旧吹上トンネルは、東京都青梅市にある1953年完成のトンネルです。東京都の2023年度の点検で、健全性は4段階でいちばん重い「Ⅳ(緊急措置段階)」と判定されました。
都が2025年10月にまとめたトンネルの計画には、都建設局が管理するトンネルが一覧で並んでいます。Ⅳが付いたのは、この1本だけです。心霊スポットとして知られるトンネルの、もう1つの記録です。
しかも、吹上トンネルは1本ではありません。明治・昭和・平成の3本があり、怖い話が集まっているのは、車が通らなくなった古い2本のほうです。
先に結論
- ✓ 吹上トンネルは3本。明治の旧旧(1904年)、昭和の旧(1953年)、平成の新(1993年運用開始)
- ✓ 噂される宮崎勤事件とのつながりを、怪談師の吉田悠軌さんは「事実ではありません」と否定
- ✓ 旧トンネルは2023年度の都の点検で「緊急措置段階」。都は補修を計画している
吹上トンネルは3本ある
吹上トンネルは、青梅市の黒沢地区と成木地区を結ぶトンネルです。週刊女性PRIME(プライム)の2021年4月4日の記事によると、1904年に手掘りでレンガ造りの「旧旧吹上トンネル」ができ、その50年後の1953年に「旧吹上トンネル」が完成しました。いま車が通っているのは、1993年に運用が始まった新吹上トンネルです。
| トンネル | できた年・長さ | いまの様子 |
|---|---|---|
| 旧旧吹上トンネル | 1904年、レンガ造り | 入口は鉄板でふさがれ、入れない(2021年) |
| 旧吹上トンネル | 1953年、246m | 車止めがあり、通れるのは徒歩と自転車だけ(2021年) |
| 新吹上トンネル | 1993年運用開始、603m | 現役の道路。都の点検は健全性Ⅱ |
長さと点検結果は東京都建設局の資料、旧旧の完成年と2021年の様子は週刊女性PRIMEによる。都の資料では、新吹上トンネルの設置は1994年度です。

新しいトンネルができると、古い道を通る車はいなくなります。人の来ない山あいのトンネルが肝だめしの場所になる流れは、福岡の犬鳴トンネルと同じです。週刊女性PRIMEは、旧吹上トンネルを映画『犬鳴村』のロケ地にもなった場所として紹介しています。
近くに住む人たちは同誌に、若者が大勢来るようになったのは20年ほど前からだと口をそろえています。
噂の事件と地元の証言
旧吹上トンネルには、「幼子の泣き声が聞こえる」「白い和服姿の幽霊が出る」といった噂があります。幼女連続誘拐殺人事件の宮崎勤がここに潜んでいた、という話まで語られてきました。
この宮崎勤説について、怪談師の吉田悠軌さんは週刊女性PRIMEの取材に「事実ではありません」と答えています。本当の現場は別で、事件当時、吹上トンネルは噂にもならなかった、という説明です。
白い和服姿の幽霊については、昔ある番組のロケで白い着物の人形をトンネル内につるしたことがあり、その話がひとり歩きしたのではないか、という見方が同じ記事で紹介されています。こちらは推測として語られている話です。
読者
じゃあ、事件は何もなかったの?
近くの土地を借りている地元の男性は、終戦直後、旧旧トンネル手前の家で2人が亡くなる強盗事件があったのは本当だと話しています。現場は家の中で、トンネルは関係ないそうです。ただ「おばけは出ませんよ」とも。当時の新聞記事までは確認できていません。

地元の70代の女性も、地元でおばけを見た人は1人もいない、と話しています。
私は、この話でいちばん重いのは幽霊ではないと考えています。地元で亡くなった人が、何十年もたってから「おばけ」として語られていることのほうです。先の男性は、遺族がそれを悲しんでいると同誌に話しています。
都の点検で「緊急」判定
噂とは別に、旧吹上トンネルには行政の記録があります。東京都建設局は、管理するトンネルを定期的に点検し、結果を4段階の健全性で公表しています。資料での名前は、ただの「吹上トンネル」です。
2021年3月の「第二次トンネル予防保全計画」では、旧吹上トンネルは2017・18年度の点検で健全性Ⅱでした。この点検では、都が管理する126か所のトンネルのうち、Ⅳと判定されたものは1つもありません。同じ資料には、吹上トンネルの漏水の写真も載っています。
2025年10月の「トンネル個別施設計画」では、2023年度の点検結果がⅣになっています。
| トンネル | 2017・18年度 | 2023年度 |
|---|---|---|
| 旧吹上トンネル(1953年度設置) | Ⅱ(予防保全措置段階) | Ⅳ(緊急措置段階) |
| 新吹上トンネル(1994年度設置) | Ⅱ | Ⅱ |
都の予防保全計画は、変状の対策区分Ⅳを「利用者に対して影響が及ぶ可能性が高いため、緊急に対策を講じる必要がある状態」と定義しています。ここでいう「緊急」は、早めに手を打つ必要がある状態から、通行させられない状態までを含みます。
都は旧吹上トンネルの補修を計画していて、概算の事業費は1億7,600万円(2025〜29年度の合計)です。2026年10月の時点で、旧トンネルが通行止めになっているかどうかの告知は、今回は見つけられませんでした。

古いトンネルや崖沿いの道は、大雨のときの土砂災害にも気をつけたい場所です。自分の家のまわりの災害リスクは、住所から調べられます。
行かないでほしい理由
2021年の取材の時点で、旧旧トンネルの手前にはゲートがあり、入口は厚い鉄板でふさがれていました。土地を借りている地元の男性は週刊女性PRIMEに、ゲートの鍵を壊される、鉄板の扉をこじ開けられそうになる、物を盗まれるといった被害を話しています。亡くなった2人の冥福を祈って作った地蔵も、見物に来た人に壊されたそうです。
旧旧トンネルへ向かう道は、片側が崖になった幅1mにも満たない道です。旧トンネルの中も天井や壁にひびが入って水が噴き出しており(2021年)、記者は「おばけより崩落が怖い」と書いています。
読者
昼に行けば大丈夫?
昼でも、旧旧トンネルのまわりは地元の人が管理している土地で、道も荒れています。旧トンネルは都が「緊急」と判定し、補修が計画されているトンネルです。肝だめしで行く場所ではありません。
噂と記録を分けて読みたいなら、怪談師の吉田悠軌さんの本があります。福岡の犬鳴村の伝説も、吉田さんが記録から読み解いています。
出典
- 東京都建設局「トンネル個別施設計画」(2025年10月)
- 東京都建設局「第二次トンネル予防保全計画」(2021年3月)
- 週刊女性PRIME「最恐心霊スポットを徹底取材『吹上トンネル』で聞こえる幼子の泣き声と悲しい記憶」(2021年4月4日)
- アイキャッチ写真:Tx-re「吹上隧道」(2010年)/パブリックドメイン/Wikimedia Commons(ウィキメディア・コモンズ)(文字を合成)
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