「三為(さんため)」は、民法537条の「第三者のためにする契約」を利用した不動産取引です。元の売主Aと中間の事業者B、最終買主Cの三者が関わり、売買契約はA―BとB―Cの2本あります。一方、所有権登記はAからCへ直接移します。
「中間のBが登記簿に出てこない」と聞くと、違法な中間省略ではないかと不安になります。しかし、契約でAからCへ直接所有権を移す合意を作り、登記原因証明情報もその実体に合わせる取引は、従来型の中間省略登記とは仕組みが違います。三為だから違法、三為だから安全、のどちらでもありません。
先に結論
買主Cが見るべきなのは「三為」という名前ではなく、A―Bの契約が有効に存在すること、Cが受益の意思を示す手続、代金と登記が同時に動く条件、片方の契約が止まったときの解除・返金です。
契約は2本、登記は1回

通常の転売なら、AからBへ所有権を移し、次にBからCへ移します。登記もA→B、B→Cの2回です。三為では、A―Bの契約に「Bが指定する第三者へAが直接所有権を移す」内容を入れ、Bが最終買主Cを指定します。Cが受益の意思を表示すると、CはAに対して直接、所有権移転を求める権利を持つ構造になります。
民法537条は、契約当事者の一方が第三者へ給付することを約した場合、その第三者が債務者に直接給付を請求できると定めています。三為は、この一般的な契約ルールを不動産の所有権移転に使います。
Aから買う契約とCへ売る契約の当事者であり、2つの価格の差がBの利益になる形が一般的です。仲介手数料を受け取る媒介とは、収益の仕組みが違います。
なぜ登記を1回にするのか
Bがいったん所有権登記を受ける通常の転売では、B側にも登録免許税や不動産取得税などの取得コストが生じます。AからCへ直接移せば、Bを名義人とする中間の登記がなくなり、その分の時間と費用を抑えられます。
ただし、費用が消えることと、Cの購入価格が自動的に安くなることは同じではありません。BはAからの取得価格とCへの販売価格の差から利益を得ます。A―Bの価格は、Cに当然開示されるとは限りません。

三為契約は違法なのか
三為契約そのものは、民法にある第三者のためにする契約を使うため、要件を満たす限り違法な取引ではありません。宅建業者が自分の所有ではない物件を売る契約は宅建業法第33条の2で原則制限されますが、所有権を取得できることが明らかな一定の契約を締結している場合などには例外があります。
問題になるのは名前ではなく、実体です。A―Bの契約がない、AがCへの直接移転を承諾していない、登記原因証明情報が実際の合意と合わない、Bの資金が詰まると全体が止まる、といった状態なら危険です。
最終買主Cが確認する5項目

- A―B契約の存在:BがAから所有権を取得し、第三者へ直接移転させられる契約が締結済みか。
- 受益の意思表示:Cが誰に、いつ、どの書面で所有権移転を求める意思を示すか。
- 同時決済:Cの代金、BからAへの代金、AからCへの登記申請が同日に連動するか。司法書士がどこまで確認するか。
- 不成立時の処理:A―BまたはB―Cの片方が解除・不履行になったとき、手付金と売買代金がいつ誰から返るか。
- 引渡し後の責任:契約不適合責任、設備保証、境界、賃貸中なら敷金や賃貸人の地位を誰が引き継ぐか。
「登記は司法書士がするから大丈夫」だけでは足りません。司法書士は登記申請の専門家ですが、価格の妥当性や収益性、契約全体の有利不利を保証する立場ではありません。
元の売主Aが確認すること
売主Aは、最終買主Cの価格が自分の売却価格より高いと後で知り、「安く買い叩かれた」と感じることがあります。しかしBが仲介ではなく買主であるなら、Bが再販売価格との差を利益にすること自体は、直ちに仲介手数料の上限違反になる話ではありません。
だからこそAは、三為の提案を受けた時点で、Bは媒介か買主か、Aが受け取る金額は相場と比べてどうか、Cが見つからなくてもBは期日に決済する義務を負うかを確認します。Bが「次の買主が見つかったら払う」という条件なら、売却時期の確実性が変わります。
先に地域相場と手取りを確認したい場合は、かんたん相場検索と売却手取りシミュレーターを使ってください。
仲介や「あんこ」と何が違うのか
また、元付と客付の間に別会社が入る「あんこ」は、媒介会社が増える話です。三為は売買契約の当事者が二段になる話で、同じ「3社」に見えても法律関係が違います。
三為を提案されたら、その日に署名しない
三為は、通常の仲介より契約関係が一段増えます。使う合理性がある取引でも、説明を口頭だけで理解するのは難しい仕組みです。
A・B・Cを実名で書いた一枚の関係図、代金の流れ、登記の流れ、解除時の返金元を出してもらい、売買契約書と特約を持ち帰って確認します。投資物件や高額取引なら、不動産会社が紹介した人だけでなく、自分で選んだ弁護士・司法書士・税理士にも見てもらう価値があります。
まとめ
三為は、第三者のためにする契約を使い、A―BとB―Cの2契約を結びながら、所有権をAからCへ直接移す取引です。中間の登記を省ける一方、代金・登記・解除が二つの契約をまたいで動きます。
違法か合法かという見出しだけで判断せず、A―B契約、受益の意思表示、同時決済、不成立時の返金、引渡し後の責任を確認する。三為の一番の注意点は、仕組みが難しいことではなく、難しいまま署名してしまうことです。
出典・確認先
- 民法 第537条・第538条(e-Gov法令検索)
- 宅地建物取引業法 法令改正・解釈について(国土交通省)
- 第三者のためにする契約を用いた不動産売買(三井住友トラスト不動産・弁護士解説、2026年1月)
- 第三者のためにする契約を用いた登記申請方式(全日本不動産協会)
2026年8月24日時点の制度・公開資料に基づく一般的な解説です。三為契約は個々の特約と決済条件でリスクが変わります。署名前に契約書一式を専門家へ提示してください。


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