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賃貸 浸水/部屋は大家、家財は自分の保険

🗨️「借りている部屋が浸水したら、誰が直して、誰が払うのでしょうか」

床や壁、備え付けの設備を直すのは大家です。濡れた家具や家電は、借りている人が自分でかけた家財の保険でしか補償されず、その保険に水災が付いていなければ出ません。部屋の一部が使えない間の家賃は、使えない割合に応じて下がります。

[不動産] この記事の要点

発表日・更新日

2026年10月3日 発表

影響を受ける人
  • 床・壁・備え付けの設備を直すのは大家(民法606条)
  • 家具・家電・服は自分の家財保険。水災が付いていないと出ない
  • 使えない間の家賃は下がる(民法611条)。全部だめなら契約は終わる
目次

部屋を直すのは大家

「大家さんが保険に入っているはずだから、濡れた家具も直してもらえる」。大雨の翌朝、1階の部屋の床が濡れているのを見て、そう考える人は多いはずです。ところが大家がかける火災保険が守っているのは建物です。床や壁、備え付けのエアコンや給湯器は大家の側、ソファや冷蔵庫や服は借りている人の側に分かれます。

民法606条は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と定めています。浸水で傷んだ床や壁を直すのは大家です。借りている人の落ち度で傷んだときだけは例外ですが、大雨で水が入ってきたのは借りている人の落ち度ではありません。

浸水で傷んだもの直す・払うのは使われる保険
床・壁・天井・ドア大家大家がかける火災保険(建物)
備え付けの設備(エアコン・給湯器・キッチンなど)大家大家がかける火災保険(建物)
自分の家具・家電・服借りている人自分でかける家財保険(水災が付いているときだけ)

出典:民法606条。どれが備え付けの設備かは、賃貸借契約書と重要事項説明書の設備欄で決まる

借りている人の側の仕事は、知らせることです。民法615条は、修繕が要るときは「遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならない」と定めています。管理会社への連絡は電話だけで済ませず、メールや管理会社のフォームのように日付が残る形にして、水が来た高さと濡れた場所の写真を付けておきます。

知らせたのに直してもらえないときは、民法607条の2により、借りている人が自分で修繕できます。条件は、大家が「相当の期間内に必要な修繕をしないとき」か「急迫の事情があるとき」です。あとで費用の精算になるので、業者の見積もりを先に管理会社へ送っておくと、話がこじれません。

乾かすときと、次の雨の前に

床上でも床下でも、乾かすのに約1か月かかります。そのあいだ風を送り続ける道具と、次の雨で水を玄関から入れないための道具です。

サーキュレーター(DCモーター・静音・360°首振り)
サーキュレーター(DCモーター・静音・360°首振り)

床をはがしたあとの床下や壁の中は、窓を開けるだけでは空気が動きません。床の開口部に向けて風を送り続けると、乾くまでの1か月を短くできます。

吸水式 土のう袋(水で膨らむ・逆流防止にも使える)
吸水式 土のう袋(水で膨らむ・逆流防止にも使える)

土のうは砂を詰める前提の道具ですが、住宅街ではその砂が手に入りません。水で膨らむ型なら平たいまま棚にしまえて、玄関の段差にも、下水が逆流してくる風呂・トイレの排水口の上にも置けます。

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家財は自分の保険で

濡れた家具や家電を補償できるのは、借りている人が自分でかけた家財の保険だけです。賃貸の契約のときに不動産会社の窓口ですすめられて入った保険が、たいていこれに当たります。

確かめたいのは、そこに水災が入っているかどうかです。ネットで入れる賃貸向けの家財保険のひとつ、日新火災の「お部屋を借りるときの保険」は、補償の説明に「台風、暴風雨、豪雨等による洪水・融雪洪水・高潮・土砂崩れ等の水災によって生じた損害については補償されません」と書いています。賃貸向けの家財保険には、浸水を最初から補償しない商品があります。

大雨のあと、茶色い水に囲まれた住宅と庭
家具や家電が浸かったときに使えるのは、自分の家財保険だけです(写真はイメージ/Photo: Pexels)

セットで付いてくる借家人賠償も、浸水では出番がありません。同じ商品で借家人賠償が払われるのは、火事、破裂・爆発、そして洗濯機のホースが外れたような給排水設備の事故による水ぬれです。大雨で入ってきた水で部屋が傷んでも、借りている人が大家に賠償する話にはならないので、この保険を使う場面がないのです。

退去のときも同じ考え方です。民法621条は、借りている人が負う原状回復から「賃借人の責めに帰することができない事由」による傷みを外しています。浸水でできた床のしみや壁紙のカビは、条文上は借りている人の負担になりません。

保険証券のどこを見れば、水災が付いているか分かる?

補償の一覧に「水災」の行があるか、「補償されない損害」の欄に洪水や土砂崩れが並んでいないかを見ます。分からなければ、契約した代理店に「家財に水災は付いていますか」と聞けば一言で返ってきます

住めない間の家賃

床上まで水が来て一部の部屋が使えないなら、家賃は下がります。民法611条1項は、借りている人の責任ではない理由で一部が使えなくなったとき、家賃は「その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される」と定めています。2020年4月の改正前は「減額を請求することができる」でした。

どれだけ下がるかの数字は、法律にはありません。目安として、賃貸住宅の管理会社でつくる日本賃貸住宅管理協会が、設備が使えないときの減額の割合を出しています。電気が使えないと40%、水が使えないと30%、トイレが使えないと20%。使えなかった日数から準備にかかる日数(電気と水は2日)を引いて、日割りで計算します。協会は、台風や震災のように大家にも借りている人にも責任がない場合も減額が認められる、としています。ただし法的な拘束力のない目安です。

家賃7万円の部屋で、分電盤が浸かって電気が5日使えなかったとします。この目安では、7万円×40%×(5日−2日)÷30日=2,800円です。浸かった家電に電気を戻す前の注意は浸水した家 どうなる/家電とブレーカーにまとめています。

残った部屋だけでは暮らせないほどなら、611条2項で契約を解除できます。建物が全部だめになったときは、616条の2で賃貸借そのものが「終了する」ので、解除の手続きも要りません。どちらの場合も、預けた敷金は622条の2により、未払いの家賃などを差し引いた残りが返ってきます。

地震で壊れたときも同じ条文で動きます。条文ごとの整理は借りている家が地震で壊れたら家賃はどうなる?にあります。

引っ越し代と支援金

浸水した部屋を出るとき、引っ越し代を大家に出してもらえるかというと、大雨が原因なら出してもらう筋はありません。大家にも責任がないからです。

大家が前の浸水を知っていて黙っていたなら、話は変わります。賃貸の地下駐車場の例ですが、近い過去に集中豪雨で浸水して車に被害が出たことを知っていた貸主について、名古屋地裁は2016年1月21日、信義則上、借りる人に告げて説明する義務があったとして、浸水で車を傷めた借主への賠償を認めました(不動産適正取引推進機構の機関誌「RETIO(レティオ)」117号の紹介による)。

お金の面で頼れるのは国の支援金です。被災者生活再建支援法は、住んでいた家が全壊した世帯などに支援金を出し、これから家を借りて住む世帯にも加算があります。持ち家か借家かは問いません。

住んでいた家の被害2人以上の世帯1人の世帯
全壊・解体・長期避難150万円(基礎100万+借りる加算50万)112.5万円
大規模半壊100万円(基礎50万+借りる加算50万)75万円
中規模半壊25万円(借りる加算のみ)18.75万円

出典:被災者生活再建支援法3条。借りる加算は、公営住宅以外の家を借りて住む場合

ただし支援金が出るのは、10以上の世帯の住宅が全壊した市町村など、一定の規模を超えた災害だけです(同法施行令1条)。被害の区分は罹災証明書で決まり、罹災証明書は借りている人も申請できます。災害対策基本法90条の2は「被災者から申請があつたとき」に交付すると定め、広島市は案内に「住家の場合、建物の所有・賃貸は問いません」と書いています。

私は、賃貸に住む人が大雨の前にひとつだけ確かめるなら、家賃の減額よりも家財保険の水災の行だと考えています。家賃の減額は数千円から数万円の話で、支援金は全壊や大規模半壊まで行かないと出ません。床上浸水で冷蔵庫や洗濯機やベッドが一度にだめになったとき、埋められるのは家財保険だけです。1階や半地下の部屋で、ハザードマップに0.5m以上の色がついているなら、水災の付いた家財保険に入り直す理由は十分あります。

よくある質問

Q. 管理会社に連絡がつきません。自分で業者を呼んでいいですか。
A. 水が入り続けているような「急迫の事情」があれば、民法607条の2で借りている人が修繕できます。あとで費用を精算するため、呼んだ日時・頼んだ作業・領収書を残し、つながった時点ですぐ管理会社に伝えてください。

Q. 家賃の減額は、こちらから言わないと始まりませんか。
A. 611条1項は、請求を減額の条件にしていません。ただ、実際に家賃から差し引くには、使えなかった日数と範囲を管理会社と決める必要があります。使えなかった部屋と日付を、写真と一緒に記録しておいてください。

Q. 次に借りる部屋が浸水しやすいかは、教えてもらえますか。
A. 賃貸の重要事項説明でも、水害ハザードマップで部屋の位置を示すことが義務になっています。ただし中身の説明までは義務ではありません(重説 ハザードマップ/中身の説明は義務ではない)。地図にない過去の浸水は過去の浸水履歴を調べる方法で、近くの道路が冠水する場所は道路冠水マップで確かめられます。

借りる前の部屋や、いま住んでいる部屋の住所で浸水の深さを確かめるなら、下のボタンから浸水と土砂と地盤をまとめて見られます。

生活・仕事にどう効くか

  • 1階・半地下の部屋を借りている人:家財保険の補償の一覧に水災の行があるかを確かめます。無ければ、家具や家電が浸かっても保険金は出ません
  • 浸水したあとも住み続ける人:電気や水が使えなかった日数と、使えなかった部屋を記録しておくと、家賃の減額を管理会社と決めるときの材料になります

結局どうすればよいか

  • 管理会社へは、日付の残る形(メール・フォーム)で浸水を知らせ、水が来た高さの写真を付ける
  • 家財保険の証券で、水災が補償に入っているかを確かめる
  • 罹災証明書を市区町村に申請する(借りている人も申請できる)

\気になる住所を1つ入れるだけ/

災害リスクを住所で調べてみる ›

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公式出典

更新履歴

  • 2026年10月3日 初版を公開(民法・被災者生活再建支援法の条文、日本賃貸住宅管理協会のガイドライン、損保の補償説明を確認したもの)

※本記事は2026年10月3日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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