「防災リュックの用意なんていらないですよね?」——今年の1月、Yahoo!知恵袋にこの質問が投稿されました。ベストアンサーに選ばれたのは、持ち物のリストではありません。「自宅が、最初から罹災しないようになっていれば防災リュックの用意は要らないでしょう」という答えでした。
9月1日は防災の日です。この記事は、その日にやることを袋の中身ではなく「家の点検4つ」に絞ります。ハザードマップ、火災保険の証券、家具、袋の重さ。順番に見ていくだけで、家から一歩も出ずに終わります。
絞るのは、数字に理由があります。2026年7月に全国3,000名へ行われた調査で、災害への備えが「できていない」側の回答は合計74%。4人に3人です。リストを長くするほど、始める日が遠のきます。
この記事でわかること
- ✓ 備えが「できていない」人は74%。懐中電灯・非常食・水の用意はどれも3割台
- ✓ 防災の日にやるのは家の点検4つ——地図の色・証券の「水災」・家具・袋の重さ
- ✓ 火災保険で水災(浸水の損害)が付いている契約は61.8%まで下がっている(共済は含まない)
- ✓ 9月1日が防災の日になった103年前の震災では、死者の9割が火災だった
「全部やろう」だと続きません——備えが「できていない」人は74%です
クロス・マーケティングが2026年7月15日から17日に、全国の20〜79歳3,000名へ行った「防災に関する調査」では、災害への備えが「できていない」側の回答が合計74%でした。
項目ごとの実践は、さらに低く出ています。懐中電灯や乾電池、非常食、水の備蓄、避難場所の確認——どれも「やっている」は3割台にとどまりました。
| やっていること | 割合 |
|---|---|
| 避難場所までの移動時間を把握している | 34% |
| 地震保険(火災保険とセット)に加入している | 30% |
| 直近1年で地域の避難訓練に参加した | 11% |
4人に3人ができていないのは、怠けているからではなく「全部やろう」から始めるからだと私は見ています。今日やるのは4つだけ。全部、家の中で終わります。
| 点検 | 見るもの | どこで |
|---|---|---|
| 1. ハザードマップ | 家の場所に色が付いているか | 自治体の地図か住所検索 |
| 2. 火災保険の証券 | 補償一覧に「水災」の行があるか | 証券・契約内容のお知らせ |
| 3. 家具 | 寝る場所と逃げ道に倒れるものがないか | 寝室・廊下・玄関 |
| 4. 袋と備蓄 | 背負える重さか・置き場所はどこか | 玄関・押し入れ |
住まいのリスクに対する備え
土地の履歴やリスクを知ったら、次は「起きたときにどうするか」です。最低限そろえておくと動けるものを挙げます。
一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
停電時は懐中電灯より、部屋全体を照らせるランタンの方が使えます。電池でも充電でも点くものだと、どちらが尽きても止まりません。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
※ 本記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。紹介している商品は、記事の内容に関連するものを編集方針にもとづいて選んでいます。Amazonのアソシエイトとして、おかあさんのおうちは適格販売により収入を得ています。
点検1 ハザードマップ——住所で「家に色が付いているか」を見る
最初の点検は地図です。自治体が配る紙のハザードマップでも、市のサイトでも、住所を入れて調べるツールでもかまいません。見るのは、洪水・土砂災害・地震の想定で自宅の場所に色が付いているかどうかです。
色が付いていたら、想定の深さと避難先までの道をセットで確認します。色が付いていなくても、そこで終わりにしないでください。2026年8月の千葉の豪雨では、浸水・冠水の被害報告の55.7%が、浸水想定区域にも低い土地にも当たらない場所から届きました。
このずれが起きる仕組みは「ハザードマップ、気にしすぎでしょうか」——色のない場所から、被害報告の55.7%が届きましたに書いています。
読者
家を買うときに不動産屋さんから説明を受けたので、もう見なくていいですよね?
契約前の説明で示されるのは水防法にもとづく地図だけです。降った雨が下水道で流しきれずにあふれる「内水」の地図は別にあり、まだ作っていない市もあります。色も更新されるので、年に1回、防災の日を見直す日にしてしまうのが楽です。
点検2 火災保険の証券——補償一覧に「水災」の行があるか
2つめは書類を1枚開くだけです。火災保険では、暴風で屋根や窓が壊れた損害は「風災」、床上浸水や土砂崩れによる損害は「水災」と扱いが分かれていて、外せるのは水災のほうです。
損害保険料率算出機構の集計では、水災が付いている契約は2024年度末で61.8%。2013年度の76.9%から、全都道府県で下がり続けています。10軒に4軒近くは、浸水しても火災保険から水災の保険金が出ない契約ということです。
地震は別枠です。地震・噴火・津波による損害は火災保険だけでは出ず、セットで地震保険を付けます。付帯率は70.8%ですが、世帯加入率で見ると35.5%。冒頭の調査でも「地震保険に入っている」は30%でした。2つの数字の読み方は地震保険に入っている人はどれくらい?にあります。
61.8%も70.8%・35.5%も、損害保険の契約だけを数えた値で、共済や少額短期保険を含みません。共済に入っている場合は、水害・地震の保障の有無をご自身の証書で確かめてください。

読者
火災保険に入っているので、浸水でも地震でも出ますよね?
そうとは限りません。水災は外せる補償、地震は別契約です。証券の補償一覧で「水災」の行と地震保険の欄が生きているか。見るのはこの2行だけです。
点検3 家具——103年前の9月1日、死者の9割は火災でした
9月1日が防災の日なのは、1923年のこの日に関東大震災が起きたからです。消防庁の資料によると、死者・行方不明者は105,385人。うち91,781人が火災による死者です。亡くなった人の9割は、揺れではなく火事でした。
103年前の教訓は「家そのものが備えになるか」に尽きます。冒頭のベストアンサー——自宅が、最初から罹災しないようになっていれば——は、この歴史とまっすぐつながっています。
家具で見るのは3か所です。寝ている頭の上に、倒れてくる高さの家具がないか。廊下と玄関までの逃げ道をふさぐものがないか。ストーブやコンロの周りに、揺れで落ちて火に触れるものがないか。
固定していない家具が見つかったら、今日は場所を書き出すところまでで十分です。器具の取り付けは週末でかまいません。防災週間は9月5日まで続きます。
点検4 袋と備蓄——量を計算する前に、背負ってみてください
「久しぶりに非常用持ち出し袋を持ち上げた所 重くて困ってしまいました。」——こちらは2014年のYahoo!知恵袋の投稿です。特に重いのは水とラジオだと書かれていました。12年前から、悩みは変わっていません。
検索窓にも同じ声が残っています。「非常用持ち出し袋 中身」に続く候補は「最低限」「夏」「子供」「女性」。探されているのは全部入りのリストではなく、削り方と自分の家に合わせた調整です。
だから4つめの点検は、詰めることではなく背負うことです。玄関の袋を背負って、家の中を1周してみてください。背負えない袋は、玄関に置いてある荷物であって備えではありません。
重かったら、家に置いておく分と持ち出す分を分けます。持ち出す袋は軽く、量の勝負は家に置く備蓄のほうでやる。何をどれだけ置くかの計算は在宅避難の備えは「トイレ→水→電気」の順|4人家族で必要な量を計算しましたに任せて、この記事では繰り返しません。
読者
結局、袋の中身は何を入れればいいんですか?
この記事では中身のリストを出しません。銀行や自治体が出している一覧はどれも似ていて、足りないのはリストではなく「背負って歩けるか」の確認だからです。まず量ってから、削ってください。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
防災週間は8月30日に始まります——今年の重点は「警戒レベル4までに全員避難」
防災の日を含む8月30日から9月5日は防災週間です。内閣府が公表している令和8年度の実施要綱には、実践的な訓練の実施とあわせて、「警戒レベル4(避難指示)までの段階で危険な場所から全員避難」の周知が重点として書かれています。
警戒レベル5を待ってはいけない、という並び順の話です。雨が実際に降り出した日に何をしてはいけないかは大雨のときにやってはいけない行動6つ|「川を見に行く」は犠牲者の5〜6%でしかないで、実数と一緒にまとめています。
実施要綱の文言は2026年8月29日時点で内閣府サイトに掲載されているものです。訓練や行事の中身は市区町村ごとに違うので、お住まいの自治体の告知もあわせて確認してください。
わたしはこう考えています
「防災リュックの用意なんていらないですよね?」という今年の声と、「重くて困ってしまいました」という12年前の声は、同じ場所に立っていると私は考えています。全部詰めようとした人と、全部やめようとした人。どちらも「全部」の話をしています。
防災の日の使い方は、その中間にあります。家の4か所を点検して、家で過ごせる見込みが立った人の袋は軽くできます。逆に、点検より先に袋から始めると、重くなって玄関で埃をかぶるか、「いらないのでは」に戻ってくるかのどちらかです。
あのベストアンサーには条件が付いていました。「自宅が、最初から罹災しないようになっていれば」。その条件を満たしているかどうかは、袋に何を詰めても、袋をやめても分かりません。確かめる日が、9月1日です。
よくある質問
防災の日は祝日ですか
祝日ではありません。カレンダーは赤くならず、学校や会社も通常どおりです。訓練や行事は、防災の日を含む防災週間(8月30日〜9月5日)に自治体ごとに行われます。日程はお住まいの市区町村の告知で確認できます。
非常用持ち出し袋は用意しなくていいのですか
いらなくはなりません。知恵袋のベストアンサーも「自宅が、最初から罹災しないようになっていれば」という条件付きです。家の点検で在宅避難の見込みが立っても、断水や停電は起きます。持ち出す分と家に置く分を分けて、持ち出す袋を軽くするのが順番です。
水災が付いているかどうかは、どこを見れば分かりますか
保険証券か「契約内容のお知らせ」の補償一覧に「水災」の行があります。見当たらなければ、保険会社のマイページか代理店に「水災補償は付いていますか」と聞けば一往復で終わります。共済は61.8%の集計に入っていませんが、水害の保障の有無は同じように証書で確認できます。
出典
- 内閣府「令和8年度 防災週間」(期間8月30日〜9月5日・防災の日9月1日・重点事項。2026年8月29日時点)
- クロス・マーケティング「防災に関する調査(2026年)備え・実践編」(2026年7月15〜17日・全国20〜79歳3,000名。「できていない計」74%・移動時間把握34%・地震保険加入30%・避難訓練参加11%)
- 消防庁「関東大震災100年」取組紹介(PDF)(死者・行方不明105,385人、うち火災による死者91,781人)
- 損害保険料率算出機構「火災保険 都道府県別 水災補償付帯率」(2024年度末 全国計61.8%/2013年度76.9%。住宅物件のみで共済・少額短期保険を含まない)
- 損害保険料率算出機構「地震保険 都道府県別の付帯率・世帯加入率」(2025年度 付帯率70.8%・世帯加入率35.5%。共済を含まない)
- Yahoo!知恵袋「防災リュックの用意なんていらないですよね?」(2026年1月21日投稿。冒頭とタイトルに引用した質問とベストアンサー)
- Yahoo!知恵袋「非常用持ち出し袋が重い!」(2014年4月30日投稿。点検4に引用)
※ 2026年8月29日時点で各公式サイトに掲載されている内容にもとづいています。千葉の豪雨の55.7%は、浸水・冠水の被害報告の件数を数えたウェザーニューズの分析で、浸水した家の割合ではありません(詳細は本文中のリンク先記事)。保険・共済の判断は、ご自身の契約内容を確認したうえで行ってください。


コメント