「水道代なんて、ずっと同じ値段のもの」。そう思っていた町で、30年ぶり、36年ぶりの値上げが相次いでいます。理由は、40年で寿命になる水道管が一斉に古くなる一方で、水を買う人と量が減り続けているからです。水道は料金収入だけで管の取り替えまで払う仕組みなので、この2つが重なると、料金を上げる以外の手がほとんど残りません。
2026年10月16日には、山口県下松市の審議会が「値上げは不可避」と答申しました。県内でいちばん安い水道料金を1991年から据え置いてきた市です。くわしくは下松市 水道料金 値上げにまとめました。
先に結論
- ✓ 寿命40年を過ぎた水道管は全国で25.4%。今の取り替えペースでは全部替えるのに150年以上かかる
- ✓ 使われる水の量は1998年がピーク。2050年ごろにはその67%に減る見通し
- ✓ 値上げは「審議会の答申→市議会の可決→周知→実施」の順。答申の段階で、ほぼ中身が見える
水道管の4本に1本が寿命超え
水道管には法律上の使用年数(法定耐用年数)があり、40年と決まっています。総務省のまとめでは、2023年度末の時点で、全国の水道管約77万3,000kmのうち約19万6,000km、25.4%がこの40年を過ぎています。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 40年を過ぎた管の割合(全国) | 25.4% |
| いちばん高い府県 | 大阪府 36.3%(次が香川県 31.6%) |
| いちばん低い県 | 滋賀県 16.4% |
| 1年で取り替える割合(全国) | 0.61%(東京都・神奈川県1.1%、長野県0.3%) |
出典:総務省「水道事業の現状等(最新追加資料)」令和7年7月(2023年度決算)。
1年に0.61%ずつしか替えられないなら、全部を替え終えるのに160年以上かかる計算です。総務省自身も、2021年度の更新率をもとに「約150年も要する」と書いています。40年が寿命の管を150年かけて替える、という釣り合わない状態です。
古い管が多いのは、1975年ごろに水道の工事がいちばん多く行われたからです。それから40年以上たち、取り替えの山が一斉に来ています。全国の水道事業が既存の施設の取り替えに使ったお金は、2003年度の約0.5兆円から2023年度の約1兆円へ、20年で倍になりました。
断水した家で3日しのぐもの
在宅避難で先に詰まるのはトイレと水です。全部を今そろえなくてよくて、この順に足していけば止まりません。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
飲料水は1人1日3L。4人家族の1週間分で84L=2Lボトル42本なので、6本入りだと7ケースぶんです。5年保存タイプなら入れ替えの手間が減ります。
お湯でも水でも作れて、袋のままおにぎりの形になります。断水すると鍋も食器も洗えません。洗い物の出ない形を先に入れておくと、水の減り方が変わります。
ボンベ1本で約60〜90分。4人家族の1週間分でおよそ6本が目安です。多めに持ってローリングストックにすると、鍋物などで日常的に消費できます。
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使う水は1998年がピーク
もう一方の問題が収入です。水道料金を払う対象になる水の量(有収水量)は、1998年をピークに減り続けています。総務省の資料では、2050年ごろにピークの67%程度、2100年ごろには37%程度まで減る見通しです。
減る理由は人口だけではありません。節水型のトイレや洗濯機が広まり、1人が使う水の量そのものが減っています。管の長さは同じまま、流れる水と払う人だけが減っていくので、1㎥あたりのコストは上がっていきます。
読者
小さい町ほど大変ってこと?
数字の上ではそうです。水を1㎥つくって届けるコスト(給水原価)は、給水人口5千人未満の事業で274.94円、50万人以上で170.28円と、約1.6倍の差があります。料金収入でコストをまかなえているか(料金回収率)も、給水人口10万人以上の規模になってやっと平均100%を超える、と総務省はまとめています。
料金を上げる法律の根拠
水道料金は、市が好きに決められるものではありません。水道法14条2項1号は、料金が「能率的な経営の下における適正な原価に照らし、健全な経営を確保することができる公正妥当なもの」であることを求めています。コストが上がれば料金に反映させる、という考え方がもともと法律に書かれています。
| 決まり | 中身 |
|---|---|
| 水道法14条2項1号 | 料金は適正な原価に照らして公正妥当であること |
| 地方公営企業法21条2項 | 料金は適正な原価を基礎とし、健全な運営を確保できるもの |
| 地方自治法228条1項 | 使用料は条例で定める=変えるには議会の議決が要る |
| 水道法14条4項・5項 | 実施日までに周知し、変えたら国土交通大臣に届け出る |
| 総務省の通知 | 3〜5年ごとの経営戦略の改定のときに料金水準を検証する |
出典:e-Gov法令検索(水道法・地方公営企業法・地方自治法)、総務省「経営戦略策定・改定ガイドライン」「令和2年度の公営企業等関係主要施策に関する留意事項」。
下松市のように何十年も料金を変えていなかった町は、この見直しを先送りしてきた形です。そのぶん、上げ幅が大きくなります。
どれくらい上がっているか
| 市 | 時期 | 中身 |
|---|---|---|
| 山口県下松市 | 2027年4月の予定 | 審議会が平均26.48%の引き上げを答申。2〜3人世帯(月20㎥)は税込1,534円から2,046円に |
| 秋田市 | 2027年4月の予定 | 審議会が平均約32%を答申。それでも料金回収率100%に届かないと明記 |
| 静岡市 | 2026年6月使用分から | 老朽化対策と、南海トラフ地震に備えた耐震化を早めるため |
出典:下松市上下水道局 審議会資料(2026年9月11日)、秋田市上下水道事業経営審議会の答申(2026年7月2日)、静岡市上下水道局のよくある質問(2026年5月26日更新)。秋田市の答申は秋田市 水道料金 値上げ/うちはいくら増えるで詳しく書いています。
先の見通しとして、民間のEY Japan(イーワイジャパン)などの推計(2024年版)は、2046年度までに96%の水道事業で値上げが必要になる可能性があるとしています。国の数字ではないので、目安として受け取ってください。
自分の市を調べる5か所
値上げは、ある日突然に請求書で知るものではありません。決まるまでに、次の順で公開の資料が出ます。
- 上下水道局の「経営戦略」…3〜5年ごとの改定で、料金をどうするかの方針が書かれる
- 料金の審議会の資料と議事録…改定率やモデル世帯の試算が出る。答申の段階で中身はほぼ見える
- 市議会の議案…水道事業給水条例の改正案。可決されると決定
- 市の広報誌・料金改定のお知らせ…実施日と「何月使用分から」が載る
- 総務省の「経営比較分析表」…市ごとの料金回収率や管の古さが同じ形式で比べられる
検索するなら「〇〇市 水道料金 審議会」「〇〇市 水道 経営戦略」と打つと、市の上下水道局のページに当たりやすくなります。
読者
値上げが決まったら、何かできることはある?
料金そのものは選べませんが、使う量は選べます。多くの町が、少ない量に安い単価をかける仕組みから、使った量に応じて払う仕組みへ切り替えています。下松市の案でも、上がる割合がいちばん大きいのは使用量の少ない一人暮らし(月10㎥で約65%)です。家族の人数と月の使用量を検針票で確かめて、試算表の自分の行を見てください。
下松市の審議会でも、委員から「今回の引上額は許容できる範囲」との意見が出る一方、改定後も計画の後半にもう一度見直しが要ると市自身が書いています。水道料金の値上げは1回で終わる話ではなく、管を替え終えるまで続く話だと、私は見ています。
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