「地震の少ない県に引っ越せば安心」。その基準で土地を決めると、同じ区の中で確率が45ポイント違う場所を、見分けないまま買うことになります。
こちらで公的データを取得して測ったところ、今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率は、世田谷区役所の地点が44.2%、江戸川区役所の地点が89.4%でした。どちらも東京23区で、直線距離はおよそ13kmです。
2026年7月28日に熊本で最大震度7、8月23日には茨城県南部で最大震度5弱。揺れが続くと「結局どこなら安全なのか」を調べたくなります。この記事は、その問いに国と研究機関の公開データだけで答えます。
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先に結論
- 日本の国土は世界の約0.25%。そこに世界のM6以上の地震の16.6%が集まっています(2011〜2024年・国土交通省)
- 地震の型は2つある。海溝型(南海トラフなど)と、内陸の活断層による直下型。備え方が違います
- 県や市の単位で選んでも足りません。同じ東京23区で44.2%と89.4%、同じ水戸市内で48.7%と83.4%に割れます
- 分かれ目は足元の地形。台地は揺れにくく、三角州・旧河道・干拓地・埋立地は揺れやすい
- 確率が低い=安全ではありません。2021年の予測で6.0%だった輪島市に、2024年1月1日、震度7が来ました
世界の地震の16.6%が、国土の0.25%に集まっている
国土交通省の「河川データブック2025」に、米国地質調査所と気象庁のデータを並べた集計が載っています。2011年から2024年までに世界で起きたM6以上の地震は1,971回。うち日本で起きたのが328回で、16.6%です。
いっぽう日本の国土面積は、世界の約0.25%しかありません。面積あたりに直すと、世界平均のおよそ66倍の密度でM6以上が起きている計算になります(16.6÷0.25)。活火山も日本に111山、世界1,261山の8.8%が集まっています。
理由は場所です。日本の下では、太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレート、ユーラシアプレートの4枚が押し合っています。海の板が陸の板の下へ沈み込み、そのひずみが限界に達したときに跳ね返るのが地震です。

図のとおり、地震の型は2つに分かれます。ここを混ぜて考えると備えを外します。
海溝型は「いつか必ず来るが、来る場所はだいたい分かっている」地震です。プレートの境目で起きるのでM8〜M9まで大きくなり、広い範囲が数分にわたって揺れ、津波が来ます。南海トラフ、日本海溝、千島海溝がこれにあたります。
内陸の活断層による直下型は逆です。M7前後でも震源が浅いため、真上の狭い範囲だけが激しく揺れます。2016年の熊本地震も、2024年の能登半島地震も、2026年7月の熊本の地震もこの型です。津波を伴わないぶん、揺れそのもので家が壊れます。
「日本と似た国」はあるのか——プレートに乗る国は多いが、4枚が集まるのは日本
地震が多いのは日本だけではありません。太平洋をぐるりと囲む環太平洋火山帯には、チリ、ペルー、メキシコ、アラスカ、カムチャツカ、台湾、フィリピン、インドネシア、ニュージーランドが並びます。ヨーロッパから中東にかけてのアルプス・ヒマラヤ造山帯には、イタリア、ギリシャ、トルコ、イラン、ネパールがあります。
ただし、その多くは2枚のプレートの境目にあります。台湾はユーラシアとフィリピン海、ニュージーランドは太平洋とオーストラリア、チリはナスカと南米です。4枚が集まり、海溝型と内陸の活断層が同じ国土に同居しているのが日本の特徴です。「日本と似た国」を探すと、条件が全部そろう国は見当たりません。
では、同じくらいの規模の地震が来たとき、被害も同じになるのかというと、そうではありません。差がつくのは地面ではなく建物です。
国土交通省と建築研究所の委員会が、2016年の熊本地震のあと益城町の中心部を一軒ずつ調べています。木造建築物の倒壊・崩壊率は、1981年5月以前の旧耐震基準が28.2%、1981年6月から2000年5月までの新耐震基準が8.7%、2000年6月以降の基準が2.2%でした。
同じ町の、同じ揺れで、建った年が違うだけで倒壊率が13倍近く開いています。「どこに住むか」を調べるのと同じ手間を、「その家がいつ建てられたか」にも使う価値があります。海外の建物との構造の違いは海外の建物は地震に弱い?コロンビアM7.4から見る日本との構造の違いに分けて書いています。
活断層は2,000を超え、名前が付いているのは114だけ
地震調査研究推進本部によると、日本の陸域と沿岸の海域には2,000を超える活断層があります。そのうち、活動度と社会への影響から選ばれて長期評価の対象になっている「主要活断層帯」は114です。
言い換えると、名前と確率が公表されている断層は全体の1割にも届きません。「うちの近くに活断層の名前は無いから大丈夫」という読み方はできない、ということです。
海溝型のほうは、主要なものの確率が毎年更新されています。2026年1月14日に公表された、算定基準日2026年1月1日の数字です。
| 地震 | 30年以内に起きる確率 |
|---|---|
| 南海トラフ M8〜M9クラス | 60%〜90%程度以上 |
| 同上(別のモデルで計算した併記値) | 20%〜50% |
| 根室沖 M7.8〜M8.5程度 | 90%程度 |
| 宮城県沖の陸寄り M7.4前後 | 80%〜90%程度以上 |
| 青森県東方沖及び岩手県沖北部 M7.9程度 | 20%〜40% |
| 千島海溝の超巨大地震(17世紀型) | 7%〜40% |
| 相模トラフ M8クラス | ほぼ0%〜6% |
南海トラフに2つの数字が並んでいるのは、計算モデルが1つに決まっていないからです。地震調査委員会は両方を併記したうえで、防災の判断では高いほうを念頭に置くよう求めています。
根室沖が前年の「80%程度」から「90%程度」に上がっているのも読みどころです。1年経つと、それだけ次までの残り時間が減ります。
確率が低い場所が安全なのではありません——輪島6.0%、珠洲2.0%
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
防災科学技術研究所が公開している全国地震動予測地図2020年版は、2021年3月に公表されました。この時点の予測を、こちらで住所から取得し直すと、石川県輪島市役所の地点は今後30年で震度6弱以上が6.0%、珠洲市役所の地点は2.0%でした。
その3年後、2024年1月1日に能登半島地震が起き、輪島市で最大震度7、珠洲市で震度6強を観測しています。
これは予測が雑だという話ではありません。確率とはそういうものだ、という話です。30年で6%は「30年のうちのどこかで起きても何もおかしくない」水準ですし、まだ知られていない断層や、想定より短い間隔で動く断層があれば、数字は低く出ます。
地震調査委員会自身が、確率を公表する文書の中でこう書いています。「日本は世界的に見ると地震活動が活発で、どの場所においても、地震による強い揺れに見舞われるおそれがあります」。
私は、「地震が少ない県ランキング」を土地選びの決め手にするのは危ないと考えています。理由は2つあります。ひとつは、確率が低い地域ほど、そこに住む人も自治体も揺れを経験しておらず、家具の固定や耐震改修が進んでいないこと。もうひとつは、次に説明するように、県や市の単位で見た数字が、自分の敷地の揺れやすさをほとんど説明しないことです。
同じ市の中で確率が2倍近く割れる——決めているのは足元の地形
こちらで、防災科学技術研究所のJ-SHISから2種類のデータを住所ごとに取り直しました。ひとつは今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率、もうひとつは表層地盤の微地形区分と、地表での揺れの増幅率です。約250mのメッシュごとの値です。

やわらかい層が厚いほど、下から来た地震の波はゆっくり大きく揺さぶられて、地表に出るころには振幅が増えます。プリンの上に立つのとコンクリートの上に立つのとで、同じ揺れの伝わり方が変わるのと同じです。
4つの都市で、同じ市の中の2地点を比べた実測値がこちらです。
| 地点 | 微地形区分 | 地盤の増幅率 | 30年で震度6弱以上 |
|---|---|---|---|
| 東京・江戸川区役所 | 三角州・海岸低地 | 2.52 | 89.4% |
| 東京・世田谷区役所 | 火山灰台地 | 1.39 | 44.2% |
| 水戸市役所 | 旧河道・旧池沼 | 2.08 | 83.4% |
| 茨城県庁(水戸市笠原町) | 火山灰台地 | 1.30 | 48.7% |
| 名古屋・港区役所 | 干拓地 | 1.83 | 67.4% |
| 名古屋・瑞穂区役所 | 砂礫質台地 | 1.07 | 37.4% |
| 大阪・此花区役所 | 干拓地 | 1.99 | 52.0% |
| 大阪・天王寺区上本町(上町台地) | 砂礫質台地 | 1.34 | 27.4% |
水戸市の例が分かりやすいと思います。市役所と県庁は直線でおよそ8kmしか離れていませんが、市役所の地点は旧河道・旧池沼、つまりかつて川や池だった場所で、確率は83.4%。県庁の地点は火山灰台地で48.7%です。ニュースで「水戸は確率が高い」と紹介されるとき、その数字は市役所の地点のものです。
4都市とも向きは同じでした。台地のほうが低く、埋立地・干拓地・旧河道・三角州のほうが高い。市区町村の平均値では、この差は消えてしまいます。
揺れた瞬間に、部屋の中で起きることを減らすもの
地震のけがの3〜5割は、屋内の家具類の転倒・落下・移動によるものです(東京消防庁)。壁にネジを打てない部屋でもできる手から並べます。
東京消防庁の実験では、L型金具で壁に直接ネジ止めするのが最も効果が高いとされています。賃貸で壁に穴を開けられない部屋での代わりがこれです。家具の両端の側板部を、できるだけ奥で突っ張ります。天井側にも強度が要ります。
突っ張り棒だけだと効きが落ちます。同じ資料が、ポール式にはストッパー式や粘着マット式の併用をすすめています。マット単独でも効果は小さいので、上の棒と2つで1組と考えてください。
お湯でも水でも作れて、袋のままおにぎりの形になります。断水すると鍋も食器も洗えません。洗い物の出ない形を先に入れておくと、水の減り方が変わります。
飲料水は1人1日3L。4人家族の1週間分で84L=2Lボトル42本なので、6本入りだと7ケースぶんです。5年保存タイプなら入れ替えの手間が減ります。
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土地の型ごとの、メリットとデメリット
「揺れにくい土地に住めばいい」で終わらないのは、揺れにくい土地には揺れとは別のデメリットがあるからです。日本の宅地は、だいたい次のどれかに当てはまります。
| 土地の型 | 地震の揺れ | 液状化 | 水害 | 住みやすさ・価格 |
|---|---|---|---|---|
| 台地・段丘(火山灰台地、砂礫質台地) | 弱め(増幅1.0〜1.4) | 起きにくい | 浸水しにくい | 坂が多い。人気が集中して価格が高い |
| 丘陵地 | 弱め | 起きにくい | 谷筋は集水する | 土砂災害警戒区域と、造成の盛土に当たることがある |
| 扇状地 | 中くらい | 部分的 | 土石流の通り道 | 水はけがよく、古くからの集落が多い |
| 自然堤防(旧川沿いの微高地) | 中くらい | 縁で起きやすい | まわりの低地より一段高い | 平野部では相対的に条件がよい |
| 後背湿地・旧河道・旧池沼 | 強め(増幅1.9〜2.2) | 起きやすい | 内水氾濫が出やすい | 平坦で開発しやすく、価格は抑えめ |
| 三角州・海岸低地 | 強め(増幅1.7〜2.2) | 起きやすい | 洪水・高潮・津波 | 駅と職場に近く、利便性は最上位 |
| 干拓地・埋立地 | かなり強め(増幅1.8〜2.5) | 最も起きやすい | 高潮・津波・液状化による断水 | 区画が整い、大型施設が近い |
| 砂丘・砂州 | 中くらい | 縁で起きやすい | 津波を減らす地形でもある | 海が近く、風が強い |
| 山地・山麓 | 弱め | 起きにくい | 土砂災害と孤立 | 価格は安いが、道路が絶たれると長期化する |
増幅率の数値は、こちらがJ-SHISから取得した地点の実測値の範囲です。同じ「台地」でも、上に載っているローム層の厚さで変わります。
見てのとおり、揺れに強い土地は、たいてい坂の上にあって高く、揺れに弱い土地は、たいてい平らで駅に近くて安い。ここに正解はなく、どのリスクを引き受けるかの選択があるだけです。選ぶこと自体より、選んだ結果を知らないまま住むことのほうがまずい、というのが私の考えです。
それでも、どこに住めばいいのか——3つの手順
住む場所を県で絞るのをやめて、次の順で見ると判断できます。
- 候補の住所を1件ずつ、地点の単位で調べる。 市区町村のランキングではなく、番地まで入れて地盤・浸水・土砂・活断層をまとめて見ます
- 建物の年代を確認する。 中古なら2000年6月以降の建築確認かどうか。それより前なら耐震診断の有無を売主に聞きます
- 引き受けると決めたリスクに、対処を1つずつ当てる。 低地なら家具の固定と水と断水対策、高台なら擁壁と接道、山際なら土砂災害警戒区域の指定を確認します
1つめは無料で、いまこの場でできます。おかあさんのおうちの災害リスク診断は、住所を入れると土砂災害警戒区域、洪水と津波の浸水想定区域、約250mメッシュの地盤情報、将来の揺れの確率、影響の大きい活断層までを1画面で表示します。この記事で使ったJ-SHISのデータも、同じ仕組みで読み取っています。
番地まで入れると、地点の地盤と揺れの確率まで出ます
そのエリアの土地・中古住宅の相場を調べる
住所の表記ゆれ・地番と住居表示を確認する
揺れる前の30分でできること
土地を変えるのは何年もかかりますが、部屋の中は今日変えられます。
東京消防庁の資料に、こう書かれています。「負傷者の3〜5割の方々が、屋内における家具類の転倒・落下・移動によって負傷していました」。地震で人が傷つく場所は、まず自分の部屋の中です。
同じ資料には、器具の効き方の差も震度6強の再現実験の結果として整理されています。
- 家具をL型金具などで壁に直接ネジ固定する方法が最も効果が高い
- 家具の上部と天井の間にポール式(突っ張り棒)で固定する場合は、ストッパー式や粘着マット式を併用すると効果が高い
- マット式やストッパー式の器具を単独で使うのは効果が小さい
- ポール式は家具の両端の側板部の壁側奥に、できるだけ奥に取り付ける。天井側に強度が要る
賃貸で壁にネジを打てない部屋でも、突っ張り棒とマットを組み合わせれば、単独で使うよりは効きます。買うときに片方だけにしないことです。
食べものと水は、飲料水が1人1日3リットル、最低3日分、できれば1週間分が国の示す目安です。4人家族の1週間なら84リットルで、2リットルのボトルが42本になります。棚の一段を空ける前提で数えておくと、買ってから置き場所に困りません。
家が壊れたあとのお金の動きは家が壊れたとき、罹災証明と火災保険はどっちが先?と地震保険の請求と認定にまとめています。
よくある質問
日本で地震がいちばん少ない場所はどこですか
今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を県庁所在地の地点で比べると、札幌2.1%、長野2.6%、山形3.8%、松江4.6%が低いほうです。ただしこれは県庁の建っている地点の値で、同じ市の中でも地形が変われば数字は変わります。低い地域で震度7が起きた例もあるため、「ここなら備えなくていい」という場所はありません。
活断層の真上でなければ安全ですか
活断層で名前と確率が公表されているのは主要活断層帯の114だけで、日本には2,000を超える活断層があります。さらに海溝型の地震は断層の位置と関係なく広い範囲を揺らします。真上を避けることには意味がありますが、それだけでは足りません。
埋立地のマンションは避けたほうがいいですか
埋立地は地盤の増幅率が高く、液状化も起きやすい土地です。いっぽうで、大規模なマンションは支持層まで杭を打っているため建物本体が傾く例は多くありません。問題になりやすいのは、敷地の地面と、水道やガスといった埋設管のほうです。建物の構造と、地面のリスクを分けて確認してください。
家を買うとき、地盤はどこで調べられますか
無料で調べるなら、防災科学技術研究所のJ-SHIS、国土地理院の地理院地図、自治体のハザードマップです。当サイトの災害リスク診断は、これらの公的データを住所から一度に確認できるようにしたものです。契約の前には、自治体の窓口と最新の指定図面もあわせて確認してください。
出典と集計の条件
- 国土交通省「河川データブック2025」2-2-3(世界のM6以上の地震回数は2011〜2024年、米国地質調査所と気象庁の集計)
- 地震調査研究推進本部「長期評価による地震発生確率値の更新について」(2026年1月14日公表・算定基準日2026年1月1日)、主要活断層帯の説明
- 防災科学技術研究所 J-SHIS 全国地震動予測地図2020年版(平均ケース・全地震・約250mメッシュ)および表層地盤データ。住所から緯度経度への変換は国土地理院の住所検索を使用。取得は2026年8月23日
- 国土交通省・建築研究所「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」益城町中心部の悉皆調査
- 東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」
- 飲料水の備蓄量は内閣府および農林水産省が示す家庭備蓄の目安
本記事の確率は特定の建物の安全性を保証するものではありません。売買や建築の判断では、自治体の窓口と最新の指定図面を必ず確認してください。


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