🗨️「多摩川が増えたら、水はどこから来るのですか?」
2019年の台風19号で川崎市が浸水した3地域を市が検証したところ、堤防は切れていませんでした。水は、事前に閉めた水門の上を越えて、管理用通路の水抜き穴を通って、橋の桁の下から入っていました。しかもその3地域に降った雨は、その場所の過去最高を下回る雨でした。
[災害] この記事の要点
2026年9月6日 発表
- 多摩川沿い(世田谷区・大田区・狛江市・調布市・川崎市)に住んでいる人
- 支流の平瀬川・三沢川の近くに住んでいる人
- 多摩川の近くで家を買おうとしている人
上流で降った雨が、下流の町を浸す
2019年10月の台風19号のとき、多摩川流域の檜原・御岳・高尾・多摩の各雨量観測所は、観測を始めてから最高の雨量を記録しました。その水が下流へ流れ、10月12日22時30分に田園調布(上)水位観測所(大田区)で10.81メートルという過去最高の水位になります。調布市の石原水位観測所とともに、計画高水位を超えました。
| 観測所 | 台風19号のピーク流量 | 河川整備計画の対象流量(戦後最大) |
|---|---|---|
| 石原(調布市) | 約5,000立方メートル毎秒 | 4,500立方メートル毎秒 |
| 田園調布(下)(大田区) | 約6,010立方メートル毎秒 | 4,600立方メートル毎秒 |
多摩川は「これまでの戦後最大の洪水を安全に流す」ことを目標に整備されています。台風19号はその目標をどちらの地点でも超えました。
住まいのリスクに対する備え
土地の履歴やリスクを知ったら、次は「起きたときにどうするか」です。最低限そろえておくと動けるものを挙げます。
一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
停電時は懐中電灯より、部屋全体を照らせるランタンの方が使えます。電池でも充電でも点くものだと、どちらが尽きても止まりません。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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浸水した町の雨は、過去最高より弱かった
川崎市の検証で目を引くのは、雨の量のほうです。市内で浸水した3地域の最高時間雨量は、いずれもその地点の既往最高時間雨量を下回っていました。平瀬川流域についても「流域の雨量は流下能力を下回る降雨強度であった」と書かれています。
その町の雨は、過去に経験した範囲だった。それでも水が出た。理由は多摩川の水位が高すぎて、支流や下水の水を吐き出せなくなったからです。行き場を失った水は、堤防の内側にたまります。
水は3つの経路から入った
市が現地調査と聞き取りで確認した浸水経路は、地域ごとに違います。
| 場所 | 浸水の面積 | 水が入った経路 |
|---|---|---|
| 河港水門周辺(川崎区港町) | — | 水門の扉体の上を越えた水/周辺工場の多摩川取水口/京急交差部 |
| 平瀬川の多摩川合流部周辺(高津区) | 約6ヘクタール | 管理用通路の水抜き穴/東久地橋の桁下/平瀬川の堤防からの越水 |
| 三沢川のJR南武線橋梁周辺(多摩区) | — | 三沢川に接続する水路からの越水/管理用通路の水抜き穴/護岸のアクリル板の目地からの漏水 |
市内の浸水は3地域あわせて25ヘクタール(2020年2月13日時点)。堤防が決壊した、という項目はどこにもありません。並んでいるのは、水門の上、水抜き穴、橋の桁下、目地といったふだんは誰も気にしない小さな穴です。
水門は前日から閉めてあった
川崎区の河港水門は、市が管理しています。操作の基準は「河港内水位標が2.20メートルを超えたとき」。台風19号では増水が予想されたため、前日の10月11日13時に事前に閉めていました。
それでも扉の上を水が越えました。検証には、扉体の高さは多摩川の計画高水位は満たしているが、余裕高を見込んだ堤防の高さは下回っている、と書かれています。
市が浸水を知った経緯も記録に残っています。10月12日22時35分に警察と消防から道路冠水の電話連絡があり、22時45分に職員が現地を確認。23時35分に国土交通省へ排水ポンプ車を要請し、到着は翌13日4時20分でした。三沢川の排水作業が終わってから回ってきたためです。冠水が解消したのは13日8時30分、水門を開けたのは15日9時20分でした。
ポンプは動いていたが、水没した
高津区の平瀬川では、手順どおりに水門を閉めてポンプで直接排水していました。平瀬川右岸の低地部は、平瀬川の計画高水位より約2.3メートル低いためです。
ところが平瀬川の越水が心配されたため、職員はポンプを動かしたまま退避します。その後、ポンプは水没して止まりました。水位計も16時10分に平瀬橋で4.96メートルを観測したあと、電源が落ちて欠測になっています。水位が分からないまま夜になったということです。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
誰が管理しているか分からない水門もあった
多摩区の三沢川では、16時3分に水門を全閉して6分後に全開、17時5分に菅稲田堤の水路周辺で冠水を確認しています。18時25分に京浜河川事務所から水門閉鎖の連絡が入り、以降は三沢川と多摩川の水位を見ながら操作しました。
そのうえで検証には、三沢川に接続する大丸用水の流出部にある水門について「どこが管理者か不明の状態であった」と書かれています。県が護岸改修にあわせて設置した施設でしたが、誰が閉めるのかが決まっていませんでした。
今夜の雨で見る場所
気象庁が6日16時38分に出した東京地方の天気概況は、7日について「雨で明け方まで雷を伴い非常に激しく降る所がある」としています。多摩川で見るべきなのは、自分の家の上の雲ではなく上流の雨です。奥多摩・青梅・八王子で降った水が下ってくるまでには時間があり、その間に本流の水位が上がって、支流と下水が吐けなくなります。
そして、そのとき水が入ってくるのは堤防の切れ目ではありません。閉めたはずの水門の上と、通路の小さな穴です。
生活・仕事にどう効くか
- 自分の家の雨量を見ているとき:浸水した3地域の最高時間雨量は、その地点の過去最高を下回っていました。手元の雨が弱くても、上流で降っていれば水は来ます。
- 水門があるから安心と思うとき:川崎区の河港水門は台風の前日に閉めてありました。それでも扉の上を水が越え、市が冠水を知ったのは警察と消防からの電話でした。
- 家を探すとき:平瀬川右岸の低地部は、川の計画高水位より約2.3メートル低い土地です。堤防の高さではなく、自分の土地が川の水面より低いかどうかで決まります。
結局どうすればよいか
- 自分の住所が多摩川の洪水浸水想定区域に入るかを、市区のハザードマップで確かめる
- 近くに水門・樋管・排水ポンプ場があるなら、その名前を1つ覚えておく(避難情報がその名前で出ることがある)
- 上流の雨量(奥多摩・八王子・青梅あたり)も一緒に見る
公式出典
- 川崎市 建設緑政局道路河川整備部「令和元年台風第19号における河川関係の浸水に関する検証(中間とりまとめ)」(2020年2月13日発表)
- 気象庁「東京地方の天気概況」(6日16時38分発表)(2026年9月6日発表)
更新履歴
- 2026年9月6日 初版を公開
※本記事は2026年9月6日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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