「沖縄は地震が少ない」。数え方としては、間違っていません。ただし少ないのは陸で強く揺れた回数のほうで、沖縄県が沿岸に想定している津波の高さは、内閣府の南海トラフの巨大地震モデルを上回っています。
そのうえで、その津波を起こす地震が30年以内に起きる確率は、国の評価表では「不明」です。数字が小さいのではなく、欄に数字が入っていません。
揺れの確率は、防災科学技術研究所 J-SHIS(ジェイシス)の全国地震動予測地図2024年版(平均ケース・全地震・約250mメッシュ)から2026年9月17日に取得した、市役所・町役場の地点の値です。市の平均ではありません。地震の規模と確率は、地震調査研究推進本部の長期評価(第二版・令和4年3月25日公表)によります。
揺れの30年確率は、名護30.2%・那覇20.8%
「地震が少ない県」と言うとき、比べている相手は東北や熊本だと思います。今後30年のあいだに震度6弱以上になる確率を並べると、沖縄はここに入ります。

| 地点 | 今後30年で震度6弱以上 |
|---|---|
| 高知市 | 77.7% |
| 静岡市 | 72.8% |
| 東京都新宿区 | 49.5% |
| 鹿児島県奄美市 | 35.2% |
| 沖縄県名護市 | 30.2% |
| 沖縄県八重山郡与那国町 | 27.1% |
| 沖縄県那覇市 | 20.8% |
| 沖縄県宮古島市 | 18.3% |
| 沖縄県石垣市 | 14.8% |
| 仙台市 | 7.6% |
| 札幌市 | 2.3% |
南西諸島の6地点は、いちばん低い石垣市でも仙台市を上回りました。名護市の30.2%は仙台市の約4倍にあたります。震度6強以上で見ても、名護市は8.8%、那覇市は4.6%あります。
そして、この5市のなかで揺れの確率がいちばん低い石垣市が、このあと出てくる津波の想定では県内最大になります。
読者
でも沖縄の地震って、ニュースで聞いた記憶がほとんどないのですが。
記録が少ないのは沖縄本島の付近です。県の資料は「沖縄本島付近では歴史の資料によって知られている被害地震は少なく、国の機関等による断層モデルも設定されていません」と書き、すぐあとに「八重山諸島周辺(先島諸島)では、M7程度の地震がしばしば発生」と続けています。
揺れた瞬間に、部屋の中で起きることを減らすもの
地震のけがの3〜5割は、屋内の家具類の転倒・落下・移動によるものです(東京消防庁)。壁にネジを打てない部屋でもできる手から並べます。
東京消防庁の実験では、L型金具で壁に直接ネジ止めするのが最も効果が高いとされています。賃貸で壁に穴を開けられない部屋での代わりがこれです。家具の両端の側板部を、できるだけ奥で突っ張ります。天井側にも強度が要ります。
突っ張り棒だけだと効きが落ちます。同じ資料が、ポール式にはストッパー式や粘着マット式の併用をすすめています。マット単独でも効果は小さいので、上の棒と2つで1組と考えてください。
お湯でも水でも作れて、袋のままおにぎりの形になります。断水すると鍋も食器も洗えません。洗い物の出ない形を先に入れておくと、水の減り方が変わります。
飲料水は1人1日3L。4人家族の1週間分で84L=2Lボトル42本なので、6本入りだと7ケースぶんです。5年保存タイプなら入れ替えの手間が減ります。
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県の津波想定は、南海トラフの巨大地震モデルを上回る
沖縄県は、沿岸に来る最大クラスの津波を16本の断層で想定しています(沖縄県津波浸水想定・平成27年3月)。
「これらの断層により来襲が想定される津波高は、内閣府『南海トラフの巨大地震モデル検討会』による南海トラフの巨大地震モデルや1960年チリ津波による津波高を上回っています」
沖縄県「沖縄県津波浸水想定の解説」平成27年3月
16本の半分は沖縄トラフ側です。海溝との違いは海溝とトラフ/深さと形の違いに書いています。
解説資料の「今回想定」では、浸水面積が石垣市で4,960ヘクタール、名護市で1,370ヘクタール。石垣市は、さきほどの5市で揺れの確率がいちばん低いのに、浸水面積は県内で最大です。
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確率の欄には「不明」と書いてある
長期評価は、30年以内の確率でランクを4つに分けています。
地震調査研究推進本部「日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価(第二版)のポイント」令和4年3月25日
沖縄の周りの海を、この物差しに当てはめるとこうなります。規模のMはマグニチュードです。
| 評価対象の地震 | 規模 | 30年以内の確率 |
|---|---|---|
| 南西諸島周辺及び与那国島周辺の巨大地震 | M8.0程度 | 不明(X) |
| 南西諸島周辺のひとまわり小さい地震 | M7.0〜7.5程度 | 不明(X) |
| 与那国島周辺のひとまわり小さい地震 | M7.0〜7.5程度 | 90%程度以上(Ⅲ) |
| 南西諸島北西沖の沈み込んだプレート内のやや深い地震 | M7.0〜7.5程度 | 60%程度(Ⅲ) |
| 1771年八重山地震津波と同じタイプ | Mt8.5程度 | 地震発生確率を評価しない |
いちばん大きい地震の欄が、X(エックス)ランク=「不明」です。陸の宮古島断層帯も中部・西部の2区間ともXランクで、「平均活動間隔が判明していない等の理由より、地震発生確率及び地震後経過率を求めることができない」と注記されています。
ここで、陸の活断層のランクと混ぜないでください。陸の活断層はSランクが「30年以内に3%以上」、海溝型はⅢランクが「26%以上」。記号も境目も違います。陸側の数え方は活断層Sランク 31と32、数え方で変わるにあります。
読者
「不明」というのは、起きないという意味ですか。
逆です。数えられる回数が足りなくて計算できない、という意味です。巨大地震の欄が「不明」なのは、1600年以降に確認できた地震が1911年のM8.0の1回しかないからです。
うちに影響するのは、9本のどれですか?
住所を入れるだけ。影響の大きい活断層と、その地点の地盤増幅率・震度6弱以上の30年確率が出ます。会員登録も電話番号も要りません。
与那国島の周りだけ「90%程度以上」

南西諸島の地図で見ると、海溝沿いの領域で数字が入っているのは西の端だけです。理由は、この海が2つの海溝の接合部にあたることにあります。
「南西諸島海溝沿いで発生するM7.0以上の地震の発生頻度がおおむね東経123度周辺を境に変化することから、便宜的に東経123度線を境界線に設定した」
同 長期評価(第二版)本体・境界線の設定根拠
沈み込む向きが逆になる境目なので、台湾に近いほど地震が多い。だから国は、この海を東経123度で割りました。
与那国町役場の位置が東経123.004度。この線は、島のほぼ真上を通ります。線の西側は「90%程度以上」、東側は「不明」。同じ島の足元で、評価が割れています。
どのプレートがどちらに潜っているかは、日本の地震プレート/4枚の境界で説明しています。
与那国島周辺を「M7.8程度」「30%程度」と書いたページも残っていますが、それは平成16年2月の初版の値です。第二版とは領域も地震も違うので、混ぜて読まないでください。
90%を作っているのは、台湾東方沖の地震
この90%は、1919年以降に与那国島周辺で起きた12回から計算されています。1919・1920・1922・1924年、1951年に3回、1966年、1972年に3回、2002年。頻度にすると約8.6年に1回です。
線の東側にあたる南西諸島周辺は、同じ期間で4回(1923・1998・2002・2010年)。約25.8年に1回という頻度は出るものの参考値の扱いで、確率の欄は「不明」のままです。
12回のうちの1966年について、地震本部の沖縄県のページは「1966年の台湾東方沖の地震(M7.8)では、与那国島で死者や家屋全壊などの被害が生じました」と書いています。台湾の東の海で起きた地震が、与那国島で人を死なせています。
ただしこの90%には、評価した側が自分で但し書きを付けています。
「南西諸島海溝周辺においては、評価に使用する地震カタログによって個々の地震の震源や規模が異なり…他の評価に比べて評価結果の不確定性が大きい」
同 長期評価(第二版)
日本の海溝型の評価でいちばん大きい数字であると同時に、公式が「高めに見積もられている可能性がある」と書いた数字です。片方だけを引いて使うことはできません。
1771年の明和の大津波は、M7.4で最大約30m
同 長期評価(第二版)概要資料
Mt(津波マグニチュード)は、揺れではなく津波の大きさから求めるマグニチュードです。揺れで測ると7.4、津波で測ると8.5。1以上ずれています。
1回きりの出来事でもありません。津波堆積物の調査から、先島諸島では過去2,000年間に1771年の津波と同規模以上の津波が、1771年を含めて少なくとも3回発生していると書かれています。
それでも、この型の地震の確率は評価されていません。理由は「津波の主因には諸説あり、地震像が明らかでなく」。何が津波を起こしたのかが決まらないので、次を計算できません。
先島諸島の海岸には、その津波が打ち上げた岩が残っています。長期評価は「津波石として認定できるものは先島諸島に限られる」とし、台風の高波で打ち上げられた岩塊とは区別できるとしています。

「少ない」と「安全」は別のことば
沖縄で長期評価の対象になっている陸の活断層は、宮古島断層帯だけです。その理由を、地震本部は隠さずに書いています。
「今後、海域まで調査が進めば、あるいは長い活断層が見つかる可能性もあります」
地震調査研究推進本部「沖縄県の地震活動の特徴」
断層が少ないのではなく、断層を見つけられる陸が少ない。海域の活断層の長期評価も、公表されているのは日本海の2つだけで、南西諸島の海域の版はまだありません。
私は、沖縄の評価表に並ぶ「不明」を、危険が無いという意味ではなく、まだ測れていない場所の印だと考えています。「少ない」のは記録の話で、「不明」なのは計算の話です。
よくある質問
Q. 与那国島の確率を30%と書いたページを見ました
A. 平成16年2月の初版の値です。令和4年3月25日の第二版では、与那国島周辺のひとまわり小さい地震(M7.0〜7.5程度)が90%程度以上になっています。第二版は領域と地震を組み替えているため、初版の数字とは対応しません。
Q. 沖縄に活断層はありますか
A. 宮古島断層帯(中部 M7.2程度もしくはそれ以上、西部 M6.9程度もしくはそれ以上)が長期評価の対象です。どちらもXランクで、30年確率は「不明」。断層が無いのではなく、平均活動間隔が分からず確率を出せない状態です。
公式出典
- 地震調査研究推進本部「日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価(第二版)」令和4年(2022年)3月25日公表
- 地震調査研究推進本部「沖縄県の地震活動の特徴」
- 地震調査研究推進本部「宮古島断層帯」
- 地震調査研究推進本部「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」確率の算定基準日2026年1月1日
- 沖縄県「沖縄県津波浸水想定」平成27年3月設定・解説資料
- 防災科学技術研究所「J-SHIS 地震ハザードステーション」全国地震動予測地図2024年版(平均ケース・全地震・約250mメッシュ)2026年9月17日取得
長期評価と津波浸水想定は、将来の発生可能性や最大クラスの想定を示すもので、特定の日時・場所の被害を予測するものではありません。
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