「家を買うときの重要事項説明で、津波の危険はちゃんと説明してもらえる」。そう思って契約に臨む人は多いはずです。説明の義務があるのは、その土地が「津波災害警戒区域」に指定されているときだけです。津波浸水想定図で家の場所に色が付いていても、区域の指定がない市町なら、重要事項説明の書面に津波は出てきません。
2026年10月15日に南海トラフ巨大地震の津波浸水想定を見直した兵庫県も、県のページで「現在、兵庫県内では同区域の指定はございません」と書いています。見直しの中身は兵庫県 津波浸水想定 見直し/浸水面積は3割減にまとめました。
先に結論
- ✓ 重要事項説明に出る津波の項目は「津波災害警戒区域の中か」の1つだけ
- ✓ 津波ハザードマップ・津波浸水想定図は、水害ハザードマップの説明義務の対象外
- ✓ 区域指定がない市町では、浸水想定は自分で地図を見て確かめる
説明される災害の項目
重要事項説明で災害について触れる項目は、宅地建物取引業法施行規則の第16条の4の3に並んでいます。売買でも賃貸でも、次の4つは共通です。
| 号 | 説明すること | もとになる法律 |
|---|---|---|
| 1号 | 造成宅地防災区域の中にあるか | 宅地造成及び特定盛土等規制法 |
| 2号 | 土砂災害警戒区域の中にあるか | 土砂災害防止法 |
| 3号 | 津波災害警戒区域の中にあるか | 津波防災地域づくりに関する法律 |
| 3号の2 | 水害ハザードマップ上のどこにあるか | 水防法 |
出典:宅地建物取引業法施行規則 第16条の4の3(e-Gov法令検索)。3号の2は2020年8月28日に加わった項目で、国土交通省はこれを「水防法に基づき作成された水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップ」と説明しています。
地図で調べたあと、家に置いておくもの
色がついていても、白でも、家に置くものは変わりません。自治体の備蓄は数日分が前提なので、最初の3日をしのぐ分は各家庭で持っておくものとされています。
一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。
飲料水は1人1日3L。4人家族の1週間分で84L=2Lボトル42本なので、6本入りだと7ケースぶんです。5年保存タイプなら入れ替えの手間が減ります。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
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津波マップは対象外
3号の2の水害ハザードマップに、津波は入っていません。津波の浸水想定は水防法ではなく、津波防災地域づくりに関する法律で作られるからです。
堺市は宅建業者向けのページで、これをはっきり書いています。洪水・高潮・土砂災害のハザードマップは説明の対象、内水と津波のハザードマップは対象外。津波については「市に津波災害警戒区域の指定がないため」が理由です(2026年6月2日更新)。
読者
海の近くの家なのに、津波のことを何も言われなかった。説明漏れじゃないの?
区域の指定がない場所なら、説明しなくても義務違反にはなりません。だから、言われなかったことは「安全」の意味ではないんです。想定図は自分で見るしかありません。
指定のある所・ない所
津波災害警戒区域は、都道府県が津波浸水想定をもとに指定します。指定は、最大クラスの津波で命に危険が及ぶおそれのある範囲で、警戒避難の体制をつくるためのものです。この区域に入っても、家を建てることは制限されません。
指定の進み具合は地域でばらばらです。宮城県は2026年3月に沿岸15市町を指定し、福島県は2025年3月に沿岸10市町を指定しました。一方で兵庫県と堺市は、ここまで見たとおり指定がありません。同じように海に面した町でも、重要事項説明に津波が出る所と出ない所があります。
自分で確かめる手順
- 市町村か都道府県の「津波浸水想定図」「津波ハザードマップ」で、家の場所の色を見る
- 色が付いていたら、凡例で浸水深を読む(0.3mと2mでは、家の被害がまるで違う)
- 津波が来るまでの時間を、同じ資料の「到達時間」の表で見る
- 不動産会社には「津波浸水想定ではこの場所は何mか」と聞き、答えをメールなど文字で残してもらう
兵庫県の住所検索(CGハザードマップ)は更新準備中で、10月15日の時点では前回の想定が表示される、と県は書いています。新しい想定は、県のページにある市町ごとのPDFで見るのが確実です。
浸水深の数字が家のどこまでにあたるかは、浸水深 0.5m 3m 5m/家のどこまで浸かるで図にしています。
売主の告知とは別の話
重要事項説明は不動産会社の義務で、売主が「過去に浸水したことがある」と伝える告知とは別のものです。過去の浸水を黙って売った売主に賠償を命じた判決は、浸水 告知義務/黙った売主に237万円の判決で取り上げました。
津波は、起きたことのない土地でも想定が出ます。過去に何もなかった土地ほど、売主の告知にも重要事項説明にも出てこないまま、契約まで進みます。地図を1枚見る手間は、その穴を埋めるためのものです。
この記事は2026年10月15日時点の法令と、各自治体のページにもとづいています。区域の指定は追加されることがあるので、契約前に都道府県のページで最新の指定状況を確かめてください。
出典
- 宅地建物取引業法施行規則(e-Gov法令検索)
- 国土交通省 報道発表(2020年7月17日)
- 堺市「宅地建物取引業者の皆様へ」
- 兵庫県「南海トラフ巨大地震津波浸水想定図(令和8年度実施)」
- 宮城県「津波災害警戒区域の指定について」
- 福島県「津波災害警戒区域」
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