🗨️「半導体をめぐって日本と中国がもめてるって聞いたけど、何の話?」
中国の商務部が2026年9月7日、日本から輸入しているジクロロシランという特殊ガスについて「不当に安く売られていて、中国国内の産業に実質的な損害を与えている」と仮に認定しました。9月8日から輸入時に保証金を取る臨時措置が始まっています。率は企業ごとに80.8%から最大99.2%。ジクロロシランは半導体の表面に薄い膜を作るときに使うガスで、日本製は2025年上半期の中国輸入で約60%のシェアを持っていました。
[経済] この記事の要点
2026年9月11日 発表
- 半導体材料・産業ガスの会社で働く人
- 取引先に半導体関連のメーカーがある人
- 電子部品の価格や納期の動きを見ている人
決まったこと
中国の商務部が2026年9月7日に出したのは、反ダンピング(AD)調査の仮決定です。内容は2つで、「日本から輸入されるジクロロシランにダンピングがある」「それが中国国内の関連産業に実質的な損害を与えている」。この2つを仮に認めたうえで、翌9月8日から輸入時に保証金を取る臨時措置に入りました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査開始 | 2026年1月7日 |
| 仮決定 | 2026年9月7日 |
| 措置の開始 | 2026年9月8日 |
| 保証金率 | 企業ごとに 80.8% 〜 99.2% |
| 調査の期限 | 2027年1月7日(最大6か月の延長が可能) |
| 日本産のシェア | 2025年1〜6月の輸入量 約145トン・市場シェア 約60% |
ジクロロシランとは何か
ジクロロシラン(dichlorosilane・DCS)は、ケイ素・水素・塩素からなる特殊ガスです。半導体を作るとき、ウエハーの表面に極めて薄い膜を積む工程で使われます。ロジック半導体、メモリー半導体、アナログ半導体のいずれにも出てくる材料です。
チップそのものでも製造装置でもなく、工程の途中で消えていく材料である点が、この話を分かりにくくしています。テレビのニュースで映るのは基板やウエハーですが、止まると困るのはこういうガスのほうだ、という構図です。
ガス1種類で、そんなに影響が出るものですか。
純度が理由です。半導体用の特殊ガスは不純物の許容が極端に低く、作れる工場が世界に数えるほどしかありません。量の問題ではなく、代わりが見つからない問題になります。
調査対象となった日本産ジクロロシランの2025年1〜6月の輸入量は約145トンで、市場シェアは約60%を占めている
— ジェトロ ビジネス短信(2026年9月9日)
数字の読み方で、いちばん大事なところ
報道の見出しは「最大99.2%」で並びました。ただし保証金率は企業ごとに決まっていて、下は80.8%です。全社が99.2%になるわけではありません。
そしてこれは関税ではなく保証金です。仮決定の段階では、最終決定が出るまでの担保として預ける形を取ります。最終決定でダンピングが認められなければ戻ることもあり、逆に率が変わることもあります。ただ、輸入する側から見ればその場で価格の8割から9割超を上乗せして払うことに変わりはなく、実務上は取引が止まる水準です。
調査の期限は2027年1月7日。最大6か月延長できるので、最終決定がいつ出るかはまだ幅があります。
「シェア約60%」が示していること
2025年1〜6月に中国が輸入したジクロロシランのうち、日本産は約145トンで市場シェア約60%でした。この数字は両方向に読めます。
日本側から見れば、大きな出荷先に急ブレーキがかかったということ。中国側から見れば、輸入の6割を1か国に頼っていた材料に、自国で措置をかけたということです。この措置は中国国内のメーカーが調査を申請して始まったもので、その意味では自国の材料産業を育てる動きの一部にあたります。
私たちの生活に届くまでの距離
半導体材料の話は、店頭の値段に出てくるまでに何段も挟まります。材料 → チップ → 部品 → 完成品 → 小売。1つの材料が止まっても、その日に家電が値上がりするわけではありません。
逆に言えば、影響が出るとしたら遅れて出ます。2026年の秋に起きたことの結果が見えるのは、早くても年末から年明けの調達や納期のところです。いま家電を買うかどうかの判断材料にはなりません。
生活・仕事にどう効くか
- 輸出:中国向けに出す日本産ジクロロシランは、9月8日から輸入時に価格の8割〜9割超にあたる保証金が必要になる。事実上の高関税に近い。
- 調達:2025年1〜6月に中国が輸入したジクロロシランのうち、日本産は約145トンで市場シェア約60%。置き換え先をすぐに用意できる規模ではない。
- 期限:調査は2026年1月7日に始まり、期限は2027年1月7日。最大6か月延長できる。
結局どうすればよいか
- 取引に関わる立場なら、商務部の公告番号と自社に適用される保証金率を一次資料で確認する
- 半導体材料の値動きは電子部品の納期に遅れて出る。年末から年明けの調達計画に幅を持たせる
- 報道の「最大99.2%」だけで判断せず、企業ごとに率が違う点を押さえる
公式出典
- ジェトロ ビジネス短信「中国、日本産ジクロロシランに対するAD調査で仮決定、最大99.2%の保証金を徴収」(2026年9月9日発表)
- 中華人民共和国商務部(2026年9月7日発表)
更新履歴
- 2026年9月11日 初版を公開
※本記事は2026年9月11日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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