「第一種区域の中なら、どの家でも防音工事の補助が出る」とは限りません。基地や飛行場の近くの中古の家は、住所が第一種区域に入っているかと、建築年が区域ごとの期日に合うかの両方で、補助の可否が決まります。合えば防音サッシや冷暖房機を国の補助で付けられ、外れれば同じ音でも補助は出ません。区域は防衛大臣が指定し、官報の告示で変わります。
区域は固定ではありません。防衛省は全国で見直しを進めていて、小松飛行場周辺では2026年10月13日に見直し案が示されました。
第一種・第二種・第三種の違い
三つの区域は、法律の上で入れ子になっています。基準は、時間帯で重みをつけた騒音の指標、Lden(エルデン)です。
| 区域 | 基準 | 国がすること | 家にとっての意味 |
|---|---|---|---|
| 第一種区域 | 62デシベル以上(旧基準のうるささ指数、W値で75以上) | 住宅防音工事の補助(法第4条) | 防音サッシや冷暖房機の設置などを、国が補助する |
| 第二種区域 | 第一種のうち73デシベル以上(W値90以上) | 建物の移転補償と土地の買入れ(法第5条) | 区域の外へ移る人が申し出れば、国が補償や買入れをすることができる |
| 第三種区域 | 第二種のうち76デシベル以上(W値95以上) | 緑地帯の整備など(法第6条) | 国が買い入れた土地を、緩衝緑地にする |
数値は防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律の施行規則第2条、W値との対応は防衛省の資料によります。同じ「第一種区域」でも、工場や工事の騒音を規制する騒音規制法の区域は地域の静けさの区分で、別の制度です。民間の特定飛行場の周辺にも、別の法律による同名の区域があります。ここで扱うのは、防衛大臣が指定する区域です。
区域に入るかを調べる順番
- 飛行場を管轄する防衛局の「住宅防音」のページを開きます。小松は近畿中部防衛局、厚木と浜松は南関東防衛局です。
- 区域の詳しい図は、防衛局や最寄りの防衛事務所に置かれた「縦覧図」で見ます。小松は小松防衛事務所です。住所が線のどちら側かは、ここで確かめます。
- 建築年月日を不動産登記事項証明書などで確かめ、住所とあわせて防衛局の住宅防音の担当課に聞きます(小松は近畿中部防衛局の防音対策課)。防衛局は、建設時期が分からないときは、希望届の前に登記簿で確認するよう案内しています。
建築年で決まる防音工事の対象
対象になるのは、区域の指定の際に現に所在する住宅です。法第4条の文言で、区域が決まったあとに建った家は、条文の上では入りません。そのため防衛局は、飛行場ごとに建築年の期日を決めています。
小松飛行場周辺では、昭和59年12月20日までに建った家が基本の対象です。そのあとに建った「告示後住宅」は、防衛局が建築年の古い順に対象を広げています。2025年10月版のパンフレットは、昭和53年12月28日告示の区域の、令和5年12月22日までに建った家を対象と書き、昭和55年9月10日告示の区域には告示後の対象を置いていません。同じ小松でも、1998年築の家は、どの告示の区域にあるかで結論が変わります。
中古で買った家はどうなるのか。Yahoo!知恵袋には2025年6月、防音工事の途中で、前の持ち主から買った中古住宅だからという理由でサッシ工事だけ対象外と言われた、という相談が出ています。回答者は申請要件の確認漏れによる凡ミスだと答えていますが、これは回答者の見解です。条文と防衛局のよくある質問が条件にしているのは、住宅の建築時期と、区域の中にあることです。前の持ち主から買った家を除く記述は、確認した資料にありませんでした。
申込みでは、住民票と現地調査で、住んでいる実態と世帯人員が見られます。申込みの前3か月以内に転入した人がいると転入理由と転出の予定を聞かれ、1か月以内の転入は、結婚と出生を除いて、居室数を決める人数に入りません。買ってすぐ申し込むと、数え方が変わります。
小松では、この建築年の線も引き直されます。防衛省は2026年10月、現行の区域をすべて解除して新しい区域を指定する「指定再告示方式」を示しました。新しい区域の中で、新しい告示の適用日までに建った家は、すべて対象になります。適用日より後に建てる家の扱いは、資料に書かれていません。適用は令和10年度(2028年度)の秋ごろの予定で、告示から適用までの約1年6か月は、いま補助の対象になっている家の希望届を受け付けます。この間に出した家は、区域の解除後も現行の内容で工事されます。区域の面積や世帯数はニュース記事に、1984年の告示からの経緯は小松基地 騒音区域/42年ぶりに見直しにあります。
買う・借りる・売るで確認すること
| 立場 | 確認すること |
|---|---|
| 買う | 住所が区域の中か。建築年月日が、その区域の対象期日の内か。前の持ち主が、すでに防音工事を受けた家か(完了から10年未満だと、追加の工事ができない場合があります)。補助には上限額があり、床の張り替えなど範囲外の工事は自己負担です。 |
| 借りる | 工事の希望者は、原則として所有者です。借家人は、所有者の承諾があれば希望者になれます。借家人が工事をした場合、引っ越しのときは、工事に関する義務を所有者へ引き継ぐ手続きが要ります。 |
| 売る | 防音工事を済ませた家を売るときは、所要の手続きが要ると防衛局が案内しています。工事のあと、処分制限期間(木造22年、鉄筋コンクリート造47年、エアコンと換気扇6年)の内に解体したり住宅以外に使ったりするときは承認が要り、補助金相当額の返納を求められることがあります。 |
| 第二種区域で売る | 区域の外へ移る人は、建物の移転補償と土地の買入れを、国に申し出られます(予算の範囲内)。対象は、第二種区域の指定のときに建っていた建物と、そのとき宅地だった土地などです。国に土地を譲渡すると、譲渡所得から最大2,000万円を控除できる特例があります(最初に譲渡した年に限る。南関東防衛局の資料)。 |
小松では、NHK受信料の半額相当を補助する事業も、新しい区域に合わせて変わります。新しい区域の適用日以降に転入した契約者は対象外です(防衛省の資料)。
不動産会社の説明に出るか
宅地建物取引業法35条1項2号は、「法令に基づく制限」を契約前の説明の対象にしています。その一覧は施行令3条にあり、2026年4月1日施行版に、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律は入っていません。省令16条の4の3(土砂災害警戒区域や水害ハザードマップなど)にも騒音区域の項目はなく、国土交通省の「解釈・運用の考え方」(令和8年4月1日施行版)にも「騒音」「飛行場」「航空機」の語は出てきません。
同じ一覧には、民間の特定空港の建築制限(特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法)が入っています。環境整備法の区域は、土地の利用を縛る制度ではなく、助成と補償の制度です。
ただし、宅建業法47条1号ニは、環境など買い手や借り手の判断に重要な影響を及ぼす事項を、故意に告げないことを禁じています。騒音区域がこれに当たるかは、条文と国土交通省の資料から確認できませんでした。説明が出るのを待たず、不動産会社に「この住所は第一種区域に入りますか。建築年は告示の前ですか、後ですか」と聞くのが早いです。
小松基地の周辺(小松市・加賀市の一部)は、騒音区域とは別に、重要土地等調査法の特別注視区域にも入っています。200平方メートル以上の土地や建物(建物は床面積)を売買するときは、契約の前に内閣総理大臣への届出が要り、こちらは施行令3条の一覧に入っているので、売買の重要事項説明の対象です。
水害でも同じ構造です。水害ハザードマップでの位置は説明項目ですが、過去の浸水は項目にありません(浸水 告知義務/黙った売主に237万円の判決)。飛行機以外の音を現地で確かめる見方は、学校の前の家 デメリット/安いとは限らないにあります。
出典:防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(e-Gov法令検索)、近畿中部防衛局「住宅防音事業について」、防衛省「小松飛行場周辺の第一種区域等の見直し」、南関東防衛局「移転措置事業」、内閣府「特別注視区域の一覧(石川県)」、国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」。いずれも2026年10月14日に確認しました。
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