「みなさん家買えますか?高過ぎて買えないのは私だけでしょうか?」。Yahoo!知恵袋に2022年10月に投げられた質問です。答えから書くと、買っているのは平均世帯年収716万円の世帯で、年収の7.5倍まで出しています。人口が減っても、空き家が900万戸あっても、マンションの値段は2010年の2.25倍になりました。同じ期間に土地は1.2倍です。
ただし、全部が上がったわけではありません。同じ神戸市の中でも、兵庫区の中古マンションは3年で㎡単価が5割上がり、西区は1割下がりました。「高すぎる」の中身は、場所と築年で割れています。
この記事でわかること
- ✓ 2010年を100とすると、2025年12月の住宅地は119.8、マンションは225.1。上がったのは土地ではなくマンション
- ✓ 買っている世帯は平均年収716万円で年収の7.5倍まで出す。年収1,000万円以上が15.0%
- ✓ 空き家900万戸のうち売り物は33万戸。首都圏の新築発売は2025年に1973年以降で最少
マンションが高すぎる理由は4つ。人口でも空き家でもない

国土交通省は年間およそ30万件の取引価格から「不動産価格指数」を作っています。2010年の平均を100として、築年数や面積の違いをそろえたうえで値動きだけを追う指数です。2025年12月分(2026年3月31日公表)の全国・季節調整値は、住宅地が119.8、戸建住宅が121.9、マンションが225.1でした。
土地は15年で2割しか上がっていないのに、マンションは2.25倍です。「土地が高いからマンションも高い」という説明は、この差を説明できません。マンションは土地とは別の理由で上がっています。
理由は4つあります。①売り物が少ない ②建てる値段が上がった ③買う人の財布が大きくなった ④金利。人口と空き家はこの4つのどれにも直接は入っていません。土地側の分解(全国16,227地点を駅からの距離で切ると上がる場所と下がる場所に割れる話)は人口が減って空き家も増えているのに、土地と家の値段が上がるのはなぜ?に書いたので、ここではマンションだけを追います。
読者
団塊の世代が亡くなって家が空くんだから、そのうち手に入りやすくなるのでは?
空く家はふえます。ただし空くのは駅から遠い一戸建てが中心で、探している人が欲しい駅近のマンションは空きません。売り物の数から順に見ていきます。
理由① 売り物が少ない。空き家900万戸のうち、売却用は33万戸
総務省の令和5年住宅・土地統計調査で、空き家は900万戸、空き家率は13.8%でどちらも過去最高です。この900万戸の内訳を開けます。
- 賃貸用の空き家 … 443万戸
- 賃貸用・売却用・別荘を除く空き家 … 385万戸
- 二次的住宅(別荘など) … 38万戸
- 売却用の空き家 … 33万戸
売り物として市場に出ているのは33万戸で、総住宅数6,502万戸の0.5%です。385万戸の「それ以外」は、相続してそのままの家、長期不在の家、取り壊しが決まった家で、その74%が一戸建てです。マンションを探している人の選択肢には入りません。
新築の側はもっと絞られています。不動産経済研究所によると、首都圏の新築マンションの発売戸数は2025年に21,962戸で、1973年以降でいちばん少ない数でした。2026年7月は2,145戸の発売で、平均価格は1億6,493万円、1㎡あたり236.9万円。どちらも過去最高です。東京23区だけなら平均2億6,520万円で、その中身は東京23区の新築は平均2億6,520万円で分解しました。
売る側は数を減らして、高く売れる場所だけで事業をしています。1億6,493万円は「みんなが買っている値段」ではなく、「売る数を絞った結果、残った物件の平均」です。
空き家が積み上がる街と、値段が上がる街が地理的に別だという話は、空き家は過去最多なのに、家の値段が上がるのはなぜ?で全国100エリアの坪単価を14年分並べて確かめています。

理由② 建てる値段が上がった。鉄筋コンクリートは10年で+35%
国土交通省の建設工事費デフレーター(2015年度=100)は、2025年12月時点で木造住宅が130.9、鉄筋コンクリート造住宅が134.9です。同じ建物を建てるのに、10年前より3割5分多くかかります。
マンションは1つの敷地に何十戸も積む商品なので、1戸あたりの土地の取り分は小さく、建物の値段がそのまま1戸の値段に乗ります。土地の値段が2割しか動かなくても、建てる値段が3割5分上がれば、マンションのほうが大きく上がります。①と②を足すと、指数の225.1のうち土地の寄与は小さく、残りは「建てる値段」と次の③で説明がつきます。
読者
建てる値段が上がったなら、買う人がいなくなって値段は下がるのでは?
知恵袋の回答にもありました。「コストプッシュの値上げですから、いくらみんなが買わなくても値下げはできない」。売る側は値下げではなく、売る数を減らす方を選んでいます。7月末の販売在庫は6,597戸で2か月続けてふえました。
理由③ 買う人の財布が大きくなった。平均世帯年収716万円、年収の7.5倍まで出す

「賃金は上がらないのに、マンションは1億超えています」。これも知恵袋にある声です。買っている側の数字を見ると、財布は上がっています。
住宅金融支援機構の2025年度フラット35利用者調査(35,553件)で、家を買った人の平均世帯年収は716万円。2015年度の613万円から103万円ふえました。年収1,000万円以上の割合は8.8%から15.0%へ、年収400万円未満は21.4%から15.9%へ。買っている層そのものが入れ替わっています。
さらに、年収の何倍まで出すかも上がりました。マンションの所要資金を世帯年収で割った年収倍率は6.5倍から7.5倍へ。所要資金は5,882万円です。支えているのは共働きで、2025年の共働き世帯は1,333万世帯、専業主婦世帯は476万世帯。2人分の年収を合算して借りる世帯がふえた分だけ、1戸に出せる上限が上がりました。
「誰が買っているのか」の答えは、年収716万円の共働き世帯が、年収の7.5倍まで借りて買っている、です。年収716万円で7.5倍なら5,370万円。首都圏の新築平均1億6,493万円には届きません。届く層は年収1,000万円以上の15%で、届かない層は中古か、郊外か、築古に向かっています。
理由④ 金利。2026年6月に1.00%、ここだけが逆風
日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%から1.00%に引き上げました。金利が上がると、同じ年収で借りられる額は減ります。③の追い風が弱まるという意味で、4つのうちここだけが逆を向いています。
ただし金利が効くのは③の「買う人の財布」だけです。①売り物の数と②建てる値段は、金利が上がっても変わりません。金利で下がるのは「買い手が減った場所」で、売り物が絞られている場所では値段が下がる前に売る数がさらに減ります。
日本銀行の政策金利は2026年6月16日時点の数字です。会合ごとに変わるので、読む時点の数字は日本銀行の公表で確かめてください。
高すぎるのは東京だけではない。神戸市9区の中古マンション、3年で兵庫区+48%・西区-12%
検索窓には「仙台 マンション 高すぎる」「京都 マンション 高すぎる」「福岡 マンション 高すぎる」も並んでいます。東京だけの話だと思っていない人が打っています。神戸市で確かめました。
国土交通省の不動産取引価格情報から、神戸市9区の中古マンションの実際の取引価格(㎡単価の中央値)を、2023年1〜6月と2025年7〜12月で比べました。人口が9年で39,518人減っている市です。
| 区 | 2023年1〜6月 | 2025年7〜12月 | 3年の変化 | 件数(前→後) |
|---|---|---|---|---|
| 兵庫区 | 58.6万円/㎡ | 86.5万円/㎡ | +48% | 62→105 |
| 垂水区 | 25.0万円/㎡ | 34.7万円/㎡ | +39% | 56→71 |
| 灘区 | 45.9万円/㎡ | 53.2万円/㎡ | +16% | 56→41 |
| 中央区 | 72.1万円/㎡ | 82.5万円/㎡ | +15% | 233→251 |
| 北区 | 16.4万円/㎡ | 16.8万円/㎡ | +2% | 37→30 |
| 東灘区 | 43.1万円/㎡ | 43.7万円/㎡ | +1% | 149→144 |
| 長田区 | 31.1万円/㎡ | 30.6万円/㎡ | -2% | 19→33 |
| 須磨区 | 35.8万円/㎡ | 31.8万円/㎡ | -11% | 33→30 |
| 西区 | 31.7万円/㎡ | 27.9万円/㎡ | -12% | 54→42 |
兵庫区は3年で5割上がり、西区と須磨区は1割下がりました。同じ市の中で、上と下に割れています。大阪市も同じで、北区は75.1万円から94.0万円へ+25%、淀川区は+26%。一方で枚方市は-4%、堺市北区は-12%でした。
「マンションが高すぎる」は、駅と都心に近い区の話です。同じ神戸市でも、北区は㎡16.8万円で兵庫区の5分の1。70㎡なら1,176万円です。高すぎる場所と、まだ買える場所が、電車で30分の距離に並んでいます。

同じ神戸市中央区でも、築41年超は築10年以内の3分の1
場所だけでなく、築年でも割れています。神戸市中央区の中古マンションの取引567件(2024年10月〜2025年12月)を築年帯で分けました。
| 築年 | 件数 | ㎡単価の中央値 |
|---|---|---|
| 築10年以内 | 154件 | 90.0万円 |
| 築11〜20年 | 196件 | 81.8万円 |
| 築21〜30年 | 156件 | 65.4万円 |
| 築31〜40年 | 36件 | 36.3万円 |
| 築41年超 | 25件 | 28.6万円 |
築10年以内の90.0万円に対して、築41年超は28.6万円。同じ区の中で3分の1です。70㎡で比べると6,300万円と2,000万円。「高すぎる」のは新しいマンションの話で、買える値段の中古は同じ区の中にあります。
ただし築41年超は1981年以前の旧耐震基準にかかる年数です。安い理由は築年だけではなく、融資が付きにくいことと、修繕積立金の残高にもあります。値段だけで飛びつく前に、管理組合の修繕計画を見てください。
読者
今後5年たてば、2030年には不動産価格は大幅に下がるでしょうか?
これも知恵袋の質問です。予測はしませんが、もう下がっている場所はあります。次で事実だけを並べます。
マンションはいつ下がるのか。都心6区は3か月連続マイナス、神戸市は+3.3%
東京カンテイの2026年7月の中古マンション価格(売り希望、70㎡換算)で、都心6区は1億8,195万円、前月比-1.7%でした。5月-0.4%、6月-1.3%、7月-1.7%と3か月続けて下がっています。
同じ月に、城北・城東11区は8,497万円で+1.9%、首都圏全体は7,547万円で+1.2%と24か月続けて上がりました。神戸市は2,899万円で+3.3%、さいたま市は+2.1%、千葉市は+2.3%です。いちばん高い場所から先に息切れして、その外側はまだ上がっている、というのが2026年夏の形です。7月に下がった場所と上がった場所の一覧は中古マンションの値下がりはどこまで広がった?にあります。
「待てば安く買える」を5年前に信じた人がどうなったかは、空き家が増えてるなら、待てば安く買える?で100エリアの値動きを並べました。
私はこう見ています
私は「マンションが高すぎる」を、土地の問題ではなく商品の問題だと見ています。
根拠は指数の差です。土地は2010年から1.2倍、マンションは2.25倍。もし土地が原因なら、戸建住宅(121.9)もマンションと同じだけ上がっているはずです。上がったのは、建てる値段が乗り、売る数を絞れて、共働きの財布が向かった商品だけでした。
だから「人口が減れば下がる」「空き家がふえれば下がる」は、マンションについては当たらないと考えています。人口も空き家も4つの理由のどれにも入っていないからです。効くとすれば④の金利で、それも「買い手が減った場所」から順に効きます。都心6区の3か月連続マイナスは、その最初の形だと見ています。
一方で、神戸市西区や須磨区のように、金利が上がる前から下がっている場所もあります。そこは①が逆で、売り物のほうが買い手より多い。同じ「マンション」でも、売り物が絞られている場所と余っている場所では、値段の決まり方が逆です。買う側は、全国のニュースではなく、自分が探している区の実取引で判断するしかありません。
自分の探している区が「上がる側」か「下がる側」かを調べる
手順は3つです。
- 探している市区町村の中古マンションの実取引を見る。相場ツールに住所を入れると、土地・戸建て・マンションの㎡単価が出ます
- 築年帯で分けて見る。同じ区でも築10年以内と築30年超では3倍近く違うので、自分の予算がどの築年帯に届くかが先に決まります
- 自分の年収で借りられる額を出す。年収の7.5倍が今の買い手の上限です。それを超える物件は、待っても手が届く方向には動きません
全国1,525市区町村・5種別の実際の取引価格から中央値を出します
よくある質問
人口が減っているのに、なぜマンションは値上がりしているのですか
マンションの値段を決めているのは、売り物の数・建てる値段・買う人の財布・金利の4つで、人口は直接入っていません。国土交通省の不動産価格指数(2010年=100)で、2025年12月の住宅地は119.8、マンションは225.1です。土地より大きく上がっている分は、建設工事費(鉄筋コンクリート造で10年に+35%)と、買い手の年収(平均716万円、年収倍率7.5倍)で説明がつきます。
空き家が900万戸あるなら、マンションも余って安くなりませんか
空き家900万戸のうち売り物として市場に出ているのは33万戸で、それ以外の385万戸は相続や長期不在の家が中心で、74%が一戸建てです。マンションを探している人の選択肢にはほとんど入りません。新築の側も、首都圏の発売戸数が2025年に1973年以降で最少と、供給が絞られています。
マンションはいつ下がりますか
予測は書きません。事実として、東京カンテイの2026年7月の中古マンション価格で、都心6区は5月から3か月続けて前月比マイナスでした。同じ月に神戸市は+3.3%、さいたま市は+2.1%です。また神戸市西区や須磨区は、金利が上がる前の3年間で1割下がっています。「いつ」は全国一律ではなく、探している区ごとに違います。
年収600万円だと、いくらまでのマンションが現実的ですか
2025年度のフラット35利用者の年収倍率はマンションで7.5倍なので、600万円なら4,500万円が今の買い手の平均的な上限です。神戸市中央区の築11〜20年の中古は㎡81.8万円で、55㎡なら4,499万円です。金利1.00%以降は同じ年収で借りられる額が減るので、上限は下向きに動きます。
出典と集計条件
- 国土交通省「不動産価格指数(令和7年12月・令和7年第4四半期分)」(2026年3月31日公表、2010年平均=100、全国の季節調整値。速報値で初回公表から3か月間は改訂される)
- 国土交通省「不動産取引価格情報」を当サイトで集計。神戸市9区・大阪市の中古マンションは㎡単価の四半期中央値を2023年1〜6月と2025年7〜12月でそれぞれ平均し、その比を変化率とした。神戸市中央区の築年帯別は2024年10〜12月から2025年10〜12月の取引567件の中央値
- 総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)」
- 不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2026年7月」(2026年8月20日公表)および「同 2025年」
- 国土交通省「建設工事費デフレーター」(2015年度=100、2025年12月)
- 住宅金融支援機構「2025年度フラット35利用者調査」(2025年4月〜2026年3月、35,553件。借換えを除く)
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年6月16日)
- 東京カンテイ「三大都市圏・主要都市別 中古マンション70㎡価格月別推移 2026年7月」
- 総務省「労働力調査(詳細集計)」(共働き世帯・専業主婦世帯。労働政策研究・研修機構 図12による)
- 神戸市「推計人口」(2017年1月1日、2026年1月1日)
- 読者の声はYahoo!知恵袋の質問(2022年10月17日、2023年3月27日、2025年11月20日、2026年1月5日、2026年5月26日)から引用
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