マイナンバーカードの保有枚数は、2026年8月末で1億452万枚になりました。日本に住む人の84.3%が持っている計算です。ところが、そのカードをスマートフォンに入れた人は880万人しかいません。カードを持つ12人のうち11人は、いまも財布から出しています。
デジタル庁が発足したのは2021年9月1日。5年前の同じ日、カードの交付枚数は4,761万枚でした。枚数は2.2倍になりましたが、「配ること」と「使われること」の間には、まだ差があります。この記事では、その差がどこにあるのかを、デジタル庁・総務省・厚生労働省が公表している実数だけで確かめます。
この記事でわかること
- ✓ 保有率は84.3%。指定都市83.9%・町村84.3%で、都市と地方の差はほぼ無い
- ✓ 紙の健康保険証は2025年12月2日から使えない。持っていない人には資格確認書が無償で届く
- ✓ 自治体の基幹システムは、全1,788団体のうち1,015団体が移行期限に間に合わなかった
デジタル政策5年間の成果動画
「デジタル庁設立5年|デジタルで変わる、一人ひとりの暮らし」公開🎉「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を目指して。より多くの皆さまにデジタル化による便利さを実感いただけるよう、今後も取組を進めてまいります。
🎬全編 https://t.co/3SUsjn2T9H pic.twitter.com/V3Lozl4OWL— デジタル庁 (@digital_jpn) 2026年9月1日
マイナンバーカードは1億452万枚。都市と地方の差はほとんどない
総務省が公表している「マイナンバーカードの団体区分別保有状況について(令和8年8月末時点)」の実数です。
- 保有枚数 104,525,120枚、人口に対する保有枚数率 84.3%
- 指定都市 83.9%(23,076,592枚)
- 特別区・市(指定都市を除く) 84.4%(72,955,754枚)
- 町村 84.3%(8,492,774枚)
分母は令和8年1月1日時点の住民基本台帳人口123,767,642人です。ここで目を引くのは、いちばん高い区分といちばん低い区分の差が0.5ポイントしかないことです。人口1,006万人の町村部でも、2,746万人の政令指定都市でも、持っている割合はほぼ同じでした。
交付はいまも続いています。2026年8月24日から30日の1週間で、1日あたり平均30,692件の申請を受け付け、32,475件を交付しています。
「保有枚数」は、交付した枚数から死亡や有効期限切れで廃止された枚数を引いたものです。累計の交付枚数とは別の数字です。
デジタル庁ができた理由は、コロナ禍で手続きが止まったこと
2021年9月1日、デジタル庁は「デジタル社会形成の司令塔」として発足しました。当時この状況は「デジタル敗戦」という言い方でも語られましたが、行政側の説明はもっと具体的です。
デジタル庁は自治体システムの説明ページで、標準化を急ぐ理由をこう書いています。「新型コロナウィルス感染症対応の経験から、社会全体のデジタル化の推進が急務とされた」。同じページには、それまでの状態も書かれています。法令で定められた共通の業務なのに自治体ごとにシステムが作り込まれ、制度が変わるたびに全国で個別に改修していた、という状態です。
デジタル庁が掲げたビジョンは2つあります。
- 優しいサービスのつくり手へ。ガバメント・アズ・ア・サービス(Government as a Service)
- 大胆に革新していく行政へ。ガバメント・アズ・ア・スタートアップ(Government as a Startup)
後者は「高い志を抱く官民の人材が、互いの信頼のもと協働し、多くの挑戦から学ぶことで、大胆かつスピーディーに社会全体のデジタル改革を主導します」と説明されています。官民の人材、という部分は言葉だけではありません。デジタル庁は2026年9月7日にも中途採用の募集を出していて、対象は課長補佐級・係長級、締切は11月8日です。5年経っても民間から人を入れ続けている官庁は、ほかにあまりありません。

マイナ保険証:紙の保険証は、もう窓口で使えない
読者
まだ紙の保険証を持っているんですが、これは使えますか?
使えません。2025年12月1日で全ての健康保険証の有効期限が切れて、12月2日以降は窓口で受け付けてもらえなくなりました。
デジタル庁のページには、こう書かれています。「2025年12月1日に全ての健康保険証の有効期限が切れることに伴い、同12月2日以降は従来の健康保険証が利用できなくなります」。
代わりに使えるのは2つだけです。
- マイナ保険証(健康保険証の利用登録をしたマイナンバーカード)
- 資格確認書(カードを持っていない人・利用登録をしていない人に、加入している健康保険から無償で交付される)
つまり、カードを持っていなくても保険診療は受けられます。ただし手元に資格確認書が無いまま受診すると、窓口でいったん全額を払う場面が出ます。引っ越しや転職の直後に起きやすいので、ここは後の章でもう一度触れます。
登録は91%。でも実際に使ったのは64.62%
利用登録の件数は、2026年7月末で95,304,684件。カードを持っている人の91%が登録を済ませています。
一方、実際に医療機関の窓口で使われた割合は別です。厚生労働省保険局の資料では、2026年1月の利用率は64.62%でした(利用率=マイナ保険証の利用人数÷レセプト件数)。同じ1月の内訳は、オンライン資格確認の合計167,520,808人のうち、マイナンバーカードでの受付が108,248,533人、資格確認書での受付が59,272,275人です。
登録した人の3割強は、窓口ではカードを出していないことになります。
同じ1月に医療機関が閲覧した情報は、診療情報が80,858,128件、特定健診等情報が39,568,005件、薬剤情報が29,770,943件でした。初めて行った病院で、これまでに飲んだ薬や受けた検査を医師が確認できる、という部分は実際に動いています。
世代でいちばん低いのは75歳以上
年齢階級別に見ると、差がはっきり出ます。2026年2月の受診時のマイナ保険証利用割合です。
- 65歳〜69歳 54.72%(最も高い)
- 60歳〜64歳 53.27%
- 40歳〜44歳 50.77%
- 15歳〜19歳 47.03%
- 0歳〜4歳 46.55%
- 75歳以上 39.56%(最も低い)
いちばん医療にかかる75歳以上が、いちばん使っていません。厚生労働省は、こども医療費などの受給者証とカードの一体化を進めることで、利用率の低い若い世代の利用体験を上げる方向を示しています。

スマホに入れると何ができて、何ができないのか
スマートフォンに入れた「スマートフォンのマイナンバーカード」は、2026年7月末で累計8,802,742枚です。同じ7月末のカード保有枚数104,184,326枚に対して8.4%、つまり12人に1人です。
伸び方は速く、2025年6月末は958,604枚でしたから、1年で9.2倍になっています。それでも12人に1人です。
できることは、デジタル庁のページに列挙されています。
- マイナポータルへのログイン(暗証番号の代わりに顔や指紋で認証)
- コンビニでの証明書の取得
- 医療機関や薬局でマイナ保険証として受付(対応機関は順次拡大)
- e-Tax(イータックス)での確定申告
できないことも明記されています。よくある質問のQ2は「マイナ免許証として利用できますか」で、答えは「いいえ」。運転免許証としては使えません。デジタル庁自身も「実物のマイナンバーカードしか対応していない場合に備えて、必ず実物のカードもお持ちください」と案内しています。スマホに入れても、カードを家に置いていける段階ではありません。
対応する端末は、アイフォンならiPhone XS(アイフォン・テンエス)以降で、iOS(アイオーエス)18.5以上です。
マイナちゃんとマイメロディが
「スマートフォンのマイナンバーカード」を紹介🎀スマホにマイナカードを追加すると
✅顔・指紋認証でマイナポータルにログイン
✅医療費・お薬情報の確認
✅引越し等の行政手続
✅e-Taxで確定申告
✅コンビニで証明書交付
などができます。↓詳しくは動画で📺 pic.twitter.com/scthjjMa6W
— デジタル庁 (@digital_jpn) 2026年1月23日

引っ越しの手続きは、どこまでオンラインになったか
住まいに関わる読者にとって、この5年でいちばん変わったのはここです。
2023年2月6日から、マイナポータルを通じて全ての市区町村でオンラインの転出届が出せるようになりました。転出元の役所に行かなくても、マイナンバーカードで電子署名をして転出届と来庁予定を送れば、転出証明書の情報が転入先の市区町村に事前通知されます。
利用は増えています。マイナポータルからの引越し手続数は、2026年7月の1か月で102,832件。2025年6月の75,608件から36%増えました。
ただし、ここに落とし穴があります。
読者
オンラインで出したので、もう役所には行かなくていいですよね?
いいえ。転入先の役所には行きます。オンラインで省けるのは、転出元への来庁だけです。
デジタル庁のページは「本サービスを利用することで、届出人は、転出元の市区町村への来庁が原則不要となります」と書いています。転入手続については「引越される方のうちどなたか1名が、ご自身のマイナンバーカードを窓口で提示する必要があります」。この順番を取り違えると役所に2回行くことになるので、持ち物と順番は別の記事にまとめています。
「処理中」のまま止まるのは、故障ではありません
「マイナポータル 引越し 処理中」「転出届 オンライン 処理中」で検索している人が毎日います。Yahoo!知恵袋には、こういう質問が実際に残っています。
マイナポータルで転出届の手続きを行ったのですが、3日前にしたのにまだ処理中と表示されています 全て記入しているのですがいつになったら完了するのでしょうか
(ベストアンサー)3日前と言っても土日はカウントしませんので、1日前ですよね。自治体によって差はありますが1日では終わりません。もうしばらくお待ちいただくしかありません。
マイナポータルの公式FAQ(7841)の答えは、こうです。「やることのステータスが『処理中』となっている場合は、該当の自治体で対応中となります。また、ステータスは、転出元、転入先の自治体側が更新します。該当の自治体までお問い合わせください」。
つまり、画面のステータスを進めているのはシステムではなく役所の職員です。土日祝は動きません。そして国は、完了までの目安日数を公表していません。私は、ここが「オンライン化した」と「便利になった」の間に残っている一番大きな溝だと考えています。申請の受け口だけをデジタルにしても、その先の処理が窓口の営業時間で動いているなら、利用者から見た所要時間は変わらないからです。
住民票はコンビニで、月200万件
証明書のコンビニ交付は、2026年7月の1か月で2,002,638件でした。1年前の2025年7月は1,669,671件ですから、20%増えています。年度替わりの2026年3月には2,558,030件まで伸びました。賃貸契約や売買で住民票の写しが要るとき、平日に役所へ行く前提はもう外れています。
なお、住所を変えたのに登記を放置すると別の問題が出ます。住所変更登記は2026年4月から義務化されていて、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象です。

自治体のシステムは、1,788団体のうち1,015団体が期限に間に合わなかった
ここが、次の5年でいちばん重い課題です。
2021年に成立した標準化法は、住民記録・地方税・介護保険など20の事務について、全国約1,800の自治体が同じ標準仕様のシステムを使うことを定めました。国が用意する共通のクラウド基盤(ガバメントクラウド)に載せることで、制度改正のたびに全国で個別改修する無駄をなくす、という設計です。期限は原則、2025年度(令和7年度)末でした。
結果は、デジタル庁が2026年6月30日に公表した資料に書いてあります。
- 標準化の対象は全34,366システム
- 期限までに移行を完了したのは24,353システム(70.9%)
- 間に合わなかった「特定移行支援システム」は10,013システム(29.1%)
- 該当する団体は1,015団体。全1,788団体の56.8%
システム数で見れば3割ですが、団体数で見ると半分を超えています。
理由も分解されています。いちばん多いのは「事業者のリソースひっ迫による開発又は移行作業等の遅延の影響を受けるもの」で9,590システム・987団体。次いで、現行事業者が標準準拠システムを作らないと決めて代替の調達先が見つからないものが189システム・102団体、パッケージではない個別開発システムが190システム・26団体、メインフレームが44システム・7団体です。
技術ではなく、作る人が足りなかった。それが公式の説明です。今後の見込みは「令和8年度末までに全体の約90%が標準準拠システムへの移行を完了する見込み」とされています。
この遅れは、住民から見ると「引っ越しの手続きが役所によって速い・遅い」という形で表に出ます。オンライン転出届が全市区町村で使えるのに、その先の処理時間が揃わない理由の一つがここにあります。
紐付け誤りは8,395件。総点検で何が分かったか
2023年、公金受取口座や健康保険証で別人の情報が結びついていた事例が相次いで見つかり、マイナポータルで閲覧できる全てのデータを対象に総点検が行われました。デジタル庁が公表した結果は次のとおりです。
- 点検対象 8,208万件
- 判明した紐付け誤り 合計8,395件(0.010%)
- 割合が最も高かったのは障害者手帳情報で5,689件(0.119%)
- 健康保険証情報 1,142件(0.007%)、公金受取口座情報 1,186件(0.002%)
原因は3つに整理されています。申請時にマイナンバーの提出が無く、氏名と生年月日の2情報で住民基本台帳ネットワークを照会したときに複数人が該当したこと。申請書のマイナンバーの記載誤り。本人と家族のマイナンバーの取り違えです。対策として、各制度の申請時にマイナンバーの記載を求めることを省令で明確化し、照会は原則、氏名・生年月日・性別・住所の4情報で行うようJ-LIS(ジェイリス)の照会システムを改修しました。
障害は今も起きます。2026年8月27日には、デジタル庁自身がマイナアプリの不具合を告知しています。
【マイナアプリについてお知らせ】
一部の端末や利用環境において、認証やログインが完了しない事象が発生しております。
シークレットモードの解除やデジタル認証アプリのアンインストールにより改善する場合がありますので、お試しください。
ご迷惑をおかけし申し訳ございません。— デジタル庁 (@digital_jpn) 2026年8月27日
一方で、こうした告知が公式アカウントから当日中に出るようになったこと自体は、5年前には無かった動きです。

使えない人を置いていかない、という約束
もう一つ残っているのが、操作そのものの壁です。デジタル庁は2026年8月28日、石川県加賀市のシニアスマホアンバサダーの取り組みを公開しています。
【デジタル庁ニュース】UP📣
「スマホの“わからない”に寄り添う」
行政のデジタル化が進む中、スマホ操作に不安を持つ方も少なくありません。
デジタル推進委員として活躍している加賀市のシニアスマホアンバサダーが、相談に寄り添う様子を紹介します。https://t.co/uGuqN6v5Pc
毎週更新🎬 pic.twitter.com/rjPo91AYdi— デジタル庁 (@digital_jpn) 2026年8月28日
保有率84.3%は、裏返せば約1,940万人がカードを持っていないということでもあります。「誰一人取り残されない」を掲げる以上、残りをどう扱うかは枚数の話ではありません。
まとめ:次の5年で見るべきは、枚数ではなく処理の速さ
この5年で確かに変わったのは、次の3つです。
- 転出届は2023年2月6日から全市区町村でオンラインに。証明書は月200万件がコンビニで出ている
- 紙の健康保険証は2025年12月2日で終わり、マイナ保険証か資格確認書に一本化された
- カードは1億452万枚、保有率84.3%まで行き渡り、都市と地方の差はほぼ消えた
一方で、まだ終わっていないのも3つです。
- スマホに入れた人は12人に1人。実物のカードを置いていける段階ではない
- マイナ保険証の窓口利用率は64.62%。いちばん医療にかかる75歳以上が39.56%で最も低い
- 自治体システムの移行は、1,788団体のうち1,015団体が期限に間に合っていない
枚数はもう伸びしろが小さく、次に効くのは「出した申請が何日で終わるか」のほうです。手元でできることは2つあります。マイナンバーカードの電子証明書の有効期限を確認しておくことと、引っ越しが決まったら転出届をオンラインで出しつつ、転入先の窓口に行く日は最初から予定に入れておくことです。
出典
- デジタル庁「デジタル庁設立5年 ~デジタルで変わる、一人ひとりの暮らし~」
- 総務省「マイナンバーカード交付状況について」内「マイナンバーカードの団体区分別保有状況について(令和8年8月末時点)」「マイナンバーカードの申請・交付・保有状況(令和8年8月30日時点)」
- デジタル庁「マイナンバーカードの普及と利活用に関するダッシュボード」(2026年9月7日更新のデータ表)
- デジタル庁「マイナンバーカードの健康保険証利用」
- 厚生労働省保険局「マイナ保険証の円滑な利用について」(資料4)
- デジタル庁「スマートフォンのマイナンバーカード」
- デジタル庁「引越し手続オンラインサービス」
- デジタル庁「地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化」内「移行支援期間における特定移行支援システムの数について」
- デジタル庁「マイナンバー情報総点検について(全体像)」
- デジタル庁「ミッション・ビジョン・バリュー」
- マイナポータル よくある質問「引越し申請について、申請状況が「処理中」のままとなっています。どうしたらよいですか。」
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