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シロアリ予防は必要? その「5年ごと」は誰が決めたのか

「シロアリ予防は5年ごとにやらないと家が危ない」。そう書いてある法律は、探しても出てきません。建築基準法施行令が言い切りで義務づけているのは有効な防腐措置のほうで、しろあり対策については「必要に応じて」という一言だけです。

ただし、この「5年」を最初に出したのは工事をする側ではありませんでした。公益社団法人 日本しろあり対策協会が、自分たちの認定する薬剤の有効期間を5年と定めています。決めた理由も、家が5年で危なくなるからではありません。

「シロアリ 予防」で検索すると、上位に並ぶページはどれも「5年ごと」という数字を挙げています。ところが、その5年がどこから来た数字なのかまで書いたページは、2026年9月8日時点の検索上位には1本もありませんでした。この記事では、法令と業界団体の原文をそのまま並べます。

この記事でわかること

  •  業界団体自身が「5年を過ぎたからといってすぐに被害が出るわけではありません」と書いている
  •  新築の10年保証(品確法94条)で直るのは引渡しの時点にあった欠陥。入居後に外から入ったシロアリは対象外
  •  火災保険の約款には「ねずみ食い・虫食い等」を対象外とする条項が置かれている
目次

「本当に5年ごとにやる必要性ありますか?」

Yahoo!不動産の「教えて!住まいの先生」に、2013年11月、この一文を含む質問が出ています。平成6年にできた建売に住み、5年ごとに3回消毒してきた家で、4回目の案内を受けた人の投稿です。

我が家はベタ基礎で周りの環境は住宅街です。平成6年にできた建売です。本当に5年ごとにやる必要性ありますか?(Yahoo!不動産 教えて!住まいの先生)

ベストアンサーの書き出しは、こうでした。

やはり必要かどうかは家主様の考え方によります。家を建ててから一度も消毒しない家もあれば、5年毎(保証が切れる毎)定期的に消毒する家もあります。20年、30年、何もしないで問題ない家もあれば、10年未満で被害が発生している家もあります。(同)

回答した人は「5年毎」に「保証が切れる毎」というカッコ書きを添えています。この記事で確かめるのは、その保証がなぜ5年なのか、そして法令はどこまでを求めているのかです。

建築基準法施行令が書いているのは「必要に応じて」

住宅の柱や土台について定めているのは、建築基準法施行令 第49条第2項です。

構造耐力上主要な部分である柱、筋かい及び土台のうち、地面から一メートル以内の部分には、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、しろありその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない。(建築基準法施行令 第49条第2項)

一文の中で書き分けられています。「有効な防腐措置を講ずる」には条件が付いていません。しろあり対策のほうにだけ「必要に応じて」が付きます。そして、5年という数字も、点検の周期も、この条文には出てきません。

書き分けられている理由の一つは、シロアリの分布が全国で同じではないことです。日本しろあり対策協会によると、日本に生息するシロアリは22種で、建築物を加害する主なものはヤマトシロアリとイエシロアリの2種です。

種類 分布(協会の記述)
ヤマトシロアリ 北海道北部を除く日本全土
イエシロアリ 神奈川県以西の海岸線に沿った温暖な地域と千葉県の一部、それに南西諸島、小笠原諸島
ダイコクシロアリ 奄美大島以南
木の塀と生け垣に囲まれた日本の住宅の玄関まわり。建物の足元が地面と接している
条文が名指ししているのは、地面から1メートル以内の柱・筋かい・土台です(写真: Pexels)
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「必要に応じて」は「やらなくてよい」という意味ではありません。住宅金融支援機構の【フラット35】の新築住宅の技術基準は、外壁に接する土台を木造とする住宅について「土台の防腐・防蟻措置は、次のいずれかとします。」と定めています。法令の条文と、融資の側の基準は別の紙です。

5年は、認定薬剤の有効期間だった

日本しろあり対策協会の、よくある質問のページに答えが置かれています。「保証は5年となっていますが、なぜなのですか。」という質問への回答です。

協会では5年を超えて長期間有効な薬剤は環境によくないと考えています。そのため認定する薬剤の有効期間は5年になっています。(公益社団法人 日本しろあり対策協会)

5年は、家が5年で危なくなるという年数ではありません。5年を超えて効き続ける薬は環境によくない、という考え方から決まった、薬の側の設計値です。

同じよくある質問には、5年を過ぎたらどうなるのかも書かれています。

薬剤の有効期限は5年です。5年を過ぎたからといってすぐに被害が出るわけではありませんが、シロアリを確実に防ぐには再施工をお勧めします。(同)

読者

5年たったら、すぐに被害が出るということですか。

おかあさん

業界団体の回答は「すぐに被害が出るわけではありません」です。そのうえで「確実に防ぐには再施工をお勧めします」と続きます。危険の予告ではなく、薬が切れたという通知だと読むほうが原文に近いです。

協会は工事の側にも同じ5年を書いています。防除の事業を説明したページには「防除施工標準仕様書では五年を目途に再処理をするとしています」とあり、何年ごとに施工するのかという質問への回答も「シロアリの薬剤は5年の効果を目処に作られているので、確実に防ぐためには5年ごとに施工して下さい。」でした。

保証書の5年には上限もあります。協会の登録施工業者会員規則は「認定薬剤の有効期間をこえる保証期間を呈示し、それに基づく契約をしてはならない。ただし、上記の有効期間は5年以内とする。」と定めています。

順番はこうなります。環境への配慮から認定薬剤の有効期間を5年と決めた。標準仕様書が五年を目途に再処理と書いた。保証書の期間が5年になった。だから5年ごとに案内が届く。法令から下りてきた5年ではなく、薬から上がってきた5年です。

「5年ごと」がどこから来ているかを3段で並べた図。建築基準法施行令49条2項は「必要に応じて」と書くだけで周期の記載がなく、日本しろあり対策協会は認定薬剤の有効期間を5年としており、同協会の登録施工業者会員規則が保証期間の上限を5年以内に定めている
建築基準法施行令(e-Gov法令検索)/日本しろあり対策協会 Q&A・登録施工業者会員規則

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床の高さ45センチと、換気孔300平方センチ

法令が数字で決めているのは、薬ではなく床下の形のほうです。建築基準法施行令 第22条にこうあります。

第二十二条 最下階の居室の床が木造である場合における床の高さ及び防湿方法は、次の各号に定めるところによらなければならない。ただし、床下をコンクリート、たたきその他これらに類する材料で覆う場合及び当該最下階の居室の床の構造が、地面から発生する水蒸気によつて腐食しないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものである場合においては、この限りでない。
一 床の高さは、直下の地面からその床の上面まで四十五センチメートル以上とすること。
二 外壁の床下部分には、壁の長さ五メートル以下ごとに、面積三百平方センチメートル以上の換気孔を設け、これにねずみの侵入を防ぐための設備をすること。(建築基準法施行令 第22条)

45センチと300平方センチが効くのは、最下階の居室の床が木造で、かつ床下をコンクリートなどで覆っていない家です。冒頭の投稿にあるベタ基礎の家はこのただし書に当たり、この2つの数字の対象から外れます。自分の家がどちらなのかを先に確かめてください。

床下が低くて人が入れない家では、点検できる範囲も、薬を入れられる範囲も限られます。

日本の住宅街の路地。塀と建物の基礎の立ち上がりが地面から続いている
床の高さと換気孔の大きさも、法令に数字が書かれています(写真: Pexels)

読者

床下をのぞくには、どこを開ければいいんですか。

おかあさん

台所や洗面所の床に点検口がある家が多いです。無い家もあります。中古住宅を買う前なら、床下に人が入れるかどうかを内見の申し込みの段階で聞いておくと、話が早く済みます。

新築の10年保証では、入居後のシロアリは直らない

新築から10年は保証がある、という話には根拠があります。住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第94条です。

請負人は、注文者に引き渡した時から十年間、住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものの瑕疵…について…担保の責任を負う。
2 前項の規定に反する特約で注文者に不利なものは、無効とする。(住宅の品質確保の促進等に関する法律 第94条)

売主が相手のとき(新築住宅の売買)は第95条に同じ10年が置かれ、買主に不利な特約はやはり無効とすると書かれています。土台や柱は、この「構造耐力上主要な部分」に入ります(品確法施行令 第5条)。

それでも、シロアリの食害がこの10年で直るとは言えません。10年の責任の対象になるのは、引渡しの時点で既に存在していた欠陥です。入居してから外の土の中を通って入ってきたシロアリは、引渡しの時点の欠陥ではありません。

分かれ目は、引渡しのときにすべきことがされていたかどうかです。第49条第2項の防腐措置がされていなかった、必要な場所に防蟻の措置が入っていなかった、という話になれば、それは引渡し時点の問題として争える余地が出てきます。逆に、施工に問題がなく、10年目に外から入られたのであれば、責任の話ではなく管理の話になります。

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中古住宅の売買では、この10年ではなく契約不適合責任の話になります。売買契約書の特約でどこまで免責にしてあるかで、床下の扱いが変わります。

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シロアリ被害に火災保険は使えるか

「シロアリ 火災保険」で検索している人が多い語です。結論から書くと、約款の側に、名指しで外している言葉があります。

逐語で確かめられる例として、東京海上日動火災保険が企業向けの財産補償について公開している「保険金をお支払いしない主な場合」のページには、こう書かれています。

性質による蒸れ・変色・変質・さび・腐食・ひび割れ・剝がれ、ねずみ食い・虫食い等に起因してこれらが生じた部分に発生した損害(東京海上日動火災保険「保険金をお支払いしない主な場合」。原文は「自然の消耗・劣化」から始まる1項目で、ここはその後半部分)

約款が名指しで外しているのは「ねずみ食い・虫食い等」という言葉です。同じ言い回しは住宅向けの約款にも見られますが、当サイトで原文を確認できたのは企業向けの1本です。

当サイトはここで保険商品の比較も推奨もしません。書けるのは、約款にこう書かれているという事実までです。加入している商品にどう書かれているかは、契約している保険会社のサイトの「ご契約のしおり・約款」から確認できます。

台風や水漏れといった突発的な事故が先にあり、その結果としてシロアリが出た場合はどうか。ここは争点になりえますが、実際に保険金が支払われたことを示す一次資料を、私は見つけられませんでした。「出る」と断定している解説は見かけますが、根拠の条文も裁定事例も示されていません。

5年が何の5年かを知ったうえで決める

ここまでに出てきた紙を並べます。

どの文書か そこに書いてあること
建築基準法施行令 第49条第2項 地面から1メートル以内の柱・筋かい・土台に有効な防腐措置。しろあり対策は「必要に応じて」
建築基準法施行令 第22条 床の高さ45センチ以上。壁の長さ5メートル以下ごとに300平方センチ以上の換気孔。ただし床下をコンクリート等で覆う場合は適用外
日本しろあり対策協会 認定薬剤の有効期間は5年。「5年を過ぎたからといってすぐに被害が出るわけではありません」
品確法 第94条・第95条 引渡しから10年。対象は引渡しの時点で存在していた瑕疵
火災保険の約款 「ねずみ食い・虫食い等」に起因する損害は対象外
どこにも書かれていないもの 「5年ごとに予防工事をしなければならない」という義務

私は、5年ごとという案内そのものが間違っているとは考えていません。薬の有効期間が5年なら、5年で案内が来るのは筋が通っています。私が問題だと考えるのは、その5年の出どころが説明されないまま、数字だけが「家が危ない周期」として独り歩きしていることのほうです。出どころを知っていれば、5年目にやるか、7年目にするか、その家の分布と床下の状態を見てから決められます。

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この記事に費用の金額を書いていないのは、駆除・予防工事の費用を集計した公的な統計が見当たらなかったからです。出所を示せない金額を「相場」として書くことはしていません。

よくある質問

5年ごとにやらないと法律違反になりますか

なりません。建築基準法施行令 第49条第2項が言い切りで求めているのは、地面から1メートル以内の部分の防腐措置です。しろあり対策は「必要に応じて」で、周期の定めもありません。

5年を過ぎたら、すぐシロアリが入りますか

日本しろあり対策協会の回答は「5年を過ぎたからといってすぐに被害が出るわけではありません」です。そのうえで、確実に防ぐには再施工を勧めています。

予防工事の費用の相場はいくらですか

費用を集計した公的な統計が見当たらないため、当サイトでは金額を相場として書いていません。見積もりを比べるときは、施工する面積と、使う薬剤の名前が書かれているかを見てください。

シロアリ被害に火災保険は使えますか

火災保険の約款に「ねずみ食い・虫食い等」を対象外とする条項が置かれています。当サイトで原文を確認できたのは企業向けの1本です。加入している商品にどう書かれているかは、保険会社のサイトの「ご契約のしおり・約款」で確認できます。

「本当に5年ごとにやる必要性ありますか?」という問いに、法令は答えを持っていません。持っているのは、環境への配慮から薬剤の有効期間を5年と決めた側と、その家の床下を実際に見た人だけです。5年は、家の寿命の区切りではなく、薬の効き目の区切りでした。次の案内が来たら、聞くのはこの2つで足ります。前回の薬は何で、いま床下はどうなっているか。

出典

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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