横浜市の液状化マップで色が付いていない場所は、市の説明では「液状化危険度はかなり低い」と判定した場所です。「液状化しない場所」とは書かれていません。色なしを安全と読んで土地を買うと、市が書いていない安心を前提にすることになります。
このマップは2012年10月の市の被害想定がもとで、神奈川県は令和7年3月に新しい想定の報告書を出しています。横浜市の液状化は、版の違う地図が並んでいます。
公式資料の確認日:2026年10月13日。横浜市の液状化マップのページと被害想定調査報告書、神奈川県の令和7年3月の概要版を確認しました。個別宅地の調査結果ではありません。
市のマップの前提と想定棟数
横浜市の液状化マップは、平成24年10月に市が公表した被害想定調査のうち、元禄型関東地震、東京湾北部地震、南海トラフ巨大地震の3つを想定した図です。想定地震を選ぶと、18区ごとのPDFが開きます。
3つの地震の前提は、元禄型関東地震がマグニチュード8.1、東京湾北部地震が7.3、南海トラフ巨大地震がマグニチュード9クラスです。凡例が同じでも、3枚の図は別の地震の想定です。色の話をするときは、地震名をそろえます。
市の図は、赤が「高い」、オレンジが「液状化する可能性がある」、緑が「低い」、色なしが「かなり低い」です。判定は液状化指数で、0なら「かなり低い」、0を超え5以下で「低い」、5を超え15以下で「液状化する可能性がある」、15を超えると「高い」です。50mメッシュごとに、約2万点のボーリングデータをもとにして、地下水位はボーリングの孔内水位を使い、季節変動は必要に応じて補正しています。
市のページの更新日は2021年5月27日です。区別PDFのファイル名には2018年9月13日の日付が入っています(軽量版は2019年9月6日)。想定そのものが新しくなったかどうかは、確認した範囲では見つけられませんでした。
この想定で液状化により全壊・大規模半壊・半壊になる建物は、元禄型関東地震で7,876棟、東京湾北部地震で5,065棟、南海トラフ巨大地震で3,864棟です。区別では、元禄型で鶴見区2,443棟、金沢区1,693棟、神奈川区891棟の順です。

この数字は、杭のある建物は被害を受けないと仮定した計算値です。市は、4階建て以上のすべてと、昭和35年以降の3階建て以下の20%を「杭あり」と判断しています。
揺れた瞬間に、部屋の中で起きることを減らすもの
地震のけがの3〜5割は、屋内の家具類の転倒・落下・移動によるものです(東京消防庁)。壁にネジを打てない部屋でもできる手から並べます。
東京消防庁の実験では、L型金具で壁に直接ネジ止めするのが最も効果が高いとされています。賃貸で壁に穴を開けられない部屋での代わりがこれです。家具の両端の側板部を、できるだけ奥で突っ張ります。天井側にも強度が要ります。
突っ張り棒だけだと効きが落ちます。同じ資料が、ポール式にはストッパー式や粘着マット式の併用をすすめています。マット単独でも効果は小さいので、上の棒と2つで1組と考えてください。
お湯でも水でも作れて、袋のままおにぎりの形になります。断水すると鍋も食器も洗えません。洗い物の出ない形を先に入れておくと、水の減り方が変わります。
飲料水は1人1日3L。4人家族の1週間分で84L=2Lボトル42本なので、6本入りだと7ケースぶんです。5年保存タイプなら入れ替えの手間が減ります。
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色なしは「かなり低い」
市のQ&Aは、色のない部分は液状化しないのかという質問に、「かなり低い」と判定した箇所だと答えています。「起きない」とは言い切っていません。
判定は、50mメッシュの周辺にある代表的なボーリングデータによるものです。市は、実際のボーリング結果と異なる場合もあり、あくまで推測した結果だと説明しています。メッシュの中に液状化しにくい地盤が含まれることもあれば、赤やオレンジの広がりが推測にすぎないこともあります。
西区のみなとみらい21地区のように、あらかじめ広い範囲で地盤改良などの対策をした場所は、市のマップでは判定から除外され、「かなり低い」と同じ扱いです。色が付いていない理由は、地盤が良いからとは限りません。
色が付く場所にも、読み方の注意があります。報告書によると、昔のため池や沼地だった場所は「高い」と判定して表示しています。現在の地形が丘陵に見えるのに緑色になっている場所は、谷を埋めた盛土です。また、色にかかわらず、湧水が見られる場所や、雨で水がたまりやすい場所は、注意を要するとされています。
読者
色がない場所なら、ボーリング調査はいらないですか?
市は、マップの判定は50mメッシュ単位の推測で、実際のボーリング結果と異なる場合もあるとしています。局所的に行ったボーリング調査の結果を使うよう勧めています。
県の新しい想定は別物
神奈川県は令和7年3月に、新しい地震被害想定調査の報告書を出しました。県は250mメッシュで、液状化危険度は「極めて高い」「高い」「低い」「かなり低い」「液状化対象外」の5段階です。市の4段階とは、区分もメッシュの大きさも違います。
県の概要版は、都心南部直下地震で「川崎市、横浜市沿岸の埋立地及び横浜市港北区で液状化危険度が極めて高くなっている」と書いています。南海トラフ巨大地震でも、横浜の埋立地や港北区の一部に、極めて高いところがあるとしています。
国土地理院の「重ねるハザードマップ」で見られる神奈川県の図は、平成27年3月の調査をもとにした大正型関東地震の想定で、令和7年3月の報告書より前のものです。海沿いの埋立地が赤、つまり「極めて高い」になっています。この県の図では、「かなり低い」は青で、色がない場所は「液状化対象外」です。市のマップの色なし(かなり低い)とは意味が違います。

市の図と県の図は、想定する地震も、メッシュの大きさも、凡例の意味も違います。食い違いがあっても、どちらかが間違いとは言えません。比べるときは、地震名と公表年とメッシュをそろえます。
港北区で起きたこと
2011年の東日本大震災で、市が液状化の判定対象外としていた港北区で、液状化が起きました。市の報告書は、そこに厚さ1〜2メートルの薄い砂の層があり、他にも同じような場所があるかもしれないと書いています。
このため2012年の想定では、粘土質の地盤も対象から外さず、約2万点のボーリングデータを使って、可能な限り見逃しを防ぐことにしました。2011年の被害が、市の想定の作り方を変えた形です。
地盤工学会の報告会資料は、横浜市内の被害地点として、港北区小机の造成地(旧湿地)、金沢区の柴町・福浦の埋立地、磯子区の錦町の埋立地を挙げています。小机では、沼地を戦前に埋め立てた場所や、昭和29年に県が水田に盛土して造成した場所で、ごく薄い砂の層が液状化し、地震後も沈下が続いたと書かれています。
同じ資料の金沢区の項目には「地下構造物の浮き上がり」が挙がり、別のスライドに、地下2階式の駐車場が1メートル以上浮き上がったという説明があります。「30分後の余震で被害が拡大」という見出しは、さらに別のスライドです。スライドに地名はなく、同じ施設の話かどうかは確認できていません。
土木学会の速報(2011年4月)は、横浜の調査を規矩氏らの調査によるものとしています。湾岸全体の特徴の1つとして、千葉市から木更津市にかけての埋立地と、川崎市から横浜市にかけての埋立地では「液状化はあまり発生していない」とも書いています。何と比べた書き方なのかは、速報には書かれていません。市と県の一次資料では、2011年の液状化の件数や面積は見つけられませんでした。
買う前にできる確認
土地や中古住宅を買う前に、市は「地盤VIEW(ビュー)」で、市全域のボーリングデータを見られると案内しています。市のトップページにある行政地図情報の中の、環境地図情報にあります。
戸建ての液状化対策として、市は広く普及している「表層地盤改良工法」を挙げています。地面から2メートルほどの深さまで液状化しない地層があると、被害が減るという調査結果があるとも説明しています。
災害リスク診断は、住所から洪水・津波の浸水想定や、地盤の揺れやすさ(約250mメッシュ)などを調べる入口です。液状化の判定や、地盤改良の効果は返しません。市の液状化マップと宅地の地盤調査を置き換えずに使います。
横浜市の液状化対策の補助制度は、市の液状化マップのページとQ&Aでは見つかりませんでした。「制度がない」とは言えないため、気になる場合は市の地域防災課などに確認します。
私は、まず色なしを「かなり低い」と読むのが出発点だと考えています。そのうえで、みなとみらいのように対策済みで除かれた場所か、自分の土地のボーリング記録(地盤VIEW)があるかを確かめるほうが確実です。
横浜市の液状化は、市の2012年想定の3地震、県の新しい想定、県の平成27年の図を、別々の条件として読み分けます。色がないことを安全と受け取らず、自宅の地盤の記録まで進んでください。
出典・原資料
- 横浜市「液状化マップ」(地域防災課・最終更新日2021年5月27日)と区別PDF
- 横浜市「地震被害想定調査報告書(平成24年10月)」第3章・第5章・第6章・第13章
- 横浜市「液状化マップQ&A」(色のない部分・購入予定の土地の調べ方・判定の精度、2026年4月1日更新)
- 横浜市「購入予定の土地の地質・地下水を調べる方法」(地盤VIEW)
- 横浜市「液状化の危険度の判定の精度」
- 神奈川県「神奈川県地震被害想定調査報告書(概要版)」(令和7年3月)
- 地盤工学会「神奈川・横浜における液状化被害と住民主導の復興・対策計画について」(浦安市における液状化ならびに対策技術の調査・検討に関する報告会資料)
- 土木学会東日本大震災被害調査団「東京湾岸の液状化被害」(緊急地震被害報告会・2011年4月11日)
- 国土地理院「重ねるハザードマップ」神奈川県液状化危険度分布図(神奈川県地震被害想定調査・平成27年3月より)
神奈川県のページはリンク条件が確認できないため、資料名だけで示しています。
アイキャッチの航空写真:国土地理院・地理院タイル「全国最新写真」を加工。地震被害を撮影した写真ではありません。本文の図の作成:おかあさんのおうち。
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