🗨️「相続登記は義務化されたのに、地震で手続きできませんでした。過料を取られますか?」
熊本地震で災害救助法が適用された市区町村なら、期限内に登記できなかったことに「正当な理由」があるとして過料は科されません。あわせて相続放棄を決める期限も、令和9年3月31日まで延びています。
[不動産] この記事の要点
総務省熊本行政評価事務所が令和8年8月10日付で公表した「令和8年熊本地震により被災された皆様への生活支援窓口案内」(第6版)で、特定非常災害特別措置法に基づく相続関連の救済措置が示された。令和8年7月28日の熊本地震で災害救助法が適用された市区町村では、①相続放棄・限定承認の熟慮期間が令和9年3月31日まで延長、②相続登記・住所等変更登記が期限に間に合わなくても過料の対象外、③遺産分割の民事調停の申立手数料が令和11年6月30日まで免除、の3つが適用される。
2026年8月10日 発表
- 令和8年7月28日に災害救助法が適用された市区町村に住んでいた相続人
- 相続登記(原則3年以内)・住所等変更登記(原則2年以内)の期限に、被災で間に合わなかった人
- 被災した実家を相続するか放棄するか判断できていない人
- 遺産分割で家庭裁判所の調停を考えている人
この記事でわかること
- 相続登記・住所等変更登記が期限に間に合わなくても過料が科されない条件
- 相続放棄を決める期限が令和9年3月31日まで延びていること
- 遺産分割の調停にかかる手数料が令和11年6月30日まで免除されること
先に結論
- 相続登記(原則3年以内)・住所等変更登記(原則2年以内)の期限に、被災で間に合わなくても過料は科されない
- 対象は、令和8年7月28日に災害救助法が適用された市区町村
- 相続放棄・限定承認を決める熟慮期間も、令和9年3月31日まで自動的に延長されている
- 遺産分割の民事調停の申立手数料は、令和11年6月30日まで免除
- 過料を免れるのは自動ではない。遅れた理由が被災によるものだと法務局に説明できる状態にしておく必要がある
相続登記の義務化、被災地ではどうなるか
相続登記は2024年4月から義務化され、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。住所や氏名が変わったときの変更登記も2026年4月から義務化され、こちらは2年以内、5万円以下の過料です。当サイトでは相続登記の義務化と経過措置の期限、住所変更登記の義務化をそれぞれ別記事で取り上げてきました。令和8年7月28日の熊本地震では、この義務化された制度に被災地向けの救済が入っています。
総務省熊本行政評価事務所が令和8年8月10日付で公表した「生活支援窓口案内」(第6版)によると、特定非常災害特別措置法に基づき、災害救助法が適用された市区町村では、期限内に登記できなかったことについて「正当な理由」があるものとして過料が科されないとされています。
たとえば、実家が半壊して後片づけに追われ、遺産分割協議書を整えないまま3年の期限を過ぎてしまった、というケースを考えます。通常なら法務局から過料の通知が届く可能性がある場面ですが、罹災証明書などで被災の事実を示せれば、この救済の対象になります。
3つの救済措置
令和8年熊本地震で示された相続関連の救済は、次の3つです。対象はいずれも、令和8年7月28日に災害救助法が適用された市区町村です。
| 救済措置 | 通常の扱い | 被災地での扱い |
|---|---|---|
| 相続放棄・限定承認の熟慮期間 | 相続を知った日から3か月 | 令和9年3月31日まで延長(手続き不要) |
| 相続登記・住所等変更登記 | 3年以内・2年以内に申請しないと過料 | 被災による遅れは「正当な理由」として過料の対象外 |
| 遺産分割の民事調停 | 申立てのたびに手数料がかかる | 令和11年6月30日まで申立手数料を免除 |
相続放棄の期限も令和9年3月31日まで延びている
相続するか放棄するかを決める熟慮期間は、民法の原則では3か月です。地震で家が壊れ、借金の有無や建物の被害額を調べる時間が取れないまま期限を迎える人が出ないよう、対象区域に住んでいた相続人については、令和9年3月31日まで自動的に延長されています。手続きは不要で、条件に当てはまれば自動的に適用されます。対象になる人の条件や、区域の外に住んでいる場合の申立て方法は、別記事で詳しく整理しています。
登記の話と相続放棄の話は延び方が違います。放棄の熟慮期間は令和9年3月31日という具体的な日付まで一律に延長されるのに対し、登記の過料免除は期限そのものが延びるわけではなく、遅れても過料を科さないという扱いです。3年・2年という期限のカウント自体は止まっていません。
遺産分割で話し合いがまとまらないなら
相続人が複数いて分け方が決まらない場合、家庭裁判所の遺産分割調停を使う方法があります。通常は申立てのたびに収入印紙代がかかりますが、令和8年熊本地震の被災者については、令和11年6月30日まで申立手数料が免除されます。登記の期限に追われて分割協議を急ぐより、まず調停で決着をつけるという選択肢を、費用の面で取りやすくした措置だと考えます。
私はこの3つの措置をこう見ています
ここからは私の見方です。相続放棄の期限延長・登記の過料免除・調停手数料の免除の3つは、対応する順番を示していると考えています。まず放棄するか承認するかを決め、次に登記し、決まらなければ調停に進むという相続の一連の流れに、それぞれ被災地向けの手当てがついている形です。
相続登記の義務化は2024年に始まったばかりの制度で、被災地でどう運用するかという先例がまだ少ない分野でした。今回、熊本地震で「正当な理由」の対象に被災が明記されたことは、次に別の災害が起きたときにも同じ扱いが期待できる材料になると考えます。
生活・仕事にどう効くか
- 相続登記・住所等変更登記の期限:相続登記(原則3年以内、過料10万円以下)・住所等変更登記(原則2年以内、過料5万円以下)の期限に間に合わなくても、罹災が原因なら「正当な理由」があるとみなされ、過料は科されない。
- 相続放棄・限定承認を決める期限:通常3か月の熟慮期間が令和9年3月31日まで延長される。対象区域に住んでいれば手続き不要で自動的に適用される。
- 遺産分割の調停費用:家庭裁判所への民事調停の申立手数料が令和11年6月30日まで免除される。
結局どうすればよいか
- 自分(または相続する不動産)が、令和8年7月28日時点で災害救助法が適用された市区町村にあったかを確認する
- 登記が遅れている場合は、罹災証明書など被災の事実が分かる資料を保管しておく(法務局に説明する際の材料になる)
- 遺産分割がまとまらない場合は、申立手数料が免除されている令和11年6月30日までに家庭裁判所の調停を利用する
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
- 相続登記の義務化、経過措置の期限まで残り8か月。2027年3月31日を過ぎると過料の対象に
- 住所変更登記が2026年4月から義務化。引っ越し・改姓を放置すると5万円以下の過料に
- 被災した実家を相続するか迷っている人へ 放棄の期限が来年3月31日まで延びました
自分の場合を調べる(無料ツール)
- 災害リスク診断 — 住所から浸水・土砂・地盤のリスクを確認する
- 住所まるごとチェック — 住所の表記ゆれ・実在をまとめて確認する
- 不動産相場検索 — 市区町村ごとの土地・戸建て・マンション相場を見る
公式出典
- 総務省熊本行政評価事務所「令和8年熊本地震により被災された皆様への生活支援窓口案内」(令和8年8月10日 第6版)(2026年8月10日発表)
- 法務省「令和8年熊本地震の被災者である相続人の方々へ ~政令により延長された相続放棄等の熟慮期間は、令和9年3月31日までです。~」(2026年8月8日発表)
- 首相官邸「令和8年8月7日(金)持ち回り閣議案件」(特定非常災害の指定に関する政令ほか)(2026年8月7日発表)
更新履歴
- 2026年8月10日 初版を公開
※本記事は2026年8月10日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。


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