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父名義のまま母も亡くなった実家、名義変更は2回分かかる?

父が亡くなったときに実家の名義を変えないままにして、今度は母が亡くなった。この形で子が相続するとき、登記を父から母、母から子と2回に分けると、登録免許税も2回かかります。神戸市の住宅地で土地130㎡なら1回あたり44,700円、灘区なら137,500円です。

ただし2027年3月31日までは、この中間の1回が0円になる仕組みがあります。使えるのは、申請書に根拠の条項を1行書いた人だけです。

先に結論

  • 父の相続で誰が実家をもらうかを、いま生きている相続人で決めれば、母を通さずに登記は1件で済む
  • 母を通す形にしても、その中間の1回は2027年3月31日まで登録免許税が0円(租税特別措置法84条の2の2第1項)
  • 0円になるのは土地だけ。建物は対象外で、そちらは通常どおり0.4%かかる
  • 免税は自動では付かない。申請書に条項を書かないと課される。神戸市の住宅地なら1回44,700円、灘区137,500円、北区23,400円
  • 過料の通知が届く道は、法務省の資料では2つだけ。どちらも自分から登記を1件申請した人の道
  • 期限は2027年3月31日。今日から数えて219日
目次

「名義変更の費用も1回で済むし」と市役所で言われた

2024年8月、Yahoo!知恵袋に、10年ほど前に父が亡くなり家には母がそのまま住んでいる、という方の質問が出ています。父が亡くなった当時、市役所の窓口で「名義変更の費用も1回で済むし、支障がないから」と言われ、母が亡くなったときに子へ名義を変えればいいと勧められたそうです。閲覧2,218件、回答6件。義務化のニュースを見て、いま動こうとしている方でした。

この助言は、当時としては筋が通っています。父から母、母から子と2回に分ければ費用も2回ぶん。1回で済むならそのほうが安い、という話です。ただし2024年4月に相続登記が義務になり、この助言には期限が乗りました。そして期限のほかにもう1つ、同じ日に切れるものがあります。

「いったん母の名義にしてから?」で回答が3つに割れた

2024年6月、Yahoo!知恵袋に相続登記の質問が出ています。数年前に父が亡くなり、実家は父名義のまま。母と子3人で暮らしてきて、今度は母が亡くなった。子3人で実家を相続したい。書類は自分で作るつもりだ、という方です。閲覧は1,810件、回答が3件付きました。

質問はひとつに絞られていました。父名義から直接3人に相続できるのか、いったん父から母に移してから母から3人になるのか。死亡している母に一時的にでも名義が移るのか、という疑問です。

回答は3つに割れました。ベストアンサーは、母が相続したことにする必要はないので直接子へ相続させることが可能だ、という立場です。2人目は、中間を飛ばすかどうかで悩む必要はなく最初から1件の申請でできる、と書いています。3人目は、原則として中間は飛ばせないという建前があり今回はかなり微妙なので、司法書士か法務局の無料相談へ行くのがよい、という回答でした。

3件とも、登記を1回にするか2回にするかで、いくら違うのかには触れていません。質問者は自分で書類を作ろうとしている人です。手続きの形よりも先に、財布に効く話があります。

答えは「1件で済む」。母を間に入れなくていいから

父が亡くなった時点で、実家は母と子3人の共有状態になります。誰がもらうかは、まだ誰も決めていません。その話し合いをするのが遺産分割で、母が亡くなったいま、話し合いの席に着くのは子3人です。

ここで「父の相続では自分たち子のうちの誰か(または3人)が実家をもらったことにする」と決めれば、母は実家の持ち主として間に入りません。登記は父から子へ1件です。遺産分割協議書に署名するときの肩書きは、父の相続人であると同時に「亡母の相続人」でもある、という二重の書き方になります。

中間を飛ばせるかどうかという話が出てくるのは、母が実家をもらったことにする場合です。登記の実務では、間に入る人が1人にまとまるときは1件の申請で最後の人まで移せるとされています(昭和30年12月16日民事甲第2670号)。母が単独でもらったと決めるなら、この形に当たります。それ以外の形をどこまで1件にまとめられるかは、添付する書類の作り方で扱いが変わる部分なので、母を間に入れたい事情がある人は申請の前に管轄の法務局へ確認するのが確実です。

つまり3人目の回答者が言う「原則として飛ばせない」も、言い方としては間違っていません。ただしそれは母を間に入れると決めたときの話で、質問者はまだそこを決めていない段階でした。決めていない人にとっての答えは1件です。

母を間に入れても、その1回は0円になる

ここからが、3件の回答が触れていない部分です。

法務局は、相続で土地を取得した人がその登記をしないまま亡くなったとき、その人を名義人にするための登記には登録免許税を課さない、と公表しています。租税特別措置法84条の2の2第1項で、期間は平成30年4月1日から2027年(令和9年)3月31日までです。

今回はまさにこの形です。父から実家を相続した母が、その登記をしないまま亡くなった。だから父から母への1件は、税額ゼロで通ります。法務局は注記で、この登記のあと誰がその土地を相続するかは問わないとまで書いています。

ただし0円になるのは土地だけで、建物は対象外です。実家は土地と建物の2つですから、母を間に入れる形にすると、建物のぶんは2回ぶんの登録免許税がかかります。土地は無料、建物は有料という組み合わせになります。

神戸で土地130㎡なら、1回ぶんは44,700円

免税がどれだけの額を消しているのかを、神戸の数字で出します。

2026年の地価公示から神戸市9区の住宅地280地点を抜き、区ごとの1㎡あたりの中央値を出しました。相続登記の登録免許税は固定資産税評価額の0.4%で、宅地の固定資産税評価額は地価公示の7割程度が目安とされています(国土交通省「主な公的土地評価一覧」)。土地の広さは、神戸で売買された家付きの住宅地の中央値である130㎡を使いました。

神戸市9区の住宅地の地価公示中央値から計算した、土地130㎡の相続登記1回ぶんの登録免許税
2026年地価公示(住宅地)の区別中央値から計算。灘区137,500円、北区23,400円で6倍近い開きがある

一番高いのは灘区で137,500円、次が中央区126,600円、東灘区123,700円。一番低いのは北区の23,400円で、灘区とは5.9倍の差があります。神戸市全体では44,700円でした。

登記を1件にまとめられるなら、そもそもこの1回ぶんは発生しません。母を間に入れる形を選んだ人だけが、免税の条項に助けられて同じ金額に着地します。手続きの形が違っても土地の税額が同じになる、という状態は2027年3月31日までの期間限定です。

申請書に1行書かないと、免税は付かない

ここが自分で書類を作る人には一番効きます。法務局は、免税の適用を受けるには根拠となる法令の条項を申請書に記載する必要があり、記載がない場合は免税措置を受けられないと明記しています。

書くのは「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」の一文です。忘れたまま提出すれば、上の図の金額がそのまま課されます。灘区の実家なら137,500円、神戸市全体の目安なら44,700円です。窓口が気づいて教えてくれる制度ではありません。

同じ84条の2の2には第2項もあって、こちらは価額100万円以下の土地の相続登記を非課税にするものです。令和7年度の税制改正で対象が全国の土地に広がりました。実家のほかに山林や畑が出てきたときに効きます。書く条項は「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」で、第1項とは別の一文です。

同じ日に終わるものが、もう2つある

2027年3月31日という日付は、相続登記の期限としてはすでに知られています。2024年4月1日より前に起きた相続については、この日までに登記をしないと10万円以下の過料の対象になります。期限そのものについては相続登記の義務化、経過措置の期限まで残り8か月にまとめました。

見落とされやすいのは、同じ日に登録免許税の免税措置も2つとも終わることです。

2027年3月31日に、相続登記の申請期限と2つの登録免許税免税措置が同時に終わることを示した時系列図
期限の話だけが広まっているが、同じ日に登記代がゼロになる仕組みも切れる

期限に間に合わせようとして駆け込むと、書類をそろえるのに時間がかかって、結局は免税の条項を書き忘れる。急ぐ理由が2つあるのに、片方しか知られていないのは、そういう順番でお金が漏れるからです。

今日は2026年8月24日で、残りは219日です。

過料の通知が届く道は、資料の上では2本しかない

過料10万円という数字だけが独り歩きしていますが、法務省の資料を読むと届き方はかなり限定されています。

登記官はまず、相当の期間を定めて登記を申請するよう催告します。催告しても正当な理由なく期間内に申請がなかったときに、地方裁判所へ通知する。この順番が不動産登記規則187条1号に定められています。いきなり過料の通知が来ることはありません。

そして、登記官が催告するきっかけとして挙げられているのは次の2つだけです。

きっかけ 中身
(1) 遺言に基づく所有権移転登記を申請したが、その遺言書には別の不動産も同じ人に相続させると書かれていた
(2) 遺産分割の結果に基づく相続登記を申請したが、その協議書には別の不動産も同じ人が相続すると書かれていた

どちらも、自分から登記を1件申請した人の道です。何も申請していない人のところへ、登記官が違反を見つけて訪ねてくる入口は、この資料には書かれていません。

私はこう見ています

この2つの入口は、正直に手続きを始めた人のほうに開いています。1件出したら残りも出してくださいという催促であって、放置している人を探しに行く仕組みではありません。だから「過料が来ないなら急がなくていい」と読む人が出ます。私はそこが分かれ目だと考えます。過料が来ないことと、放っておいて損しないことは別だからです。名義が父のままの家は売れません。担保にも入れられません。そして子3人のうち誰かが亡くなれば、次はその配偶者と子が話し合いに加わります。減るのは税金ではなく、決められる人の数のほうです。

なお、期限に間に合わないときの逃げ道として相続人申告登記があります。自分が相続人であることを申し出れば、それだけで期限は守れます。ただし法務省は、これは権利関係を公示するものではないので売却や抵当権の設定には別途相続登記が必要だと書いています。遺産分割がまとまったあとの登記義務も、この申告では果たせません。

219日でやること

やる順番は5つです。上から順に、迷いが少ないものから並べています。

  1. 父名義の不動産が実家だけかを確かめる。 2026年2月2日から所有不動産記録証明制度が始まっていて、亡くなった人が登記簿上の所有者になっている不動産を一覧で証明してもらえます。実家しかないつもりで進めて、あとから山林が出てくると協議書を作り直すことになります
  2. 父の相続で誰が実家をもらうかを、子3人で決める。 ここで母を間に入れないと決めれば、登記は1件です。協議書の肩書きは、父の相続人であると同時に亡母の相続人、という書き方になります
  3. 固定資産税の課税明細書を出して、評価額を見る。 登録免許税はこの評価額の0.4%です。手元になければ市税事務所で評価証明書が取れます
  4. 母を間に入れる形にするなら、申請書に条項を書く。 土地は「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」、価額100万円以下の土地は同条第2項です
  5. 売る予定があるなら、登記の前に値段を知っておく。 誰がもらうかを決める話し合いは、金額が分からないままだと進みません

区ごとの相場は自社のツールで確認できます。神戸市の住所を入れると、その地域で実際に成約した価格が出ます。

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出典と計算の前提

  • 法務省「相続登記の申請義務化について」(申請義務・過料・催告の端緒・正当な理由・相続人申告登記・所有不動産記録証明制度)2026年8月24日確認
  • 法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」(租税特別措置法84条の2の2第1項・第2項、期間、申請書への記載)2026年8月24日確認
  • 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(相続による所有権移転は1000分の4)
  • 国土交通省「主な公的土地評価一覧」(固定資産税評価額は平成6年以降、地価公示の水準の7割程度)
  • 国土数値情報「地価公示」2026年(L01-26_28)から神戸市9区・用途区分が住宅地の280地点を抽出し、区別に1㎡あたりの中央値を算出
  • 土地面積130㎡は、国土交通省の不動産取引価格情報(神戸市9区)で家付きの住宅地として売買された物件の中央値
  • 登録免許税の試算は、課税標準を1,000円未満切り捨て、税額を100円未満切り捨てで計算。建物の評価額は含めていない
  • 中間の相続人が1人のときに1件で申請できる取り扱いは、登記実務で昭和30年12月16日民事甲第2670号によるものとされています。通達の原文は確認できていません
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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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