🗨️「再開発の区域に入ったら、うちの土地も上がるんでしょ?」
東京駅前の実例で見ると、上がったのは都市計画が決まってから権利変換までの5年で、その先の6年は3.8%しか動いていません。しかも同じ八重洲一丁目のなかで、土地の値段は2.3倍ひらいています。
[インフラ・再開発] この記事の要点
2026年9月10日 発表
- 自宅や店舗が再開発の区域に入っている人
- 再開発が予定されている駅前で土地・マンションを買おうとしている人
- 「再開発が来るから上がる」と聞いて判断を迷っている人
開業したビルの中身
9月10日に開いたのは「TOFROM YAESU TOWER(トフロム ヤエス タワー)」。所在地は東京都中央区八重洲一丁目6番1号です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 規模 | 地上51階・地下4階/高さ約250m |
| 延床面積 | 約225,000㎡(敷地面積 約10,600㎡) |
| 事業 | 東京駅前八重洲一丁目東B地区 第一種市街地再開発事業(施行面積 約1.3ha) |
| 施行者 | 同地区 市街地再開発組合(参加組合員に東京建物・UR都市機構) |
| 権利者 | 約250名 |
| 店舗 | 全68店舗(9月10日の開業は55店舗、残り13店舗は後日) |
約250名の権利者の方々
2015年に国家戦略特区法に基づき都市計画決定
2020年 B地区権利変換計画認可東京建物 ニュースリリースより(施設のコンセプトは「人・時・場を“つなぐ”」と説明されている)
ここでいちばん見ておく価値があるのは、階数でも高さでもなく「約250名」のほうです。1.3ヘクタールの区域に、それだけの権利者がいた。その全員の権利を新しいビルの床に置き換える手続きが、この事業の中身です。
都市計画決定から開業まで11年
市街地再開発は、段取りの名前が決まっています。都市計画決定 → 組合の設立認可 → 権利変換計画の認可 → 工事 → 完成。この案件だと日付はこうです。
| 段階 | 時期 |
|---|---|
| 都市計画決定 | 2015年 |
| 権利変換計画の認可 | 2020年 |
| 開業 | 2026年9月10日(都市計画決定から11年) |
東京駅の目の前、地権者250名、参加組合員に大手デベロッパーとUR。条件としてはかなり整っているほうです。それでも11年。「再開発が決まったから、数年で街が変わる」という感覚とは、桁が1つ違います。
上がったのは、前半の5年だった
ここからが本題です。「区域に入れば土地は上がる」と言われますが、東京駅前の実データで見ると上がる時期がはっきり偏っています。近くの標準地(中央5-43/八重洲一丁目5-20)の1平方メートルあたりの価格です。
| 局面 | 期間 | 変化 |
|---|---|---|
| 都市計画決定 → 権利変換認可 | 2015→2020(5年) | +35.3% |
| 権利変換認可 → 開業 | 2020→2026(6年) | +3.8% |
期間が長いほうの6年で、3.8%しか動いていません。建物が建ち上がっていく期間より、計画が決まって権利が固まるまでの期間のほうが値段は動いているということです。ちなみに同じ6年で、少し離れた中央5-7(八重洲一丁目5-9)は+19.2%動いています。
なお、この標準地が施行区域の内側にあるのか外側なのかまでは公表資料から確認できていません。「区域に入ったから上がった」と断定できる資料ではないので、あくまで東京駅前という同じ場所で何が起きていたかとして読んでください。
東京駅前でも、戻るのに18年かかった
もうひとつ。同じ中央5-43をさかのぼると、2008年に1平方メートルあたり2,340万円だったものが、2012年には1,540万円まで落ちています。マイナス34.2%です。
そして2026年の価格が2,430万円。つまり2008年の水準を超えるまでに18年かかっている。日本でいちばん立地条件が良いと言われる場所でも、こういう形をしています。
さらに同じ八重洲一丁目のなかでも、2,430万円の地点と1,050万円の地点がある。同じ町名で2.31倍です。「駅前だから」「再開発だから」というくくりが、いかに粗いかが分かります。
自分の土地が区域に入ったら
実務として見ておくのは3つです。
ひとつめはいまどの段階か。都市計画決定の段階と、権利変換計画の認可が下りた段階では、話の確定度がまったく違います。上の数字が示すとおり、値段が動くタイミングも変わります。
ふたつめは期間。東京駅前で11年です。地方や権利関係が複雑な区域なら、それ以上を見込むのが自然です。その間、いまの建物で商売や生活を続けることになります。
みっつめは自分の土地の値段を、区域の話と切り離して知っておくこと。同じ町名で2.31倍ひらく場所があるくらいなので、「近所がいくらだったか」は自分の土地の目安になりません。手元の数字を持ってから話を聞くと、判断がぶれなくなります。
生活・仕事にどう効くか
- かかる年数:都市計画決定は2015年、開業は2026年9月。手続きが動き出してからの通算で11年。
- 土地の値段:近くの標準地は都市計画決定から権利変換までの5年で+35.3%、権利変換から開業までの6年で+3.8%。上がる時期が前半に偏っている。
- 同じ町でも差:同じ八重洲一丁目でも、標準地の価格は1平方メートルあたり2,430万円と1,050万円で2.31倍ひらいている。
結局どうすればよいか
- 再開発の話が出たら「どの段階か」を先に確認する。都市計画決定なのか、権利変換の認可まで進んでいるのか
- 近くの標準地(地価公示)の推移を、区域の内と外で分けて見る
- 「区域に入ったから上がる」ではなく、上がるとしたらいつの局面かで考える
公式出典
- 東京建物 ニュースリリース(TOFROM YAESU TOWER)(2026年3月2日発表)
- 東京建物 ニュースリリース(2026年9月10日開業・開業祭)(2026年8月27日発表)
- 国土交通省 地価公示(標準地 中央5-43/中央5-7/中央5-28)(2026年3月17日発表)
更新履歴
- 2026年9月10日 初版を公開
※本記事は2026年9月10日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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