取引先から英文のメールが届くたび、翻訳サイトに貼って読み、返信は辞書を引きながら1時間かけて書く。この時間は、ChatGPTに「誰から届いた、どういう場面のメールか」を添えて渡すだけで大きく縮みます。単語を置き換えるだけの翻訳と違い、相手が何を求めていて、いつまでに何を返せばいいのかまで日本語で整理してくれるからです。この記事では、英文メールを読む・日本語で書いた返信を英語にする・出てきた英文を自分で検算する、までを順に説明します。
先に結論
- 英文メールは「誰から・どういう関係か」を添えて渡すと、要点・相手の要求・期限が日本語で返ってくる
- 英訳を頼むときは相手との関係・長さ・トーンを指定する。指定しないと不自然に硬い英文になる
- 出てきた英文は「日本語に訳し直して」で検算する。英語が読めなくても意図のずれに気づける
この機能でできること
ChatGPTは英語と日本語を互いに訳せます。訳すだけなら無料の翻訳サービスでも足ります。仕事で効いてくるのは、訳したうえで「相手は何をしてほしいのか」「いつまでに何をすればいいのか」まで日本語で整理してもらえる点です。
使い方は4つに分かれます。
- 届いた英文メールを日本語で読む:全文の直訳ではなく、要点・相手の要求・期限の3つを抜いてもらう
- 日本語で書いた返信を英語にする:英語で考えず日本語で書き切り、相手との関係とトーンを指定して英訳させる
- 海外サイト・規約・仕様書の必要な部分だけ読む:全文を訳さず「返品できる条件はどこに書いてあるか」と場所を聞く
- 日本語を日本語に言い換える:かたい通達文をやさしく、身内向けの走り書きを社外向けに。指示の型は英訳とそのまま同じです
4つを1本につなぐと、英文メール1通を処理する流れはこうなります。
この流れで人がやるのは2つだけです。日本語で言いたいことを決めること。金額・日付・固有名詞を原文と見比べること。英語を書く作業ではなく、日本語で決めて英語を確認する作業に変わるのが、この使い方の芯です。
無料の翻訳サービスとの違い
無料の翻訳サービスは速く、1文をそのまま訳すぶんには十分に使えます。差が出るのは、訳す前に背景を伝えられるかどうかです。「送り主はアメリカの取引先の担当者」「こちらは発注する側」「返信の目的は納期の延長をお願いすること」と添えると、同じ日本語からでも出てくる英文が変わります。
| やりたいこと | 無料の翻訳サービス | ChatGPT |
|---|---|---|
| 1文をそのまま訳す | 速く、そのまま使える | 同じようにできる |
| 背景を伝えて訳し方を変える | 伝える場所がない | 文章で伝えられる |
| 要点・相手の要求・期限だけ抜く | できない | 得意 |
| 金額・日付・固有名詞の正確さ | 自分で原文と照合する | 自分で原文と照合する |
一方で、ChatGPTのほうが常に正確、ということではありません。文脈から自然な文を組み立てる仕組みのため、原文にない言葉を補ったり、細かい条件を落としたりすることがあります。金額・日付・会社名・品番は、訳文と原文を1つずつ見比べてください。ここは無料の翻訳サービスを使っても同じで、人がやるしかない部分です。
こんな仕事に便利
- 小売・EC:海外メーカーから届く納期連絡や請求書メールから、いつ・いくつ・いくらの3点だけ抜き出す
- 事務・貿易事務:英文の問い合わせに、こちらは日本語で書いてから英訳して返す
- 在宅ワーカー:海外サービスの利用規約や仕様書のうち、自分の担当作業に関わる条項だけを訳す
- 小規模事業者:海外向けの商品説明文や問い合わせへの返信を、日本語の原稿から英語に起こす
- 社内文書:かたい通達文を、パート・アルバイト向けのやさしい日本語に言い換える
最後の1つに英語は出てきません。相手が誰かを伝えて言い換えを頼む手順は、日本語同士でもそのまま通用します。
実際にやってみる
ここからは実際の画面で手順を追います。※画面は更新されることがあります。
STEP1 英文メール1通ごとに、新しいチャットを開く
前の話題が残っているチャットに続けて貼ると、別の取引先の名前や条件が混ざった訳文が返ることがあります。メール1通につき新しいチャットを開くのが確実です。
STEP2 背景を1行書いてから、英文を貼り付ける
入力欄にまず背景を書き、Shift+Enterで改行してから英文メールを貼り付けます。書くのは「誰から届いたか」「相手とこちらの関係」「自分が知りたいこと」の3つです。差出人と日付の行もそのままコピーしておくと、期限の判断に使われます。
STEP3 要点・相手の要求・期限を日本語で受け取る
送信すると、日本語に整理された答えが返ってきます。ここで見るのは、相手は何をしてほしいのか、いつまでか、こちらが決めることは何か、の3つです。全文の日本語訳が要るときだけ「全文も訳してください」と続けて頼みます。
STEP4 分かりにくい言い回しは、その場で聞き直す
訳文の中に意味の取りにくい表現があれば、同じチャットで「この文はどういう意味ですか。強い催促ですか、それとも軽い確認ですか」と聞きます。単語の意味ではなく相手の温度感を聞けるところが、翻訳サービスとの差です。
STEP5 返信は、まず日本語で書き切る
返信を英語で考え始めると、自分が知っている単語の範囲まで内容が縮みます。言いたいことは全部日本語で書きます。走り書きの箇条書きで構いません。英語にするのは次の工程です。
英訳を頼むときの型
日本語をそのまま「英語にして」と頼むと、教科書のような硬い英文が返ってきます。指定するのは相手との関係・長さ・トーンの3つです。
| 指定するもの | 書き方の例 |
|---|---|
| 相手との関係 | 相手はアメリカの取引先の担当者です。こちらは発注する側です |
| 長さ | 2段落以内で。5文以内で |
| トーン | 丁寧すぎない business casual で。初めての連絡なので少し丁寧に |
business casual は、海外の仕事のメールでよく使われる「かしこまりすぎず、失礼でもない」書き方を指す言葉です。日本語の「お世話になっております」を英語にしようとすると不自然になるため、トーンの言葉で伝えたほうが早く済みます。
初回の連絡・催促・お詫び・断りは、それぞれ適したトーンが違います。「初めて連絡する相手なので少し丁寧に」「こちらの都合で断るので、理由を先に書いて」のように場面まで書き添えると、そのまま送れる形に近づきます。
逆翻訳で検算する
英文が返ってきても、それが自分の意図どおりかどうかは、英語が読めないと分かりません。ここで使うのが逆翻訳です。出てきた英文をコピーして、「これを日本語に訳し直してください」と頼むだけです。
訳し直された日本語を読み、自分が言いたかったこととずれていないかを見ます。ずれていたら、その部分だけ日本語で直して、もう一度英訳を頼みます。英語が読めない人が自分で検算できる方法は、これしかありません。
見るのは3か所です。金額・数量・日付が変わっていないか。断ったつもりが引き受けた形になっていないなど、意図が反転していないか。会社名・担当者名・品番などの固有名詞が原文のままか。ここまで確かめてから送信します。
ただし、訳した本人が訳し直すため、語感の不自然さまでは見つかりません。相手との関係が今後の取引を左右する場面では、英語が読める人に一度目を通してもらうのが確実です。
コピペで使えるプロンプト
どれも【 】の中を自分の状況に書き換えて、そのまま貼り付けて使えます。
英文メールの要点・相手の要求・期限を日本語で抜く
コピーして使えるプロンプト
以下は【取引先名・国】から届いた英文メールです。私は【発注する側/受注する側】です。
次の3つに分けて日本語で整理してください。
1 メールの要点
2 相手がこちらに求めていること
3 期限や日付
書かれていないものは推測せず「記載なし」と書いてください。
【ここに英文メールを貼り付ける】
日本語で書いた返信を、トーンを指定して英訳する
コピーして使えるプロンプト
以下の日本語を、英語のメールにしてください。
相手は【アメリカの取引先の担当者】で、こちらは【発注する側】です。
丁寧すぎない business casual なトーンで、2段落以内にしてください。
件名も付けてください。
【ここに日本語で書いた返信を貼り付ける】
海外サイト・規約から、必要な箇所だけ訳す
コピーして使えるプロンプト
以下は【サイト名】の【利用規約/仕様書】の一部です。
【返品できる期間と条件】について書かれている箇所だけを抜き出し、英語の原文と日本語訳を並べてください。
該当する記述が無ければ「該当なし」と書いてください。要約や補足はしないでください。
【ここに該当ページの本文を貼り付ける】
逆翻訳で検算する
コピーして使えるプロンプト
以下の英文を、そのまま日本語に訳し直してください。
自然な日本語に整えず、書かれているとおりに訳してください。
訳したあとに、金額・数量・日付・固有名詞だけを一覧にして書き出してください。
【ここに英訳された英文を貼り付ける】
実際の仕事での使用例
輸入雑貨を扱う小売店のAさんに、海外メーカーから納期遅れの英文メールが届きました。要点・要求・期限のプロンプトに貼ると、遅れるのは全品ではなく1品番だけで、返事の期限が5営業日以内だと日本語で返ってきました。品番と数量だけ原文を開いて照合し、日本語で書いた返信を business casual 指定で英訳。逆翻訳して「代替品は不要」と伝わっていることを確かめてから送っています。
在宅で海外向けECの運営代行をしているBさんは、利用しているプラットフォームの規約が更新されるたび、自分の担当業務に関わる条項だけを抜き出しています。長い規約を丸ごと貼らず、該当しそうな章だけを渡すのがコツです。それでも長いときは、ChatGPTで文章を要約・整理する方法の手順で先に全体像をつかんでから、必要な条項に絞って訳しています。
よくある失敗
背景を伝えずに、訳すことだけ頼む
「英語にして」だけで頼むと、相手との距離感が分からないまま、無難で硬い英文が出てきます。1行でいいので、相手が誰で、こちらとどういう関係で、この返信で何を達成したいのかを書き添えてください。同じ日本語でも、返ってくる英文が変わります。
金額や固有名詞が変わったことに気づかない
訳文の中で会社名の表記が揺れたり、数量と単位が入れ替わったりすることがあります。訳文を受け取ったら、数字と名前だけを拾い出して原文と並べる。逆翻訳のプロンプトに一覧化を入れてあるのは、この確認を毎回やるためです。
返ってきた英文を、読まずにそのまま送る
硬すぎる英文は事務的に、くだけすぎる英文は馴れ馴れしく読まれます。初回の連絡なのに「Hi」で始まっていないか、断りのメールなのに謝罪ばかりで用件が抜けていないか。逆翻訳した日本語で確かめてから送信します。
長い契約書を丸ごと投げる
数十ページの契約書を一度に貼ると、本筋は拾えても「ただし〜の場合を除く」のような例外が落ちます。条項の単位で区切って渡し、「例外や条件だけ」「金額に関わる条項だけ」と観点を分けて聞くほうが漏れません。
注意点
- 個人情報や社外秘の文書を入れない。取引先とのメールを貼る前に、勤務先のルールを確認する
- AIの回答は間違うことがある。金額・日付・固有名詞は必ず原文と突き合わせる
- 会社の資料を入れる前に、データの学習利用設定(設定→データコントロール)を確認する
- 契約書や法的な文書の翻訳を、最終判断に使わない。金額や責任の範囲が動く取引は、翻訳の専門家に依頼するか、英語が読める担当者が原文を確認する
契約書の1文の訳し違いは、あとから取り消せない条件を引き受ける結果になります。下読みとして使うのは有効ですが、署名する前の最終確認は人が原文で行ってください。
まとめ
英文メールは、背景を1行添えて渡すだけで「要点・相手の要求・期限」の日本語に変わります。返信は英語で考えず、日本語で書き切ってから、相手との関係・長さ・トーンを指定して英訳させます。
そして、送る前に必ず日本語へ訳し直してもらいます。英語が読めなくても、意図のずれは逆翻訳で見つけられる。この一手間が、自分でできる唯一の検算です。
日本語のメールそのものを整えたいときは、ChatGPTでビジネスメールを作る方法が次の一歩になります。
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