国が「ここは道路が冠水しやすい」と名前を出している場所は、埼玉県内に273か所あります。そのうち越谷市はわずか3か所。さいたま市41か所、加須市24か所、川口市18か所、久喜市17か所と並ぶなかで、人口34万人の越谷市が3か所です。
しかも、その3か所のうち2か所は、備考の欄に「アンダーパス部以外」と書かれています。地下道ではなく、ただ周りより低いだけの道という意味です。
2026年9月8日の夜、その越谷市に埼玉県内でいちばん強い雨が降りました。22時10分までの1時間で45.0ミリ。同じ夜、県の代表地点である熊谷は9.0ミリでした。
この記事でわかること
- ✓ 国のリストで越谷市は3か所。うち2か所は「アンダーパス部以外」=くぐる道ではない
- ✓ 越谷市は市内のどこも標高2.4〜5.9メートル。いちばん高い所と低い所の差が3.5メートルしかない
- ✓ 市が浸水実績図を出しているのは11回。総雨量200ミリ超が中心だが、136.0ミリで浸かった回もある
箇所数は国土交通省 関東地方整備局「令和8年度 道路冠水注意箇所リスト【埼玉県】」(令和8年6月10日現在)を1行ずつ数えたものです。標高は地先名の住所を国土地理院の標高データで引いた参考値で、冠水地点そのものの標高ではありません。
国のリストに載っている越谷市の3か所

| 地先名又は通称名 | 道路 | 備考 | 参考標高 |
|---|---|---|---|
| 川柳町一丁目地内(川柳町地下道) | 市道2340号線 | — | 3.4m |
| 越谷市南荻島 | 国道4号 | アンダーパス部以外 | 5.3m |
| 越谷市大成町七丁目(レイクタウン北交差点付近) | 国道4号東埼玉道路 | アンダーパス部以外 | 2.5m |
「地下道」という名前が付いているのは、川柳町地下道の1つだけです。残りの2つは国道4号の一部で、「アンダーパス部以外」=くぐる道ではない、ただ低い場所という扱いになっています。
読者
3か所しかないなら、越谷はむしろ安全なんですか
逆です。このリストは「くぐる道の名簿」なので、くぐる道が少なければ数も少なくなります。越谷市には鉄道や高速道路をくぐる市道がほとんどないから3か所なのであって、水が出ないという意味ではありません
比べてみると分かります。久喜市の17か所のうち8か所は「東北縦貫自動車道アンダーパス」で、東北自動車道をくぐる市道です。さいたま市の41か所も、岩槻区の13か所のうち10か所が同じ形をしています。数が多い市は、高速道路や線路をくぐる道が多い市だということです。
冠水した道で車が動けなくなったときに要るもの
JAFのテストでは、セダンが走れなくなる水深と、ドアが開かなくなる水深がほぼ同じでした。つまり止まった時点で、窓を割る以外に外へ出る方法がなくなります。車に置いておくものから挙げます。
水に浸かった車は、外からの水圧でドアが開かなくなります。割れるのは側面のガラスで、フロントガラスは合わせガラスなので割れません。グローブボックスの奥ではなく、座ったまま手が届く場所に置いてください。
119番も家族への連絡も、スマホが生きていることが前提です。水に落とすと沈んで探しようがなくなるので、浮く型かどうかがそのまま連絡手段の有無になります。入れたまま操作できます。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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越谷市は、市内のどこも標高2.4〜5.9メートル

では越谷市の危ないところはどこか。標高を引いてみると、答えの形が変わります。
市内11か所の代表点を国土地理院の標高データで引くと、いちばん低い増林で2.4メートル、いちばん高い大道で5.9メートル。市内の高低差は3.5メートルしかありません。
これは、ほかの市とはっきり違います。同じ手順で調べた静岡県磐田市は、国のリストに載る12か所だけで2.6メートルから81.0メートルまで散らばっていました。愛知県安城市は6.3〜23.0メートル。越谷には、水が出たときに上がっていける高台がありません。
標高は住所検索で得た代表点の値です。同じ町名のなかでも場所によって上下します。⚠️ 国土地理院の住所検索は、入力した地名が見つからないと近い別の場所を黙って返すことがあります(「越谷市大袋」「越谷市大相模」はどちらも大間野町が返りました)。上の11か所は、返ってきた住所が入力と一致したものだけを使っています。

では、実際に浸かってきたのはどこか
越谷市は「越谷市の浸水実績」というページで、過去11回ぶんの浸水範囲の図を公開しています。平成3年の台風18号から令和5年の台風2号まで、1回につき1枚のPDF(ピーディーエフ)です。
この11枚には、それぞれ総雨量と時間最大雨量が書き込まれています。並べるとこうなります。
| 名称 | 日付 | 総雨量 | 時間最大雨量 |
|---|---|---|---|
| 平成3年 台風18号 | 9月19日から21日 | 228.0ミリ | 24.0ミリ |
| 平成5年 台風11号 | 8月26日から27日 | 224.0ミリ | 24.0ミリ |
| 平成8年 台風17号 | 9月21日から22日 | 208.0ミリ | 23.0ミリ |
| 平成16年 台風22号 | 10月8日から10日 | 220.0ミリ | 21.5ミリ |
| 平成20年 8月末豪雨 | 8月28日から31日 | 143.5ミリ | 51.5ミリ |
| 平成21年 台風18号 | 10月8日 | 136.0ミリ | 61.5ミリ |
| 平成25年 台風26号 | 10月15日から16日 | 217.0ミリ | 35.0ミリ |
| 平成26年 台風18号 | 10月5日から6日 | 231.0ミリ | 24.5ミリ |
| 平成27年 台風18号 | 9月6日から11日 | 402.0ミリ | 53.0ミリ |
| 令和元年 台風19号 | 10月11日から15日 | 234.5ミリ | 34.5ミリ |
| 令和5年 台風2号 | 6月2日から4日 | 322.0ミリ | 53.0ミリ |
図の実物も1枚ずつ見ました。平成27年の台風18号(総雨量402.0ミリ)では、元荒川と新方川と大落古利根川に囲まれた市の中央部が、まとまって水色に塗られています。令和元年の台風19号では、せんげん台駅の西側や大吉調節池の西側が広く塗られていました。
市はこの図に「市民の皆さんからの情報や職員のパトロールを基に作成したものであり、全ての浸水実績を反映したものではありません」「浸水の深さについては不明です」と注記しています。また11枚は年によって縮尺も色づかいも違うので、面積を年ごとに比べることはできません。
越谷が浸かる雨には、2つの型がある

11回の表をよく見ると、性格の違う2つのかたまりがあります。
ひとつは総雨量が200ミリを超えた回。平成3年228.0、平成5年224.0、平成8年208.0、平成16年220.0、平成25年217.0、平成26年231.0、平成27年402.0、令和元年234.5、令和5年322.0。9回がここに入ります。時間最大雨量は21.5〜53.0ミリと幅がありますが、共通しているのは長く降り続いたことです。
もうひとつは短時間に強く降った回。平成20年の8月末豪雨(総143.5ミリ・1時間51.5ミリ)と、平成21年の台風18号(総136.0ミリ・1時間61.5ミリ)です。総雨量は11回のなかで最も少ないのに、1時間の強さは最も大きい。
平成21年の図を開くと、市の北部から南部まで20か所前後に青い囲みが入っていました。1日で136ミリしか降っていない日でも、1時間に61.5ミリが集中すれば、市内のあちこちで水が出るということです。
9月8日の夜は、どちらの型に近かったか
2026年9月8日の夜、アメダス越谷が観測したのは、15時から翌3時30分までの合計で90.0ミリ。最大は22時10分までの1時間で45.0ミリでした。
市の11回と並べると、1時間の強さでは11回中5番目に入ります。上回っているのは平成21年(61.5)・平成27年(53.0)・令和5年(53.0)・平成20年(51.5)の4回だけです。
一方で、合計の90.0ミリは11回のどれにも届きません。いちばん少ない平成21年の136.0ミリにも、46ミリ足りない。短時間の強さでは上位に入り、降り続いた量では届かなかった夜だったことになります。
市の11回の雨量は「江戸川河川事務所中川出張所」で測ったもので、アメダス越谷とは別の地点です。厳密に同じものさしではありません。ここで比べているのは、雨の型が近いかどうかであって、順位そのものではありません。
越谷の内水ハザードマップは、予測ではなく「実際に浸かった5回」
越谷市には内水ハザードマップがあります。ただし、ふつうのハザードマップとは作り方が違います。
市が公開している「越谷市内水ハザードマップ(浸水実績を活用)」(令和3年12月作成)は、シミュレーションではありません。平成21年・平成25年・平成26年・平成27年・令和元年の5回に実際に浸かった範囲を、地図の上に重ねたものです。
そして、いちばん大事なのは凡例の1行です。
色の濃淡は浸水回数を表したものであり、浸水の深さを表したものではありません
普通のハザードマップは色が濃いほど深いという意味です。この地図は違います。色が濃いところは「5回のうち何度も浸かった場所」です。深さではなく、繰り返しの回数を見る地図なのです。
読者
自分の家の色が濃かったら、どうすればいいんですか
まず「何回浸かったか」であって「何センチ浸かるか」ではない、と読み替えてください。深さを知りたいときは、市が別に作っている浸水シミュレーションのほうを見ます。総合防災ガイドブックの21ページに載っています

9月8日の夜、市内の3つの川はどこまで上がったか

越谷市内には、国土交通省が水位を測っている観測所が3つあります。古利根川の前波(ぜんなみ)、新方川(にいがたがわ)の増林(ますばやし)、元荒川の宮前です。10分ごとの値を追うと、こうなりました。
| 川 | 観測所 | その夜の最低 | そのあとの最高 | 上がり幅 |
|---|---|---|---|---|
| 古利根川 | 前波(越谷市前波) | 1.41m(20時50分) | 3.28m(9日3時50分・まだ上昇中) | +1.87m |
| 新方川 | 増林(越谷市増林) | 1.26m(20時20分) | 2.63m(23時50分) | +1.37m(3時50分は2.49m) |
| 元荒川 | 宮前(越谷市御殿町) | 1.29m(20時20分) | 2.14m(9日3時50分・まだ上昇中) | +0.85m |
新方川は23時50分に頭を打って、そこから下がりはじめました。ところが古利根川は、9日3時50分になってもまだ上がり続けています。アメダス越谷で雨が観測されなくなったのは0時20分ですから、それから3時間半がたっています。
雨は市に降ってから、水路と川をたどって下流へ動いていきます。降り終わったあとに水位が上がるのは、そのためです。「雨がやんだから終わり」ではありません。
この3つの観測所には、氾濫注意水位などの基準値が設定されていません。だから「あと何メートルで氾濫」という言い方はできません。ここで書けるのは、上がり幅と、まだ上がっているかどうかまでです。なお埼玉県が管理している市内の観測所(三野宮・西方・大吉調節池ほか)は、9月9日3時55分の時点で、8日18時20分より新しい値が入っていませんでした。
この住所は浸水しやすい場所ですか
越谷市の場合、洪水ハザードマップと内水ハザードマップは別々のPDFです。自分の住所がどう指定されているかを1枚ずつ確かめるのは、けっこうな手間になります。
住所を入れるだけで、洪水・内水・土砂・地震の指定をまとめて確認できるページを用意しています。
もし車で水に入ってしまったら

JAF(ジェイエーエフ)のテストでは、セダンが走れなくなる水深と、ドアが開かなくなる水深がほぼ同じでした。止まった時点で、窓を割る以外に外へ出る方法がなくなります。割れるのは横の窓です。フロントガラスは合わせガラスなので、ハンマーでも割れません。
越谷市の内水ハザードマップにも、同じ趣旨の注意書きが入っています。「歩ける深さは約50cm」「車での避難は控えて」。市が自分の地図の上に書いていることです。
水深がひざ下でも、流れがあれば大人でも歩けなくなります。50センチより深いときは、無理に移動せず、高いところで助けを待つほうが安全です。
同じ埼玉のほかの市
越谷と同じ手順で、埼玉のほかの市も調べてあります。
9月8日の夜に県内でどこにどれだけ降ったのか、国のリストが多い市とどうずれているのかは、県全体の記事にまとめました。
さいたま市の41か所を区ごとに数えた記事と、県が管理する13か所の地下道にカメラがあるかどうかを1つずつ確かめた記事もあります。
この記事のまとめ
- 国の道路冠水注意箇所で越谷市は3か所。川柳町地下道、国道4号 南荻島、国道4号東埼玉道路 大成町七丁目
- うち2か所は備考が「アンダーパス部以外」=くぐる道ではなく、ただ低い道
- 越谷市の標高は2.4〜5.9メートル。市内の高低差は3.5メートルしかない
- 市は11回ぶんの浸水実績図を公開している。総雨量200ミリ超が9回、短時間の強い雨が2回
- いちばん総雨量が少ないのは平成21年の136.0ミリ。ただし1時間61.5ミリで市内20か所前後が浸かった
- 9月8日の夜は1時間45.0ミリで、11回と比べると5番目に強い。合計90.0ミリは11回のどれにも届かない
- 越谷の内水ハザードマップは予測ではなく、実際に浸かった5回を重ねた図。色の濃さは深さではなく回数
- 9日3時50分の時点で、古利根川の前波(3.28メートル)と元荒川の宮前(2.14メートル)はまだ水位が上がり続けていた
公式出典
- 国土交通省 関東地方整備局「令和8年度 道路冠水注意箇所リスト【埼玉県】」(令和8年6月10日現在)
- 越谷市 建設部 河川課「越谷市の浸水実績」(11回ぶんの浸水実績図と雨量表)
- 越谷市「越谷市内水ハザードマップ(浸水実績を活用)」参考図(令和3年12月作成)
- 越谷市「越谷市洪水ハザードマップ」(利根川・江戸川・中川・綾瀬川・荒川・元荒川・新方川・大落古利根川)
- 国土交通省「川の防災情報」観測所10分値・観測所マスタ(前波・増林・宮前、2026年9月8日19時40分〜9月9日3時50分)
- 気象庁「アメダス10分値」越谷(2026年9月8日15時00分〜9月9日3時30分)
- 国土地理院「標高API」および「住所検索API」
- 越谷市「人口と世帯数(令和8年)」=総人口341,145人(2026年9月1日現在)
※本記事は2026年9月9日時点で公表されている情報にもとづきます。箇所数・雨量・水位は今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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