🗨️「マンションの転売規制って、千代田区と業界団体の話じゃないの?」
国が動きました。国土交通省が2026年8月28日に公表した令和9年度の税制改正要望に「新築マンションの価格高騰への対応に係る所要の措置」が入っています。業界の自主ルールが止めているのは引渡しまでの売却活動ですが、国交省の資料が数えているのは保存登記から1年以内に移転登記された物件です。引渡しのあとの話で、対象の期間が違います。ただし要望は要望で、中身が決まるのは年末です。
[税制・補助金] この記事の要点
2026年9月4日 発表
- 都心で新築マンションを買おうとしている人
- 買ったマンションを数年以内に売る可能性がある人
- 中古で都心のマンションを探している人
都心6区は、2018〜2022年でいちばん多かった年より2.6倍になりました
国交省の資料に、短期売買の割合を並べた表が載っています。短期売買の定義は資料の注に書かれていて、保存登記から1年以内に移転登記がなされたものです。買って登記した家が、1年たたないうちに名義を移した、という数え方です。
| 地域 | 2024年1〜6月 | 2023年 | 2018〜2022年での最大値 |
|---|---|---|---|
| 東京圏 | 6.3% | 3.7% | 5.0%(2021年) |
| 東京都 | 8.5% | 5.2% | 7.3%(2021年) |
| 23区 | 9.3% | 5.7% | 8.0%(2021年) |
| 都心6区 | 12.2% | 7.1% | 4.6%(2021年) |
2024年1〜6月の都心6区は12.2%。およそ8戸に1戸が、登記から1年たたないうちに名義を移されています。
この表でいちばん目を引くのは12.2%そのものではありません。都心6区の2018〜2022年の最大値が4.6%で、23区の8.0%より低いところです。かつては都心6区のほうが短期売買が少なかった。それが2024年上期には全体の中でいちばん高くなっています。増えたのではなく、順番が入れ替わっています。
都心のほうがもともと転売が多かったんじゃないんですか?
この表を見るかぎり、逆です。2021年までは都心6区が4.6%で、23区全体の8.0%より低かった。この数年で性格が変わったのがこの資料の言い分です。
自主ルールが止めているのは「引渡しまで」です
2025年11月に不動産協会が公表した対策として、資料に3つ挙がっています。
- 登録・購入戸数の制限
- 登録名義での契約、引渡し、登記の徹底
- 売買契約締結から引渡しまでの期間における売却活動の禁止
資料には物件購入の流れも図で添えられていて、登録(購入の申込)→ 契約(購入)→ 引渡し → 登記という順番です。自主ルールの3つ目が押さえているのは、この図でいうと契約から引渡しまでの区間になります。
いっぽう国交省が数えている短期売買は、保存登記から1年以内の移転登記。図でいえば、いちばん右の「登記」から先の1年間です。同じ「転売」という言葉でも、見ている区間が重なっていません。
自主ルールができたのに、まだ足りないということですか?
足りる足りないの前に、対象の期間が違います。引渡し前の売却活動を止めても、引渡しを受けて登記してから売る形は残ります。国が見ているのはそちらです。
与党の税制改正大綱には、前の年から書いてありました
今回が突然出てきた話ではないことも、同じ資料から分かります。令和8年度税制改正大綱(2025年12月・自由民主党/日本維新の会)から、次の部分が引用されています。
近年のマンション価格の高騰については、その一因として、都心の大規模マンションを中心に、短期売買が増加傾向にあることが挙げられる。実需に基づかない投機的取引は好ましくないとの考えの下、民間部門でも対策が講じられ始めている。その結果も踏まえつつ、引き続き、所管省庁においてマンション取引の実態把握を継続し、本来あるべき不動産取引への影響や、資産価値への影響など、様々な観点を考慮しながら、税制上の措置も含め必要な措置を講ずる。
「民間部門でも対策が講じられ始めている。その結果も踏まえつつ」という言い方です。自主ルールを見届けたうえで、それでも足りなければ税で、という順番が前の年の大綱に書かれていた。今回の要望はその続きにあたります。
新築の平均価格は都区部で13,013万円、首都圏で10,137万円
同じページに、不動産経済研究所の「新築マンション市場動向」から作った価格のグラフが載っています。直近の値として示されているのが都区部平均価格13,013万円と首都圏平均価格10,137万円です。2022年からの推移で見ると、都区部は2023年前半に一度2万円台まで跳ね上がり、そのあとも1億円台で上下しています。
ここで新築の値段だけを見ていると、都心の相場を高いほうに読み違えます。中古の実際の取引価格はどうか。国土交通省の不動産取引価格情報から、都心6区のうち中央区の中古マンションを集計しました。
| 広さ | 件数 | m²単価の中央値 |
|---|---|---|
| 30m²未満 | 196件 | 140.0万円 |
| 30〜50m² | 101件 | 165.7万円 |
| 50〜70m² | 157件 | 184.6万円 |
| 70〜90m² | 95件 | 214.3万円 |
ファミリー向けにあたる50〜70m²帯の中央値は1m²あたり184.6万円で、60m²に直すと約1億1,077万円。新築の都区部平均13,013万円との差はおよそ1,900万円です。件数は576件、期間は2024年4Q〜2025年4Qの取引です。
このエリアの相場はいくらですか?
住所を入れるだけ。全国175,666件の実際の成約(国土交通省)から、土地・戸建て・マンションの坪単価の目安が5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
この要望を、私はこう読んでいます
短期売買の割合が上がること自体は、税で直接止められる種類のものではないと考えています。買った人が1年以内に売る理由は投機だけではなく、転勤も離婚も相続もあるからです。国交省の資料も「実需に基づかない投機的取引」と限定していて、短期売買のすべてを問題にしているわけではありません。
そのうえで、この要望が効くとすれば数字ではなく買う側の順番だと見ています。自主ルールで登録名義の徹底が入り、税で登記から1年が問われるようになれば、申し込みの段階で名義を貸す形と、登記直後に売り抜ける形の両方が使いにくくなります。実際に住む人が抽選で当たる確率は、そのぶん上がります。値段が下がるかどうかより、こちらのほうが先に変わるはずです。
ただし繰り返しますが、これは要望の段階です。年末の大綱で、どこからを短期とするのか、税率をどうするのかが書かれるまでは、制度を当て込んだ売り買いの判断はしないほうが確実です。
生活・仕事にどう効くか
- 買うとき:業界団体の自主ルールで、登録・購入戸数の制限、登録名義での契約・引渡し・登記の徹底、契約から引渡しまでの売却活動の禁止が2025年11月に打ち出されている。申し込みの段階から名義の扱いが厳しくなる。
- 売るとき:国交省が数えているのは保存登記から1年以内の移転登記。税制上の措置が入るとしたら、引渡しを受けて登記した日からの期間が問われることになる。
- 決まる時期:税制改正要望は各省庁が財務省へ出す要望で、そのまま制度になるわけではない。具体的な中身が固まるのは年末の与党税制調査会と税制改正大綱。
結局どうすればよいか
- 税制改正要望は決定ではないことを前提に読む。国交省が出したのは「必要な検討を行い、所要の措置を講じる」という一文で、税率も期間の区切りもまだ書かれていない
- いま検討されている期間の区切りは「保存登記から1年以内」。業界の自主ルールが対象にしている「契約から引渡しまで」とは別の期間なので、混ぜて理解しない
- 都心のマンションを検討しているなら、新築の売り出し価格だけでなく、同じエリアの中古の実際の取引価格も並べて見る
- 年末の税制改正大綱が出るまでは、制度の中身を前提にした売り買いの判断をしない
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公式出典
- 国土交通省「令和9年度税制改正要望事項」(本体資料21ページ「新築マンションの価格高騰への対応に係る所要の措置」)(2026年8月28日発表)
- 財務省「令和9年度税制改正要望(国土交通省)」(2026年8月28日発表)
- 国土交通省 土地総合情報システム(不動産取引価格情報。中央区の集計に使用)(2026年9月4日発表)
更新履歴
- 2026年9月4日 初版を公開
※本記事は2026年9月4日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。


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