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羽咋市はなぜ水につかりやすいのか 1985年には700ヘクタールが浸かった、潟を干拓した低地です

🗨️「羽咋市で水があふれたと聞いたけど、あそこはそんなに低い土地なの?」

低いです。住宅地の標準地でいちばん低いところは標高2.4mで、この平野はもともと邑知潟という水面を締め切って作った土地です。水は自然に流れ出るのではなく、8か所の排水機場のポンプで押し出しています。

[災害] この記事の要点

何が起きたか

2026年8月27日、石川県羽咋市と宝達志水町、中能登町を含む地域に記録的な大雨が降り、羽咋市では住宅の浸水や車の水没が相次いだ。気象庁のアメダスによると羽咋の降水量は27日0時から13時20分までで295.0mm、最大1時間降水量は82.0mmだった。

発表日・更新日

2026年8月27日 発表

影響を受ける人
  • 羽咋市・宝達志水町・中能登町の低い土地に住んでいる人
  • この地域で家や土地を買おうとしている人
  • 同じように潟や沼を干拓した土地に住んでいる人
目次

この記事でわかること

  • 羽咋市の平野がどれくらい低く、どれくらい平らなのか
  • この平野がもともと何だったのか(潟の干拓と排水機場8か所)
  • 1985年に700ヘクタールが湛水したあと、何が作られたのか

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先に結論。羽咋の平野は、山にはさまれた細長い低地です

羽咋市の平野は、東に石動山地、西に宝達丘陵をひかえた細長いくぼ地の中にあります。七尾湾から羽咋市まで北東から南西へのびるこの地形は邑知地溝帯(おうちちこうたい)と呼ばれ、羽咋市・宝達志水町・中能登町の3市町にまたがっています。2026年8月27日に大雨特別警報が出た4市町のうち、3つがこの帯の上に並んでいます。

どれくらい低いのかを、標高で測りました。国土数値情報の地価公示から羽咋市の住宅地の標準地を取り出し、それぞれの緯度経度を国土地理院の標高API(エーピーアイ)にかけた結果です。

標高所在価格(円/m²)
2.4m羽咋市大川町北新273番10,100
2.5m羽咋市島出町フ68番14,000
7.4m羽咋市御坊山町15番1515,000

いちばん低い地点と高い地点の差は5.0mしかありません。さらに、いちばん低い地点から下流側へ630m間隔で測っていくと、2.52km進んでも7.5mしか下がりませんでした。勾配にすると1/336、1km進んで約3m下がるだけです。水が集まったあと、傾きで押し出す力はほとんど期待できません。

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この平野は、水面を締め切って作られました

ここが他の低地と違うのは、もともと水だった場所を農地にした土地だということです。

邑知潟の干拓事業は昭和23年(1948年)に着工し、昭和43年(1968年)に完了しました。公有水面456haのうち、潟の中央に残存水域として82haを残して堤防で締め切り、374haを干拓して306haの農地を造成しています。いま地図で見える細長い水面は、かつての潟の一部です。

締め切った土地の水は、放っておいても海へ出ていきません。そのため、この地区には排水機場が8か所置かれています。越路野第1・第2、富永、鹿島路第1・第2右岸・第2左岸、邑知、余喜の8つです。羽咋の平野の水は、坂を下って海に出るのではなく、ポンプで押し出されています。

読者

ポンプがあるのに、どうして水があふれるんですか。

おかあさん

ポンプには出せる量の上限があるからです。降る量がその上限を超えると、地面の傾きでは助けてもらえない土地なので、行き場のない水がそのまま溜まります。

i 今回の冠水の原因を特定した記事ではありません。ここで書いているのは、この土地がもともとどういう成り立ちなのかです。

1985年には、邑知潟の周りで700ヘクタールが水に浸かりました

農林水産省北陸農政局の資料に、この地域の被害がはっきり書かれています。昭和60年(1985年)の梅雨前線豪雨により、邑知潟周辺で700haもの湛水被害が発生したという記述です。700haは東京ドームおよそ150個ぶんの広さにあたります。

これを受けて、国営総合農地防災事業「邑知地溝帯地区」が平成7年度から平成17年度まで実施されました。受益面積は3,430ha、事業費は決算額で13,254百万円(約132億円)です。作られたものは次のとおりです。

  • 羽咋川潮止水門(新設)1式
  • 余喜排水機場(改修・ポンプ増設)1か所
  • 羽咋川(改修)2.2km = 浚渫と護岸改修
  • 越路野堤(改修)1.3km = 嵩上げ
  • 富永堤(改修)0.4km = 嵩上げ

川をさらえ、堤を高くし、ポンプを増やし、河口に水門を作る。これだけの工事が必要だったこと自体が、この土地が水にどれだけ弱いかを表しています。事後評価では、事業実施後は被害発生なしと報告され、地元アンケートでも「農作物への水害・塩害が減った」に「そう思う」が55%でした。

今回、どれくらい降ったのか

気象庁のアメダスの10分ごとの値を、27日0時から13時20分まで積み上げました。

観測地点27日0時からの累計最大1時間降水量
羽咋295.0mm82.0mm(6時30分まで)
宝達志水211.5mm57.0mm(1時10分まで)

半日で295mmです。1時間に82mmという降り方は、傘が役に立たず、道路が川のように見える強さです。ポンプで押し出す土地に、この量が半日で入りました。

9年のうち3年、建物が浸かっています

国土交通省の水害統計調査で、羽咋市の2015年から2023年までの9年分を集計すると、3年で建物の浸水被害が記録されています(2017年・2018年・2022年)。累計は床上浸水5棟、床下浸水47棟、被害額は当年価格で約4.5億円です。床上浸水の多さで見ると、記録のある954市区町村のうち613位でした。

数字だけ見ると全国で目立つ市ではありません。ですが、この土地の「ふだんは平気」は、ポンプと堤と水門が働いているうえで成り立っています。私は、こういう土地でいちばん危ないのは、被害の少なさをそのまま土地の安全さだと読み替えてしまうことだと考えています。

読者

じゃあ、うちの場所はどうやって調べたらいいんですか。

おかあさん

3つとも無料で見られます。重ねるハザードマップ、治水地形分類図、市の洪水避難地図です。どれも住所か地図から探せます。

このエリアの相場はいくらですか?

住所を入れると、国の成約データから土地・戸建て・マンションの坪単価の目安が出ます。無料です。

自分の土地がどちらかを、無料で確かめる方法

  • 重ねるハザードマップ(国土地理院)… 住所を入れて洪水・内水・土砂の浸水想定を重ねて見る
  • 治水地形分類図(国土地理院)… その土地が干拓地・後背湿地・自然堤防・砂丘のどれかが色で分かる
  • 羽咋市の洪水避難地図… 羽咋川・子浦川の想定が市の公式サイトに載っている

買う前でも、住んでいる家でも、10分あれば3つとも見られます。低い土地に住むのが悪いという話ではありません。低いと分かっていれば、車をどこに逃がすか、いつ2階へ上げるかを先に決めておけます。

集計条件

国土数値情報「地価公示」2026年のうち用途が住宅の標準地を抽出し、各地点の緯度経度を国土地理院の標高API(5mレーザ測量のDEM(ディーイーエム・数値標高モデル))にかけて標高を取得した。石川県羽咋市は3地点。断面は最も標高の低い標準地を起点に、その軸上を630m間隔で測った。標準地の位置での値であり、市内すべての土地を表すものではない。

降水量は気象庁アメダスの10分間降水量を2026年8月27日0時から13時20分まで積み上げた速報値。水害被害は国土交通省「水害統計調査」市区町村別水害被害(表-3)を2015年から2023年まで集計したもので、2024年以降は確報が未公表のため含まない。

! 測ったのは地形であって浸水想定ではありません。この記事はハザードマップの代わりにはなりません。

生活・仕事にどう効くか

  • 自分の家がどちら側か:羽咋市の住宅地の標準地は最低2.4m・最高7.4mで、その差は5.0mしかない。同じ市内でも低い側か高い側かで、水が来るかどうかは変わる。
  • 土地を買うとき:干拓地や旧水面は登記や現況からは見分けにくい。国土地理院の治水地形分類図や自治体の洪水避難地図で、買う前に確かめられる。
  • 排水のしくみを知っておく:この平野の水は8か所の排水機場と羽咋川河口の潮止水門で海へ出している。雨が短時間に集まると、地面の傾きではなく排水の能力が上限になる。

結局どうすればよいか

  • 国土地理院の「重ねるハザードマップ」で自宅の住所を入れ、洪水と内水の浸水想定を見る
  • 羽咋市の洪水避難地図(羽咋川・子浦川)で、自宅がどの色に入るか確かめる
  • 国土地理院の治水地形分類図で、その土地が干拓地・後背湿地・自然堤防のどれかを見る

あわせて読む・調べる

くわしく知る(保存版の記事)

ほかに使える無料ツール

公式出典

更新履歴

  • 2026年8月27日 初版を公開

※本記事は2026年8月27日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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