🗨️「大阪市がカスハラをした市民を訴えると聞きました。もう決まったことですか」
9月15日時点で、大阪市が「提訴する」と発表した資料はありません。裏が取れるのは、市会へ訴訟の提起を諮る議案が1本出ていることだけです。自治体が住民を訴えるには地方自治法96条1項12号で議会の議決が要るので、順番としては議決のあとに提訴となります。会期は12月9日まで。なお企業側にとっては、カスハラ対策そのものが10月1日から法律上の義務になります。
[暮らし] この記事の要点
2026年9月15日 発表
- 窓口や電話で市民・顧客の対応をしている人
- 2026年10月から対策が義務になる事業者
- 賃貸管理や仲介で入居者・買主の対応に当たっている人
公式に出ているのは、議案の1行だけです
大阪市の報道発表資料と市長会見の一覧を見ても、「提訴する」という発表は出ていません。確認できるのは市会の議案一覧に載っている次の1行です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 議案 | 議案第126号「訴訟の提起について(経済戦略局関係)」 |
| 会期 | 2026年9月15日開会〜12月9日閉会予定(9月8日に招集告示) |
| 扱い | 9月15日の開会で当初案件として上程・付託 |
| 請求の中身 | 件名からは読めない(議案本文は公開されていない) |
ここで押さえておくとよいのは、自治体が住民を訴えるには、まず議会の議決が要るという点です。根拠は地方自治法第96条第1項第12号。だから順番は「議案が出る → 議決 → 提訴」で、議案が出た時点ではまだ訴えていません。
何を請求するのかは分からないままですか
大阪市の議案本文は出ていません。ただ、同じ型の議案を本文まで公開している自治体があるので、そちらを見ると請求の形が分かります
先行例では「職員の給与相当額」を請求していました
愛知県美浜町が2025年11月11日に出した議案第60号「訴えの提起について」は、議案本文が公開されています。事件名は「強要行為等差止等請求事件」。請求の趣旨にはこう書かれています。
本町職員が被告による妨害行為の対応等に要した時間に係る本町職員の給与相当額等の損害金として金400万円の支払
愛知県美浜町 議案第60号「訴えの提起について」より
差止めと、職員が対応に費やした時間ぶんの人件費の2本立てです。慰謝料ではなく、かかったコストを金額に直して請求する形になっています。なお美浜町では議決のあと本人が謝罪し、提訴は一旦見送られたと報じられています(町の公式サイトには見送りの告知は見当たりませんでした)。
「最長でも30分」という線が引かれた背景
大阪市は2025年10月1日に、職員へのカスタマーハラスメントに関する基本方針を策定しています。対応マニュアルの概要には、対応を打ち切るまでの「一定時間」について「最長でも30分」という目安が書かれています。
同じ日に公表された職員アンケートの数字を並べると、この30分がどこから出てきたのかが見えます。
| 1回あたりの対応時間 | 割合 |
|---|---|
| 30分未満 | 24.5%(869名) |
| 30分以上60分未満 | 43.4%(1,539名) |
| 60分以上90分未満 | 19.5%(691名) |
| 90分以上120分未満 | 6.5%(230名) |
| 120分以上180分未満 | 3.7%(130名) |
| 180分以上 | 2.4%(86名) |
75%以上が30分を超えて対応していました。3時間以上かかった職員も86名います。つまり「最長でも30分」は現状を追認した数字ではなく、実態の倍以上かかっていたところに引き直された線です。
被害の場面も出ています。回答した12,786名のうち3,545名、約28%が過去3年間にカスタマーハラスメントを受けたと答え、そのうち53.3%が電話応対時。対面での被害1,227名の内訳では58.8%が区役所でした。
10月1日から、企業の対策が義務になります
この話は自治体だけのものではありません。労働施策総合推進法が改正され(令和7年法律第63号、2025年6月11日公布)、事業主のカスタマーハラスメント対策は2026年10月1日から義務になります。指針も2026年2月26日に告示されました。
検討中ではなく、施行日が決まっている話です。半月後です。
| できごと | 日付 |
|---|---|
| 東京都のカスタマー・ハラスメント防止条例 施行 | 2025年4月1日(罰則なし・全14条) |
| 大阪市の基本方針 策定 | 2025年10月1日 |
| 労働施策総合推進法の改正 施行(事業主の義務) | 2026年10月1日 |
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不動産の現場は、電話と対面の両方が当たります
賃貸管理や売買仲介は、この義務化がそのまま効く業種です。大阪市の数字で被害の半分以上が電話だったこと、対面の6割近くが区役所という「来訪を受ける窓口」だったことは、管理会社の受付や店舗のカウンターと構造が同じです。
全日本不動産協会も会員向けの対策要領をまとめていて、そこでは会員の23%が迷惑行為を経験したという数字が挙げられています。ただしこの要領は義務化前に作られたものなので、10月以降は指針に合わせた読み替えが要ります。
今回の大阪市の件について、請求額・相手方・行為の具体的な内容は公表されていません。ここに書いたのは議案の件名と、制度の側の事実だけです
生活・仕事にどう効くか
- 確認できる事実:公式に出ているのは市会の議案第126号だけ。請求の中身は議案の件名からは読めない。
- 対応時間の目安:大阪市のマニュアルは打ち切りの目安を「最長でも30分」としている。アンケートでは75%以上が30分以上対応していた。
- 事業者の義務:2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策は労働施策総合推進法にもとづく事業主の義務になる。
結局どうすればよいか
- 自分の職場で「何分で対応を切るか」を決めているかどうかを確認する
- 電話での被害がいちばん多いので、録音と記録の運用を先に整える
- 2026年10月1日の義務化に向けて、相談窓口の設置と周知の準備状況を見る
公式出典
- 大阪市会「議決等案件事項一覧(令和8年9月〜12月)」議案第126号(2026-09発表)
- 大阪市「職員に対するカスタマーハラスメントへの対応に関する基本方針」職員アンケート結果(概要)(2025年10月1日発表)
- 愛知県美浜町 議案第60号「訴えの提起について」(2025年11月11日発表)
- 東京都「カスタマー・ハラスメント防止条例」(2025年4月1日発表)
- 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(2026発表)
更新履歴
- 2026年9月15日 初版を公開。
※本記事は2026年9月15日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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