住宅ローンを「年収の何倍まで」で決めても、そのあと家計が回るかどうかは決まりません。
2025年度に【フラット35】を使った人の平均は、年収の6.6倍でした。首都圏は7.1倍です。ところが、それより低い6.3倍で買った40代の夫婦が、一度も延滞しないままマイホームを売っています。
分かれ目は倍率ではありませんでした。住宅ローン以外の住居費を、買う前に数に入れていたかどうかです。
この記事でわかること
- ✓ 2025年度の【フラット35】利用者の平均年収倍率は6.6倍、首都圏は7.1倍(住宅金融支援機構)
- ✓ 審査が見る総返済負担率は住宅ローンだけの比率。管理費と修繕積立金の全国平均月30,481円は入っていない(国土交通省)
- ✓ 修繕積立金は47.1%のマンションが段階増額方式。国のガイドラインの例では月6,000円が月21,000円まで上がる
「年収の何倍まで」の答えは、いま6.6倍です
住宅金融支援機構が2026年7月24日に公表した「2025年度フラット35利用者調査」に、年収倍率という項目があります。所要資金を世帯年収で割った値で、2025年度(2025年4月〜2026年3月)に承認された35,553件の平均です。
全国の平均は6.6倍。前の年度から0.1ポイント上がりました。
| 地域 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|
| 全国 | 6.5倍 | 6.6倍 |
| 首都圏 | 6.8倍 | 7.1倍 |
| 近畿圏 | 6.6倍 | 6.7倍 |
| 東海圏 | 6.3倍 | 6.2倍 |
| その他の地域 | 6.2倍 | 6.2倍 |
同じ調査で、平均世帯年収は715万9,000円、平均所要資金は4,202万9,000円、毎月の予定返済額は12万3,800円でした。利用者の平均年齢は43.3歳です。
「年収の5倍まで」という言い方は、いまの平均から1.6倍ぶん離れています。首都圏で家を買っている人の平均は7.1倍で、5倍に収めている人のほうが少数です。
読者
じゃあ6.6倍までなら借りていいということですか?
そうではありません。6.6倍は「みんながそのくらい借りている」という事実であって、返せる上限ではないからです。次の夫婦は、これより低い倍率で詰まりました。
6.3倍で買った夫婦が、延滞ゼロのまま家を売りました
2026年8月31日、日刊SPA(スパ)に、元銀行員のファイナンシャルプランナーが担当した相談の話が出ました。マイホームを手放した40代夫婦の例です。
夫婦は上場企業に勤める共働きで、世帯年収は約800万円。都内へ通勤しやすいエリアの新築マンションを約5,000万円で買い、頭金を入れて約4,500万円を借りました。35年返済・金利は年1%で、毎月の返済は約12万7,000円です。
この条件を元利均等返済の式で計算し直すと、毎月127,027円になります。記事の数字と合います。
物件価格でみれば年収の6.3倍、借入額でみれば5.6倍。どちらで数えても、さきほどの全国平均6.6倍より下です。審査も問題なく通りました。
それでも数年後、この夫婦は家を売り、家賃の安い住まいへ引っ越しています。住宅ローンの延滞は一度もありませんでした。
機構がいう「年収倍率」は借入額ではなく所要資金(物件価格に諸費用を足した額)を世帯年収で割った値です。ここで6.3倍としたのは物件価格5,000万円÷年収800万円で、諸費用を含めればもう少し上になります。
相談を受けたときの家計を、記事はこう伝えています。マンションの管理費と修繕積立金で月約3万円。固定資産税を月割りすると約1万5,000円。駐車場代も含めると、住まいにかかる支出は月20万円近くになっていました。
夫婦の言葉として残っているのが、この2つです。
「ローンはちゃんと払えているのに、なぜか毎月苦しいんです」
「家族を幸せにするために買った家なのに、家のために生活しているみたいです」
審査が数えているのは、住宅ローンだけです
この夫婦の数字を、審査が使う物差しに当てはめてみます。
年収800万円は月に直すと66万6,667円。住宅ローンの12万7,000円を割ると19.0%です。【フラット35】利用者の平均総返済負担率は22.8%なので、この夫婦は平均より3.8ポイント低い位置にいました。
一方、実際に出ていった住居費は月20万円近く。同じ月収で割ると30.0%になります。差は月7万3,000円、1年で87万6,000円です。

総返済負担率は「1か月当たりの予定返済額 ÷ 世帯月収」で計算されます。分子に入るのは住宅ローンと、車のローンや奨学金のような既存の借入れだけです。管理費も修繕積立金も固定資産税も駐車場代も、この式には入りません。
借りるときに見た19.0%と、住み始めてから毎月出ていく30.0%。この11ポイントは、審査の設計上どうやっても表に出てきません。
管理費と修繕積立金は、全国平均で月30,481円
では、住宅ローン以外の住居費はいくらなのか。マンションについては国が5年に一度、実額を調べています。
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」(2024年6月21日公表)によると、1戸あたりの月額の平均は管理費が17,103円、修繕積立金が13,378円でした(どちらも駐車場使用料等からの充当額を含む総額)。合わせて月30,481円、年で36万5,772円です。
さきほどの夫婦が払っていた「月約3万円」は、平均そのものでした。特別に高い物件を選んだわけではありません。
月収66万6,667円に対して30,481円は4.6ポイントぶんです。平均的なマンションを買うだけで、審査で見た比率に4.6ポイントが自動的に上乗せされます。
読者
戸建てなら管理費も修繕積立金もかかりませんよね?
毎月の徴収はありません。ただし外壁や屋根の修繕費が消えるわけではなく、自分で積むか、そのときに一括で払うかに変わるだけです。マンションは強制的に積ませる仕組みになっている、という違いです。
修繕積立金は「これから上がる」前提で組まれています
もう一つ、買う前に見ておく数字があります。修繕積立金の積立方式です。
同じ調査で、いまの積立方式は段階増額積立方式が47.1%、均等積立方式が40.5%でした。完成年次が新しいマンションほど段階増額の割合が高くなっています。段階増額は、当初の額を低くしておいて、あとから何度も値上げしていく方式です。
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(2024年6月7日最終改訂)は、築後30年間に必要な修繕工事費を戸あたり522万円と置いて、2つの方式を並べています。
| 積立方式 | 1〜5年目 | 26〜30年目 | 購入時 |
|---|---|---|---|
| 均等積立方式 | 月14,500円 | 月14,500円 | なし |
| 段階増額積立方式 | 月6,000円 | 月21,000円 | 修繕積立基金36万円 |
同じ522万円を集めるのに、最初の5年だけを見れば段階増額のほうが月8,500円安く見えます。26年目以降は逆に月6,500円高くなります。売り出し中のマンションのチラシに並ぶのは、この左端の数字です。
国はガイドラインで、購入予定者に対してこう書いています。提示された修繕積立金が均等積立方式によるものなのか、段階増額積立方式など将来の負担増を前提とするものなのかを確認し、将来の負担増が「自らの将来の資金計画(住宅ローンの返済計画など)との関係でも無理のないものなのか」まで検討しておく必要がある、と。
そのうえで国は、段階増額の引上げ幅にも目安を示しました。計画の初期額は基準額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内に収めること。基準額とは、均等積立方式にした場合の月額です。
実際に足りているかどうかも調べられています。計画に比べて積立額が不足しているマンションは36.6%、不足が20%を超えるものが11.7%。管理費・修繕積立金を3か月以上滞納している住戸があるマンションは30.1%でした。
ガイドラインが示す「計画期間全体の平均額の目安」は、地上20階未満・建築延床面積5,000〜10,000㎡で1㎡あたり月252円(事例の3分の2が170〜320円)、地上20階以上で月338円(同240〜410円)です。70㎡なら月17,640円、20階以上のマンションなら月23,660円が目安になります。
修繕積立金の値上げそのものについては、「決まってしまうと拒否はできないのでしょうか」——修繕積立金の値上げ、答えは規約の1行で変わりますでも書きました。
住居費を数え直す4つの手順
ここからは、買う前でも買ったあとでも同じようにできる数え方です。紙とスマホの電卓で足ります。

1. 住居費に入るものを全部書き出す
住宅ローンの返済額、管理費、修繕積立金、駐車場代、固定資産税と都市計画税の月割り、火災保険料の月割り。戸建てなら管理費と修繕積立金の代わりに、外壁と屋根のための積立てを自分で置きます。
この合計が、あなたの家の住居費です。住宅ローンの返済額ではありません。
2. 税込み年収を12で割って、住居費で割る
年収800万円なら月66万6,667円。住居費20万円なら30.0%です。手取りで計算したい場合はそちらでもかまいませんが、審査の22.8%と比べるときは税込みで揃えます。
3. 修繕積立金が均等か段階増額かを聞く
新築なら重要事項説明の前に販売担当者へ、中古なら管理規約と長期修繕計画を見せてもらいます。段階増額なら、最終額がいくらになるかまで確認します。国のガイドラインの例では3.5倍になりました。
4. 子どもが高校・大学に入る年の家計で、もう一度割る
住居費は下がりません。上がるのは修繕積立金と固定資産税、そして教育費です。いまの数字ではなく、いちばん重い年の数字で割ります。
この4つを通すと、さきほどの夫婦のように「審査は通ったのに毎月苦しい」という状態を、契約の前に数字で見つけられます。金利が上がったときにどうなるかは、「5年経つ前に月々の返済額が上がりました」|住宅ローンの金利1%で、毎月82,281円増える街がありますで街ごとに出しました。
\もう買っていて苦しいなら、売ったあと手元に残る額から/
私は「年収の何倍」を最初に捨てる物差しだと考えています
ここからは私の見方です。年収倍率は、買う人にとってほとんど役に立たない数字だと考えています。理由は2つあります。
ひとつは、倍率の分子に物件価格しか置いていないからです。同じ5,000万円でも、管理費と修繕積立金が月3万円のマンションと、駐車場が敷地内にある戸建てでは、30年で払う総額が数百万円ちがいます。倍率は同じでも家計は同じになりません。
もうひとつは、倍率が「平均」として出回ることで、上限の目安のように読まれてしまうからです。6.6倍は、返せている人と返しきれなかった人の両方を含んだ平均値です。返済に詰まった人が調査から抜けるわけではありません。
代わりに置くなら、住居費が月収の何%かという1つの比率だけで足りると考えています。この夫婦の30.0%が危険水域だと断定はできませんが、審査が見た19.0%では家計を説明できなかったことは、この事例が示しています。
家を持ち続けることだけが正解でもありません。記事の夫婦は売却後、住居費が月に数万円下がり、その分を教育費と貯蓄に回せるようになりました。「家を手放すのは悔しかったですが、毎月お金のことを心配する生活からは楽になりました」と話しています。
よくある質問
住宅ローンは年収の何倍まで借りられますか
金融機関が示す上限とは別に、実際に借りている人の平均があります。住宅金融支援機構の2025年度フラット35利用者調査では、所要資金を世帯年収で割った年収倍率の平均が全国6.6倍、首都圏7.1倍、近畿圏6.7倍でした。これは平均値であって、無理なく返せる上限ではありません。
住宅ローンの返済比率はどのくらいが目安ですか
2025年度の【フラット35】利用者の平均総返済負担率は22.8%です。ただしこの比率の分子に入るのは住宅ローンと既存の借入れだけで、管理費・修繕積立金・固定資産税・駐車場代は入っていません。住居費全体で割り直すと比率は上がります。
マンションの管理費と修繕積立金は月いくらかかりますか
国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、1戸あたりの月額の平均が管理費17,103円、修繕積立金13,378円で、合計30,481円でした(駐車場使用料等からの充当額を含む総額)。物件によって幅があるため、購入前に長期修繕計画で確認します。
修繕積立金はあとから上がりますか
上がる前提で組まれている物件があります。同じ調査で段階増額積立方式が47.1%を占めており、国のガイドラインが示す例では、初年度の月6,000円が26〜30年目に月21,000円まで上がります。均等積立方式かどうかを購入前に確認します。
住宅ローンを払えていても家を売ることはありますか
あります。日刊SPA!が2026年8月31日に伝えた例では、年収800万円の40代夫婦が延滞なく返済を続けながら、住居費が月20万円近くに達したため売却しました。売却後は住居費が月に数万円下がっています。
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出典
住宅金融支援機構「2025年度【フラット35】利用者調査」(年収倍率、世帯年収、所要資金、1か月当たり予定返済額、総返済負担率。2026年7月24日公表、集計対象35,553件) https://www.jhf.go.jp/about/research/loan_flat35.html
国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕」(管理費・修繕積立金の月/戸当たり平均、積立方式の割合、積立不足、滞納。2024年6月21日公表) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001750161.pdf
国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(1㎡当たり月額の目安、築後30年522万円の積立例、引上げの考え方。2024年6月7日最終改訂) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf
日刊SPA!「年収800万円、住宅ローンは払えていたのに…マイホームを売ることになった40代夫婦の“誤算”」(文=渡辺智、2026年8月31日配信。事例の年収・物件価格・借入額・住居費の内訳、夫婦の発言) https://nikkan-spa.jp/
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