結論から書きます。同じ市区町村の中で、前面道路の幅・築年・敷地の広さをそろえて中古戸建てをくらべると、私道に面した家と公道に面した家の値段の差は2.2%でした。国が公開している取引記録243,778件を数えた結果です。
条件をそろえない生の数字なら10.6%安い。そして全国を1本にまとめてしまうと、私道に面した土地のほうが高くなります。
この記事でわかること
- ✓ 同じ町・同じ築年・同じ広さでくらべた中古戸建ての差は2.2%(対象199市区町村)
- ✓ 値段の差が±5%以内の市区町村は、条件をそろえると15%から42%に増える
- ✓ 私道のほうが高く売れている市区町村が、条件を変えても30〜35%ある
全国でならすと、私道に面した土地のほうが高い
使ったのは国土交通省が四半期ごとに公開している不動産取引価格情報です。2023年1〜3月期から2026年1〜3月期までの887,381件から、住宅地の取引だけを取り出しました。
まず土地のみの取引から見ます。面積50〜400平方メートル、価格100万円〜3億円にしぼって139,047件。前面道路が私道と記録されているものが18,303件、公道が120,744件でした。
平方メートルあたりの単価の中央値は、私道が85,714円、公道が66,667円です。私道のほうが2万円近く高い。
中古戸建てでも同じ向きになります。敷地50〜400平方メートルで243,778件、うち私道が40,728件。価格の中央値は私道が2,700万円、公道が2,600万円でした。
読者
私道のほうが安いと聞いていたのに、逆じゃないですか。
集めている場所が違うんです。私道は都市の密集した町に集まっていて、公道は郊外まで広く分布しています。
私道の土地は面積の中央値が165平方メートル、公道は195平方メートル。前面道路の幅は私道が4メートル、公道が6メートルです。私道のほうが狭い土地で、それでも単価が高い。都心の高い地域に私道が偏っているだけで、私道であること自体が値段を押し上げているわけではありません。
だからこの記事の数字は、すべて同じ市区町村の中でそろえて比べています。市区町村ごとに私道と公道それぞれの中央値を出し、その比を取り、比の中央値を見る。両方に15件以上の取引がある市区町村だけを対象にしました。
この記事の「公道」は、市道・区道・町道・村道をまとめたものです。県道・国道まで含めた9種類で計算しても結論は動きませんでした(土地のみの比の中央値は9種で0.904、市区町村道だけで0.893。中古戸建てでは0.891と0.894)。

条件をそろえるほど差は縮み、最後は2.2%になる
中古戸建てで、そろえる条件を1つずつ足していきます。
| そろえた条件 | 対象市区町村 | 私道の値段(公道=100) | 差 |
|---|---|---|---|
| 同じ市区町村(それだけ) | 508 | 89.4 | −10.6% |
| +前面道路の幅4m以上 | 473 | 92.5 | −7.5% |
| +築1990年以降 | 360 | 95.9 | −4.1% |
| +築2000年以降 | 308 | 96.6 | −3.4% |
| +敷地100〜200平方メートル | 199 | 97.8 | −2.2% |
10.6%が2.2%になりました。条件をそろえるというのは、要するに「同じような家どうしで比べる」ということです。それをやるほど、私道と公道の差は消えていきます。
差の分布で見ると、もっとはっきりします。条件をそろえない状態では、私道が10%超安い市区町村が508のうち260、全体の51%を占めていました。条件をそろえた199市区町村では36、18%まで減ります。逆に差が±5%以内でほぼ同じという市区町村は、15%から42%に増えました。
土地のみの取引でも同じことをやりましたが、こちらは差が8%台までしか縮みません。全件で−10.7%、前面道路の幅4メートル以上にそろえて−8.3%です。土地には築年がないので、そろえられる条件が1つ足りない。だから縮み方が止まります。
この記事が扱っているのは前の道が「誰のものか」です。前の道の「幅」の話は別で、当サイトではお盆に実家へ帰ったら、前の道の幅を測ってください|道幅4m未満の土地は、駅から遠い地域ほど3割安いに集計をまとめています。上の表で幅4メートル以上にそろえたのは、その2つを二重に数えないためです。
「私道は古い家が多いから安い」は逆だった
差が縮む理由を、築年のせいだと考えた方がいるはずです。私道の狭い町には古い家が残っているから、その古さが値段に出ているのではないか、と。
数えると逆でした。築年数の中央値は、私道に面した家が19年、市区町村道に面した家が21年です。私道の家のほうが2年新しい。
読者
新しいのに安いんですか。
安くなるのは古い家のほうです。築年をそろえていくと差が消えるのは、そういう意味です。
上の表をもう一度見てください。築1990年以降にそろえた時点で差は4.1%、築2000年以降で3.4%です。古い家ほど私道の割引が大きく、新しい家ではほとんど差がない。「私道の家は古いから安い」ではなく、「古い家では私道の分だけ余計に引かれる」という順番になります。
私道でも新しい家が建っているというのは、建て替えができているということです。私道に面した土地の13.5%は前面道路の幅が4メートル未満で、市区町村道の8.8%より高い。それでも建て替えが進んでいる区画がある一方で、古いまま残っている区画がある。この差が値段に出ていると私は考えています。
私道のほうが高く売れている市区町村が3つに1つある
「私道だから安い」は全国一律ではありません。条件をそろえた199市区町村のうち、私道のほうが高く売れていたのは66市区町村。条件の足し方を変えても、この割合は30〜35%で動きませんでした。
前面道路の幅4メートル以上・築2000年以降でそろえた中古戸建てで、実際の市区町村名を挙げます。
| 私道のほうが高い | 私道のほうが安い |
|---|---|
| 茨城県筑西市 +46% | 大阪府吹田市 −27% |
| 岡山県津山市 +40% | 東京都目黒区 −29% |
| 鹿児島県鹿屋市 +33% | 栃木県那須塩原市 −31% |
| 大阪府堺市中区 +32% | 大阪府大阪市西淀川区 −31% |
| 大阪府箕面市 +26% | 北海道函館市 −38% |
大阪府だけを見ても、堺市中区と箕面市では私道のほうが高く、吹田市と西淀川区では安い。同じ府内で向きが割れます。「私道に面しているから」という一言で査定額を説明されたときは、その市区町村で本当にそうなっているのかを聞き返せる、ということです。
「私道は3割安い」の3割は、相続税の評価の話
私道を調べていると、必ず30%という数字に当たります。これは売買価格の話ではありません。
国税庁のタックスアンサーNo.4622は、私道の評価をこう定めています。
私道の評価は、その宅地が私道でないものとして路線価方式または倍率方式によって評価した価額の30パーセント相当額で評価します。
算式は「正面路線価×奥行価格補正率×間口狭小補正率×奥行長大補正率×0.3×地積」です。ここで評価されているのは私道そのものの土地であって、私道に面した宅地ではありません。持分として持っている道の部分を、相続税の計算でいくらと見るか、という話です。
しかも同じ私道でも扱いが正反対に分かれます。不特定多数の人が通り抜けに使っている私道は、価額を評価しません。ゼロです。30%になるのは、特定の人しか通らない行き止まりの私道のほうです。
当サイトには前の道の「幅」が4メートル未満の土地について、駅から遠い地域では3割安いという集計もあります。あちらの3割は幅の話、こちらの3割は相続税の評価の話で、別のものです。
売る値段の話に戻すと、上の表のとおり2.2%から10.6%の範囲でした。3割ではありません。
値段より重いのは、通行と掘削の承諾
ここからが、値段の集計では出てこない話です。
私道は個人の持ち物です。その上を通ること、その下を掘って水道管やガス管を引き込むことは、所有者の承諾がいります。新築を建てるとき、給湯器を替えるとき、下水につなぐとき。承諾書に署名と押印をもらう相手が、1人ではなく複数いる区画があります。
Yahoo!知恵袋には、土地を契約したあとでその作業に入った買主の相談が残っています。2024年7月の投稿です。
1件目は口頭で通行を許可はしていますが、今までやってなかったから、面倒だからということで署名捺印を拒否。2件目は居留守を使われているのか会うことすらできていない状況です。
契約は済んでいて、承諾書は残り2件。同じ知恵袋には、下水道とガスの引き込みで私道所有者のうち一人から掘削の承諾が取れず、着工できないという相談もあります。弁護士ドットコムで「私道 掘削承諾」を検索すると、2026年9月2日時点で94件の相談が並びます。
民法には213条の2という条文があります。見出しは「継続的給付を受けるための設備の設置権等」で、電気・ガス・水道水の供給などを受けられないときに、他人の土地に設備を設置できると定めたものです。ただし第3項で、あらかじめ他の土地の所有者や設備の使用者に、目的・場所・方法を通知しなければならないとしています。
条文があることと、工事業者がその日に着工できることは、別の話です。私はここが私道のいちばんの負担だと考えています。値段の差が2.2%しかないのなら、私道を避ける理由は値段ではなく、この段取りにかかる時間と、相手の都合に予定を握られることのほうです。
読者
買う前に、それは分かるものなんですか。
宅地建物取引業法35条1項3号で、建物の賃貸借以外の契約では「私道に関する負担に関する事項」を説明することになっています。重要事項説明で必ず出てきます。
いわゆる私道負担です。敷地のうち道になっている部分の面積、持分があるかどうか、通行や掘削の承諾がすでに取れているかどうか。ここに書かれていない項目は、自分から聞かないと出てきません。

売れなかった私道の土地は、この集計に入っていない
冒頭の2.2%に戻ります。この数字には、書き落とせない前提があります。
集計に入っているのは、売買が成立して価格が記録された取引だけです。承諾が取れずに話が流れた土地、買主が現れずに値段が付かなかった土地は、1件も入っていません。
だから「値段の差が小さい=私道でも問題ない」とは読めません。読めるのは「売れた私道の土地は、売れた公道の土地とほぼ同じ値段で売れている」までです。売れるかどうかの手前で止まった分は、この集計の外側にあります。
私道に面した土地を買う前・売る前に確かめる5つ
順番があります。値段を聞きに行くのは最後で足ります。
- 前面道路の種別。市区町村の建築指導課で、住所を伝えれば接している道の種別を教えてもらえます。建築基準法42条1項5号の「位置指定道路」なら、特定行政庁から位置の指定を受けた道です。指定を受けていない通路とは扱いが変わります
- 持分があるかどうか。道の部分を共有で持っているのか、まったく持っていないのか。持分がない場合、通行と掘削の両方で他人の承諾に頼ることになります
- 通行承諾書と掘削承諾書が、すでにあるかどうか。将来の建て替えまでカバーする文言になっているか、所有者が代替わりしても効くかまで見ます。契約前に売主側でそろえてもらえるかを確認してください
- 所有者が何人いるか。1人と10人では、集める手間がまったく違います。相続で持分が細かく分かれていると、連絡がつかない人が出ます
- 同じ市区町村の成約価格。上の表のとおり、私道のほうが高い市区町村が3つに1つあります。近隣の実際の取引価格を先に見ておけば、提示された金額を自分で判断できます
住宅ローンを使うなら、事前審査の段階で前面道路の種別と持分の有無を伝えてください。扱いは金融機関ごとに違うので、契約を進めてから確認するより早く分かります。
建て替えができない土地かもしれないと感じたら、値段の見方が変わります。再建築不可の家は本当に二束三文?で、前面道路が4メートル未満の家が実際にいくらで売れているかを、同じ取引データから集計しています。
この記事は2026年9月時点の制度と、2026年1〜3月期までに公表された取引データで書いています。個別の土地の扱いは市区町村の判断になるので、契約や工事を決める前に建築指導課で確かめてください。
よくある質問
私道負担とは何ですか
買う土地の面積のうち、道路として使われている部分のことです。宅地建物取引業法35条1項3号により、建物の賃貸借以外の契約では「私道に関する負担に関する事項」が重要事項説明の対象になっています。負担部分には建物を建てられず、敷地面積にも入らないため、建ぺい率と容積率の計算からも外れます。
私道に面した土地のデメリットは値段だけですか
値段の差は、条件をそろえた中古戸建てで2.2%でした。手間が出るのはそのあとです。通行と掘削に所有者の承諾がいること、舗装の補修費用を持分の割合で負担することがあること、所有者が代替わりすると承諾を取り直す話になることの3つを、契約前に確認してください。
私道の持分がないと売れませんか
売れないと決まってはいません。ただし買主側から見ると、通行と掘削の承諾を他人に頼る土地になります。承諾書を売主側でそろえてから売りに出すかどうかで、話の進み方が変わります。持分の譲渡を交渉する場合、測量と登記の費用が別にかかります。
位置指定道路なら公道と同じですか
道路としては建築基準法上の道路になりますが、所有者は個人のままです。42条1項5号は「土地を建築物の敷地として利用するため、道路法、都市計画法……によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの」と定めています(「……」は列挙された法律名6本を省いた部分です)。指定を受けた道であることと、誰の持ち物かは別の話です。
前の道が狭いことと、私道であることは同じ問題ですか
別です。幅の話は道幅4m未満の土地は、駅から遠い地域ほど3割安いにまとめています。この記事の集計では、幅4メートル以上にそろえたうえで私道と公道を比べているので、幅の影響は取り除いてあります。
出典と集計条件
- 価格の集計は、国土交通省 不動産情報ライブラリの不動産取引価格情報を使いました。2023年1〜3月期から2026年1〜3月期までに公表された887,381件のうち、地域が「住宅地」のものを対象にしています。土地のみは面積50〜400平方メートル・価格100万円〜3億円の139,047件、中古戸建て(宅地(土地と建物))は敷地50〜400平方メートル・価格100万円〜3億円の243,778件です。前面道路の種類が「私道」のものと「市道・区道・町道・村道」のものを市区町村ごとに中央値で比べ、両方に15件以上の取引がある市区町村だけを対象に、比の中央値を出しています。「道路」「区画街路」「農道」は公私の別が読み取れないため、どちらにも入れていません。2026年1〜3月期は公表の途中です
- 同じ市区町村どうしの比較でも、町ごとの地価差や駅からの距離の違いは残ります。この記事の数字は前面道路の種類だけの影響ではありません
- 国税庁 タックスアンサー No.4622 私道の評価
- 民法213条の2、建築基準法42条1項5号、宅地建物取引業法35条1項3号(e-Gov法令検索)
- Yahoo!知恵袋 私道の通行承諾書について/私道の掘削承諾がとれない際の対処方法について
- 弁護士ドットコム「私道 掘削承諾」の相談(2026年9月2日時点で94件)


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