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自治会に入らない人のゴミ出し

自治会に入らないと決めた家が、最初にぶつかるのがゴミです。「あの集積所は自治会で置いているものだから使わないでほしい」と言われると、来週のゴミをどうするかが、その日から生活の問題になります。

ただ、これは全国どこでも同じ話ではありません。玄関の前に出せばよい「各戸収集」の市区町村なら、集積所をめぐる話そのものが起きません。環境省の調査から全国1,742市区町村を数えたところ、可燃ごみを各戸収集しているのは137でした。

この記事でわかること

  •  可燃ごみを各戸収集しているのは137市区町村(7.9%)。77.0%は集積所に出すステーション方式
  •  各戸収集の市区町村が1つも無い県が29ある
  •  裁判では一審も二審も自治会の対応を違法とした。ただし「使う権利があるか」は判断が割れた

読者

ゴミの収集って市の仕事ですよね。自治会に断る権利なんてあるんですか。

おかあさん

収集は市町村の義務です。ただ、集積所という「置く場所」を誰が用意して掃除しているかは、法律に書かれていません。争いはそこで起きています。

目次

ごみを集めるのは市町村の仕事。ただし条文にはもう1行ある

廃棄物の処理及び清掃に関する法律の第6条の2第1項に、こう書かれています。

市町村は、一般廃棄物処理計画に従つて、その区域内における一般廃棄物を生活環境の保全上支障が生じないうちに収集し、これを運搬し、及び処分……しなければならない。

「しなければならない」ですから、家庭ごみを集めるのは市町村の義務です。自治会に加入しているかどうかで振り分けてよい、とは書かれていません。

ところが同じ第6条の2には、第4項があります。

土地又は建物の占有者は……その一般廃棄物処理計画に従い当該一般廃棄物を適正に分別し、保管する等市町村が行う一般廃棄物の収集、運搬及び処分に協力しなければならない。

集積所の掃除当番やカラス対策のネットは、この「協力」の延長線上にあります。ただし条文は、その協力を自治会という団体を通じてやりなさい、とは一言も書いていません。市町村の義務と、住民が実際に負担している手間。この2つのあいだに落ちているのが、集積所です。

夕方の住宅街。電柱とカーブミラーの先に低層のアパートが並び、区画された駐車場が広がっている
この町が集積所に出す方式なのか、玄関前に出す方式なのかは、住んでみるまで意識されないまま決まっています(写真: Pexels)

全国1,742市区町村を数えた。玄関前に出せるのは137だけ

環境省は毎年、全国の市区町村にごみ処理の実態を照会して、その結果を市区町村別のまま公開しています。令和6年度のぶんから、可燃ごみをどう集めているかの欄だけを47都道府県ぶん取り出して数えました。

可燃ごみの収集方式 市区町村数 割合
ステーション方式(集積所に出す) 1,341 77.0%
併用 212 12.2%
各戸収集方式(玄関前などに出す) 137 7.9%
その他 9 0.5%
記載なし 43 2.5%

13市区町村に1つしか、玄関前に出せる町はありません。そして、その137は全国に散らばってはいませんでした。

都道府県 各戸収集の市区町村 県内に占める割合
沖縄県 31 / 41 75.6%
東京都 25 / 63 39.7%
福岡県 23 / 60 38.3%
奈良県 7 / 39 17.9%
大阪府 7 / 43 16.3%
和歌山県 4 / 30 13.3%
徳島県 3 / 24 12.5%
神奈川県 4 / 33 12.1%

この3県だけで79市区町村。137の半分以上がここに集まっています。逆に、各戸収集の市区町村が1つも無い県が29ありました。岩手・宮城・秋田・山形・福島・茨城・栃木・群馬・埼玉・新潟・富山・福井・長野・岐阜・静岡・三重・滋賀・鳥取・島根・岡山・広島・山口・香川・愛媛・佐賀・長崎・大分・宮崎・鹿児島です。この29県では、県内のどこへ引っ越しても集積所に出すことになります。

政令指定都市では名古屋市と福岡市、そのほか尼崎市、八王子市、藤沢市、浦安市、台東区、品川区などが各戸収集でした。

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これは令和6年度の実績として市区町村が回答した内容です。収集の方式は市町村が決めるもので、あとから変わることがあります。引っ越し先を決める前に、その市のごみのページで今の方式を確かめてください。

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読者

集積所しかない町で、自治会に入らなかったら本当に出せなくなるんですか。

おかあさん

実際に「出禁」にされて裁判になった例があります。判決は一審も二審も、自治会の対応は違法だとしました。

裁判では「利用させないのは違法」。ただし争点は2つあった

自治会に入っていないことを理由に集積所を使わせなかったのは違法だとして、住民の夫妻が自治会を訴えた事件があります。浜松市議会で令和5年11月に配られた一般質問の資料が、この裁判の争点と判断を1枚にまとめていました。市議会に提出された公の資料なので、そこから引きます。

争点 一審・神戸地裁 二審・大阪高裁
夫妻がごみ捨て場を利用する権利 ある ない
自治会の対応 違法 違法

争点は2つあって、「自治会の対応は違法か」と「そもそも使う権利があるか」は別の問いです。前者は一審も二審も違法だと判断しました。後者は、一審があると認め、二審は認めませんでした。同じ資料によると、この自治会の会費はこうなっていました。

  • 役員や掃除当番を負担する住民の年会費 3,600円
  • 掃除当番などを担わない住民は「準自治会員」として年会費 10,000円
  • 会費を払わない非自治会員はごみ捨て場の利用禁止

手を動かさない人は約2.8倍払う。その代わり出せる。払わなければ出せない。総会で決めたルールとして、そこまで組み立てられていました。争われたのは金額の高さではなく、払わない人を締め出せるかどうかです。

そして同じ資料には、こう書き添えられています。「※双方ともに上告している。」

「最高裁が決めた」という話が広がっている

この続きを調べていて気づいたことがあります。上告のあと、最高裁がどう判断したのかを、公開されている裁判例から確かめることができませんでした。

裁判所は裁判例検索を公開していて、判決の全文が読めます。そこで「ごみ集積所」と「自治会」の両方を含む裁判例を探すと、全国で2件しか出てきません。2件とも開いて中身を読みましたが、片方は市に持ち込まれたごみの手数料をめぐる住民訴訟、もう片方は刑事事件で、どちらもこの事件ではありませんでした。

一方で、質問サイトには2023年12月に投稿された、こんな書き出しの相談が残っています。閲覧は4,699件。

神戸市の住民が町内会を相手取りごみステーションの使用をめぐり裁判を起こしましたね。最高裁は上告を却下して町内会に加入していない住民はごみステーションの維持管理費のみを支払えはよいとの見解を示しましたが……

質問した人は、最高裁が結論を出したことを前提に、次の話(維持管理費に人件費は入るのか)を聞いています。最高裁が判断したという理解が、確かめられないまま前提として流通しています。

私は、この状態がいちばん厄介だと考えています。自治会の側も、入らない側も、「最高裁がこう言った」と互いに違う内容で言い合う材料になるからです。今この記事で言い切れるのは、一審と二審がどう判断したか、そして2023年11月の時点で双方が上告していたこと、この2つまでです。

日本の住宅の玄関まわり。格子戸と窓が道路に面していて、足元にコンクリートの土間が続いている
各戸収集の137市区町村では、こうした玄関の前が出す場所になります。集積所をめぐる話そのものが起きません(写真: Pexels)

先に確かめるのは、自分の市がどちらの方式か

もめている最中でも、これから引っ越す場合でも、順番は同じです。

1つめは、自分の市の収集方式。市のごみのページか収集カレンダーに、戸別収集と書いてあるか、集積所(ごみステーション)と書いてあるかが出ています。各戸収集なら、自治会に入るかどうかとゴミ出しは切り離せます。

2つめは、その集積所を誰が置いたのか。市が設置した集積所と、自治会が用地を出して置いている集積所では、話が変わります。ごみの担当課に住所を伝えれば、どちらかは答えてもらえます。ここを確かめずに自治会とだけ話しても、話が噛み合いません。

3つめは、会費が何に使われているか。裁判になった自治会も、金額そのものではなく「払わない人を締め出せるか」で争われました。清掃、ネットやボックスの費用、その内訳が示されるなら、加入しないまま実費を負担するという相談の余地が出てきます。

ゴミの出し方は、住む前には見えにくいのに、住んだあとは毎週ついてきます。町を選ぶときに、価格や広さと同じ列に並べておく価値のある条件です。

ゴミ袋が有料の自治体はどこかを読む

読者

うちは集積所の町でした。もう詰みですか。

おかあさん

詰みではありません。集積所の1,341市区町村すべてで自治会が管理しているわけではなく、市が置いている集積所も多くあります。まず設置者を聞くところからです。

この記事の数字の出どころ

収集方式の集計は、環境省が公開している令和6年度の一般廃棄物処理実態調査結果のうち、市区町村別の「ごみ処理体制」の表を47都道府県ぶん取得し、可燃ごみの収集方式の欄を数えたものです。対象は1,742市区町村。数えたのは可燃ごみだけで、資源ごみや粗大ごみの出し方は別に定められています。また「記載なし」の43市区町村は割合の計算にそのまま含めています。

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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