「更新の案内が来たけど、どうせどこも上がるんでしょう」と思われがちですが、2026年10月の改定は会社によって逆を向いています。損害保険ジャパンは個人の火災保険料を平均で3%引き上げると日本経済新聞が報じ、東京海上日動は自社の案内に「平均的な保険料水準は、2025年10月以降始期契約の保険料水準対比で据置き」と書いています。
1年契約は、申し出がなければ同じプランで自動的に続きます。そしてその案内には「補償が縮小している可能性がありますのでご注意ください」という一文が入っています。上がるかどうかより、黙っていたときに何が変わるかのほうが大きい話です。
この記事でわかること
- ✓ 東京海上日動は同じ改定で、家財の保険料は引下げ・建物の保険料は引上げ。会社の中でも向きが違う(同社の案内)
- ✓ 保険料の土台になる業界共通の数字は、2023年6月21日の届出が最新のまま動いていない
- ✓ 損保ジャパンは自己負担額に20万円を新設。長期契約が1年更新の総額より割安にならないケースがあると、案内が自分で書いている

損保ジャパンは3%上げ、東京海上日動は据置き
まず、数字が出ているほうから。日本経済新聞は2026年5月28日、次のように報じています。
損害保険ジャパンは10月から、個人の火災保険料を平均で3%引き上げる。企業向けは1.2%上げる。いずれも2024年10月に1割程度上げて以来、2年ぶりの引き上げになる。新たな保険料は26年10月以降に火災保険に加入するか、契約を更新した契約者に適用する。
ここは線を引いておきます。この3%は損保ジャパンが公表した数字ではありません。同社が出している「2026年10月 火災保険改定のご案内」を開いても、改定率の数字は1つも書かれていません。書いてあるのは「保険料の改定幅はご契約の内容や建物の建築年月、構造などによって異なります」まで。率を出しているのは報道のほうです。
一方、東京海上日動が公開している「2026年10月改定のご案内(住まい)」は、保険料について3行しか書いていません。保険の対象の種類ごとの支払い状況などを踏まえて見直すこと。「多くのご契約条件において、家財の保険料は引下げとなるのに対して、建物の保険料は引上げとなります」。そして、平均的な保険料水準は2025年10月以降始期契約の保険料水準対比で据置きであること。
| 会社 | 2026年10月について出ている内容 | 出どころ |
|---|---|---|
| 損保ジャパン | 個人の火災保険料を平均で3%引上げ(企業向けは1.2%) | 日本経済新聞 2026年5月28日の記事。会社は率を公表していない |
| 東京海上日動 | 平均的な保険料水準は据置き。ただし家財は引下げ、建物は引上げ | 同社「2026年10月改定のご案内(住まい)」 |
つまり「2026年10月にまた全社が値上げ」と一括りにはできません。会社が違えば向きが違い、同じ会社の中でも建物と家財で向きが違う。自分の更新案内が上がっているかどうかは、他人の記事ではなく手元の紙にしか書いていないことになります。
住所によって変わる部分もあります。水災の保険料は市区町村ごとの区分で決まっていて、その調べ方は水災等地区分の調べ方 ハザードマップと一致しない5段階のリスク区分にまとめました。等地は今回の改定とは別に、以前から保険料を左右している要素です。
業界そろっての値上げではありません
「火災保険 値上げ なぜ」と検索すると、参考純率が上がったからだ、という説明によく当たります。参考純率というのは、損害保険料率算出機構が算出して各社に提供している、保険料の土台になる業界共通の数字です。これが上がれば各社がそろって上げる、という筋書きは分かりやすい。
ところが、同機構が公開している火災保険参考純率の改定の届出一覧に載っているのは、2023年6月21日、2021年5月21日、2019年10月7日、2018年5月21日、2014年6月25日の5件です。2023年6月21日より後の改定は、この一覧に載っていません。
損保ジャパンの案内にも裏づけがあります。過去の改定の履歴が表になっていて、2019年1月・2019年10月・2021年1月・2022年10月・2024年10月・2025年9月が並び、そのうち参考純率の改定にあたる回には印が付いています。印が付いているのは2019年10月・2021年1月・2022年10月・2024年10月の4回で、2025年9月には付いていません。今回の2026年10月も、参考純率の改定にはあたりません。
読者
じゃあ、なんで上がるんですか。災害が増えたからと書いてある記事はたくさん読みました。
今回に限れば、理由は会社側にあります。損保ジャパンの案内は物価の上昇で修理費が上がることを挙げていて、東京海上日動は支払い状況を踏まえたと書いている。業界共通の数字ではなく、各社それぞれの判断による改定です。
更新で高くなるのは、値上げのぶんだけではありません
火災保険の更新で高くなるとき、原因は改定率だけではありません。損保ジャパンの案内には、新築から築50年まで築年数で保険料が分かれる仕組みについて、こう書かれています。
築年数が古くなるにつれ、水漏れをはじめとした事故が起こる可能性が高くなるため、築年数が古い建物の保険料は割高になります。
家は毎年1歳ずつ古くなります。改定率がゼロでも、更新のたびに前の契約より上の区分に移っていく。「火災保険 更新 高くなる」で調べている人が見ているのは、改定と築年数が同じ紙の上で重なった結果です。

もう1つ、自己負担額(免責金額)の選択肢が広がりました。0円・1万円・3万円・5万円・10万円に、20万円が加わっています。案内は「自己負担額を高く設定することにより…保険料を抑えることが可能です」と書いています。保険料が思ったより上がっていなくても、自己負担額のほうが上がっていることがあります。20万円を選べば、20万円までの損害では1円も出ません。
案内には、今後の契約手続きで「居住階数」「ソーラーパネルの有無」「屋根の形状」を確認することがある(回答は任意)とも書かれています。保険料の計算に使う条件が、これから細かくなっていく方向にあるのは読み取れます。
長期契約が必ず割安になるとは限らなくなりました
長く契約したほうが安い、と聞いたことがある人は多いはずです。今回の案内は、そこに自分で釘を刺しています。
火災保険の長期契約は、契約期間中に保険料が上がらないという大きなメリットがあります。一方で、物価が上昇すると万が一の際の修理費なども高くなるため、将来の物価上昇なども考慮した保険料設定に変更しました。あわせて、長期契約向けの割引率なども見直しておりますので、1年契約を毎年更新した場合の総額保険料に比べ、長期契約の保険料が割安とならないケースも発生します。
読み方はこうです。長期契約の「期間中は上がらない」という性質は残っている。変わったのは、その安心のぶんが先に保険料へ乗るようになったことです。だから、1年ずつ更新した総額と比べて長期のほうが高くつく場合が出てくる。どちらが得かは契約の中身で変わるので、この記事では「長期にすべき」とも「1年にすべき」とも書きません。案内が自分でそう書いている、というところまでです。
いちばん効いてくるのは、黙っていると続くことです
1年契約には、原則として自動継続型の特約が自動でセットされます。案内の書き方はこうです。契約内容変更または自動継続停止の申し出がない場合、現在と同等のプランで自動継続します。2年から5年の契約は手続型で、こちらは更新のたびに手続きがいります。
そして、同じ案内には次の一文が入っています。
上記以外にも各種改定を実施しており、補償が縮小している可能性がありますのでご注意ください。
この2つは並べて読むところだと思っています。同等のプランで自動的に続くこと。その「同等」の中身が、改定で変わっている可能性があると会社側が書いていること。何もしなければ、変わったあとの内容で契約が続きます。
ここで引いた文言は損保ジャパンの2026年10月改定の案内のものです。自動継続の扱いも特約の名前も会社ごとに違うので、自分の契約がどちらなのかは手元の証券と更新案内で確かめてください。
読者
更新の封筒って、開けずに引き落としのままでも困らないものですか。
起きるまでは困りません。分かるのは請求のときです。水災が付いているつもりで付いていなかった、という食い違いがいちばん多い。
その水災は、付いていても浸水すれば必ず出るというものではありません。支払いの目安になっている床上浸水や地盤面から45cm、損害の割合30%といった基準は、床上浸水でも火災保険が出ない?水災補償の45cm・30%基準を整理で数字ごと整理しています。
更新の案内が来たら、証券のこの4つの欄を見ます
やることは多くありません。封筒から証券と更新案内を出して、次の4つの欄だけ見ます。見るのは金額ではなく、補償の範囲と自己負担額です。
- 補償の範囲。火災・風災・水災・水濡れ・破損のうち、どれに丸が付いているか。前の契約と見比べて、消えているものがないか
- 自己負担額(免責金額)。いくらから出る契約になっているか。前回0円だったものが3万円や5万円になっていないか
- 保険期間と、自動で続く契約かどうか。何もしなければ続くのか、手続きがいるのか
- 建物と家財のどちらに掛けているか。家財だけの契約なら、建物が壊れても出ません
この4つが前回と同じなら、金額の差はほぼ改定と築年数のぶんです。違っていたら、そこが差の中身になります。案内の紙に書いていない部分は、証券に書かれている会社か代理店に聞くのがいちばん早い。
この記事では、どの会社のどの商品がよいかは書きません。比べられるのは同じ補償・同じ自己負担額・同じ保険期間でそろえたときだけで、それは手元の証券がないとできない作業だからです。
わたしはこう考えます
今回の改定でいちばん実害が出るのは、値上げそのものではなく、値上げの話に気を取られて中身を見ないことだと考えています。3%は会社全体をならした数字で、自分の契約がいくら上がるかはここからは出せません。案内も「改定幅はご契約の内容や建物の建築年月、構造などによって異なります」までしか書いていない。金額が動いたかどうかより、同じ封筒に入っている補償欄が変わっていないかのほうが、あとで効いてきます。
保険料は毎年払う金額で、補償は一生に一度使うかどうかの金額です。同じ紙の上に並んでいますが、桁が違います。安くする工夫として自己負担額を20万円に上げる選択肢が増えたのは、その桁の違いを自分で決めさせる方向の変更だと読んでいます。
それと、今回いちばん引っかかったのは、会社の案内が「長期契約が割安とならないケースも発生します」と自分で書いていたことでした。世間の常識のほうが、案内より1歩遅れている。値上げのニュースを読む前に、手元の紙を読むほうが当たります。
被害が出たあとの動き方は台風で屋根が飛んだら、直す前に撮るにまとめてあります。更新のときに補償欄を見ておくと、その日にやることが変わります。
よくある質問
2026年10月に、火災保険は全部の会社が値上げしますか
いいえ。損保ジャパンは個人の火災保険料を平均で3%引き上げると日本経済新聞が報じていますが、東京海上日動は自社の案内で平均的な保険料水準は据置きだと書いています。会社ごとに確かめる必要があります。
いつ契約した分から新しい保険料になりますか
損保ジャパンについては、日本経済新聞が「新たな保険料は26年10月以降に火災保険に加入するか、契約を更新した契約者に適用する」と書いています。すでに続いている長期契約の保険料が期間の途中で上がるという話ではありません。
保険料を下げる方法はありますか
損保ジャパンの案内は、自己負担額を高く設定することで保険料を抑えることが可能だと書いています。ただし自己負担額を20万円にすれば、20万円までの損害では保険金は出ません。毎年の支払いと、出るときの手取りを入れ替えているだけだと考えたほうが実態に近いはずです。
出典
- 損害保険ジャパン「2026年10月 火災保険改定のご案内」(SJI26-56064/2026年5月7日)
https://www.sompo-japan.co.jp/-/media/SJNK/files/kinsurance/habitation/announce/20261001.pdf?la=ja-JP(長期契約・自己負担額・築年数別の料率・自動継続・補償の縮小・改定の履歴)
一覧:https://www.sompo-japan.co.jp/kinsurance/habitation/announce/ - 日本経済新聞「損保ジャパン、10月に個人火災保険料3%上げ コスト増で2年ぶり」(2026年5月28日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2619U0W6A520C2000000/(個人平均3%・企業向け1.2%・適用の時期) - 東京海上日動火災保険「住まいの保険 2026年10月改定のご案内」
https://tcon.tokiomarine-nichido.co.jp/tcon/cgi-bin/openContents.cgi?catalogId=E1521770(家財は引下げ・建物は引上げ・平均的な保険料水準は据置き)
入口:https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/service/live/kaitei/ - 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率の改定」届出一覧
https://www.giroj.or.jp/ratemaking/fire/(掲載されている最新の届出は2023年6月21日)
※ 2026年9月7日時点で各社および損害保険料率算出機構のサイトに掲載されている内容にもとづいています。保険料の改定幅は契約の内容・建物の建築年月・構造などによって異なり、会社ごとにも違います。実際の保険料と補償の内容は、契約している会社の証券と更新案内でご確認ください。
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