結論からいうと、止まります。地震の揺れを感じたエレベーターは、まず動くのをやめます。
問題は次です。「止まって扉が開く」のか「止まったまま閉じ込められる」のかは、その建物が2009年9月より前に建てられたか後かで、ほぼ決まっています。
この記事でわかること
- ✓ 止まる台数と、閉じ込めが起きる台数の桁の違い
- ✓ 「止まる」と「閉じ込められる」が別物である理由
- ✓ 自分のマンションに安全装置が付いているかの見分け方
- ✓ 実際に閉じ込められたとき、救出までにかかった時間
読者
地震のとき、エレベーターは全部の階のボタンを押せばいいんですよね?
それは古いエレベーター向けの知識です。いまのものは自動で最寄り階に停まって扉が開きます。まず自分のがどちらか確かめてください。
63,000台が止まって、閉じ込めは346台でした
2018年6月の大阪府北部地震(最大震度6弱)のときの数字です。国土交通省の「エレベーターの地震対策の取組みについて(報告)」に、こう記録されています。
| 項目 | 数 |
|---|---|
| 運転を休止したエレベーター | 近畿2府3県を中心に 約63,000台 |
| 閉じ込めが発生した台数 | 346台 |
| 救出までの時間 | 87%が3時間以内。最長は5時間半 |
止まった台数と、閉じ込めが起きた台数は桁が2つ違います。ほとんどのエレベーターは、止まりはしたけれど人を閉じ込めなかった、ということです。
この差を作っているのが、地震時管制運転装置という仕組みです。
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「止まる」と「閉じ込められる」は別のことです
地震時管制運転装置は、揺れの加速度を感知すると、かごを最寄りの階まで動かしてから停め、かごと乗り場の扉を開きます。乗っている人は普通に降りられます。
この装置が無いエレベーターは、揺れを感知するとその場で非常停止します。階と階の間で止まれば、扉は開きません。これが閉じ込めです。
| 装置あり | 装置なし | |
|---|---|---|
| 揺れたとき | 最寄り階へ移動して停止 | その場で非常停止 |
| 扉 | 自動で開く | 階の途中なら開かない |
| 乗っている人 | 降りられる | 救出を待つ |
| 復旧 | 点検後に再開 | 救出 → 点検 → 再開 |
分かれ目は2009年9月28日です
地震時管制運転装置の設置が義務になったのは、2009年(平成21年)9月28日です。この日以降に建築確認を受けたエレベーターには、必ず付いています。
根拠は建築基準法施行令の改正(平成20年政令第290号)と、装置の仕様を定めた平成20年12月26日の国土交通省告示第1536号です。2008年9月19日に公布され、1年後に施行されました。
きっかけは事故です。2005年7月の千葉県北西部地震で閉じ込めが多発し、2006年6月には東京でエレベーターの戸が開いたまま動く事故が起きました。この2つを受けて基準が見直されています。
「2009年9月28日」は建物の完成日ではなく、建築確認を受けた日が基準です。ぎりぎりの時期に建った建物は、完成が2010年でも装置が無いことがあります。
それより古いマンションは「既存不適格」です
2009年より前のエレベーターに装置が無くても、違法ではありません。設置した当時の基準は満たしていたからです。こういう状態を既存不適格と呼びます。
そして重要なのは、後から付けることは義務になっていないという点です。各自治体は所有者に設置を「お願い」している段階で、強制ではありません。改修には費用がかかるため、付けていないマンションは実際に残っています。
既存不適格は「危険な建物」という意味ではありません。ただ、自分の住んでいる建物がどちらなのかを知らないまま「うちは大丈夫」と思っているのは危ない、というだけです。
自分の家に付いているかを調べる3つの方法
順に試すと、たいていどれかで分かります。
- かご内の表示を見る。操作盤の近くに「地震時管制運転装置付」と書かれたシールや銘板があることが多いです。「地震時管制運転」「P波感知」といった表記も同じ意味です
- 建築確認の時期を調べる。分譲マンションなら重要事項説明書や竣工図書に確認済証の日付があります。賃貸なら管理会社に築年を聞けば当たりが付きます
- 管理組合か管理会社に直接聞く。「地震時管制運転装置は付いていますか」と装置名で聞くのがいちばん確実です。分譲なら長期修繕計画に改修予定が載っていることもあります
中古マンションを検討中なら、内見のときに1で確認できます。共用部で見ておくところは中古マンションの共用部はどこを見る?にまとめています。
閉じ込められたときにやること
装置の有無にかかわらず、閉じ込められる可能性はゼロにはなりません。
- インターホンを押し続ける。つながらなくても、警備会社側に発報していることがあります
- 扉をこじ開けようとしない。かごが階の途中にあると、隙間から落ちる危険があります
- 大阪北部地震では87%が3時間以内に救出されています。数時間はかかる前提で、座って体力を温存する
- 停電を伴う地震だと、水道も止まることがあります。復旧の見通しは停電はどれくらいで復旧するの?を参考に
わたしはこう考えます
わたしは、この話がマンション選びの検討項目にほとんど入っていないのが不思議だと考えています。
間取り、駅からの距離、修繕積立金。どれも内見のときに必ず話題になります。ところがエレベーターの安全装置は、聞かれることがまずありません。売る側から言い出すこともありません。聞かれないから説明されないだけで、隠されているわけではないと思います。
東京都が2022年5月に公表した首都直下地震の被害想定では、最大で約2.2万台のエレベーターが非常停止するとされています。2012年の想定では最大7,447台でしたから、約3倍です。想定が増えたのは、都心の高層化が進んだからです。
高い建物ほどエレベーターが生活に直結します。10階に住んでいて止まれば、水も食料も階段で運ぶことになります。築年数を見るときに、建物の耐震性だけでなくエレベーターがいつのものかも一緒に見る。それだけで、判断材料が1つ増えます。
よくある質問
震度いくつで止まりますか
一律の震度では決まっていません。装置は加速度を感知して動くため、建物の揺れ方によって作動する条件が変わります。おおむね震度4程度から止まりはじめると説明されることが多いですが、機種と設定によります。
止まったあと、すぐ乗れますか
乗れません。地震のあとは保守会社の点検を受けてからでないと再開できない決まりです。大阪北部地震のときは約63,000台が対象になったため、復旧まで数日かかった建物もありました。
古いエレベーターに後付けできますか
できます。制御盤の交換で対応できる機種もあれば、全体を入れ替える必要がある機種もあります。分譲マンションなら管理組合の決議と費用の議論が必要になるので、まずは長期修繕計画に載っているかを確認してください。
出典
- 国土交通省「エレベーターの安全に係る技術基準の見直しについて」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_fr_000012.html(施行日 平成21年9月28日/建築基準法施行令の一部を改正する政令=平成20年政令第290号/平成20年12月26日 国土交通省告示第1536号) - 国土交通省「エレベーターの地震対策の取組みについて(報告)」(大阪府北部地震での約63,000台の運転休止・346台の閉じ込め・救出時間)
- 東京都「首都直下地震等による東京の被害想定」2022年5月公表(最大約2.2万台が非常停止。2012年想定は最大7,447台)
- 日本エレベーター協会 会員社の集計(2024年 能登半島地震の閉じ込め14件・全件救出済み)
※ 2026年8月25日時点で公表されている資料にもとづいています。装置の動作条件は機種・設定により異なります。


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