なく、市の報告書は、建物の総数に対して全壊・半壊が比較的多いとも書いています。「危険度が高い面積が広い区」と「壊れる建物が多い区」は、別の話です。
色なし・台地と県の想定
市の区別PDFの凡例は、紫が「高い」、黄が「やや高い」、緑が「低い」、青が「極めて低い」の4色だけで、台地は色が付きません。報告書と面積の表は、この色のない場所を「なし」と呼んでいます。「なし」は、液状化を計算したうえで起きにくいと判定した「極めて低い」とは別の扱いで、面積の表でも別の列です。
千葉県は、液状化の図で「液状化対象外」とした場所でも、部分的には液状化する場合があるとしています。県のマップは250mメッシュで、必ずしもピンポイントでの液状化しやすさを表したものではありません。
国土地理院の「重ねるハザードマップ」で見られる千葉県の図は、県の前回の想定です。平成26・27年度の調査で、千葉県北西部直下地震を想定しています。市の令和8年7月版や、県が令和8年5月に公表した新しい想定とは別のものです。図の色は、赤が「高い」、橙が「やや高い」、緑が「低い」、青が「極めて低い」で、市のPDFとは色の割り当てが違います。

この図では、美浜区の幕張から磯辺、高浜、新港にかけての海側に、赤と橙が広がります。稲毛海岸から幸町にかけては緑の「低い」も多く、2011年に噴砂が確認された幸町の点は緑の上にあります。町の中でも色が分かれるので、点の色だけでは町の危険度を決められません。中央区の千葉公園から亀井町のあたりには、海から離れた場所にも赤と橙のまとまりがあります。内陸の台地側は、色のない場所や、青の「極めて低い」が点在する場所が増えます。
読者
市のマップで色が付いていない場所は、液状化しないのですか?
市のサイトの利用条件は、予測は一定の条件に基づくもので、実際の災害時は想定を超える可能性があるとしています。震源の位置や規模で、被害が実際と違う場合もあります。色がないことは、起きない保証ではありません。
県は令和8年5月に、千葉県北西部直下地震で液状化により全壊・焼失する建物が、県全体で約1,700棟から約2,100棟に増える想定を公表しました。県は、地盤モデルの更新などが理由としています。ただし千葉市分の液状化の数字は、概要にありません。詳しい結果は「後日公開予定」とされています。
私は、千葉市の地図を見るときは、区の名前より先に、自分の町が低地か台地かを確かめるほうが早いと考えています。台地なら色が付かず、低地や埋立地なら4色のどれかが付くので、その違いが読み方の出発点になります。
2011年の美浜区
2011年の東日本大震災で、千葉市は美浜区を中心に液状化が起きました。市の記録誌が県環境研究センターの速報から引いた記述では、幸町では噴砂、稲毛海岸二丁目付近と高洲二丁目・高浜一丁目付近、新港付近では構造物の傾きや沈降、地下タンクの浮上などが確認されています。
同じ引用では、磯辺三〜五丁目で、京葉線の南側の被害が著しく、中磯辺公園周辺では大量の噴砂を伴う沈下や、一戸建て住宅・ブロック塀・電柱の傾きが確認されています。
市全体の数字は、道路の被害が約44キロ(液状化による土砂は約8,740立方メートル)、約12,000戸が断水・減水、ガスの供給停止が214件、損害額は概算で約89億円です。住家の全壊31世帯・大規模半壊282世帯・半壊414世帯・一部損壊54,354世帯は、市全体の被害認定の数字で、原因別の内訳は書かれていません。液状化だけの件数としては読めません。
美浜区は、1961年から1980年にかけて、稲毛海岸、新港・幸町、海浜ニュータウンの順に造られました。記録誌が研究者の論文から引いた磯辺の推定断面では、ごく緩い埋立層が4.5〜9.5メートルの厚さで、地下水位は地表から1〜2メートルほどと浅いと示されています。
磯辺の対策と個人の備え
市が復興交付金で面的な対策をしたのは、美浜区の磯辺四丁目と、磯辺三丁目の一部です。市は幕張西・磯辺・真砂などの約143ヘクタールを計画区域に定め、住民の同意が得られた2地区で、地下水位低下工法を使いました。
地区の外周に鋼矢板を打ち、道路の下の管で地下水を集めてポンプで排水し、地下水位を地表から3メートルの深さまで下げて、液状化しない層を3メートル確保する設計です。磯辺四丁目は約7.1ヘクタール、約260宅地、同意率88.1%、総事業費は約22億円でした。
磯辺四丁目の6つの測定点では、地下水位の観測値からマグニチュード9.0・200ガルの揺れを想定して計算した判定で、対策前にC判定(液状化の可能性が高い)だった4地点が、対策後はすべてB1判定(市の様式で「液状化被害抑制の目標として可」)になりました。事業は令和2年度に完了しています。
市の個別対策のページは、個々の宅地の対策も必要だと説明し、建て替えの前に実施するほうが、施工しやすく費用も安い傾向があるとしています。このページには、補助制度の記載がありません。
県は、戸建てなど小さな建物の対策として、地盤を液状化しにくく改良する、杭の基礎にする、被害を受けにくい建物にする、の3つを挙げています。埋立地のように支持層が深い場所では、杭は経済性の面で採用が難しいと考えられると書いています。
災害リスク診断は、住所から洪水・津波の浸水想定や、地盤の揺れやすさ(約250mメッシュ)などを調べる入口です。液状化の判定や、地盤改良の効果は返しません。市の資料と宅地の地盤調査を置き換えずに使います。
千葉市の液状化は、市の令和8年7月版を入口に、区ごとの面積と建物被害、台地の色なし、県の前回の想定との違いを、別々の条件として読みます。色の濃さだけで町の安全を決めず、宅地ごとの地盤の記録まで進んでください。
出典・原資料
- 千葉市「千葉市地震ハザードマップ(令和8年7月)」
- 千葉市「千葉市防災アセスメント調査(地震被害想定調査)概要版」(令和8年7月)
- 千葉市「千葉市防災アセスメント調査(地震被害想定調査)報告書」(令和8年7月)
- 千葉市「千葉市地震・風水害ハザードマップ(WEB版)」利用条件
- 千葉市「東日本大震災千葉市災害記録誌(道路災害復旧編)」第2章
- 千葉市「復興交付金事業計画の個別事業の実績に関する評価様式(D-19-1)」
- 千葉市「液状化対策(個別)」
- 千葉市「地震ハザードマップ(平成31年度版)」(磯辺三丁目の一部の対策の記載)
- 千葉県ホームページ「千葉県地震被害想定調査(令和6・7年度)」
- 千葉県ホームページ「千葉県地震被害想定調査結果(概要)」(令和8年5月)
- 千葉県ホームページ「液状化しやすさマップ」の注意書き
- 千葉県ホームページ「戸建て住宅の液状化対策」
- 国土地理院「重ねるハザードマップ」千葉県液状化危険度分布図(平成26・27年度千葉県地震被害想定調査より)
アイキャッチの航空写真:国土地理院・地理院タイル「全国最新写真」を加工。地震被害を撮影した写真ではありません。本文の図の作成:おかあさんのおうち。
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