墨田区は、区内の公園や学校など125か所に「海抜」の表示板を建てています。数字を1枚ずつ数えると、85か所がマイナスでした。いちばん低いのは旧中川水辺公園の防災広場で、マイナス2.6メートルです。
区のハザードマップも見出しで「海抜ゼロメートル地帯にある墨田区」と書いています。これだけ低い街なら、大雨のたびに水が出ていそうに思えます。
ところが東京都の記録を読むと、墨田区で建物が浸かった記録は、ほとんどが1981年10月22日の1日に集まっていました。
この記事でわかること
- ✓ 国の「道路冠水注意箇所」に墨田区は3か所。白鬚東地下自動車道、東向島二丁目と横網二丁目のアンダーパスです
- ✓ 都の記録で建物の浸水は1981年10月22日の約897棟がほとんど。2003〜2014年は7回で合わせて48棟でした
- ✓ 区は洪水・高潮・雨水出水とも水防法に「基づいている」と答えています。元の図は令和2・3年の都の浸水予想区域図です
箇所の数は国土交通省 関東地方整備局「道路冠水注意箇所」東京都の一覧と説明表、海抜は墨田区「海抜表示板 設置位置図」の全125か所、建物の浸水は東京都「浸水実績箇所の住所検索」の元データ(墨田区28行)を自分で数えました。標高は国土地理院の住所検索APIと標高APIで引いています。
国の一覧に、墨田区は3か所あります
国土交通省の関東地方整備局は、大雨のときに水がたまるおそれがある道を「道路冠水注意箇所」として挙げています。東京都の一覧は153か所で、墨田区は3か所です。
A は堤通二丁目の白鬚東地下自動車道(特例都道461号)で、東京都建設局が管理しています。B は東向島二丁目で東武伊勢崎線の下をくぐる区道、C は横網二丁目で蔵前通りの下をくぐる区道のアンダーパスで、この2つは墨田区の管理です。住所の代表点の標高は、Aが3メートル、Bがマイナス0.1メートル、Cが3.3メートルでした。

地図の番号と同じ順です
A 白鬚東地下自動車道
都道 特例都道 461号
東京都墨田区堤通2丁目 / 標高3メートル
管理: 東京都建設局道路管理部保全課 / 警察: 向島警察署 / 消防: 向島消防署
Googleマップのリンクは、説明表の住所と構造物の名前から道路地図(OpenStreetMap)で位置を合わせた緯度経度で開きます。合わせられなかった箇所は町丁目の代表点なので、数百メートルずれることがあります。標高は住所を国土地理院の住所検索にかけた代表点の値で、道路の底の高さではありません。
冠水した道で車が動けなくなったときに要るもの
JAFのテストでは、セダンが走れなくなる水深と、ドアが開かなくなる水深がほぼ同じでした。つまり止まった時点で、窓を割る以外に外へ出る方法がなくなります。車に置いておくものから挙げます。
水に浸かった車は、外からの水圧でドアが開かなくなります。割れるのは側面のガラスで、フロントガラスは合わせガラスなので割れません。グローブボックスの奥ではなく、座ったまま手が届く場所に置いてください。
119番も家族への連絡も、スマホが生きていることが前提です。水に落とすと沈んで探しようがなくなるので、浮く型かどうかがそのまま連絡手段の有無になります。入れたまま操作できます。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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海抜表示板の3分の2が、マイナスです
墨田区は区内に海抜表示板を建て、その全部の場所と数字をPDFで公開しています。区の説明では「洪水時の浸水深ではなく設置場所の海抜(標高)を表しています」。

125か所のうちマイナスが85か所、ちょうど0.0が3か所、プラスが37か所。約68%の表示板がマイナスを示しています。低いほうから、旧中川水辺公園の防災広場がマイナス2.6メートル(4枚)、東吾嬬小学校と旧立花小学校跡地がマイナス2.3メートル、東あずま公園がマイナス2.0メートルです。
国の3か所の近くの表示板は、白鬚東地区防災拠点(東白鬚公園)が1.3メートル、横網町公園が0.4メートル、東向島二丁目のふじのき公園がマイナス0.5メートル。区役所は1.5メートルです。
読者
マイナスの場所に住むと、雨のたびに浸水するんですか?
そうとは限りません。都の記録では、2003年以降に建物が浸かったのは7回で48棟です。低さと浸水の回数は、そのままは結びつきません。
建物の浸水は、1981年にほぼ集まっています
東京都の「浸水実績箇所の住所検索」で墨田区を取り出すと、記録は28行、1981年から2014年まで。原因はすべて「内水」でした。
いちばん大きいのは1981年10月22日で約897棟(うち床上39棟)。錦糸1〜4丁目と太平2・3丁目で380棟、押上1〜3丁目で254棟、向島3〜5丁目で96棟が浸かっています。
その後は桁が変わります。2003年から2014年までの7回を全部足しても48棟。いちばん多い2004年10月9日で24棟、2008年8月5日は横網一丁目の1棟だけでした。最後の記録は2014年9月10日で、向島・東駒形・本所・東向島の7棟、うち6棟が床上浸水です。
国の一覧にある横網と東向島は、都の記録でも床上浸水が出ている町です。国の一覧の場所は横網二丁目と東向島二丁目、床上浸水の記録は横網一丁目と東向島で、同じ町名の中に道と家の両方の記録があります。
| No. | 町 | 記録 | 標高 | 地図 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 錦糸・太平 | 1981年10月22日 380棟(錦糸1〜4・太平2・3丁目) | -0.3m | 地図で開く |
| 2 | 押上 | 1981年10月22日 254棟(押上1〜3丁目) | -0.4m | 地図で開く |
| 3 | 八広六丁目 | 2004年10月9日 八広6・立花3丁目で18棟 | -0.3m | 地図で開く |
| 4 | 向島四丁目 | 2003年10月13日 床上浸水(向島4丁目ほか3町で5棟) | -0.5m | 地図で開く |
| 5 | 石原一丁目 | 2005年・2007年(1981年も) | 0.9m | 地図で開く |
| 6 | 東駒形三丁目 | 2004年・2007年(2014年は「東駒形」とだけ記録) | 1.3m | 地図で開く |
| 7 | 横網一丁目 | 2008年8月5日 床上浸水1棟 | 1.3m | 地図で開く |
| 8 | 東向島 | 2014年9月10日 床上浸水 | -0.4m | 地図で開く |
| 9 | 立花六丁目 | 区の資料で区内の最低地点(旧中川沿い) | — | 地図で開く |
都の記録は、同じ被害の数字が複数の町丁目の行に重ねて入っているため、重複を除いた概数です。墨田区の行は2014年が最後ですが、浸水が無かったという意味ではありません。標高は町丁目の代表点1点の値で、海抜表示板の数字とは測った場所が違います。
区の「冠水履歴」は、区のGISで見られます
冠水の履歴を町より細かく見たいなら、区のGISです。墨田区は、区が把握している家屋の浸水と、道路・公園の冠水を「墨田区公開型地理情報システム」(すみだまちづくりマップ)に載せています。対象は平成元年4月1日以降です。
家屋浸水履歴は街区ごとの表示で、区は「その街区内のどこかに家屋浸水情報があることを示しています」と説明しています。道路・公園の冠水は、発生した年度と範囲が見られます。開くときに利用規約への同意が必要で、規約では区の情報の複製が禁じられているので、この記事では中身を写していません。
内水のハザードマップも、水防法にもとづく図です
不動産の重要事項説明では、水防法にもとづくハザードマップで物件の位置を示すことになっています。墨田区の宅地建物取引業者向けのページ(2026年8月25日更新)は、洪水・高潮・雨水出水の3つとも「基づいている」と答えています。内水の深さは都の「浸水リスク検索サービス」で確かめられる、という案内付きです。
区の内水の図の元になっているのは、江東内部河川流域(令和2年3月26日作成)と、隅田川及び新河岸川流域(令和3年3月30日作成)の「浸水予想区域図」です。想定している雨は1時間最大153ミリ、総雨量690ミリ。東京都下水道局は令和8年3月25日に、同じ2つの流域で「雨水出水浸水想定区域」を指定しました。
同じ東京の東側でも、荒川区は内水の図が「作成中」、足立区は「非該当」です。墨田区は先に内水の図を出していた区ということになります。
止水板の助成は、区のページで見つかりませんでした
墨田区のホームページでは、個人向けの止水板の助成は確認できませんでした。そのかわり、2025年9月1日以降に協議を申請する延べ面積1,000平方メートル以上の建物には、止水板の設置や電気設備を高い所に置くなどの浸水対策を報告するよう求めています。1,000平方メートル未満の建物にも「同様の対策を推奨します」としています。
土のうは、区内12か所の土のうステーションから無料で持ち出せます。1袋約5キログラムで、1世帯30袋程度が目安です。若宮公園(本所二丁目)、ふじのき公園(東向島二丁目)、錦糸堀公園(江東橋四丁目)などに置かれています。
自分の家の前が危ないかを調べる3つ
- 近くの海抜表示板の数字を見る。区の設置位置図で場所が分かります
- 区の公開型GISで、家屋浸水履歴と道路・公園冠水履歴を見る
- 東京都の「浸水リスク検索サービス」で、内水の浸水の深さを見る
海抜がマイナスでも、ふだんの雨で浸水するとは限りません。逆に横網のように、近くの表示板がプラスでも床上浸水の記録がある町もあります。3つを重ねて判断してください。
\住所だけ・1分で公的データを確認できます/
土砂災害警戒区域・洪水の浸水想定・地盤の揺れやすさを公的データでまとめて出します
よくある質問
海抜がマイナスの場所は住まないほうがいいですか
そこまでは言えません。墨田区の表示板は68%がマイナスですが、2003年以降の建物の浸水は7回で48棟です。内水の浸水の深さは、区が案内している都の「浸水リスク検索サービス」で確かめられます。
荒川があふれたらどうなりますか
区は「荒川が氾濫した場合には、区の大部分が浸水するおそれがあります」と書いています。これは内水とは別の、洪水の想定です。洪水のハザードマップも必ず見てください。
アンダーパスが冠水していたらどうすればいいですか
入らずに引き返してください。国の一覧にある東向島二丁目と横網二丁目は、どちらも区道で線路や大通りの下をくぐる道です。大雨の日はアンダーパスに入らない道を選ぶと確実です。
ほかの区はどうなっているか
- 道路冠水マップ どこで見られるの?(全国の一覧と、市区ごとの記事のまとめ)
- 荒川区 冠水 どこが危ないの?
- 江東区 冠水 どこが危ないの?
- 葛飾区 冠水 どこが危ないの?
- 江戸川区 冠水 どこが危ないの?
公式出典
- 国土交通省 関東地方整備局「道路冠水注意箇所」東京都(一覧と1か所ごとの説明表。2026年9月23日取得)
- 墨田区「海抜表示板」(設置位置図PDF)
- 東京都 水害リスク情報システム「浸水実績箇所の住所検索」(元データ)
- 墨田区「家屋浸水履歴と道路・公園冠水履歴」
- 墨田区「墨田区水害ハザードマップ(宅地建物取引業者の方へ)」(2026年8月25日更新)
- 東京都下水道局「雨水出水浸水想定区域図」江東内部河川流域・隅田川及び新河岸川流域(令和8年3月25日指定)
- 墨田区「土のうステーション」/「開発指導要綱」
- 国土地理院 住所検索API・標高API(標高)/地理院タイル(地図)
この記事の数値は公表資料を集計したものです。避難や通行の判断は、必ず区と東京都の最新の発表を確認してください。
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