🗨️「台風15号の雨で、うちの町だけ警報が早く出ると聞きました。本当ですか?」
本当です。山梨県富士河口湖町・大月市、長野県大町市、石川県珠洲市の4市町は、地震で地盤が緩んだぶん土砂災害の警報基準が通常の7割・8割に引き下げられたまま運用されています。8月12日の雨もその基準で判定されます。同じ降り方でも、隣の市より先に警報が出ます。
[災害] この記事の要点
気象庁が2026年8月11日夕方に発表した山梨県・長野県・石川県の気象解説情報の末尾に、4つの市町で土砂災害に関する警報等を通常より引き下げた暫定基準で運用中である旨が記載された。台風第15号による雨は、11日18時から12日18時にかけて山梨県東部・富士五湖で24時間120mm、長野県北部で60mmが予想されている。
2026年8月11日 発表
- 山梨県富士河口湖町・大月市、長野県大町市、石川県珠洲市に住んでいる人・実家がある人
- 8月12日にこの4市町へ帰省・旅行する予定の人
- 地震のあった地域で土地や中古住宅を探している人
この記事でわかること
- 4市町でいま運用されている暫定基準が、それぞれ通常の何割まで下がっているか
- 山梨県で最も雨が多く予想されている地域が、そのまま暫定基準の2市町であること
- 暫定基準が通常に戻るまで実際に何年かかっているか(新潟県と珠洲市の実例)
先に結論
- 台風15号の雨がかかる地域のうち、4つの市町だけは土砂災害の警報基準が通常の7割・8割に下げられている
- 7割は富士河口湖町(山梨)と珠洲市(石川)、8割は大月市(山梨)と大町市(長野)
- 山梨県で最も雨が多い予想の東部・富士五湖(24時間120mm)が、そのまま暫定基準の2市町の場所
- この情報は気象庁の気象解説情報の最後の1文にしか書かれていない
- 元に戻るまでは年単位。珠洲市は3年3か月続いている
暫定基準になっている4市町と、下がっている割合
気象庁が8月11日夕方に出した各県の気象解説情報を読むと、山梨県・長野県・石川県の3県の文末に、同じ形の一文が入っています。「揺れの大きかった◯◯市については、土砂災害に関する警報等の発表基準について通常より引き下げた暫定基準で運用しています」。台風15号の雨がかかる範囲でこの記載があったのは、次の4市町でした。
| 市町 | 暫定基準 | きっかけの地震 | 最大震度 |
|---|---|---|---|
| 山梨県 富士河口湖町 | 通常基準の7割 | 2026年6月26日22時29分 山梨県東部・富士五湖の地震(M5.6) | 6弱 |
| 山梨県 大月市 | 通常基準の8割 | 同上 | — |
| 長野県 大町市 | 通常基準の8割 | 2026年4月18日13時20分 長野県北部の地震 | 5強 |
| 石川県 珠洲市 | 通常基準の7割 | 2023年5月5日の地震(2024年1月1日の能登半島地震でも継続) | — |
割合は気分で決まっているわけではありません。気象庁は震度6弱を観測した地域を通常基準の7割、震度5強を観測した地域を8割と定めています。富士河口湖町の7割は、6月26日に震度6弱を観測したことに対応します。大町市の8割は、4月18日の震度5強に対応します。
対象になるのはレベル4土砂災害危険警報、レベル3土砂災害警報、レベル2土砂災害注意報の3つです。大町市についてはこれに加えて、大雨警報・注意報の土壌雨量指数基準も8割に下げられています。土砂災害の情報だけでなく、大雨警報そのものが早く出る町だということです。
山梨でいちばん雨が多い予想の地域が、そのまま暫定基準の場所だった
ここが今回いちばん引っかかった点です。山梨県の気象解説情報から、地域ごとの予想雨量を並べ替えてみました。
| 地域 | 24時間雨量(11日18時〜12日18時) | 1時間雨量 | 暫定基準の市町 |
|---|---|---|---|
| 富士五湖 | 120mm | 30mm | 富士河口湖町(7割) |
| 東部 | 120mm | 30mm | 大月市(8割) |
| 中北地域 | 80mm | 30mm | なし |
| 峡東地域 | 80mm | 30mm | なし |
| 峡南地域 | 80mm | 30mm | なし |
県内で最も雨が多く予想されている東部と富士五湖が、そのまま暫定基準の2市町がある場所です。1時間雨量は県内どこも30mmで同じなのに、24時間の合計だけ40mm差がついています。雨が長く居座る側に、基準の下がった町がある、という並びになりました。
長野県は逆の並びです。大町市がある北部は24時間60mm・1時間20mmで、中部の100mm・30mmより少ない予想でした。同じ暫定基準でも、大町市のほうは今回の雨量そのものは県内で軽いほうに入ります。
「7割」で実際に何が変わるのか
土砂災害警戒情報や大雨警報は、降った雨がどれだけ土に溜まっているかを示す土壌雨量指数などが、あらかじめ決めた基準値に届いたときに出ます。暫定基準はこの基準値そのものを7割・8割に下げる措置です。雨の降り方が同じなら、基準値に届くのが早くなるので、警報も早く出ます。
実務的にありがたいのは、この暫定基準が土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)にも反映されている点です。気象庁は長野県の発表資料で、土砂キキクルは暫定基準が反映されたものになり、避難対象地域の絞り込みに使えると説明しています。暫定基準の町だけ別の画面を見に行く必要はありません。いつもの色分けの地図が、その町では早めに色を変えます。
通常基準に戻るまで、実際どれくらいかかっているのか
暫定基準は「当分の間」とだけ書かれていて、終わりの日付が最初から示されることはありません。地震のあとの降雨と土砂災害の関係を調べて、必要に応じて変更するという建て付けです。実際にかかった時間を2つ挙げます。
| 対象 | 開始 | 終了 | 期間 |
|---|---|---|---|
| 新潟県 長岡市ほか13市町村 | 2024年1月1日(能登半島地震) | 2025年1月28日11時に廃止 | 約1年1か月 |
| 石川県 珠洲市 | 2023年5月5日の地震 | 2026年8月11日時点で継続中 | 3年3か月以上 |
珠洲市は2023年5月の地震ですでに7割で運用していたところに、2024年1月の能登半島地震が重なりました。国土交通省の発表資料には、珠洲市は既に7割の暫定基準で運用中のため変更なし、と書かれています。同じ能登半島地震をきっかけにした暫定基準でも、新潟県側は1年1か月で廃止され、珠洲市は3年3か月たった今日も続いている。地盤の回復の度合いがそれだけ違う、ということです。
住まいのリスクに対する備え
土地の履歴やリスクを知ったら、次は「起きたときにどうするか」です。最低限そろえておくと動けるものを挙げます。
一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
停電時は懐中電灯より、部屋全体を照らせるランタンの方が使えます。電池でも充電でも点くものだと、どちらが尽きても止まりません。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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この情報がどこに置かれているか
ここが今回の記事を書いた理由です。4市町が暫定基準であることを今日の時点で知る方法は、気象庁の「◯◯県気象解説情報」を開いて、いちばん下までスクロールすることでした。防災事項の説明が終わって、次の発表予定の時刻が書かれて、そのあとに1文だけ置かれています。台風の進路も雨量も上のほうに書かれているので、途中で読むのをやめると出会いません。
もうひとつは、この一文が地震の直後に一度だけ発表されて、そのあとは大きく報じられないことです。大月市が暫定基準に入ったのは6月26日の地震のときで、そこから7週間近くたっています。その間に引っ越してきた人や、お盆に帰ってくる家族が、この話を聞く機会はほとんどありません。
早く出る警報は、脅しではなく持ち時間
私は、暫定基準の情報が置かれている場所に問題があると考えています。根拠は3つです。1つ目は、上に書いたとおり気象解説情報の最終行にしか載っていないこと。2つ目は、地震直後に1回発表されたあと、台風が来るたびに再告知される仕組みが無いこと。3つ目は、珠洲市の例のように年単位で続くため、地震の記憶が薄れたころに雨が来ること。
基準が下がっていると聞くと危険が増したように感じますが、実際に増えているのは危険ではなく、警報から実際の崩落までの持ち時間のほうです。地盤の状態は地震の日から変わっていません。変わったのは、その状態に合わせて知らせるタイミングを早めた、という点だけです。早く出た警報を「まだ大丈夫なのに大げさだ」と受け取ると、この措置の意味がまるごと消えます。
4市町にお住まいなら、12日の雨で警報が出たときは、隣の市より早いのが正常だと考えてください。逆に4市町以外にお住まいでも、通常基準はあくまで地盤が健全な前提の数字です。自分の土地がどういう区域にあるかは、住所から調べられます。
生活・仕事にどう効くか
- 12日の避難の判断:4市町では通常の7〜8割の雨量で警報等が出る。早く出るぶん、荷物をまとめて動くまでの時間が増える。逆に「まだ警報が出ていないから大丈夫」という判断は、隣の市の感覚では成立しない。
- 帰省・旅行:富士河口湖町がある山梨県富士五湖と大月市がある東部は、11日18時から12日18時の24時間降水量が120mmの予想。同じ山梨県内でも甲府盆地側(中北・峡東・峡南)の80mmより40mm多い。
- 土地・中古住宅を探すとき:暫定基準は数か月では終わらない。石川県珠洲市は2023年5月5日の地震から3年3か月、7割の暫定基準が続いている。地震のあった地域で家を探すなら、土砂災害警戒区域の指定だけでなく、警報基準がいま何割で運用されているかも確認材料になる。
結局どうすればよいか
- 自分の市町が暫定基準かどうかを、気象庁の「◯◯県気象解説情報」の末尾で確認する(都道府県名+気象解説情報で検索できる。暫定基準の記載はこの文書の最後の1文にしかない)
- 該当するなら、避難の目安は土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)で見る。暫定基準は土砂キキクルにも反映済みなので、通常基準の地域と同じ画面で判断できる
- 8月12日に山梨県東部・富士五湖へ行く予定があるなら、24時間120mmの予想を前提に出発時刻を決める。県内の他地域より40mm多い
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- 災害リスク診断 — 住所から浸水・土砂・地盤のリスクを確認する
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公式出典
- 気象庁 令和8年6月26日22時29分頃の山梨県東部・富士五湖の地震に伴う土砂災害に関する警報等の暫定的な運用について(2026年6月27日発表)
- 気象庁 令和8年4月18日13時20分頃の長野県北部の地震に伴う土砂災害警戒情報発表基準の暫定的な運用について(2026年4月18日発表)
- 気象庁 令和8年4月18日13時20分頃の長野県北部の地震に伴う大雨警報・注意報発表基準の暫定的な運用について(2026年4月18日発表)
- 国土交通省 「令和6年能登半島地震」に伴う土砂災害警戒情報発表基準の暫定的な運用について(2024年1月5日発表)
- 新潟県 能登半島地震を受けて暫定的に引き下げた「土砂災害警戒情報」の発表基準を廃止して通常基準で運用します(2025年1月28日発表)
- 気象庁 山梨県気象解説情報(台風第15号)2026年8月11日16時51分発表(2026年8月11日発表)
- 気象庁 長野県気象解説情報(台風第15号)2026年8月11日発表(2026年8月11日発表)
- 気象庁 石川県気象解説情報(台風第15号)2026年8月11日16時35分発表(2026年8月11日発表)
更新履歴
- 2026年8月11日 初版を公開
※本記事は2026年8月11日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。


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