🗨️「海岸にクジラが流れ着いたら、誰が片づけてお金を払うの?」
水産庁の鯨類座礁対処マニュアルは、死んだクジラを廃棄物処理法の「一般廃棄物」として扱うと書いています。一般廃棄物は市町村が収集・運搬・処分する義務を負うので、片づけるのも払うのも市町村です。大阪湾の「淀ちゃん」は約8,019万円かかりました。
[話題] この記事の要点
2026年9月20日 発表
- 九十九里浜へ行く予定がある人
- 海岸で大きな生き物の死骸を見つけたことがある人
- 自治体のお金の使い道が気になる人
いま分かっていること
| 項目 | 報じられている内容 |
|---|---|
| 場所 | 千葉県匝瑳(そうさ)市・新堀(しんぼり)浜 |
| いつ | 9月19日の朝 |
| 何が | ナガスクジラとみられる体長17メートルほどの個体。すでに死んでいる |
| 市の対応 | ロープを張って立ち入らないよう呼びかけ |
| 撤去 | 台風25号の影響で行われていない。実施の時期は示されていない |
匝瑳市の公式サイトを見ても、9月20日の時点でこの件のお知らせは出ていません。つまり、いま出回っている情報はすべて報道経由です。台風25号の関東への最接近は21日なので、動かせるようになるのはそのあとになります。
死んだクジラは法律上「一般廃棄物」
ここからは、報道が答えていない部分です。水産庁の「鯨類座礁対処マニュアル」に、はっきり書かれています。
座礁鯨の鯨体の利用を全く行わなかった場合の当該鯨体及びその一部を利用した場合(学術目的で骨格標本を作製した場合等を含む。)の残滓は、廃棄物処理法第2条第2項に規定する一般廃棄物として処理する必要がある。(水産庁「鯨類座礁対処マニュアル」Ⅵ-1)
研究や食用に使わないのであれば、扱いは生ごみと同じ枠組みに入ります。17メートル・数十トンの生ごみです。
だから、払うのは市町村
同じマニュアルの次の項に、誰が処理するのかが書かれています。
一般廃棄物については、市町村が生活環境の保全上支障が生じないうちに収集し、これを運搬し及び処分する義務を負っている(「廃棄物処理法」第6条の2第1項)。(水産庁「鯨類座礁対処マニュアル」Ⅵ-2)
ここが分かりにくいのは、海岸を管理しているのは市ではないからです。海岸法第5条と第37条の3で、海岸保全区域と一般公共海岸区域の管理は原則として都道府県知事と決まっています。
| 何を | 誰が | 根拠 |
|---|---|---|
| 海岸そのものの管理 | 原則として都道府県知事 | 海岸法第5条・第37条の3 |
| 死んだクジラの収集・運搬・処分 | 市町村 | 廃棄物処理法第6条の2第1項 |
| 現地の対策本部の設置 | その海岸線を有する市町村 | 水産庁マニュアル Ⅱ |
県の海岸に流れ着いたものを、市町村が自分の予算で片づける。マニュアルには、土地や建物の占有者も市町村の処理に協力する義務を負う(廃棄物処理法第6条の2第4項)と書かれています。
いくらかかるのか
過去の事例の金額です。どちらも関西の自治体が公表した実額で、報道で検証されています。
| 事例 | 時期 | 処分方法 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 大阪湾・淀川河口「淀ちゃん」(マッコウクジラ) | 2023年1月 | 海洋投入(紀伊半島沖に沈設) | 約8,019万円 |
| 堺泉北港のマッコウクジラ(全長15メートル・約32トン) | 2024年2月 | 埋設(産業廃棄物最終処分場) | 約1,500万円前後 |
「淀ちゃん」の当初試算は約3,800万円でした。実際には倍以上かかっています。運ぶ船、曳航、沈めるための重り、人件費が積み上がるためです。クジラ1頭で、小学校の体育館を改修できるくらいの金額が動きます。
処分の方法は3つある
| 方法 | 中身 |
|---|---|
| 埋め立て(埋却・埋設) | 自治体の清掃部局・環境部局と、埋める土地の所有者や管理者と協議して処理する |
| 焼却 | — |
| 海洋投入 | 埋却に支障がある場合に、廃棄物処理法施行令第3条の規定の例により行う。投入できる海域と方法は海洋汚染防止法で指定されている |
どれを選ぶかで金額が大きく変わります。「淀ちゃん」が8,000万円台になったのは海に運んで沈めたからで、陸で埋めた堺泉北港の例は1,500万円前後でした。浜がどこにあるか、重機が入れるか、埋める場所が確保できるかで決まります。
見に行かないほうがいい理由
ロープが張られている理由は、危ないからだけではありません。死骸は日がたつほど体内にガスがたまって膨らみます。そして人が集まるほど、重機を入れる作業が進みません。
千葉県内では過去に、海岸に打ち上げられたクジラから歯を持ち去る人が現れたこともあります。見物が増えると、自治体は警備にも人を割くことになります。片づけの費用を払っているのは、その市町村の住民です。
どんな様子なのかは、報道機関が撮った映像で十分わかります。過去に日本の海岸で起きた漂着の映像を3本置いておきます。
出典:YouTube/朝日新聞
1本目は千葉県の海岸に4頭が打ち上げられたときの空撮、2本目は同じ千葉・館山の件で「地震との関連を裏付ける証拠はない」と伝えたもの、3本目は鳥取の海岸に体長10〜15メートルのクジラが漂着したときのものです。漂着そのものは、日本の海岸でたびたび起きています。そのたびに、地元の市町村が片づけています。
生活・仕事にどう効くか
- 法律上の扱い:水産庁のマニュアルは、利用しなかった鯨体を廃棄物処理法第2条第2項の一般廃棄物として処理する必要があると書いている。一般廃棄物は市町村が収集・運搬・処分する義務を負う(廃棄物処理法第6条の2第1項)。
- 海岸そのものの管理者:海岸法第5条・第37条の3により、海岸保全区域と一般公共海岸区域の管理は原則として都道府県知事。海岸を管理するのは県、死んだクジラを処分するのは市町村、という二階建てになっている。
- かかったお金の前例:2023年1月の大阪湾「淀ちゃん」は約8,019万円(当初試算は約3,800万円)。2024年2月の堺泉北港のマッコウクジラは約1,500万円前後。どちらも自治体の負担。
結局どうすればよいか
- 現場には行かない。市がロープを張って立ち入りを止めているのは、見物客が増えると作業が進まないため
- 海岸で大きな死骸を見つけたら、自分で動かさず市町村へ連絡する(処理の主体が市町村だから)
- 台風が抜けるまで作業は動かない。21日の関東最接近を過ぎてからが本番になる
公式出典
- 水産庁「鯨類座礁対処マニュアル」Ⅵ 死亡した鯨体の処置処分(2026年9月20日発表)
- e-Gov法令検索 海岸法(第5条・第37条の3)(2026年9月20日発表)
- 関西テレビ「淀ちゃん」処理費用の検証(2024年2月20日発表)
- 関西テレビ 堺泉北港のマッコウクジラ(2024年2月27日発表)
更新履歴
- 2026年9月20日 初版を公開
※本記事は2026年9月20日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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