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親名義のままの実家の固定資産税 届いた人が払う人とは限りません 過料10万円はもう1枚の届出です

実家の名義が親のまま止まっていても、固定資産税の納付書は止まりません。神戸市の住宅地なら土地の分だけで年37,200円(中央値)が誰かの家に届き、そのうえ市に出す紙は2枚あって、片方を出さないと10万円以下の過料があります。

2025年7月、Yahoo!知恵袋にこの疑問が出ました。回答は5件つきましたが、5件とも同じ1枚の紙の話をしています。過料が書いてあるのは、誰も名前を出さなかったもう1枚のほうです。

この記事でわかること

  •  納付書を受け取る「相続人代表者」と、納税義務者を届け出る「現所有者」は別の届出
  •  過料10万円があるのは現所有者申告のほう。神戸市の期限は知った日の翌日から3か月を経過した日まで
  •  代表者に指定されても、払う義務は相続人全員が連帯で負う
目次

「固定資産税は初期の所有者の名前のまま、初期の所有者の住所に送付されるのですか?」

質問者は当事者ではありません。近所で見聞きした話を書いています。

相続を済まさないままだったら固定資産税は誰の名前でどこに送付されるのですか?

知り合いの近隣で相続が揉めたままで何代もになり何人もの相続人になって一層話が進まなくなっていることを聞きました。

ついた回答は5件。ベストアンサーは選ばれていません。いちばん詳しい1件は、自分の親族が亡くなったときの実体験を添えてこう書いています。

その場合は、役所側が勝手に相続人の中の1人を代表者として固定資産税納付書等を郵送してきます。

届け出なくても罰則はないので提出しない人も多いです。

残る4件も、向きは同じです。「法定相続人の代表者に納税通知がきます」「相続人の代表者のところに行きます」。市が指名する側に踏み込んだ2件は、こう書きました。

しない場合は、課税担当課が指名した人が新納税義務者になります

届を出さないとか、滞納が増えると、市町村が職権で名義を変え、納税通知を送ります。

住宅の外壁に取り付けられた赤い郵便受け。相続が済んでいない実家の固定資産税の納付書は、市が指定した相続人代表者の郵便受けに届く
納付書は「代表者」の郵便受けに届く。ただし、届いた人が払う人だと決まったわけではない

5人が話題にしたのは、全員が同じ届出です。神戸市でいえば「相続人の代表者の指定(変更)届出」。もう1枚あることに触れた回答はありませんでした

読者

納付書が届いた時点で、うちが払う人に決まったということですよね?

おかあさん

逆です。誰が払うかは、その紙とは無関係にもう決まっています。

代表者に指定されても、その人が全部払うわけではありません

根拠は地方税法第9条の2です。この条文が指定させているものを、そのまま読みます。

被相続人の地方団体の徴収金の賦課徴収(滞納処分を除く。)及び還付に関する書類を受領する代表者

条文に書いてあるのは「書類を受領する代表者」で、納税する代表者ではありません。神戸市の案内も同じ言葉づかいで、代表者を指定する目的を「神戸市税に関する書類を受領する代表者を指定するため」と書いています。

では誰が払うのか。同じ地方税法の第343条第2項が、名義人が亡くなっている場合の納税義務者を決めています。

同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。

「同日」は賦課期日、つまり1月1日です。この日に現に所有している人が納税義務者で、市が選ぶ余地はありません。だから回答にあった「新納税義務者になります」「市町村が職権で名義を変え」は、条文の順序とは向きが違います。市が動かせるのは書類の送り先だけです。

そして相続登記が済んでいなければ、実家は相続人全員の共有です。共有物の税金の扱いは第10条の2にあります。

共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。

連帯なので、市は誰か1人に全額を請求できます。回答の1つが書いた「相続者全員に均等で納税通知を按分させて納税せよという形にはなりません」は、この意味では当たっています。もっとも正確だったのは、次のように書いた1件でした。

相続人代表者に指定された人だけが固定資産税納付の義務を負うわけではなく、あくまでも納付書を受け取るという立場です。

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兄弟の1人が立て替えて払った分を、あとで他の相続人に請求できるかは民法の話で、市の窓口では扱いません。

1年そのままにすると、いくら届くのか

金額を出してみます。2026年の地価公示から神戸市9区の住宅地280地点を取り、区ごとの中央値に0.7を掛けて固定資産税評価額の目安にしました。土地の広さは、神戸市内で実際に売買された家付き宅地1,651件の中央値である130平方メートルを使っています。住宅が建っていれば200平方メートルまでは小規模住宅用地なので、課税標準は固定資産税で6分の1、都市計画税で3分の1になります。税率は神戸市市税条例の1.4%と0.3%です。

神戸市9区の住宅地で、土地130平方メートルにかかる固定資産税と都市計画税の年額。灘区114,500円、中央区105,400円、東灘区103,000円、兵庫区61,100円、長田区47,200円、須磨区38,100円、垂水区35,100円、西区22,000円、北区19,400円。市全体の中央値は37,200円で、9区のうち6区は過料10万円より少ない
土地の分だけの年額。家屋の評価額は公表データから出せないので足していない

市全体の中央値は年37,200円。灘区は114,500円、北区は19,400円です。ここに10万円の線を1本引くと、9区のうち6区では、1年分の税額より過料10万円のほうが大きくなります。放置して積み上がるものと、紙を1枚出さなかったことへの過料が、同じ桁で並ぶということです。

なお、更地にしたり、空家等対策の特別措置法にもとづく勧告を受けたりすると、この6分の1が外れます。よく言われる「固定資産税が6倍」はこの6分の1が外れることを指していて、勧告の実数は別の記事で数えました(空き家は「放っておくと固定資産税が6倍」? 去年その勧告が出たのは全国978件)。

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揉めている家では、代表者の届出が出せません

質問者が見聞きしたのは「相続が揉めたまま」の家でした。この状態では、5人が勧めた届出そのものが出せません。書き方が地方税法施行令第2条第2項に決まっているからです。

同項後段の相続人が連署した文書でしなければならない。

連署です。相続人全員が名前を並べて署名しないと、代表者の届出は成立しません。話ができない家ほど、この紙は出せなくなります。

そこで用意されているのが第9条の2第2項です。相続人や相続分が明らかでないまま届出が来ないときは、市長のほうで決められます。

相続人の一人を指定し、その者を同項に規定する代表者とすることができる。

誰が選ばれるかにも目安があり、施行令は被相続人と同じ住所だった相続人や、納付に便宜のある人から定めるとしています。回答者の1人が書いた「持ち分が多い、不動産の所在地と同じ自治体に住んでいると狙われる」は、条文の言葉に直せばこの部分です。実感としては当たっていました。

読者

じゃあ、揉めているうちは何も出せないということですか。

おかあさん

いいえ。連署が要らないほうの紙が、もう1枚あります。しかも出さないと過料がつくのはそちらです。

罰則があるのは、5人とも名前を出さなかった紙のほうです

2020年度から、地方税法に第384条の3という条文が入りました。名義人が亡くなっているとき、その土地や家屋を所有している人を「現所有者」と呼び、市町村が申告させることができるという条文です。期限の書き方はこうなっています。

現所有者であることを知つた日の翌日から三月を経過した日以後の日までに

「させることができる」なので、条例がなければ義務になりません。神戸市は市税条例第44条の4でこれを置き、期限を「現所有者であることを知つた日の翌日から3月を経過した日までに」と、法律が許す最短にそろえました。出さなかったときは同じ条例の第47条です。

その者に対して10万円以下の過料を科することができる。

市のページにも同じことが書いてあります。「申告をしなかった場合、10万円以下の過料が科されることがあります。」。金額は一律ではなく、条例は「前項の過料の額は、情状により、市長が定める。」としています。さらに、嘘を書いた場合は過料では済みません。地方税法第385条が「一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。」と定めています。

神戸市に出す2枚の届出の比較。相続人の代表者の指定(変更)届出は書類を受領する代表者を決めるだけで罰則がなく、相続人全員の連署が必要。固定資産現所有者申告書は現に所有している者を届け出るもので、期限は知った日の翌日から3か月を経過した日まで、出さないと10万円以下の過料、虚偽なら1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
納税義務そのものは、どちらの紙とも関係なく相続人全員が負う

5件の回答が言っていた「罰則はない」は、代表者の届出については正しい説明です。ただ、罰則のあるもう1枚が同じ相続で同時に走っていることは、5件のどこにも出てきませんでした。

神戸市は2枚、太宰府市は1枚

神戸市の様式を見ると、その紙が何をする紙なのかがはっきり書いてあります。表面の1行目に、地方税法第384条の3および神戸市市税条例第44条の4に規定する現所有者として申告する、という文言が印刷されています。そして代表者を書く欄の下に注意書きがあります。

代表者は今後、納税通知書の送付を受ける方になります。

つまり現所有者申告書を出せば、送付先もそこで決まります。裏面は他の現所有者を書く欄で、7人分あります。表の代表者と合わせて8人。それでも足りない家のために、こう添えられています。

本紙でも書ききれない場合は、さらに用紙を追加してください。

窓付きの白い封筒が並んでいる。市税の納付書や申告書は郵送でやりとりする
提出は郵送でもできる。神戸市では代表者の届出と現所有者申告で、送り先の課が別になっている

神戸市はこの2枚を別々のページに置き、提出先の課も分けています。いっぽう、1枚にまとめている市もあります。福岡県太宰府市の様式は「相続人代表者指定届兼固定資産現所有者申告書」という名前で、市の説明はこうです。

どちらも相続人に提出していただくものであることから、1枚の様式になっています。

東京都国立市も同じ形で、しかも申告のあとに何が起きるかを先に書いています。

共有財産として法定相続人全員が現所有者として連帯して納税義務を負うことになります。

同じ様式は座間市、相模原市、東村山市、鹿児島市、御殿場市でも使われています。2枚か1枚かは市によって違いますが、義務の中身は同じです。神戸市に実家がある人は、2枚あることを自分で知っておく必要がある、ということになります。

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3か月と3年、どちらも過料10万円

親が亡くなったあと、実家について期限のある手続きは3つ並びます。

  • 相続の放棄や限定承認は、民法第915条第1項で「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に」
  • 現所有者の申告は、神戸市市税条例で知った日の翌日から3か月を経過した日まで。出さないと10万円以下の過料
  • 相続登記は、不動産登記法第76条の2第1項で「当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。」。怠れば同法第164条で「十万円以下の過料に処する。」

同じ10万円が2つあって、期限は3か月と3年で12倍違います。ただし、この2つは重ならないように作られています。神戸市のページには「相続登記をされた場合は申告の必要はありません。」とあり、放棄した人についても「相続放棄をされた場合は申告の必要はありませんが、相続放棄申述受理通知書(写し)を本市に提出してください。」と書かれています。

先に来る3か月の義務は、あとから来る3年の義務を先に片づけてしまえば消えます。逆に言えば、3か月で登記まで終わらない家だけが申告する側に回ります。名義変更が2回分になるような家は、まさにそこに当たります(父名義のまま母も亡くなった実家、名義変更は2回分かかる?)。相続登記そのものの期限は相続登記の義務化、経過措置の期限まで残り8か月にまとめてあります。

!
神戸市のよくある質問には「年内に登記ができない場合」に現所有者申告書を出すようにという案内もあります。条例の期限は3か月なので、年内でよいという意味には読まないでください。

私はこう見ています

2枚の紙が読者の中で1つになっているのは、検索の窓を見ると分かります。この記事を書いた日に調べたところ、「現所有者申告」と打った人へのサジェストには「現所有者申告書 相続人代表者」が並び、「相続人代表者指定届」と打った人へのサジェストには「相続人代表者指定届兼固定資産現所有者申告書」が出てきます。読者はすでに、2枚を1つの手続きとして探しています。1枚にまとめた市が増えているのは、その実態に合わせた結果だと私は見ています。

もう1つ、気になった非対称があります。神戸市市税条例の全文を機械で数えると、「相続人代表」も「相続人の代表」も0回でした。市が案内している代表者の届出は、条例に条文がありません(根拠は地方税法と施行令です)。条例に条文があるのは、過料のあるほうだけです。市が力を入れて条例に書き込んだのは納税義務者を確定させる紙のほうで、送付先を決める紙は法律の運用にとどまっている。この差は、市がどちらを取りこぼしたくないかを表していると考えます。

そのうえで、実務としては順番が逆のほうが楽です。連署が要らず、送付先も同時に決まり、過料の対象でもある現所有者申告を先に出す。代表者の届出は、話がついた家が整えるための紙だと割り切ってよいと私は考えます。

この記事のまとめ

  • 納付書が届いた人が納税義務者になるわけではない。義務者は1月1日に現に所有している人で、相続人全員が連帯して負う(地方税法第343条第2項・第10条の2)
  • 相続人代表者の届出は「書類を受領する代表者」を決めるだけ。相続人全員の連署が要り、出さなくても罰則はない(地方税法第9条の2、同施行令第2条)
  • 現所有者申告は出さないと10万円以下の過料。神戸市の期限は知った日の翌日から3か月を経過した日まで(神戸市市税条例第44条の4・第47条)
  • 神戸市の住宅地では、土地の分だけで年37,200円(中央値)。9区のうち6区は、この年額より過料10万円のほうが大きい
  • 3か月以内に相続登記まで終われば、現所有者申告は不要になる

納付書の見方そのものは固定資産税の課税明細書はどこを見る?に、納期に遅れたときの計算は固定資産税 延滞金にまとめています。

出典

  • 地方税法(昭和25年法律第226号)第9条の2・第10条の2・第343条・第384条の3・第385条・第386条(e-Gov法令検索、2026年9月8日確認)
  • 地方税法施行令(昭和25年政令第245号)第2条(e-Gov法令検索、2026年9月8日確認)
  • 神戸市市税条例 第36条の4・第44条の4・第47条・第179条(神戸市例規集、2026年9月8日確認)
  • 神戸市「現所有者の申告制度」ページID38616(2025年10月30日更新)/「固定資産現所有者申告書」様式
  • 神戸市「相続人の代表者の指定(変更)届出」ページID3600(2026年9月1日更新)
  • 神戸市よくある質問 No.2240「納税義務者が死亡したが、手続きが必要か」/No.254「土地(家屋)の所有者が死亡したときの固定資産税の手続きは?」
  • 太宰府市「相続人代表者指定届兼固定資産現所有者申告書とは」ページID0026818(2026年4月1日更新)/国立市「相続人代表者指定届(兼固定資産現所有者申告書)」(2025年9月10日更新)
  • 民法(明治29年法律第89号)第915条/不動産登記法(平成16年法律第123号)第76条の2・第164条(e-Gov法令検索、2026年9月8日確認)
  • 国土数値情報「地価公示」L01-26_28(2026年)住宅地・神戸市9区280地点/国土交通省「不動産取引価格情報」(2026年8月20日取得分)
  • Yahoo!知恵袋 質問番号 q13317411388(2025年7月12日投稿、回答5件)

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    この記事を書いた人

    ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
    その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
    契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
    実務全般に携わってきました。

    特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
    反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
    自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

    現在は子育てのため一線を退いていますが、
    これまでの実務経験を活かし、
    フリーランスとして不動産会社様向けの
    バックオフィスサポート業務を開始しました。

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    「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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