🗨️「茨木の市内が冠水したと聞いたけど、うちのあたりは水がたまりやすい場所なの?」
茨木市の平野は、1キロ進んでも標高が15.9センチしか下がりません。入った水が横へ抜けていくのに時間がかかる側の地形です。ただしこれは地形を測った話で、浸水の予測ではありません。
[災害] この記事の要点
2026年8月28日未明、大阪府北部に発達した雨雲がかかり、気象庁のアメダス茨木では2時40分までの1時間に56.0ミリの雨を観測した。0時から2時50分までの10分値を足すと71.5ミリになる。茨木市内と阪急高槻駅の周辺で道路の冠水が伝えられ、大阪・京都・兵庫・奈良の4府県に竜巻注意情報が発表された。
2026年8月28日 発表
- 茨木市で自宅や実家の水害リスクを調べたい人
- 茨木市の低いところで土地や中古住宅を探している人
- 安威川・茨木川・佐保川の下流で暮らす人
この記事でわかること
- 茨木市の平野が1キロでどれだけ下がるか(山側と平野で263倍の差がある)
- 市内でいちばん低い住宅地の標準地はどこで、標高が何メートルか
- 地形が平らなのに、この9年の床上浸水が0棟だった理由をどう読むか
先に結論 茨木市の平野は、1キロで16センチしか下がらない
茨木市の土地を、いちばん標高の低い地点から山側へ向かって630メートルごとに測っていくと、途中で傾きがはっきり切り替わります。山側の10.08キロでは419.7メートル下るのに、平野側の10.08キロでは1.6メートルしか下りません。1キロあたりに直すと15.9センチです。
| 区間 | 距離 | 標高差 | 勾配 |
|---|---|---|---|
| 山側(台地・山地) | 10.08km | 419.7m | 1/24 |
| 平野側(低地) | 10.08km | 1.6m | 1/6300 |
| 比 | — | — | 約263倍 |
平野側の区間で標高が振れる幅は11.4メートルでした。この振れが12メートルを超えると「平ら」とは言えなくなるので、茨木市の低地はぎりぎり本当に平らな部類に入ります。同じ条件で測れた全国135の市区町村のなかで、平らな順に数えると38番目です。
比べる相手を1つ置きます。2026年8月の千葉県大網白里市は、市街が水につかったあと水が引かないことが問題になりました。同じ自動計測で測ると、大網白里市の平野は1キロで93.4センチ下がります。茨木市はその6分の1しか下がりません。
なぜ引きにくいのか 集まるのは速く、出ていくのは遅い
山側が1/24というのは、1キロ進むと42メートル下がる傾きです。降った雨は、この斜面をほとんど時間をかけずに下りてきます。一方、平野に出たあとの1/6300は、1キロ進んで15.9センチ。人の目には水平にしか見えません。
水を動かしているのは高低差なので、傾きが263分の1になれば、横へ流れる勢いもそれだけ落ちます。集まってくる速さと、出ていく速さが釣り合っていない——これが「水が引かない土地」の形です。茨木市の低地は、その形をしています。
雨がやめば、あとは流れていくんじゃないんですか。
流れます。ただ、傾きが小さいところでは「流れ始めるまで」と「流れ切るまで」が長くなります。同じ量が入っても、引くのにかかる時間は場所ごとに違います。
2026年8月28日未明の雨は、気象庁のアメダス茨木で2時40分までの1時間に56.0ミリでした。0時から2時50分までの10分ごとの値を足すと71.5ミリになります。短い時間に集中して降ると、水は川へ入る前に低いところへたまります。市内で冠水が起きたのは、川があふれたからとは限りません。
茨木市のどこが低いのか 最低は新和町の4.2メートル
国が毎年公表している地価公示の標準地のうち、茨木市内で用途が住宅のもの34地点について、1点ずつ標高を取りました。低いほうから並べたのが次の表です。
| 標高 | 所在 | 価格(円/m²) |
|---|---|---|
| 4.2m | 新和町 | 177,000 |
| 4.8m | 沢良宜浜2丁目 | 177,000 |
| 5.1m | 平田2丁目 | 162,000 |
| 5.6m | 水尾2丁目 | 195,000 |
| 5.8m | 星見町 | 185,000 |
| 6.1m | 大池2丁目 | 235,000 |
| 6.9m | 鮎川1丁目 | 181,000 |
| 8.0m | 中津町 | 288,000 |
| 9.8m | 竹橋町 | 330,000 |
| 12.7m | 駅前4丁目 | 313,000 |
| 93.0m | 山手台3丁目 | 74,000 |
| 98.3m | 彩都あさぎ5丁目 | 140,000 |
| 201.6m | 大字大岩 | 30,900 |
34地点の標高の中央値は13.0メートル、価格の中央値は180,500円/m²でした。最低の新和町(4.2メートル・177,000円)と最高の大字大岩(201.6メートル・30,900円)で、標高差は197.4メートル、価格差は5.73倍あります。
ここで注意が1つあります。この表を上から下へ見ると「低い土地のほうが高い」ように見えますが、それは水につかりやすさに値段が付いているからではありません。駅と商業地が低いところにあるからです。私はこの並びを「危険なほど高い」ではなく、安全さのほうには値段が付いていないと読んでいます。安いか高いかを見ても、水の話は分かりません。
それでも、この9年の床上浸水は0棟でした
地形だけを見ると「よく水につかる土地」に見えます。ところが実績はそうなっていません。国土交通省の水害統計調査で2015年から2023年までの9年を数えると、茨木市で建物の浸水被害が出たのは2017年と2018年の2年だけです。
| 項目 | 9年の累計 |
|---|---|
| 床上浸水 | 0棟 |
| 床下浸水 | 7棟(2017年6棟・2018年1棟) |
| 被害額 | 約2.1億円(当年価格の合計) |
棟数のわりに被害額が大きいのは、道路・水路・農地といった建物以外の被害が計上されているためです。建物の被害だけを見て「たいしたことがない」と読むと、金額の側を取りこぼします。
床上が9年で0棟なら、心配しなくていいということですか。
そうは読めません。0棟は「これまで大きな雨が来なかった年が多かった」という記録で、地形が変わったわけではないからです。地形と実績は別々に見ます。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
自分の土地がどちら側かを、無料で確かめる4つの方法
ここまでは市の話です。同じ茨木市でも4.2メートルと201.6メートルがあるので、自分の土地がどちら側かは自分で確かめるしかありません。全部、無料でできます。
- 国土地理院「重ねるハザードマップ」に住所を入れて、標高と洪水・内水の想定を重ねて見る
- 同じサイトの「土地条件図」で、その場所が扇状地・氾濫平野・後背湿地のどれかを見る
- 「明治期の低湿地」で、その土地がもとは田や湿地だったかを見る
- 茨木市が公表している洪水・内水のハザードマップと、道路が冠水しやすい場所を合わせて見る
4つのうち、いちばん早く手応えがあるのは1つ目です。標高が10メートルを切っているかどうかで、上の表のどのあたりに自分の家があるかが分かります。
この記事の数字をどう出したか
国土数値情報「地価公示」2026年のうち用途が住宅の標準地を抽出し、各地点の緯度経度を国土地理院の標高API(5mレーザ測量のDEM(数値標高モデル))にかけて標高を取得しました。大阪府茨木市は34地点です。断面は最も標高の低い標準地を起点に、8方位のプローブで最も標高が上がる方向を山側と判定し、その軸上を630メートル間隔で測りました。標準地の位置での値であり、市内すべての土地を表すものではありません。
浸水の実績は、国土交通省「水害統計調査」の市区町村別水害被害(表-3)を2015年から2023年まで集計しました。棟数は建物の被災棟数、被害額はその年の価格です。2024年以降は確報が未公表のため含みません。
雨量は気象庁のアメダス茨木の観測値です。冒頭に書いた56.0ミリは、2026年8月28日2時40分までの1時間の値です。
生活・仕事にどう効くか
- 水が引くまでの時間:茨木市の平野は1キロで15.9センチしか下がらない。物差しにしている千葉県大網白里市(同じ自動計測で1キロ93.4センチ)の約6分の1で、同じ量の水が入ったときに横へ抜けるのが遅い側になる。
- 同じ市内でも条件が違う:住宅地の標準地でみると、市内の最低は4.2メートル、最高は201.6メートル。差は197.4メートルある。市の名前ではなく、町名と標高で見るしかない。
- 保険と復旧:2015年から2023年の9年で茨木市の床上浸水は0棟、床下浸水は7棟。床下でも乾燥と消毒に日数がかかるため、火災保険に水災補償が付いているかを証券で確認しておく。
結局どうすればよいか
- 自分の土地の標高を、国土地理院の「重ねるハザードマップ」で住所から確かめる
- 国土地理院の「土地条件図」と「明治期の低湿地」で、その場所がもとは何だったかを見る
- 茨木市が公表している洪水・内水のハザードマップと、道路が冠水しやすい場所を合わせて見る
- 床下でも復旧に日数がかかる。火災保険に水災補償が付いているかを保険証券で確認する
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
- なぜ茨木だけ1時間56ミリ? 大阪市は0.0ミリ
- 射水市はなぜ水が引きにくいのか 平野は1キロ進んで46センチしか下がりません
- 「ここまで水が来たのは初めて」大網白里の水はなぜ引かないのか? 平野に出てからの9kmで、土地は8mしか下がりません
ほかに使える無料ツール
- 住所まるごとチェック — 住所の表記ゆれ・実在をまとめて確認する
- 不動産相場検索 — 市区町村ごとの土地・戸建て・マンション相場を見る
公式出典
- 気象庁 アメダス(茨木)10分・1時間降水量(2026年8月28日発表)
- 国土数値情報「地価公示」(2026年)/国土地理院 標高API(2026年8月28日発表)
- 国土交通省「水害統計調査」市区町村別水害被害(表-3)(e-Stat)(2026年8月28日発表)
更新履歴
- 2026年8月28日 初版を公開
※本記事は2026年8月28日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。


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