🗨️「トイレの引き戸って、やめたほうがいいの?」
音と匂いが漏れやすいのは事実です。ただ、その引き戸は介護保険が費用を出す6種類の工事の4番目に入っています。開き戸のまま将来替えるなら、着工前に申請しないと1円も出ません。
[不動産] この記事の要点
2026年9月4日 発表
- これから家を建てる、または買う人
- トイレの扉を開き戸のままにしている人
- 親が住む実家の扉をどうするか考えている人
- 要介護・要支援の認定を受けた家族がいる人
介護保険が費用を出す工事は、6種類しかない
介護保険の住宅改修で使える工事は、厚生省告示第95号で6種類に限定されています。告示の本文をそのまま並べると、次のとおりです。
| 号 | 工事の種類(告示の文言) |
|---|---|
| 一 | 手すりの取付け |
| 二 | 段差の解消 |
| 三 | 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更 |
| 四 | 引き戸等への扉の取替え |
| 五 | 洋式便器等への便器の取替え |
| 六 | その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修 |
4番目が「引き戸等への扉の取替え」です。世間で「やめたほうがいい」と言われがちな扉が、国の側では費用を出す対象に指定されているという並びになっています。
着工してから申請しても、1円も出ない
この制度でいちばん取り返しがつかないのが、申請の順番です。横浜市の説明には「限度額:20万円(保険給付18万円(1割負担の場合))」「工事着工前の事前申請が条件となります」と書かれています。
先に工事を始めて、あとから書類を出すという流れは通りません。扉の交換は半日で終わる工事なので、業者に頼んだ翌日に着工してしまうことがあります。段取りとしては、契約より先に市区町村の窓口とケアマネジャーに相談するのが正しい順番です。
20万円の枠は、毎回使えるんですか?
原則は1回限りです。老企第42号には「この取扱いは1回に限られる」と書かれています。例外は2つで、「介護の必要の程度の段階が3段階以上上がった場合」と、「転居した場合には改めて支給限度基準額までの住宅改修費の支給を受けることが可能となる」とされています。
音が漏れるのは、扉の形だけが理由ではない
引き戸が敬遠される理由は、音と匂いです。これはメーカー自身が認めています。LIXIL(リクシル)の公式コラムには「室内引き戸は室内ドア(開き戸)と比べると気密性・遮音性が低くなりがちです」「冷暖房の効きが悪くなることや、声も隣の部屋まで通りやすくなる可能性があります」と書かれています。
ただし同じページで、向く場所として「バリアフリーにしたい場合」「脱衣所や水回りなど風通しを良くしたい場所」を挙げ、上吊り式なら床をフラットにできるとしています。短所を認めたうえで、水回りには勧めているという書き方です。
実際に両方を使っている人の見方はもう少し具体的でした。Yahoo!不動産の「教えて!住まいの先生」に寄せられた回答に、こういう一文があります。
便器とドアの距離が一番大きい気がします。近いと外に音が漏れやすい。
教えて!住まいの先生(Yahoo!不動産)の回答より
同じ回答者は、自宅に開き戸と引き戸のトイレが両方あり、便器からの距離があるので「音の聞こえ方で差はほぼない気がします」とも書いています。Yahoo!知恵袋の別の質問にも「トイレ引き戸だけど後悔したこと無い。」という回答があり、後悔した人だけが書き込んでいるわけではありません。
じゃあ、図面のどこを見ればいいんですか?
便器の位置と扉の位置の距離です。扉を開けてすぐ正面に便器があるか、横から入る形かで音の伝わり方が変わります。扉の種類より先に、そこを見てください。
開き戸のままにすると、将来の工事は扉だけでは済まない
ここからは私の見方です。新築や購入の時点で開き戸を選ぶこと自体は、間違いではないと考えています。音と匂いの点で有利なのは事実だからです。
気をつけたいのは、後から替えるときの工事の中身です。開き戸を引き戸に替えると、戸を引き込む壁の面が必要になります。扉本体だけを付け替える工事ではなくなり、壁の造作や、場合によっては照明のスイッチの移設まで付いてきます。だから告示は6番目に「その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修」を置いているのだと私は読んでいます。
バリアフリー法は、一般の住宅にはかからない
「法律で引き戸が決まっている」と読める説明を見かけますが、これは正確ではありません。バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が対象にしているのは特別特定建築物などで、一般の戸建て住宅には直接かかりません。
住宅性能表示制度の高齢者等配慮対策等級も、扉の形式ではなく寸法を求めています。住宅性能評価・表示協会の説明では、等級5で「通路は850mm以上、出入り口の幅は800mm以上」とされています。引き戸か開き戸かではなく、車いすや介助者が通れる幅が確保されているかが評価の対象です。
今日決めておくと、あとで効くこと
扉の形を今すぐ替える必要はありません。決めておくと効くのは、次の2つです。
1つは、トイレの扉を開けたときに便器がどこにあるかを図面で確かめること。音の心配の大半はここで説明がつきます。もう1つは、20万円の枠を何に使うかを家族で先に決めておくこと。手すりと段差解消と扉で取り合いになる枠なので、必要になってから考えると、いちばん急ぐ工事に回せなくなります。
生活・仕事にどう効くか
- 工事のお金:介護保険の住宅改修は支給限度基準額が20万円。1割負担の人なら保険給付は18万円までで、残りは自己負担になる。
- 申請の順番:工事着工前の事前申請が条件。工事を始めてから申請しても支給されない。
- 回数:この20万円の枠は原則1回限り。介護の必要の程度の段階が3段階以上上がった場合と、転居した場合だけ、あらためて限度額まで使える。
結局どうすればよいか
- 新築や中古の購入でトイレの扉を選ぶときは、便器と扉の距離を図面で確かめる(音の漏れ方はここで大きく変わる)
- 扉を替える工事を考えているなら、契約や着工より先に市区町村の窓口とケアマネジャーに相談する
- 20万円の枠をどの工事に使うかを、手すり・段差解消と合わせて先に決める
- 実家の扉を替えるなら、住んでいる本人の要介護認定の有無と負担割合を確認しておく
公式出典
- 厚生労働大臣が定める居宅介護住宅改修費等の支給に係る住宅改修の種類(平成11年3月31日 厚生省告示第95号)(1999年3月31日発表)
- 介護保険の給付対象となる住宅改修について(平成12年3月8日 老企第42号)(2000年3月8日発表)
- 横浜市「介護保険の住宅改修費の支給」(2026年9月4日発表)
- LIXIL「室内引き戸のメリット・デメリット」(2026年9月4日発表)
更新履歴
- 2026年9月4日 初版を公開
※本記事は2026年9月4日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。


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