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「ここは1番奥なので解体は無理。査定は50万でした」もう1社は800万 根拠を出す義務は買取にありません

実家の査定を2社に頼んだら、A社は800万円、B社は50万円でした。16倍の差です。

これは相場の差ではありません。神戸で実際に売れた築50年以上の家を360件集計すると、前面道路が4m以上の家は1,000万円、4m未満の家は415万円。道の条件が生む開きは2.4倍までで、16倍にはなりませんでした。

この記事でわかること

  •  神戸で売れた家1,639件を道の幅で並べると、区の相場の56%〜129%に分かれること
  •  「私道だから安い」が神戸の数字では成り立たなかったこと
  •  査定額の根拠を出させる法律が、買取のほうには無いこと
  •  7社目を探す前に、無料の地図で確かめられること
目次

800万と50万 2社は同じ家に別の値段を付けたのではありません

Yahoo!知恵袋に、2023年11月に投稿された質問があります。お母さんが施設に入ることになり、実家を売ろうとした人の相談です。

実家の売却について教えてください。母が一人暮らししてましたが施設の方に入り売却しようと思い、不動産屋2件に相談しました。実家は築50年位、六軒並んでいる1番奥に実家はあります。
A社は査定800万そこから解体費用400万引いて最終的査定400万でした。
B社はここは1番奥なので解体は無理。査定は50万でした。
どちらも、家の中の家具などそのままで買取です。
A社は知らなかった不動産屋でB社はCMでも有名な不動産屋です。
そんなに査定額って変わってくるもんでしょうか?

回答は6件つきました。読んでいくと、答えがきれいに割れています。

ベストアンサーは「相見積もりが2件だからわからないんだと思います。あと3から5件聞いてみてください」。350万円の差は誤差だ、という立場です。別の人は「叩かれてますよ。いづれの不動産屋にも。」の一行だけ。有名な会社を挙げた回答者は「買い取りでしょ。 つまり後者はお断り見積もりです。」と書いています。

物件の側を疑ったのは2件だけでした。ひとりは「解体費400万は結構高いですね。建物が大きいのか、道路が狭くて重機が入らないとかで高めに見込んでいるんですかね。」。もうひとりは「今回の査定額には解体出来る出来ないが大きくかかわります。」と書いて、自社で更地にできる会社は400万円、転売しか手がない会社は50万円になると説明しています。

つまり2社は、同じ家に別々の値段を付けたのではありません。A社は「解体して更地で売る商品」を、B社は「解体できないまま誰かに流す商品」を見積もっています。中身が違うものを並べたので、16倍になりました。

読者

じゃあ、もっと多くの会社に聞けば正しい金額が分かるんですか?

おかあさん

7社に聞くと7通り出ます。増えるのは選択肢ではなく迷いのほうです。先に決めるのは、その家が更地にできるのかどうかです。

そして6件の回答の中に、ひとつも出てこなかった言葉があります。「その査定額の根拠を出してもらう」。後半でその話をします。

神戸で売れた家は、道の幅で区の相場の56%〜129%に分かれます

国土交通省が公表している不動産取引価格情報から、神戸市9区で実際に売買された「宅地(土地と建物)・住宅地」を取り出しました。2024年第4四半期から2026年第1四半期までの1,651件で、うち前面道路の幅が記録されているのは1,639件です。

区ごとに相場そのものが違うので、単純に平均を比べると誤読します。そこで1件ずつの1平方メートルあたりの単価を、その区の中央値で割った指数に直しました。区の相場が100です。

神戸市9区の家付き住宅地1,639件を前面道路の幅で4段階に分け、区の中央値を100とした指数で比べた横棒グラフ
区の相場を100とすると、道が4m未満の家は56、6m以上の家は129

道が6m以上ある家は区の相場の129、4m未満の家は56。同じ区の中で比べても、道の幅だけで2.3倍の開きがあります。

取引総額の中央値で見ると、4m未満は995万円、6m以上は3,100万円でした。神戸で売れた家付き住宅地のうち、道が4m未満だったのは230件。1,639件の14.0%です。

区によって偏りもあります。前面道路が4m未満の家の割合は、兵庫区33.1%、長田区32.1%、中央区30.4%と続き、北区は2.9%、西区は6.0%でした。古い市街地ほど、狭い道に家が建っています。

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集計したのは「売買された家付きの住宅地」で、「相続が起きた家」ではありません。実家がこの分布のどこに入るかは、実家の道を測らないと決まりません。

道の幅が値段を動かす仕組みそのものは、別の記事で詳しく書いています(お盆に実家へ帰ったら、前の道の幅を測ってください)。ここでは、査定が割れたときにどう動くかに絞ります。

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「私道だから安い」は、神戸の数字では成り立ちませんでした

集計を始めたとき、私は「私道に面した家は安く売れているはずだ」と思っていました。神戸で売れた家付き住宅地1,651件のうち、前面道路が私道だったのは354件。5軒に1軒が私道です。

単純に比べると、そのとおりに見えます。私道の家の1平方メートルあたりの単価は122,500円、市道の家は200,000円。私道のほうが39%安い。

ところが道の幅をそろえると、この差はほとんど消えました。

前面道路が市道か私道かで価格が変わるかを、道幅をそろえて比べた図。4m未満では市道58・私道52とほぼ同じ
道の幅をそろえると、市道と私道の差はほとんど消える

前面道路が4m未満の家は、市道でも58、私道でも52。ほとんど変わりません。6m以上になると、市道128に対して私道138で、私道のほうが高いという結果でした。

39%の差の正体は構成でした。前面道路が4m未満なのは、市道では8.0%しかありません。私道では35.6%あります。安いのは私道だからではなく、私道は道が狭いことが多いからです。

読者

ということは、私道でも気にしなくていいんですか?

おかあさん

値段の話に限ればそうです。ただし私道は、通行や水道管の工事で他人の承諾が要る場面が別にあります。値段と手続きは分けて考えます。

正直に書くと、4m台だけは差が残っています。市道99に対して私道66。区で正規化したあとの数字なので、区どうしの相場の差では説明がつきません。私道185件のうち60件が垂水区に集まっているといった偏りは見えますが、原因はここまでの集計では特定できませんでした。

築50年以上の実家は、道の条件で2.4倍。16倍にはなりません

質問者の実家は築50年ほどです。同じ条件に絞ってみます。1976年以前に建った家付きの住宅地は360件、取引総額の中央値は850万円でした。

築50年以上の家付き住宅地の取引総額中央値。前面道路4m以上は1,000万円、4m未満は415万円で2.4倍の差
築50年以上の実家360件。道の条件が生む開きは2.4倍まで

前面道路が4m以上なら1,000万円(272件)、4m未満なら415万円(88件)。2.4倍です。

質問者が受け取ったのは800万円と50万円で16倍、解体費400万円を引いたあとの400万円と比べても8倍あります。神戸で実際に起きている取引で説明できるのは、2.4倍ぶんまで。残りは相場ではない何かです。

なお、更地にしてから売るか古家付きのまま売るかで神戸の売値がどう変わるかは、「更地にすると固定資産税が6倍」が怖くて残した実家は、神戸では4割安く売れていますにまとめてあります。

隣の建物と接近した路地の奥に建つ古い日本家屋
重機が入れるかどうかは、玄関の前ではなく、そこまで来ている道で決まる

根拠を出す義務は、買取のほうにはありません

ここからが、6件の回答に出てこなかった話です。

宅地建物取引業法の第34条の2に、こういう条文があります。e-Gov法令検索で全文を確認しました。

第三十四条の二 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。
 二 当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額
2 宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。

価額について意見を述べるなら、根拠を明らかにしなければならない。法律にそう書いてあります。

ただし、よく読むと条件が付いています。この義務が生まれるのは、売買または交換の媒介の契約を結んだときです。媒介、つまり仲介のことです。

質問者が受けたのは買取でした。買取は、不動産会社が自分で買主になる取引で、媒介契約を結びません。800万円と50万円の根拠を出させる条文は、買取のほうには置かれていないのです。

買取査定が違法だという話ではありません。聞いてはいけないという話でもありません。聞くのは自由で、答えるかどうかは相手に委ねられている、という状態です。

読者

だったら、聞いても無駄ということですか?

おかあさん

逆です。義務がある場所で聞けばいいのです。媒介で査定を頼めば、根拠を明らかにする側に回ってもらえます。

税金の計算のほうには、何%引くかが書いてあります

同じ「道の条件が悪い土地」でも、相続税の計算では引く割合が数字で決まっています。国税庁のタックスアンサーを2本、原文で確認しました。

私道の評価(No.4622)では、袋小路のようにもっぱら特定の人が通る私道は、私道でないものとして評価した価額の30パーセント相当額で評価します。不特定多数が通り抜ける私道なら、その価額は評価しません。

無道路地の評価(No.4620)では、道路に接していない宅地(接道義務を満たしていない宅地を含みます)について、計算した価額から「40パーセントの範囲内において相当と認める金額」を控除します。

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「無道路地は4割引き」ではありません。40%は上限で、実際に引けるのは接道義務を満たす最小限の通路を作る場合の、その通路部分に相当する金額です。また、旗竿地の細長い通路部分は私道30%評価の対象ではなく、奥の宅地と一体で評価します。

税金のほうには、道の条件ごとに引く割合が書いてあります。買取の査定額には、それがありません。同じ家について、片方には計算のきまりがあり、片方には無い。これが8倍や16倍の起きる場所です。

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私は、査定額の差を「値段の意見の差」と読まないほうがいいと考えています

ここからは私の見方です。

査定額が大きく割れたとき、まず頭に浮かぶのは「どちらが正しい値段か」だと思います。けれども今回の2社は、値段の意見が違ったのではなく、その家の使い道を別々に想定していました。A社は更地、B社は現状のまま転売。数字が違うのは当たり前です。

だから比べるべきは金額ではなく、その金額の裏にある前提だと考えています。「解体して更地で売る前提ですか、それとも古家付きのまま流す前提ですか」。この1問で、16倍の差は2つの別の見積もりに分解できます。

そのうえで私は、買取と媒介を最初から分けて使うのがいいと考えています。買取は早くて確実ですが、根拠を出す義務がない場所です。媒介で1社に査定を頼めば、根拠を明らかにする側に回ってもらえます。急いでいないなら、順番は媒介が先だと見ています。

事実として言えるのはここまでです。どちらの会社が正しかったかは、その家の道路種別を確かめないと誰にも分かりません。

査定が割れたら、7社目を探す前にやる3つのこと

ここからは、実家が神戸市内にある場合に、今日からできることです。3つとも無料で、実家まで行かなくてもできます。

1. 神戸市情報マップで、実家の前の道の種別を見る

神戸市は建築基準法上の道路の種別を地図で公開しています。「神戸市情報マップ>まちづくり>建築基準法指定道路情報」を開き、実家の前の道をクリックすると種別が表示されます。24時間公開で、申し込みも要りません。

表示されるのは次の区分です。

  • 法42条1項1号道路(道路法の道路。いわゆる公道)
  • 法42条1項2号道路(開発でできた道)
  • 法42条1項3号道路(もとからあった私道)
  • 法42条1項5号道路(位置指定道路)
  • 法42条2項道路(幅4m未満で、下がれば建て替えられる道)
  • 建築基準法の道路でない
  • 未判定

下の2つが出たら、そこが査定の割れる理由です。「建築基準法の道路でない」なら、その敷地には原則として建物を建て直せません。「未判定」なら、市がまだ判断していない状態です。

道路法上の公道か私道かは別の地図で、こちらは「神戸市認定路線網図」と「道路台帳平面図」で見ます。建築基準法の道路種別は建築住宅局建築指導部建築安全課、道路法上の公道・私道は建設局道路管理課と担当が分かれているので、聞く相手を間違えると話が進みません。

2. 4m未満だった場合に、窓口で聞くこと

地図に要注意路線のマークが付いていたら、窓口で確認します。神戸市の案内には、この情報は電話では答えていないと書かれています。住所または地番と、敷地の範囲を示した地図を持って行きます。

聞くのは次の3つです。

  • この道は建築基準法の道路にあたるか。あたるなら何号か
  • 2項道路なら、道路の中心線は確定しているか
  • 今の敷地のまま、建て替えの確認申請は通る見込みか

答えが「建て替えられる」なら、A社のような更地前提の査定が成立します。答えが「建て替えられない」なら、B社の言い分に理があります。ここが決まるまで、査定額どうしを比べても答えは出ません。

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窓口での紙図面の閲覧とコピーは2022年10月31日で終わりました。図面は自分のパソコンから印刷する形に変わっています。

3. 買取ではなく、媒介で1社に査定を頼む

道路種別が分かったら、その紙を持って媒介(仲介)で査定を頼みます。媒介契約を結べば、価額について意見を述べる側には根拠を明らかにする義務が生まれます。

このとき渡すのは、道路種別・土地の面積・建物の建築年の3つで足ります。逆に、こちらから「更地にする前提でお願いします」と決め打ちしないほうがいい。どちらの前提で計算したかを、相手に書いてもらうためです。

そのうえで買取の話に戻るなら、金額ではなく前提を並べて比べます。800万円と50万円ではなく、「更地で売る想定の800万円」と「古家付きで流す想定の50万円」として並べる。そうすれば、どちらを選ぶかは自分で決められます。

質問者の実家は、六軒並んだ一番奥にありました。奥かどうかを決めるのは玄関の位置ではなく、そこまで来ている道が建築基準法の何号なのかです。それは地図の1クリックで分かります。

売る・貸す・置いておくの順番から整理したい場合は、実家じまい完全ガイドを先に読んでください。

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国土交通省の成約データ/無料

よくある質問

実家の査定額が業者によって大きく違うのは、どちらかが嘘をついているからですか

必ずしもそうではありません。査定額は、その会社が想定する売り方によって変わります。解体して更地で売る想定と、古家付きのまま転売する想定では、同じ家でも金額が大きく変わります。金額を比べる前に、どちらの想定で計算したかを聞いてください。

買取の査定額の根拠を、業者に出させることはできますか

宅地建物取引業法第34条の2第2項は、価額について意見を述べるときは根拠を明らかにしなければならないと定めています。ただしこの義務は、媒介契約を結んだときのものです。買取(業者が自ら買主になる取引)では媒介契約を結ばないため、この条文は直接は適用されません。聞くことはできますが、答える義務はありません。

前面道路が私道だと、実家は安くしか売れませんか

神戸市9区で実際に売買された家付き住宅地1,639件を集計したところ、道の幅をそろえて比べると、私道と市道で価格の差はほとんどありませんでした。前面道路4m未満で市道58・私道52、6m以上で市道128・私道138です(区の中央値を100とした指数)。効いていたのは道の持ち主ではなく、道の幅でした。

神戸で、実家の前の道が建築基準法の道路かどうかを調べる方法はありますか

神戸市情報マップの「建築基準法指定道路情報」で、地図上の路線をクリックすると種別が表示されます。24時間公開で無料です。要注意路線のマークが付いている場合は、建築住宅局建築指導部建築安全課の窓口で確認します。この件は電話では回答していません。

出典と集計条件

  • 自前集計=国土交通省「不動産取引価格情報」。神戸市9区、種類「宅地(土地と建物)」・地区「住宅地」の1,651件(2024年第4四半期〜2026年第1四半期)。うち前面道路の幅の記載がある1,639件を使用。面積が「2000平方メートル以上」の丸め表記になっている件は除外
  • 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第34条の2=e-Gov法令検索の法令データより取得
  • 国税庁 タックスアンサー No.4622「私道の評価」/No.4620「無道路地の評価」(いずれも令和8年4月1日現在法令等)
  • 神戸市「道路の調べ方(インターネット)」(最終更新2024年10月1日)/「公道か私道か調べる」(最終更新2023年5月30日)
  • 引用した質問と回答=Yahoo!知恵袋 q11288874316(2023年11月13日投稿・回答6件)
  • 写真=Unsplash


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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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