「捕まえたクマを、山の奥に放しました」。クマのニュースでよく聞くこの対応を「放獣(ほうじゅう)」といいます。せっかく捕まえたのに、なぜ放すのか。放したクマはまた来ないのか、と思う人も多いはずです。
10月20日にも、神奈川県秦野市の弘法山公園でわなにかかったクマ1頭が、丹沢の山奥に放されました(くわしくは弘法山公園 クマ/権現山で1頭捕獲し山へ放獣)。環境省の「クマ類の出没対応マニュアル」をもとに、放獣の仕組みをまとめます。
放獣の3つのやり方
| やり方 | 中身 |
|---|---|
| 学習放獣 | 放す前に、トウガラシ成分のクマ撃退スプレーをかけたり、爆竹を鳴らしたり、檻をたたいたりして「人間は怖い」と覚えさせる |
| 移動放獣・奥山放獣 | 捕まえた場所から運んで別の場所で放す。集落や畑がほとんどない山奥へ運ぶのが奥山放獣 |
| 捕獲地点放獣 | 捕まえたその場で放す。シカやイノシシ用のわなに、たまたまかかったときなど |
出典:環境省「クマ類の出没対応マニュアル」(用語・第2章)。学習放獣と移動放獣は組み合わせて行われます。シカやイノシシをねらったわなにクマがかかった場合(錯誤捕獲)は、原則として放さなければならないとされています。
クマの出る地域で用意しておくもの
出没地域に住む・通勤するなら、音で存在を知らせるのが基本です。遭遇を避けるための備えを挙げます。
出没地域では散歩やゴミ出しでも音を出すのが基本です。消音機能があると、街中では鳴らさずに持ち歩けます。
鈴で避けるのが前提で、これは遭遇したときの最後の手段です。屋外作業や通勤路が山際にある場合の備えとして。
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放すかどうかを決める8つの目安
マニュアルは、放獣するかどうかは「その地域のクマの状態」と「捕まった個体の経歴」で決めることが多いとしています。目安に挙げているのは次の8つです。
- その地域にクマが何頭くらいいるか
- 捕まえた場所が、人の暮らす側か山の側か(ゾーニング)
- 前に許可を受けて捕まえられたことが何回あるか
- 前にほかの動物用のわなにかかったことが何回あるか
- 人や畑に被害を出したことがあるか
- 生ごみや果物など、エサへの執着がどれくらい強いか
- 子どものクマか、大人のクマか
- けがをしていないか

前に捕まったことがあるかを見分けるため、放すクマには耳標(耳につける札)やマイクロチップを付けます。2回目に捕まったときは、記録をもとに判断が変わることがあります。
神奈川で放すことが多いわけ
神奈川県によると、丹沢山地にすむツキノワグマは約80頭と推定されています。数が少ないため、県は狩猟をひかえるよう呼びかけて保護しています(神奈川県「ツキノワグマ情報について」)。目安の1つめ「その地域にクマが何頭くらいいるか」が、放獣の判断に効いてくるのはこのためです。
一方で、クマが多く人の被害も続く地域では、捕まえたクマを放さないこともあります。同じ「捕まえた」でも、その後の扱いは地域とクマの経歴によって変わります。
読者
山に返したら、また戻ってきちゃわない?
マニュアルにも、学習放獣の効果は完全じゃなくて、また出てくることもあると書いてあるの。遠くへ運んでも、そこに居着かないこともあるそうよ。だから、放したあとも生ごみや柿の実を外に置かないことが大事なの。
誰が、どうやって放すのか
放獣は、都道府県や市町村の職員が地元の猟友会と行うほか、民間の専門の事業者に頼む場合も少なくありません。麻酔で眠らせる作業には、資格と知識のある専門の技術者が欠かせないとされています。放す場所は、その土地の持ち主や近くの集落、周りの自治体と前もって話し合って決めておく必要があります。
マニュアルが示す作業の流れは、通報から始まり、麻酔をかけて耳標を付け、体の大きさを測ってから、移動用の檻に入れて放す場所まで運ぶ、という順番です。放す直前には、周りに人がいないかを確かめます。
町の中に居座ったクマを撃つときに誰が決めるのかは、緊急銃猟 京都 クマが家に居座ったら、誰が撃つと決めるの?にまとめています。山でばったり出会ってしまったときの身の守り方はクマに襲われたら/腹ばいで首の後ろを守るへ。
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