🗨️「携行缶のガソリンって本人確認までしているのに、なぜ何回も買えてしまったの?」
本人確認と使用目的の確認は2020年2月から義務ですが、制度がやるのは「誰が・何のために買ったか」を店の記録に残すところまでです。申告された使用目的が本当かどうかを店が調べる手順は、国の運用要領に書かれていません。
[事件・事故] この記事の要点
2026年9月10日 発表
- 携行缶でガソリンを買ったことがある人
- 草刈り機や発電機の燃料を自分で買いに行く人
- ガソリンを容器で売り、販売記録を作っている事業者
9月10日時点で報じられていること
この事件でこれまでに伝えられている内容を、時系列で並べます。警察の発表として報じられたものと、取材で分かったとされるものが混ざっているので、出どころも一緒に書きます。
| いつ | 報じられている内容 | 出どころ |
|---|---|---|
| 9月5日 夜 | 岐阜県本巣市のケーキ店兼住宅から出火。店内には店主と同級生らが集まっていた | 報道各社 |
| 9月5日〜6日 | 焼け跡から2人の遺体。駐車場の車の中にいた70歳の男性も搬送先で死亡し、死者は3人に | 報道各社 |
| 現場 | ガソリンの携行缶と複数の刃物が見つかり、警察は殺人と放火の事件として捜査 | 報道各社 |
| 9月9日 | 焼け跡で見つかった男女2人の身元が判明したと報じられる | 報道各社 |
| 9月10日 | 死亡した70歳の男性が、事件の数日前から複数回ガソリンを購入していたと判明。使用目的は「草刈り機の燃料」と申告 | 地元テレビ局の取材 |
死傷者5人の内訳は、死亡が3人、負傷が2人です。亡くなった3人のうち2人は焼け跡から、1人は駐車場の車の中から見つかり、搬送先の病院で死亡が確認されました。
警察は、駐車場で見つかって死亡した70歳の男性が事件に関与した可能性があるとみて調べています。この男性が犯人だと発表されたわけではありません。
岐阜・本巣市ケーキ店火災 身元不明だった2人の遺体は店主の同級生と判明 ガソリン携行缶や刃物見つかる #FNNプライムオンライン #東海テレビ https://t.co/0qiQUBIYtK
— FNNプライムオンライン (@FNN_News) 2026年9月9日
事件の数日前から、複数回にわたって購入していた
9月10日に新しく報じられたのは、この男性のガソリンの買い方です。
報道によると、男性は事件の数日前から自宅近くのガソリンスタンドに携行缶を持ち込み、複数回にわたってガソリンを購入していたことが、捜査関係者などへの取材で分かったとされています。1回でまとめて買ったのではなく、日をまたいで何度か足を運んでいたことになります。
警察は、このガソリンが放火に使われた可能性もあるとみて関連を調べている、という段階です。買われたガソリンと現場に残っていたものが結びつくかどうかは、9月10日の時点では発表されていません。
申告した使用目的は「草刈り機の燃料」
もう一つ報じられたのが、購入したときに男性が答えた使用目的です。「草刈り機の燃料」と申告していたとされています。
この一言が記事に出てくるのは、店員が世間話で聞き出したからではありません。ガソリンを容器に詰め替えて売るとき、使用目的をたずねることが店側に義務づけられているからです。

そして「草刈り機の燃料」という答えは、制度の側から見ると変わった申告ではありません。むしろ国が想定している典型的な答えの一つです。その根拠になる資料を、次に見ます。
携行缶でガソリンを買うときに確認される3つ
2020年(令和2年)2月1日から、ガソリンを販売するために容器へ詰め替えるときは、次の3つが義務になっています。根拠は危険物の規制に関する規則第39条の3の2で、2019年7月に京都市伏見区で起きた爆発火災(京都アニメーションの放火事件)を受けた省令改正で加わりました。
- 本人確認 — 運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなど、公的機関が発行する写真付きの証明書の提示を求める
- 使用目的の確認 — 何に使うのかを店員が問いかけて確認する
- 販売記録の作成 — 販売日・氏名・住所・本人確認の方法・使用目的・販売数量を書き、1年を目安に保存する
記録を作るのは買う側ではなく売る側です。いつ、誰が、何のために、何リットル買ったのかは、店に残ります。制度そのものをもう少しくわしく知りたい人は、こちらにまとめてあります。
本人確認と使用目的の確認で、うその申告は止められるのか
確認する決まりがあるのに、なぜ何度も買えたのか。ここは消防庁が全国の消防に出した運用要領(消防危第197号・2019年12月20日)を読むと見えてきます。
使用目的の確認について、運用要領はこう書いています。顧客に対し使用目的の問いかけを行い、この場合において「農業機械器具用の燃料」「発電機用の燃料」等の具体的な内容を確認すること。「草刈り機の燃料」は、ここで求められている具体性をすでに満たしている答えです。
同じ通知の別紙には、販売記録の様式例が付いています。使用目的の欄はチェックボックスになっていて、並んでいるのは次の6つです。
- 農業用
- 林業用
- 工事・発電機用
- レジャー用
- 自家用(除雪等)
- その他
草刈り機の燃料は、このうち農業用か自家用に収まります。制度がはじめから想定している、ごく普通の申告です。
では、店の側が違反になるのはどこか。運用要領は「本人確認書類の提示等を拒否され、本人確認等が行えないにもかかわらず、詰替え販売を行った場合」を、消防法令に係る技術上の基準違反としています。裏返すと、身分証を出して具体的な使用目的を答えた相手に売ることは、この規定に当たりません。
疑わしい相手への対応も書かれています。氏名、住所、使用目的等を明らかにすることを拒否するなど、顧客の言動等に不審な点を感じた場合は、警察署へ通報するよう配慮されたいこと。「配慮されたい」という書き方で、申告が本当かどうかを店が調べる手順は用意されていません。
私はこの制度を、その場でうそを止めるためのものというより、買った人を後からたどれるようにするための仕組みだと読んでいます。根拠は3つです。条文が求めているのが確認と記録であって審査ではないこと。違反として名指しされているのが「確認できていないのに売った場合」であること。そして不審な言動への対応が、販売の拒否ではなく警察への通報の配慮として書かれていることです。
販売記録の保存が1年を目安とされている点も、この読み方と合います。記録は店ごとに作られるので、同じ人が別々の店で何回買ったかを突き合わせる仕組みは、運用要領には書かれていません。
まだ発表されていないこと
9月10日の時点では、次のことは分かっていません。どこかの媒体が書き落としているのではなく、警察が発表していない段階です。
- 購入されたガソリンが、実際にこの火災に使われたのかどうか
- 何リットルを何回、いくつの店で買ったのか
- 火が出るまでの当日の詳しい経緯
- 動機と、集まっていた人たちとの関係
このうち動機と人間関係は、警察がはっきりした発表をするまでここには書きません。捜査が続いている事件で、確認されていない話を並べても読む人の役に立たないからです。
2026年9月10日時点のまとめ
報じられていることと、まだ確認されていないことを分けて置きます。
| 報じられていること | まだ確認されていないこと |
|---|---|
| 9月5日夜に本巣市のケーキ店兼住宅で火災。5人が死傷(死亡3人・負傷2人) | 火が出るまでの当日の経緯 |
| 現場からガソリンの携行缶と複数の刃物。警察は殺人と放火の事件として捜査 | 買われたガソリンが火災に使われたかどうか |
| 死亡した70歳の男性が数日前から複数回ガソリンを購入し、使用目的は「草刈り機の燃料」と申告 | 購入した量・回数・店の数 |
| 携行缶での購入時は本人確認・使用目的の確認・販売記録が2020年2月から義務 | 動機と、集まっていた人たちとの関係 |
この記事の情報は2026年9月10日時点のものです。警察の発表で新しいことが分かれば、更新履歴に足したうえで書き直します。
生活・仕事にどう効くか
- スタンドでの手続き:携行缶で買うときは、写真付きの本人確認書類の提示・使用目的の申告・販売記録への記入がセットになる。車の燃料タンクへの給油では求められない。
- 店に残る記録:販売日・氏名・住所・本人確認の方法・使用目的・販売数量を店が書き、1年を目安に保存する。記録を作るのは買う側ではなく売る側。
- 災害のとき:震災・大雨や台風による風水害・長時間の停電など緊急やむを得ない場合は、この3つを省略できると運用要領に明記されている。
結局どうすればよいか
- 携行缶でガソリンを買うときは、運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなど写真付きの本人確認書類を持っていく
- 灯油用のポリ容器では買えない。消防法令に適合した携行缶を用意する
- セルフのスタンドでも、容器への詰め替えは従業員が行う。自分で入れられるのは車の燃料タンクまで
公式出典
- TBS NEWS DIG(CBCテレビ)【独自】死亡男性が「草刈り機の燃料」と申告し複数回ガソリン購入 岐阜ケーキ店放火5人死傷(2026年9月10日発表)
- Yahoo!ニュース トピックス「ケーキ店火災 複数回ガソリン購入」(2026年9月10日発表)
- 総務省消防庁「ガソリンの容器詰替え販売における本人確認等について」(2026年9月10日発表)
- 消防庁危険物保安室 消防危第197号「ガソリンを容器に詰め替えるときの確認等に係る運用要領について」(PDF)(2019年12月20日発表)
- 消防庁次長 消防危第186号「危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令の公布について」(PDF)(2019年12月20日発表)
更新履歴
- 2026年9月10日 初版を公開(情報は2026年9月10日時点)
※本記事は2026年9月10日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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