荒川、江戸川、利根川の沿岸が赤く見える「関東の揺れやすさマップ」が話題になっています。
ただし、この赤は「そこで地震が起きやすい」という意味ではありません。防災科学技術研究所のJ-SHISで見ると、地震波が届いたあと、軟らかい表層地盤で揺れが増幅しやすい傾向を示す色です。
マップが伝えていることと、マップだけでは決められないことを、公式データで分けて見ます。
この記事でわかること
- ✓ 荒川・江戸川・利根川沿いに赤い帯が見える理由
- ✓ AVS30と地盤増幅率の違い
- ✓ 赤色を「地震発生確率」と読んではいけない理由
- ✓ 住まい探しで地盤マップと一緒に確認する項目
2026年8月29日に、防災科研J-SHISの表層地盤地図V4と公式解説を確認した内容です。
荒川・江戸川・利根川沿いに赤い帯が見えます
J-SHISの「平均S波速度」を関東全体で表示すると、東京湾から関東平野にかけて赤や橙が広がります。大きな川の流域にも帯状の色が伸びています。
川が運んだ砂や泥などが長い時間をかけて積もった低地では、山地や台地より軟らかい地層になりやすいためです。一方、霞ケ浦の北側にある筑波山周辺などは緑や青が目立ちます。

赤は地震の発生確率ではありません
ここが最も大切です。表層地盤マップの赤は、震源の場所や地震が起きる回数を表していません。
地震の揺れは、震源で生まれた波が地下を伝わり、最後に地表近くの地盤を通って建物へ届きます。表層地盤マップが見ているのは、この最後の部分です。
| 地図・数値 | 表すこと | 表さないこと |
|---|---|---|
| AVS30 | 地表から深さ30mまでの平均S波速度 | 地震の発生場所や確率 |
| 地盤増幅率 | 工学的基盤から地表までの最大速度の増幅 | 建物ごとの被害程度 |
| 30年確率 | 一定以上の揺れに見舞われる可能性 | 敷地ごとの地盤調査結果 |
読者
赤い場所は「地震が多い場所」ではないのですか?
違います。同じ地震波が届いたとき、表層地盤の影響で揺れが大きくなりやすい傾向を示します。
AVS30は地表から30mの平均速度です
AVS30は、地表から深さ30mまでをS波が進む速さの平均です。単位はm/sで、数値が低いほど、一般に軟らかい地盤の傾向があります。
防災科研は、関東の茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川について、浅部・深部統合地盤構造モデルからAVS30を求めています。全国のほかの地域で使われる微地形区分だけの推定とは、作り方が同じではありません。
マップは約250mメッシュです。町名が同じでも、台地、谷底低地、旧河道などが隣り合えば数値は変わります。
色の境界を道路1本、敷地1区画の境界として読まないでください。250mメッシュのモデルであり、ボーリング調査の代わりではありません。
増幅率が2倍なら地表の最大速度も2倍と考えます
J-SHISの地盤増幅率は、工学的基盤から地表までに最大速度がどれくらい増えるかを表します。
公式FAQは、同じ地震波が入る2地点で増幅率が1.2と2.4なら、後者の地表の最大速度振幅は前者の2倍になると考える例を示しています。実際の揺れは震源、伝わる経路、周期、建物でも変わりますが、地盤差の意味をつかむ目安になります。

江戸川区と世田谷区では数値が違います
J-SHISの約250mメッシュを同じ方法で取得した例では、江戸川区役所の地点は三角州・海岸低地でAVS30が135.3m/s、増幅率は2.52でした。
世田谷区役所の地点は火山灰台地で、AVS30が271.9m/s、増幅率は1.39です。同じ東京23区でも、行政区の名前だけでは足元の違いを読み切れません。
| 地点 | 微地形 | AVS30 | 増幅率 |
|---|---|---|---|
| 江戸川区役所 | 三角州・海岸低地 | 135.3m/s | 2.52 |
| 世田谷区役所 | 火山灰台地 | 271.9m/s | 1.39 |
数値は2026年8月23日にJ-SHIS表層地盤API V4から取得。役所の地点の値で、区内全域を代表する数字ではありません。
250mメッシュで家の安全性までは決まりません
赤いメッシュに入っただけで「住めない」、青いメッシュなら「安全」とは言えません。
実際の被害には、敷地内の地層、造成の履歴、液状化、建物の耐震性、基礎、家具固定などが重なります。大きな川の沿岸でも地形や地盤は一様ではなく、堤防の内外を同じ色だけで扱うこともできません。
購入前なら、地盤マップを入口にして、自治体の液状化・洪水ハザードマップ、土地の履歴、重要事項説明、必要に応じた地盤調査へ進みます。
読者
青や緑なら、地震の心配はしなくてよいですか?
いいえ。表層地盤の増幅が小さめでも、強い地震動が届く可能性や建物の耐震性は別に確認します。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
住まい探しでは3つの地図を分けます
「地盤の揺れやすさ」「強い揺れに遭う可能性」「敷地と建物の条件」は、同じ数字ではありません。
J-SHISでは表層地盤タブでAVS30と増幅率を切り替え、確率論的地震動予測地図で30年確率を別に見ます。さらに自治体の液状化・洪水情報と建物の耐震性を重ねます。

全国の30年確率や、同じ市区町村内で数値が割れる理由は「日本で地震が少ない場所はどこ?」で詳しく整理しています。
よくある質問
荒川、江戸川、利根川沿いは全部揺れやすいですか
全部が同じではありません。河川低地に軟らかい地盤が広がる傾向はありますが、約250mメッシュごとに色は変わります。住所の位置で確認してください。
赤い場所は家を買わないほうがよいですか
色だけでは決められません。地盤増幅率に加え、液状化・浸水、造成履歴、建物の耐震性、避難経路、価格との釣り合いを確認します。
J-SHISで自宅を調べるにはどうしますか
J-SHIS Mapの表層地盤タブを開き、「地盤増幅率」または「30m平均S波速度」を選びます。地図上をダブルクリックすると、そのメッシュの微地形、AVS30、増幅率を確認できます。
出典
- 防災科学技術研究所「J-SHIS Map」
https://www.j-shis.bosai.go.jp/map/ - 防災科学技術研究所「表層地盤データ(2020年版)」
https://www.j-shis.bosai.go.jp/sstrctmap-2020 - 防災科学技術研究所「地盤増幅率と揺れやすさについて」
https://www.j-shis.bosai.go.jp/faq-siteamp-and-shakiness - 防災科学技術研究所「表層地盤地図WMS配信サービス」
https://www.j-shis.bosai.go.jp/wms-sstrct - 日本地震工学会 公式X「関東の『揺れやすさ』のマップ」
https://x.com/JAEEGAKKAI/status/2091735140875870519 - まいどなニュース「荒川、江戸川、利根川沿岸は揺れやすい」
https://news.yahoo.co.jp/articles/7dd8eb572101a015765e715ea37a4dc57ad5411b
※ 2026年8月29日確認。記事中の地図画像は、防災科研J-SHISのWMS配信データを見やすく整形したものです。


コメント