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家が売れない理由 「買値より安く売るのは損」

「買値より安く売るのは損」と考えて売り出し価格を決めると、家が売れない理由の一つになりえます。

売れない間は、仮の数字で月4.3万円、1年で51.6万円(固定資産税、マンションなら管理費と修繕積立金、ローンの利息)が出ていきます。

目次

売れない原因は、症状で見分ける

家が売れない理由は、止まっている場所で見分けます。見る場所は、問い合わせ、内見、価格の話の3つです。

問い合わせが来ていないときは、見られていない可能性があります。最初に見るのは、写真、間取り図、掲載しているサイトの数です。私は、見られていない家は、値段を下げても気づかれにくいと考えています。

売り出しから数か月たっても他社経由の内見が一度もないときや、問い合わせの状況を聞いても具体的な数字の報告がないときは、囲い込みの疑いも確認できます。囲い込みは、他社からの買主の紹介を断って、自社だけで買主を探すことです。専任媒介か専属専任媒介で売り出しているなら、レインズ(業者間の物件データベース)の登録証明書で、売主が自分の家の取引状況を確認画面で見られます。一般媒介の場合は、レインズを運営する機構の事務局に問い合わせる形になります。手順は家が売れないのは「囲い込み」かも?売主がスマホで確認する方法に書きました。

内見は来るのに決まらないときは、物件の条件で止まっています。足りないのは、説明の材料です。最初に見るのは、内見の件数です。

家具のない明るい部屋。窓から日が差し、フローリングの床と白い壁が見える
売り出し中の空き家のイメージです(写真: Pexels)
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読者

問い合わせや内見の件数は、どこで分かりますか

おかあさん

不動産会社に聞きます。専任媒介なら2週間に1回以上、専属専任媒介なら1週間に1回以上、業務の処理状況を報告する義務があります。一般媒介には義務はありませんが、報告を求めることはできます。件数は数字で聞きます

内見のあとに金額の話が出ているときは、ここで初めて値下げが交渉になります。

値下げが必要と分かっても動けないときは、止まっている理由を先に特定します。残債が売値を上回っているなら、査定額から残債と売るときの費用を引き、足りない額を先に出します。残債の問題がなくても下げられないときは、私は、買った値段が基準になっていないかも確かめる価値があると考えています。

止まっている場所の見分け方は、不動産用語の「塩漬け物件」 原因は値段とは限らないにも書きました。次の節からは、買って手に入れた家で、買った値段が売り出し価格に与える影響を見ます。相続した家は対象外です。

買った値段を下回る売主を測った研究

経済学者2人の研究があります。2001年に学術誌に載りました。使ったのは、米国の1990年代のボストン中心部のコンドミニアム(日本でいう分譲マンション)のデータです。

調べたのは、買った値段より安くしか売れない状況にある売主が、売り出し価格をどう決めたかです。結果は次のとおりです。

赤れんがの集合住宅が並ぶ通りと、その奥に高層ビルが見える街並み
米国の集合住宅のイメージです。研究の物件そのものではありません(写真: Pexels)
  • 売り出し価格が、ほかの売主より高かった。上乗せ幅は、売れると見込まれる価格と買った値段の差の25〜35%分
  • 最終の成約価格も高かった。上乗せは同じ差の3〜18%分
  • 売れる確率は、ほかの売主より大きく低かった
!
25〜35%は、価格そのものの割合ではなく、差額の何割か、という数字です。たとえば差が400万円なら、100万円から140万円分、高く出す計算です。この400万円は説明用の仮の数字で、研究の実データではありません。

この研究は、売主が買った値段を基準点にしているとみて分析しています。研究者は、結果を1979年のプロスペクト理論と合うものとして説明しています。

この理論の考え方の一つは、人は同じ金額でも、得したうれしさより損したつらさを重く感じる、というものです。基準点を下回る結果は損、上回る結果は得と数えます。

?

読者

自分が住んでいた家だと、当てはまりやすいのですか

おかあさん

売り出し価格を高くする度合いは、自分が住んでいた売主のほうが投資家の約2倍でした。投資家にも同じ傾向は出ていました

ただし、これは米国の1990年代のデータです。日本の今の売主に、同じ割合でそのまま当てはまるとは限りません。

この記事が使うのは割合ではなく、向きだけです。買った値段を下回ることを避けたい売主ほど、売り出し価格が高くなり、売れにくくなる。その傾向が、一つの市場で測られました。

仮の数字で、1年待った場合を数える

買ったより安い価格で売ることを損と感じるのは自然です。ただ、相場が下がった分の損は、売り出す前にすでに起きています。

数字はすべて仮です。実データではなく、考え方を見るための例です。

  • 買った値段 … 3,500万円
  • いまの相場 … 3,000万円前後
  • 売り出し価格 … 3,500万円
  • ローン残高 … 1,800万円(年利1.2%)
  • 管理費・修繕積立金 … 月1.5万円
  • 固定資産税など … 年12万円

この例は、買った値段そのままで出した場合です。研究が測った上乗せは差の25〜35%分で、この例はそれより極端です。

買った値段と相場の差は500万円で、売り出し価格を3,500万円にしても消えません。買い手が比べる相手は、売主の買値ではなく、ほかの売り出し物件と相場だと私は考えています。

月に直した保有コストは、固定資産税など1万円(12万円÷12)、管理費・修繕積立金1.5万円、ローンの利息1.8万円(1,800万円×1.2%÷12)で、合計4.3万円です。

管理費・修繕積立金がなければその額が、ローンがなければ利息が、0円になります。ローンの元本の返済は、借金が減るだけで費用ではないので外しています。仲介手数料と税金は、どちらも3,000万円で売れる想定なので同じです。

3,500万円で1年待った場合と、最初から相場で出した場合を並べます。1年後に値下げして3,000万円で売れた、最初から3,000万円なら3か月で売れた、と仮定した話で、期間も仮置きです。

3,500万円で出して1年待つ 3,000万円で出して3か月で売る
売れるまでの月数 12か月 3か月
保有コスト(月4.3万円) 51.6万円 12.9万円
売れた価格 3,000万円 3,000万円
売れた価格から保有コストを引いた額 2,948.4万円 2,987.1万円

売れた価格が同じなら、差は保有コストの差で、51.6万円−12.9万円=38.7万円です。研究にあった成約価格の上乗せは、この例に入れていません。入れれば、差は縮みます。

?

読者

高めに出しておいて、あとで下げればいいのでは

おかあさん

下げる手はあります。ただ、下げるまでの月数ぶん、この例では1か月あたり4.3万円が出ていきます。待つことが誤りだとは言いません。相場の動きは、この記事では予測しません

買値に引きずられない3つの確認

売り出し価格を決める前に、次の3つを順に確かめます。

1. 相場の材料を見る。同じ地域で、自分の家と条件の近い家が、いくらで売り出され、いくらで売れたかを並べます。売り出し価格より、実際に売れた価格を重く見ます。かんたん相場検索では、住所を入れると土地・中古戸建て・マンションの坪単価の目安が出ます。

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2. 買値は過去。決められるのは、保有コストと売却後の手元。買った値段は変えられません。決められるのは、売れるまでに毎月出ていく額と、売ったあとに手元に残る額です。何がいくら引かれるかは、家の売却で手元に残る金額に、引かれる順に並べました。

\売ったあとの手元に残る額を、先に出しておく/

机の上に、電卓、グラフの載った書類、青いペンが置かれている
毎月出ていく額は、電卓で足してみると見えてきます(写真はイメージ)(写真: Pexels)

自分の家の手取りを試算してみる ›

無料で概算できます

3. 売り出し価格の根拠を、自分の言葉で言う。「この価格で出すのは、◯◯だから」と一文で言えるかを試します。◯◯が「買ったときの値段」だけなら、買値に引っ張られているサインです。査定を受けたなら、根拠にした成約事例を聞き、自分の家と何が違うかを見比べます。

私は、根拠が買った値段しか出てこないときは、価格を決める前に手を止める合図だと考えています。

売れない間も、固定資産税や管理費と修繕積立金、利息は同じだけ出ていきます。買った値段を気にするのは、不自然なことではありません。研究が測ったのは、その気持ちが売り出し価格に出る、という傾向です。「買値より安く売るのは損」と感じても、先に並べるのは相場の材料です。

出典

  • 経済学者2人(Genesove, D. / Mayer, C.)「Loss Aversion and Seller Behavior: Evidence from the Housing Market」Quarterly Journal of Economics 116(4)(2001年)1233–1260頁。NBER Working Paper 8143:https://www.nber.org/papers/w8143。データは米国の1990年代のボストン中心部のコンドミニアム。「売れる確率」は原文で sale hazard(一定期間あたりの成約の起こりやすさを表す指標)
  • 1979年のプロスペクト理論(Kahneman, D. / Tversky, A.)「Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk」Econometrica 47(2)(1979年):https://doi.org/10.2307/1914185
  • 専任媒介・専属専任媒介の業務報告の頻度は、宅地建物取引業法34条の2第9項
  • 登録証明書と売主向け確認画面は、東日本レインズ「媒介契約制度」:https://www.reins.or.jp/contract/
  • 問い合わせ・内見・金額の話の3段階の分け方は、当サイトの既存記事「不動産用語の「塩漬け物件」 原因は値段とは限らない」(/shiozuke-bukken/)と「家が売れないのは「囲い込み」かも?売主がスマホで確認する方法」(/kakoikomi-check/)の整理で、一次情報ではありません
  • 本文中の金額・利率・月数は、考え方を見るための仮の数字で、実データではありません

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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