🗨️「仕事の資料をChatGPTに貼ってしまいました。履歴を消せば大丈夫ですか」
履歴の削除と、学習に使わせない設定は別のものです。OpenAI(オープンエーアイ)が公式に書いているのは「オプトアウト後、新しい会話が学習に使用されることはない」まで。設定を切る前に送った会話がさかのぼって外れるとは書かれていません。だから順番は、履歴を消すことより先に設定を切ることになります。
[AI] この記事の要点
2026年9月18日 発表
- 会社の資料や取引先の名前を、そのままChatGPTに貼って使っている人
- 社内でAIの利用が禁止されている、または何も決まっていない職場で働いている人
- 個人情報を入れてしまったあと、どこから直せばいいか分からなくなっている人
公式が保証しているのは「新しい会話」までだった
OpenAIのヘルプセンターに、日本語のページがあります。そこにはこう書かれています。個人向けのChatGPTを使う場合、利用者のコンテンツはモデルの学習に使用されることがある。止めたいなら「設定」から「データ管理」を開き、「すべてのユーザー向けにモデルを改善する」をオフにするか、プライバシーポータルで「コンテンツを学習に使用しない(Do not train on my content)」を選ぶ。どちらか片方で足りるので、両方でオプトアウトする必要はない。
問題はその次の一文です。「オプトアウト後、新しい会話が当社モデルの学習に使用されることはありません」。効果が及ぶ範囲として書かれているのは新しい会話で、設定を切る前に送った会話がさかのぼって外れる、とは書かれていません。
だから順番が変わります。気づいた直後にやることは、その会話を消すことではなく、まず設定を切ることです。消すのを先にすると、画面から見えなくなっただけで、設定はオンのまま残ります。
ChatGPTについて質問です。 個人情報を入力してしまったのですが漏れる心配はありますか? 会社名など入れてしまいました。
Yahoo!知恵袋の質問より(2025年6月)
この質問は4万8,000回以上読まれています。怖がられているのが氏名ではなく会社名だというところに、この問題の性格が出ています。
同じページには、見落とされやすい注意も書いてあります。オプトアウトしていても、回答に「良い回答」「良くない回答」のボタンを押してフィードバックを送ると、そのフィードバックに関連する会話全体が学習に使われることがある、というものです。設定を切ったから安心、とはならない箇所がここに残っています。
個人のアカウントと会社のアカウントで、既定が逆になる
ここが実務でいちばんこじれるところです。同じChatGPTでも、どの契約で使っているかによって出発点が反対になります。
| 使っているもの | 学習に使われるか(既定) | 出どころ |
|---|---|---|
| ChatGPT(個人向け) | 使われることがある。止めるには設定をオフにする | OpenAI ヘルプセンター |
| 法人向けのChatGPTとAPI | 既定で使わない。共有するには組織側が申し出る | OpenAI ヘルプセンター |
| Claude(Free・Pro・Max) | 設定がオンのときに使う。そのときデータの保持は5年 | Anthropic(アンソロピック)の告知 |
| 法人向けのClaudeとAPI | 対象外。学習には使わない | 同上 |
Anthropicの告知には、保持期間の違いまで書かれています。学習への利用を許可した場合は5年、許可しなかった場合はこれまでどおり30日。同じアカウントでも、設定ひとつで残る期間が60倍変わります。
つまり「うちの会社はChatGPTを使っている」という一言では、何も分かりません。会社が契約したアカウントなのか、社員が自分のアカウントで開いているのか。既定が反対なので、そこを確かめないと対策の出発点が決まらないのです。
法律が見ているのは、情報の種類ではない
「入力してはいけない情報の一覧」を配っている会社は多いと思います。氏名、住所、電話番号、マイナンバー、といった具合です。ただ、個人情報保護委員会が2023年6月2日に出した注意喚起を読むと、見ている軸が違います。
個人情報取扱事業者が生成 AI サービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された当該個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること。
個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」別添1(令和5年6月2日)
禁止されているのは特定の種類の情報ではなく、利用目的の範囲から外れる入力です。顧客の氏名でも、その顧客に対応するという目的の範囲内なら直ちに問題にはなりません。逆に、目的の外で使えば、名前1つでも範囲を外れます。
同じ注意喚起には、もう1つの確認事項が続きます。本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合は法律に違反する可能性があるので、そのサービスが個人データを機械学習に利用しないことを十分に確認すること。冒頭の設定の話が、ここで法律の話とつながります。設定を切る作業は、個人の安心のためだけではなく、会社が確認義務を果たすための作業でもあるわけです。
一般の利用者向けの項目もあり、そちらでは、入力した個人情報が機械学習に使われ、他の情報と統計的に結びついたうえで、正確または不正確な内容として出力されるリスクがある、と書かれています。不正確なほうも並べてあるのがこの文書の特徴です。
実際に起きている漏えいは、紙で起きている
では、生成AIはいま日本で起きている情報漏えいの、どれくらいを占めているのでしょうか。個人情報保護委員会は毎年、事業者から受けた漏えい等の報告を集計しています。2026年7月7日に公表された令和7年度の年次報告では、事業者からの報告が1万7,139件、行政機関等からが2,278件、合わせて1万9,417件でした。前年度より減っています。
この報告には原因の内訳が付いています。委員会に直接報告された1万3,345件のうち、報告者本人のところで起きたものは次のとおりです。
| 原因 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 誤交付 | 6,072件 | 45.5% |
| 誤送付 | 2,889件 | 21.6% |
| 紛失 | 654件 | 4.9% |
| 不正アクセス | 533件 | 4.0% |
| 内部不正 | 75件 | 0.5% |
| 誤廃棄・盗難・その他 | 817件 | 6.1% |
区分は8つあり、そのなかに「生成AIへの入力」という枠はありません。宛先や渡す相手を間違えた誤交付と誤送付だけで、報告全体の67.1%を占めています。
漏れた情報の形も出ています。紙だけで起きたものが1万263件で76.9%、電子だけが1,995件で15.0%でした。いま実際に漏れているのは、画面ではなく紙です。AIに何を入れるかを議論している会社の隣で、その日いちばん危ないのは机の上の封筒だった、ということが起きています。

もちろん、これは「生成AIが安全だ」という意味ではありません。報告の区分に無い以上、この統計では見えないだけかもしれない、という読み方もできます。ただ、少なくとも公的に数えられている範囲では、生成AIが原因として立っていないことは確かです。
使っている会社は86.4%、方針を決めている会社は68.9%
もう1つ、総務省の情報通信白書の数字を置いておきます。2025年度の調査で、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると答えた日本企業は86.4%。いっぽう、生成AIの活用方針を定めていると答えたのは68.9%でした。
差は17.5ポイントあります。使っている会社のほうが、ルールを決めている会社より多いという状態です。「うちは禁止だから」と言われた人も、その禁止が文書になっているとは限りません。口で言われただけなら、範囲も罰則も、誰に確認すればいいかも決まっていないことになります。
ちなみに個人の利用経験率は58.8%で、前の年の調査では26.7%でした。ただしこの2つは並べ方に注意が要ります。2025年度の調査から15歳から19歳が対象に加わっていて、白書は同じページで、20歳以上に限った利用率は52.2%だったと書いています。それでも前の年から倍近くに増えたことは変わりません。会社のルールづくりが追いつかない速さで、手元のほうが先に進んでいます。
私はこう読みました
私は、この問題を「入れてはいけないものリスト」で運用するのは無理があると考えています。リストは必ず抜けますし、抜けたときに判断する基準が残りません。個人情報保護委員会が示している「利用目的の範囲内か」のほうが、リストより短くて、しかも迷ったときに使えます。
そして、個人が今日できることは2つに絞れます。使っているのが自分のアカウントか会社のアカウントかを確かめること、自分のアカウントなら学習の設定を切っておくこと。この2つは無料で、5分で終わります。
使い方そのものを整理したいなら、当サイトのChatGPTで仕事効率化|初心者向け17レッスン・実践カリキュラムに、業務別の手順をまとめてあります。
よくある質問
Q. 入れてしまった情報を、あとから消してもらうことはできますか。
A. 会話の削除と、学習に使わせない設定は別の機能です。公式ページに書かれているのは、オプトアウト後の新しい会話が学習に使われないことまでで、すでに送ったものの扱いは明記されていません。まず設定を切り、そのうえで会社の規程に沿って上長に報告してください。
Q. 履歴に残らないようにする方法はありますか。
A. ChatGPTには一時チャットという機能があり、公式ページによると、この会話は履歴に表示されず、メモリを利用も作成もせず、モデルの学習にも使われません。
Q. 会社名だけなら個人情報ではないので、入れても大丈夫ですか。
A. 法人そのものの名称は個人情報にあたりませんが、担当者名や取引の中身と結びつけば話が変わります。それ以前に、注意喚起が求めているのは情報の種類での線引きではなく、その入力が特定した利用目的の範囲内かどうかの確認です。
Q. 社内で禁止されていますが、こっそり使っても分かりませんか。
A. 会社の端末やネットワークの記録は残ります。本記事は規程に反する使い方をすすめるものではありません。使いたい場合は、法人向けの契約なら既定で学習に使われないことを示して、正面から相談するほうが早いはずです。
生活・仕事にどう効くか
- 入れてしまった直後:履歴の削除より先に学習の設定を切る。公式が保証しているのは「オプトアウト後の新しい会話」で、切る前の会話は別扱いになる。
- 毎日の業務:同じ会社でも、個人が自分のアカウントで使うか、会社が契約した法人向けプランで使うかで、学習に使われるかどうかの既定が反対になる。
- 会社の立場:個人情報保護委員会が求めているのは「入れてよい情報の一覧」ではなく、その入力が特定した利用目的の範囲内かどうかの確認。
結局どうすればよいか
- ChatGPTの「設定」→「データ管理」を開き、「すべてのユーザー向けにモデルを改善する」がオンになっていないか見る
- 会社のアカウントか自分のアカウントか、いま使っているのがどちらかを確かめる
- 顧客や取引先の情報を入れているなら、その利用目的を会社がどう特定しているかを上長に確認する
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
公式出典
- OpenAI ヘルプセンター「モデルのパフォーマンスを向上させるためのデータの使用方法」(2026年9月15日発表)
- Anthropic「Updates to Consumer Terms and Privacy Policy」(2025年8月28日発表)
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」別添1(2023年6月2日発表)
- 個人情報保護委員会「令和7年度個人情報保護委員会 年次報告」(2026年7月7日発表)
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」ポイント(2026年7月1日発表)
- Yahoo!知恵袋「ChatGPTについて質問です。個人情報を入力してしまったのですが…」(2026年9月18日発表)
更新履歴
- 2026年9月18日 初版を公開
※本記事は2026年9月18日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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