値段を決めているのは「直近6か月の買付価格の平均」
政府売渡価格は、買付価格にマークアップ(政府管理経費と国内産小麦の生産振興対策に充てる分)と港湾諸経費を上乗せして決まります。改定は年2回、4月期と10月期です。
今回の算定に使われたのは、令和8年3月第2週から令和8年9月第1週までの6か月間の平均買付価格です。6か月で平均するのは、国際相場や為替の動きがそのまま価格に出ないようにするためです。
この半年で何が起きて上がったんですか。
農水省の資料には、買付価格の推移とあわせて時期ごとの出来事が書き込まれています。算定期間にあたるところに載っているのは、米国の干ばつと冬小麦の作況悪化、黒海地域での天候懸念、ロシア・ウクライナによる黒海攻撃です。理由そのものは資料に文章で説明されていないので、ここは「相場に付されていた見出し」として読むのが正確です。
パンの値段に占める小麦代は約7%
売渡価格が12.0%上がると聞くと、パンも12%上がるように読めます。ところが農水省の資料には、小麦関連製品の小売価格に占める原料小麦代金の割合が品目ごとに載っています。
| 品目 | 小売価格に占める原料小麦代金の割合 |
|---|---|
| 小麦粉(家庭用薄力粉) | 約20% |
| 食パン | 約7% |
| ゆでうどん | 約4% |
| うどん(外食) | 約1% |
| 中華そば(外食) | 約1% |
| 即席麺(カップ麺) | 約1% |
資料の注記には「協力企業からのデータを元に試算したもので、実際には企業、製品の種類、時期等によって異なる」とあります。
そして農水省は、今回の改定が消費者物価指数に与える影響を0.008%程度と見積もっています。12.0%という数字と、0.008%という数字の差は、この「原料代の割合」から来ています。
とはいえ、値上げが発表されるときの理由が全部この改定によるものとは限りません。人件費・物流費・包装資材も同時に動きます。「小麦が上がったから」と説明された値上げの幅が、原料代の割合から見て説明のつく範囲かどうかは、この表を当てれば見当がつきます。私はこの表を、値上げの理由を確かめる物差しとして使えるものだと考えています。
日本の小麦は8割以上が輸入
資料によると、小麦は需要量の8割以上を外国から輸入しています。国内産は民間流通で取引され、国内産で量的・質的に満たせない分を政府が国家貿易で計画的に輸入して需要者に売り渡す仕組みです。
過去5年(令和3〜7年度)の平均で、国家貿易による輸入は455万トン。銘柄別の内訳と主な用途は次のとおりです。
| 銘柄 | 輸入数量(5年平均) | 小麦粉の種類 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| カナダ産ウェスタン・レッド・スプリング(1CW) | 161万トン | 強力粉 | 食パン |
| アメリカ産ハード・レッド・ウィンター(HRW) | 76万トン | 準強力粉 | 中華麺、ギョウザの皮 |
| アメリカ産ダーク・ノーザン・スプリング(DNS) | 63万トン | 強力粉 | 食パン |
| オーストラリア産スタンダード・ホワイト(ASW) | 70万トン | 中力粉 | うどん |
| アメリカ産ウェスタン・ホワイト(WW) | 57万トン | 薄力粉 | カステラ、ケーキ、和菓子、天ぷら粉 |
合計455万トンには、上の5銘柄以外のデュラム小麦等28万トンが含まれます。
次の改定は令和9年4月期
改定は年2回と決まっているので、次は令和9年4月期です。算定に使われるのは、令和8年9月から令和9年3月にかけての買付価格の平均になります。
いま起きている相場の動きは、半年遅れで売渡価格に出てきます。逆にいうと、今回の12.0%は今週の相場ではなく、3月から9月にかけての相場が反映されたものです。
生活・仕事にどう効くか
- 食パンの値段:農水省の試算では、食パンの小売価格に占める原料小麦代金の割合は約7%。売渡価格が12.0%上がっても、原料代の部分だけが12.0%上がる計算になる
- 家庭用の小麦粉:家庭用薄力粉は小売価格に占める原料小麦代金の割合が約20%と、小麦関連製品のなかで最も高い。値上げがいちばん直接に効く品目
結局どうすればよいか
- パンや麺の値上げが発表されたとき、それが今回の改定の分なのか別の要因なのかは、原料代の割合(食パン約7%・ゆでうどん約4%)を目安に見る
- 家庭用の薄力粉は原料代の割合が約20%と高いので、まとめ買いの判断はこの品目でいちばん効く
- 次の改定は令和9年4月期。年2回(4月期・10月期)と決まっている
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公式出典
- 農林水産省「輸入小麦の政府売渡価格の改定について」(2026年9月9日発表)
- 農林水産省「輸入小麦の政府売渡価格について」(価格公表添付資料・全9ページ)(2026年9月9日発表)
更新履歴
- 2026年9月10日 初版を公開
※本記事は2026年9月10日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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